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第5章 行財政改革とビッグバンの怪


大蔵省はなぜ解体されないか - 行革にひそむ裏方の陰謀


 行政界革会議で特に大きな目玉の議題とみなされていたのが、大蔵省の解体であった。 その焦点は、財政と金融を分離するところにあった。財政は、「国家予算」を扱う部門である。 金融は、「銀行界・証券界」の問題を扱う部門である。現在のように両者が同じ大蔵省にあると、 国家予算の配分を切り札として、大蔵官僚が銀行界や証券界に大きな圧力をかけることができる。 それが、天下りの人脈形成に大きく寄与してきた。

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 この会議について、国民はほとんど実態を知らされなかったが、あきれた議事の 進行法がとられた。大蔵省問題を議論する時には、まず大蔵官僚を呼んで、説明させる。 通産省問題を議論する時には、まず通産官僚を呼んで、説明させる。そして官僚の口車に 乗せられて、素人委員たちは考えこみ、なるほど、なるほどとうなずいて、反論もできない。
 会議のメンバー14人は、苦労したことがない人間である。どん底の失業を味わった経験も ない。要するに国民のなかにわき上がっている生活不安がどれほどのものであるか、肝心の国民に ついても、まったく素人である。日本全土にひろがるダム公害の意識さえない。農漁業の深刻な 実態も知らない。乳価の下落がどれほど酪農家を苦しめてきたかを知る機会もない。
 日本全土の注目を集める会議のメンバーに選ばれ、豪華な会議室に迎えられたという 誇らしげな感情が胸の中を去来するばかりで、行革会議の議事進行に疑問の一片さえ 抱かなかった。

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 こうして、「大蔵省の財政と金融を分離しろ」という要求は、あっさり無視され、 分離されないことになったのである。
 実は、この会議の黒幕として、一貫して議事の事務方を動かしていたのは、 内閣内政審議室長の田波耕治であった。この会議参加者の事務局次長に総務庁事務次官の 八木俊道がいたほかは、政府側"官僚"として出席していたのは田波ひとりであった。しかも八木は 総務庁であり、最大の主題である大蔵官僚としては、田波のほかには、誰もいなかった。
 田波耕治は、64年に大蔵省に入省後、77年から早くも大蔵大臣秘書官をつとめ、 83年には、蔵相・竹下登の秘書官時代に、当時の事務次官だった松下康雄(現・日銀総裁)の 手で主計局主計官に抜擢され、出世コースを歩んで、94年にはついに財政投融資という 国家最大資金の配分を査定する理財局長のポストについた。

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かつて終戦直後の日本で、大蔵事務次官・池田勇人のもとで理財局長をつとめた 伊原隆の娘ムコである田波が、義父と同じコースを通って出世したのである。

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 当時、佐々木総裁が二人三脚で手を組んだ大蔵事務次官が、 - - 天下り支配者 ・澄田智であった。武富士未公開株事件の徳田博美を使って金融制度に取り組んだのが、 この一族だったのである。その大蔵ファミリーが監視するなかで進行した97年の行政改革会議が、 財政と金融を分離する結論を認めるはずがなかった。

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 しかも佐々木総裁と三菱銀行頭取の中村俊男は、義兄弟であり、その近親者に 三菱重工社長の飯田庸太郎、三菱銀行頭取の加藤武男、三菱銀行副頭取の加藤武彦と、三菱財閥が ずらりと並んでいた。これが、行革と共に進行するビッグバンの黒幕財閥であった。

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 彼ら14人が最後の集中審議をおこなっていた同じ日に、次々と、98年度予算への 足固めが、各省の内部で進んでいた。建設省の第12次「道路整備」5ヶ年計画は、 総事業費78兆円と、またしても前回の計画より3%近い伸びを平然と請求する計画書が、 8月21日にまとめられた。運輸省もまた、同じ日に、「整備新幹線」の公共事業費を、 今年度並みの金額で請求する方針を固めた。
 こうした予算の記事が、行政改革会議の大きな記事におしやられて、小さく出ていた。 そして会議終了から1週間もたたぬ8月28日には、98年度の予算要求総額が、大蔵省から 発表された。97年度より4.1%増加の80兆5500億円であった。
 またしても、官僚の無反省を絵に描いたようになった。そのなかで、運輸省は早くも 旧国鉄の債務を返済するために莫大な額の国債発行を求め、ますますの借金地獄を目指そうという 計画書を出してきた。

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