第5章 行財政改革とビッグバンの怪


ロッキード事件の人脈に反旗をひるがえした国士


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72年8月、田中角栄首相とアメリカのニクソン大統領が会談して、ロッキード社の 航空機トライスターを大量に購入することが決定された。しかしその決定に至るまでに、 ロッキード社は、販売代理人として日本の政商・児玉誉士夫を屋問い、同時に、商社の「丸紅」と 航空ラインの「全日空」にも働きかけて、日本の国会議員に大金をばらまく政界工作を おこなっていた。それが、なぜか突然、76年2月のアメリカの外交委員会 (多国籍企業小委員会)で発覚した。
 この発覚の経過には、アメリカの政治的な意図が隠されていた。
 なかでも問題となったのが、田中角栄首相に渡った5億円の成功報酬であり、76年7月には 田中角栄が逮捕され、実に数百人が取り調べを受けるという大疑獄事件に発展した。この事件では、 ロッキード社のP3C対潜哨戒機の導入疑惑が発覚し、中曾根康弘(防衛庁長官)や 後藤田正晴(官房副長官)に重大な疑いがもたれたが、なぜか、この軍用機問題は消滅して、 民間航空機の疑惑だけがロッキード事件として社会問題となった。

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 田中角栄は、5億円を受け取った疑惑がありながら、8月17には2億円の保釈金を つんで保釈された。不正な金5億円を受け取って、そのうち2億円の保釈金を払えば、犯罪者の 手元には3億円が残る。これが、無法者を金持ちにする日本の法律である。
 しかも93年12月に死去した田中角栄の遺産は、時価評価で650億円にのぼると みられていたが、非上場株のかたちで、娘の田中真紀子らが相続した。その時、 ペーパーカンパニーが次々とつくられ、実質的な所有権は田中真紀子にありながら、遺産が ほとんどゼロのように消えてしまったのである。前述の一般庶民の遺産相続の話と比べてみれば 、国税庁がどれほどいい加減な査定をしているか分かる。国税庁を動かしているのが、 大蔵官僚である。

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ほぼ同じ犯罪の容疑がかけられながら、逮捕される者と逮捕されない者が、 どの事件にもみられる。
 司法・検察の不平等を示すこの事実は、かねてから黒幕の存在を指摘され、問題に なってきた。ロッキード事件で後藤田正晴の容疑が追及されなかったのは、明かに彼が、 警察庁官房長、警察庁長官、国家公安委員長を歴任した「捜査側」の身内の大物だからであり、 彼が潔白だったからではない。
 事件の数に比べれば、大物が逮捕されることは、きわめて稀である。起訴資料の不足や 偶然だけでは、説明できない。

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ロッキード事件の逮捕者が、いまだに全日空を支配していたというニュースに、 日本全土が驚かされた。
 運輸事務次官だった官僚天下りの若狭得治は、69年から全日空の取締役となり、 ロッキードとの裏取引がはじまる前の70年から社長に就任し、田中角栄と悪事に手を染めた。 やがて76年に贈賄が発覚すると、12月から会長に退き、91年から名誉会長の座についていた。 しかも92年にロッキード事件の有罪が確定していながら退社することもなく、"全日空の天皇"と 呼ばれていたのである。この呼び名は二重の意味で正しいだろう。
 ところが今年、現役の普勝清治社長が、若狭たちの長老支配は腹にすえかねると、辞表を 提出し、内輪もめが表沙汰になった。

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