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ユジノ-サハリンスク軍事裁判所(旧樺太守備隊司令官邸)
日本時代の旧樺太守備隊司令官邸については こちらへ

 旧樺太守備隊司令官邸は、明治41(1908)年の竣工以来、少なくとも4度の転用が確認されている。現在はロシア軍法務局がサハリン州軍管区裁判所として利用されている。竣工当初の正面は北面であったが、現在は東面南側に玄関を設けて入口としている。かつては真岡通(現サハリンスカヤ通)に面していた北面は、現在敷地北側が集合住宅(kvartira)で囲まれているために、その正面性は著しく薄れている。北面中央に配された旧玄関は、ネオゴシック風の外観要素を構成するうえで重要な要素であり、幸い現状でもほとんど改変が加えられていないものの、扉は封鎖され、現在は使用されていない。
 壁面は四周ともモルタルで厚く塗り固められ、薄桃色の彩色が施されており、竣工当初の印象を見出すのは難しい。特に2階外壁の各所に施されていたモールディングはほとんどすべて失われている。1階外壁のモールディングは残されているものの、竣工当初のものとは異なり、若干省略があるようだ。

 正面となる北面には緩勾配平入の寄棟屋根に大小2つのペディメントを開けた非対称な屋根と、正面の小さな玄関屋根を中心にファサードが構成されている。竣工当初の外観写真と比較すると、北面東翼部には窓額縁を除いて大きな改変はないが、中央部2階にあったバルコニーが改変され、嵌殺の格子窓になっている。

 また、西翼部1階にあったバルコニーが塗り潰されているおり、これが北面外観の印象を大きく変えている。2階のバルコニーは残されているものの、目視できるほど大きく撓んでおり、構造耐力の低下が懸念される。

 西面北側には1、2階にベイウインドウが張り出しており、北面の非相称ペディメントとともに建物の外観を特徴づける重要な要素となっている。外壁モルタル厚塗のため、竣工当初の優美な外観は若干損なわれているものの、それ以外の改変は認められない。
外観はバルコニーや窓などに大きな改変が見られるものの、現状玄関部を除いて増築個所はなく、当時の建築規模をよく保存している。外壁や窓額縁には大きな改変があり、竣工時の印象をうかがうことは難しいが、屋根は細部意匠ともよく旧状をとどめていることが注目される。
 次に内部を見ていくと、最も改編されているのが北面中央の旧玄関付近である。旧玄関は閉鎖されて物置となっている(写真15-2-17)。また、おそらく防寒上の問題から、旧玄関ホールを横断するように、仕切壁が設けられている。また、旧玄関ホールには暖炉が設けられているが現在は各所にスチーム暖房器が設置されており、暖炉は使われていない。
 1階の主屋部分の各室には現在は未使用(文書庫)となっている部屋が多い。また、内壁をくりぬいて棚を作っている個所が多く見られた。利用されているのは裁判官(判事)室と副所長室などである。
 守備隊司令官邸時代には応接間であったと見られるベイウインドウ一室も、現在は未使用で物置である。北面西側に大きく開いていたバルコニー部分も、厚く壁に塗り込められており、内部は、ここも物置となっている。法廷の北側の小室は、新設の玄関の正面にあたるため、守衛の控え室となっている。1階部分南側には独房と法廷が設けられている。独房は写真のように人一人がやっと入れる程度の大変小さなもので、2室設けられている。上の写真は、現在の法廷である。調査時にも裁判があり、写真の人物は開廷を待つ傍聴人であった。
 2階の各室は「秘書室」として利用されているが、写真はベイウインドウのある西面の応接室の様子である。
 2階には、北面西側と西面中央の2ヵ所にバルコニーが設けられており、両者ともに改編されていないが、西面のバルコニーは入口が閉鎖されており入ることはできなかった。北面のバルコニーも現存しているが、肉眼ではっきりと確認できるほど床面のひずみが大きく、早急な補修が必要であると思われる。


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