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房総石造文化財研究会
No 11号
昭和57.5.29
 

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 <目次>  
1。第六回研究会 6月20日 関宿・野田方面 奮ってご参加ください
2。千葉県石造文化財報告書頒布について
3。“共同研究レポート”船橋市域の風邪・咳の神様  綿貫啓一
4。レポートお寄せ下さい 
5。塩崎望巳氏より会資金に寄附
住所変更
7。事務局から
復刻注:文章を、会員苔華氏が入稿して下さいました。ありがとうございます。カラーカットは、IBMホームページビルダーから適当に補いました。
縦書きを横書きにしておりますので、漢数字の一部を算用数字に変えます。 また、新会員の住所は省略し、○+1.2.3は、(1)、(2)に変えました。

第六回研究会 6月20日 関宿・野田方面 奮ってご参加ください
  会報十号で発表しましたが、次回研究会は6月20日(日)県北の関宿町・野田市を一日がかりで見学します。
 すでに一色、戸向両氏によって予定コースをされ、見学先への挨拶まで済まされたとのことです。また、見学する石造物の資料も写真入りでわざわざ準備されています。
 今回、会報と同封で見学予定の地図を全員にお送りします。今回参加できない方にも参考になろうかと思います。
 関宿町は利根川をはさんで、他県と広く接触していて、見るべき資料が沢山あります。北端の元町薬師堂の山王二十一仏板碑は、山王板碑としては県下で最も古いものですし、その近くにある寛文三年の庚申塔も青面金剛が出現する県下最初の庚申塔です。 当日、野田市の全コースを廻れるかどうか解りませんが、野田市はまた県下で最も石造物の多いところ。時候も良し、仲々行く機会の少ない場所です。どうか奮って御参加くださるよう、ご案内します。
 記 
集合場所・時間鈴木貫太郎記念館(地図参照)
 会費 昼食代五百円 
資料の準備と自動車の手配がありますので、参加希望者は必ず電話(0472-44-7901)か、ハガキで事務局まで御一報下さい。6月15日頃までに御願いします。 
千葉県石造文化財報告書頒布について 
 かねてより御連絡の通り、報告書は事務局に在庫があります。何かの機会が有りましたら御利用ください。
一部千円で売上げはそのまま、この研究会の資金になります。
先日、西ドイツ・ボン大学日本研究室より寄贈の申し込みがありましたので、早速送っておきました。
石仏のことを知りたい方にとっては、良い参考書になると思いますので、PRしていただけると幸甚です。どうかよろしく御願いします。
“共同研究レポート”
船橋市域の風邪・咳の神様
  綿貫啓一

--1--
 最も一般的な病気とも云える風邪・咳は医学の進歩した現代では全然恐ろしい病気ではなくなっている。
 しかし、かっては肺炎を併発すると、往々にして命を失うこわい病気であったし、また主に小児のかかる百日咳は重病の一つであった。
 そのため、戦前までは風邪・咳の治癒を神仏に祈願する風習が盛んで、船橋市域でも11箇所にのぼる風邪・咳の神様を確認した。

--2--
以下にそれぞれの内容を略述する。

(1) 八木が谷聖人塚
 新住居表示の咲が丘二丁目に径七米、高二米ほどの塚があり、塚上に駒型の小碑が存在する。
 正面に □咳カ 大明神、右側面に嘉永四亥年、左側面に七月吉日の銘がある。
 伝承は  大昔、この地に緋の衣をまとった高貴そうな旅の僧が訪れ、山林に入って修行中に病を得て、咳で苦しみながら亡くなった。村人は塚を築き手厚く葬った。
 風邪の重い時はこの塚(地元では痰咳 たんかい 大明神という)に祈願し、治ると竹筒にお茶を入れ、塚の上の木の枝にかけて御礼参りをした。

(2) 小野田
 村人の墓地から少し離れた場所にある無縁の墓石(角柱)で、正面に髭題目の下に宗久信士、右下に文政九戌年、左下に四月廿九日、左側面に願主速成並に邑中の銘。
 詳しい伝承は失われているが、かっては風邪の神だと言ったと伝える。
 現在は盆の墓参りの時に、ここにも供物をあげる風習のみが残っている。

(3) 金堀
 民家裏にある小碑(丸頭型角柱) 古い道筋であったと言い、この風邪の神は行き倒れの墓だと伝える。
 碑の銘は正面が無縁法界、右側面が明治四十二年四月建之。左側面が當区会田ナカ建之。
 風邪の時にお参りし、治るとお茶か盃一杯の酒をあげる。現在も稀にお参りする人がある。

(4) 鈴身 
かっての神保新田から行々林村への道の傍にマツクリ場と言うしげみがあり、中に土饅頭があって風邪の神であったと言う。現在は整地のため跡形もなくなっている。

(5) 坪井
 水田脇にカザ神の石があったが、近年持ち去られてしまった。

(6) 上飯山満(かみはさま)
 現在、飯山満町三丁目光明寺墓地所在の市指定文化財の康永四年の大板碑。以前は少し離れた観音堂の墓地にあり、シャビキの神様あるいはジャビン石と呼ばれた。
 風邪のひどい時は、この石塔を撫でて祈願し、治ると竹筒に入れたお茶と麦こがし等を供えてお礼参りをした。

(7) 金杉
 地籍では馬込町に入る台地端の道沿いの繁みの中にある石祠。正面に□母神、右側面に明□冶七甲戌年。左側面に三月吉日の銘。シャブキ神様ともババ神様とも呼んだ。 石祠周辺にはお礼参りにあげた缶ジュースが散乱し、中に竹筒も見える。

(8) 山野
 現西船一丁目京成線踏切近く。元は畑中にあった戊辰戦争時の脱走兵の墓だという。また以前は石があったが、いつの間にか持ち去られてしまったと言う。

(9) 海神
 本町七丁目所在。咳の婆様の名で知られる。祠中に石と石塔がある。
石はただの石塊。石塔(丸頭角柱)は正面に妙法轉述妙覚霊、右側面に明治四十二年三月廿七日の銘がある。
 おぼろげな伝承を整理してみると 昔、諸国を旅してまわる半僧半遊芸人の老女がこの地で咳でくるしみながら亡くなった。
 その老女は自分が咳で苦しんだので、以後自分にお参りすれば咳の苦しみから救うと言い残した。 かってはやはりお礼参りにお茶をあげたらしい。

(10)  印内
 畑中に小塚があり碑がある。(丸頭型角柱)正面に三界万霊、左下に忠左衛門の銘。由来は不詳であるが、古くから風邪の神として拝がまれ、治るとお茶を供え、中にはハタを上げる者もあった。現在も碑の前に湯呑茶碗が散乱している。

(11)  寺内
 西船七丁目常楽寺所在の廻国塔で、民家の庭から近年移した。笠付角柱型の塔で、中央に奉納大乗妙典六十六部悉地成就攸。
 右に干享保七壬寅歳。願主寺内村。左に初冬吉祥穀月一常壹道の銘。
 風邪や熱病の時にお参りをし、直ると線香三本とお茶を供えてお礼参りをした。
 以上は恣意的な調査で得られたものであるので、今後各村毎に詳しい聞き取りをすれば数を増すと思われる。

--3--
 咳の神様に関しては柳田国男に「咳のおば様」(「日本の伝説」所収)他の論考があり、千葉県の例も紹介されている。子供を守るウバ神が咳のおば様の原型だという視点での考証で教えられる部分が多い。
 本稿の例では(7)と(10)がそれに該当するであろう。
 (7)の□母神は信仰内容から乳母神であったと思われるし、(10)の咳の婆様は市内では最もウバ神本来の伝承を残していると云えよう。
 両者とも銘によれば明治年間の創始のように取れるが、これはたまたま今に残る石がその時作られたと言うだけで、信仰は古くからあったのだとも考えられる。
 特に(10)の石塊は、これが元々の姥神の石であったかも知れないがその点に関する伝承は全く残っていない。
 (3)の無縁塔も古くからの信仰を本に明治末期に造塔した可能性が強い。

--4--
 風邪・咳の神様として拝まれる対象は多種多様であり、なぜ神様とされるかの理由の解明がむつかしい。
 現在では伝承がごく断片的にしか残っていないことが、一層解明を困難にしている。
 しかし、いくつかの例で知られるのは、行き倒れ等の無縁墓が風邪・咳の神となる傾向があると言うことである。
 今後、多数の例が紹介されれば、その解明もある程度できるのではないだろうか。
レポートお寄せ下さい
 本年度の共通研究テーマ「病気の予防・治癒に関する石仏」どんどんレポートをお寄せください。本号は綿貫さんの報告を掲載しましたが、断片的なものでも結構です。
 身近なものからも御紹介ください。風邪・咳の神の事例も是非知りたいとおもいます。ウバ神(姥神、乳母神)の例もありましたら御一報下さい。
 原稿の四百字詰め四枚までに御願いします。(事務局) 
“塩崎望巳氏より会資金に寄附”  
先号で報告しましたが、故塩崎弁仁氏のご長男望巳氏より、会の費用の一部にと金五千円を送って来られました。
いずれ御父君の志を継いで石仏の研究をしてみたいとの言葉も添えてありました。
住所変更―新住所―
 小倉 博氏 〒286 成田市新町
 浅野達也氏 〒292-03 君津市箕輪 
事務局から
○…本当にさわやかな青葉に包まれて、古い寺院で石仏と対峙していると心も洗われるような気がして人知れぬ幸せを噛みしめることもあります。
事務局としての当面の問題は、会誌「房総の石仏」創刊号を発刊させることと、関宿町の研究会の実行ですが、研究会の方は一色、戸向両氏にお任せした形になりました。

○…会誌の方は、綿貫氏にすっかりオンブした形で、着々と進行中です。かなり充実した内容になったのではないかとおもいます。
6月20日の研究会当日に配布できればと念願していますが、校正などのこともあり、ハッキリお約束はできませんが、半ば期待しても良さそうです。

○…関宿研究会の再度の案内もあって六月発行予定を少し繰り上げて、会報11号をお届けします。

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