講演資料 その2   講演資料トップへ  HPトップへ
 その1 の目次
   1.はじめに
   2.造立分布
   3.東総地方と西上総地方の馬乗り馬頭観音との比較
   
4.馬乗り馬頭観音の起源

 その2
   5.代表的な馬乗り馬頭観音
    
1)最古の馬乗り馬頭観音
     2)最大の馬乗り馬頭観音
     3)彫りの優れた馬乗り馬頭観音
       市原市椎津新田 路傍、 袖ヶ浦市代宿 路傍
     4)動きのある馬乗り馬頭観音
     5)珍しい丸彫りの馬乗り馬頭観音
   参考文献
 5.代表的な馬乗り馬頭観音

1)最古の馬乗り馬頭観音

市原市東国吉 路傍
木更津市大寺 椿橋袂
市原市椎津新田 路傍
 写真提供 西岡宣夫氏
袖ヶ浦市代宿 路傍
君津市西原 西賀和橋際 
館山市薗 医王寺
 市原市東国吉 路傍
 元禄十七年甲申年四月二十日(1704)

 この馬頭観音は、庚申塔に於いて青面金剛が邪鬼を踏まえているのと同じ形をしており、邪鬼の代わりに走っている馬の上に立っている。(とても疾走しているとは言えない情けない形の馬だが)。
この像は塔に馬頭観音菩薩と彫ってなければ、顔の表情や持物(宝剣、三叉鉾、独鈷鈴、輪宝)から見て青面金剛と言っても決して可笑しくない形態をしている。
これが庚申塔をモデルにして造られたものであることは、疑いないところだろう。
この形式の馬乗り馬頭観音は、元禄17年の造立以後には全く確認されておらず、これ一基だけである。従ってこれを馬乗り馬頭観音の源とするのは多少無理のようにも思われる。


 2)最大の馬乗り馬頭観音
木更津市大寺 椿橋袂
寛政八丙辰三月吉日(1796)

石の大きさでは馬乗り馬頭観音中最大の塔である。高さ108pで重量約550Kgの大きな石に彫り込まれている。台座もこれに負けない堂々とした石である。
小櫃川に架かる椿橋の直ぐ傍らに建立されており、この川を利用して船で運ばれて来たものと思われる。
石工新平の名が刻まれているが、何処の石工か詳らかではない。

 3)彫りの優れた馬乗り馬頭観音
 
 市原市椎津新田 路傍

 安永五申天十月吉日(1776)

馬乗り馬頭観音としては、東総地方も含めて古いものヽ一つに入るが、全く風化されておらず彫りの良さでは一級品である。きめ細かい細工は、石工の腕の確かさが窺知れる。
道標を兼ねており、「江戸みち、たかくら道」の地名が見られ、江戸から木更津の高倉観音に詣でる巡礼道の道筋に当たり、ここから袖ヶ浦市代宿の馬乗り馬頭観音へと通じている。

 袖ヶ浦市代宿 路傍
文化五戊辰歳閏六月十八日(1808)

袖ヶ浦市は近年工業地帯化され、昔の面影が失われつヽあるが、その中にあってこの塔が建立されている場所ほ、未だ鄙びた昔の風情が残る地区にある。
「たかくら道、ちばでら道」の道標を兼ねており、板東三十三所観音の巡礼の道筋に建てられていたことを知る。
塔高が1m弱あり台座も大きなもので、彫りも良く石質も良好な為に殆ど建立当時の儘の姿を留めている。三面六臂の優しい顔をしており、天衣が朱色に染められ今もその色が残る。
持物の三叉鉾は幡付きであり、馬の前に力士が締める化粧回しのような飾り(厚総)を付けている。








4)動きのある馬乗り馬頭観音     

君津市西原 西賀和橋際 
文化元甲子三月吉日(1804)

小櫃川に架かる西賀和橋の付近にあり、田園風景の静かな佇まいの場所に立っている。
馬はやヽ首を後ろに向け尾を靡かせて、正に天馬が天駆ける様で、実に躍動感あふれる構図になっている。
普通馬頭観音の馬は、比較的小さく彫られており貧弱な感じがするものが多いが、この馬はバランスが良く実にリアルな彫りである。
馬の下に彫られている岩座のようなものは、湧き出る雲をイメージしたものであろうか。馬に乗っている馬頭観音も右下の地上を見下ろすように顔をやヽひねる形をしており、大変面白い造形である。
三面六臂の上総地方の特徴を備えた像で、大きな台座の上に乗り、石質も良い。

5)珍しい丸彫りの馬乗り馬頭観音

館山市薗 医王寺
年代不詳

丸彫りの一面八臂の馬頭観音が、天を仰いでいなヽき膝を折る跪座型の馬に、横座りに乗っている。一面だが化仏がニケ付いており、菩薩のような顔をしているが或いはこれを三面と考えて造られたものと思われる。
観音像は輪宝光の頭光が付いており、やさしい菩薩相をしていて腕もふくよかに良く彫られているが、左手が折れているのが残念である。
右足の裏を見せて、花嫁が馬に揺られて行くような形で横乗りをしている。馬は生き生きとリアルに彫出されており形が実に良い。
安房地方にはこれ1基しか馬乗り馬頭観音は確認されていないが、上総地方の特徴を見せている。
 参考文献
 1。「東総の馬乗馬頑観音」服部重蔵  『日本の石仏』第14号(昭和55年)
 2。『特色ある上総の石仏』 千葉県立上総博物館友の会石造物サークル(昭和60年頃)
 3。『東総の石仏』服部重蔵 言叢社(昭和61年)
 4。『石造馬乗り馬頭観音』 馬事文化財団馬の博物館 撮影栗田直次郎(平成7年)
 5。『市原の馬頭観音』市原市石造物同好会(平成7年)
 6。「上総地方の馬乗り馬頭観音」立原啓三・町田茂『日本の石仏』第76号(平成7年)
  写真提供 町田 茂氏。

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