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Dear Mr. Ronald Koeman
アヤックスの練習風景を書いた【第15段】からちょうど1年後に・・・また「さようなら」を言わなければならない人が生まれました。それがあなたである事は、いずれ「さよなら」を言うべき人物と覚悟しながらも突然すぎた帰来もあります。しかし解任ではなく「辞任」という形でアヤックスというクラブの監督の座を退いたあなたの姿に「ご苦労さま」というねぎらいの言葉をかけてもいいでしょうか?おそらくここからが・・・あなたの華やかな監督人生がスタートするものと思われます。
あなたのアヤックス監督としてのキャリアのピークは、結果的に02-03シーズンCLのクォーターファイナルのACミラン戦となりましたね。特にこのシーズンの2次GLではヴァレンシア、アーセナル、ASローマという・・・プレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ、セリエAという欧州3大リーグの並み居る強豪を押しのけての決勝トーナメント進出。このシーズンに優勝したACミランとも残り5分・・・敵地サン・シーロで王者をあと一歩の所まで追い詰めてくれました。このシーズンは久々となる欧州の大舞台でのクラブの活躍にファンも一喜一憂。平均年齢22歳というCL史上でも際立って若かったこのシーズンのアヤックス。このチームとともにベスト8に散った若い青年監督のあなたの後姿は実に清々しいものでありました。
しかし、このシーズンのアヤックスの活躍はあなたの手腕だけに拠るものではなく、むしろあなたの前任者である現AZ監督のコ・アドーリアンセさんに拠るものが大きかった・・・あなたもそう思いませんか?あなたが率いたチームのベースラインはコ・アドーリアンセ監督が育てた選手が大半を締めていました。そしてそのチームがどのように形作られたかといえば・・・
オランダリーグのクラブ・ヴィレムUで最高2位まで躍進させたコ・アドーリアンセ監督が、かつて育成責任者として従事していたアヤックスの監督に就任した際にクラブのファンに向けた言葉がありました。
「1年間待ってくれ。そうすれば欧州を戦えるチームにしてみせるから」
就任する前のシーズンではクラブ史上最悪だったリーグ6位(そして翌シーズンも5位)という体たらくな成績。現デンマーク監督のモアテン・オルセン監督が辞任して以降は低迷の一途を辿ったの凋落。アヤックスの再建に向け”白羽の矢”が立ったのはあなたではなくコ・アドーリアンセ監督でした。彼は上述の「公約」を守りに就任後1シーズン目でリーグ3位でフィニッシュ。「待ってくれ」といった”捨て”のシーズンにCL予備予選出場権獲得という「オマケ付き」で終わる事が出来ましたた。このシーズンには後に前述02-03シーズンのヤング・アヤックス躍進の主力となるルーマニア代表DFキヴ、スウェーデン代表FWズラタン、エジプト代表FWミド、オランダ代表MFファン・デル・ファールト、ファン・デル・メイデらの台頭が見られました。きらめく若手タレントの続出に確かに次のシーズンへの躍進を予感させるものがありました。
しかしコ・アドーリアンセ監督はある試合でチームの”上昇カーブ”をねじ曲げられました。2001年8月・・・オランダ代表がアイルランド代表に敗れ2002年W杯出場を絶望的とした「雨のダブリン」の1ヶ月前。01-02シーズンのCL予備予選3回戦で勝てばCL本大会に進めるという段階でのスコットランドリーグ王者・セルティックとの試合でした。2001年8月8日、アレナでのホームゲームながら1-3と木端微塵に敗れて・・・見事なまでにアヤックスは”鼻っ柱”をへし折られました。しかし実はこの試合こそがアヤックスのクラブとしての一つのターニングポイントだったと常々思うのです。欧州レベルのチームとの対決で力負けしたこの試合・・・ここで若さと勢い任せだった当時のアヤックスに「攻撃性」が加味されたと感じました。
リターンマッチとなったセルティック・パークでのアウェイ戦、アヤックスは1-0と本拠地で絶対的な強さを誇るセルティックを下しました。この試合でアウェイながらアヤックスは高いDFラインで高い位置からボールを奪う後のアヤックス・スタイルを形作りました。惜しくもトータルスコアでこのシーズンのCL本大会出場は逃すものの・・・繰り返しますがこの試合が後のアヤックスの躍進を生んだと信じています。よって決してあなたが監督に就任した事がきっかけで劇的なチームが変化したのではない・・・あなたの手腕以上に前任者の功績もあった、今でもそう思って疑いません。
あなたが一番光っている姿に見えたのは、スーツ姿でどっしりと座る公式戦ではなく、むしろ練習場でのジャージ姿だったように思い出します。現役時代よりもやや肉付きの良くなった愛くるしい姿。若い選手にまじって一緒に練習する姿。ミニゲームに参加して教え子のGKにあの現役時代の”キャノン砲”を至近距離でお見舞いする姿・・・さらに練習が終わってファンサービスに応じる姿。練習場で見たあなたの姿はあなたの人格そのものがにじみ出ていたように思える名シーンの数々でした。ゲーム中に采配をふるうあなたの姿よりも・・・どうしてもあなたがピッチ上で遊ぶように「プレイ」する姿の方が今後も頭に残ってしまいそうです。例えあなたが欧州の名だたるビッグクラブの監督の座におさまろうとも・・・。
あなたのアヤックスを率いた最後の采配となった試合は04-05シーズン・UEFAカップベスト32のオゼール戦になりましたね。チームスピリットやユース育成面でアヤックスと非常に似通ったこのフランスのクラブに敗戦を喫した事が・・・あなたがアヤックス監督を辞任する引き金になったのは何か因縁めいたものを感じずにはいられないのです。この試合での両監督の采配は特に象徴的で・・・もっともクラブ監督歴が40年を超えるオゼール一筋”オゼールの生きる歴史”老将ギ・ルー監督を向こうに回せば欧州のどの監督もヒヨっ子に映って仕方がないものですが、ゲーム内容においてもあなたはギ・ルー監督に対して完全に後手に回ってしまいました。アウェイゴールという「縛り」を持ちながらなぜオゼールに大逆転を喫してしまったのか!?・・・というよりもこの試合は、オゼールのギ・ルー監督がアウェイゴールという痛恨のビハインドをも覆して勝利を強引なまでにたぐり寄せた・・・彼の長年に渡る監督生活の「集大成」と言う表現の方が正しいでしょう。
2点相当のアドヴァンテージを持ちながら後半の45分間で見事なまでにひっくり返されたこの試合こそ、おそらく今後のアヤックスにとっての第二のターニングポイントとなる試合なのかもしれません。オゼールもまた前述セルティック同様、アヤックスがアヤックスたる「攻撃とは何たるか!?」を外部より教えてくれたクラブだったのではないでしょうか?今は負けた直後なので実感は少ないですが、おそらく時が経てば経つほどこの試合がいかに重要であったかが身に沁みてくるものと思われます。そしてそれを一番身に沁みて実感するのは・・・たとえ率いるクラブが変わろうともあなたなのです。采配を振るう身からすれば「この試合で自らのサッカー観が変わった」と言っても過言にはならないはずです。アヤックスの監督生活での最後の最後に、監督として非常に素晴らしい試合を送る事が出来たのではないでしょうか?
この試合はどんな形でになろうとも、あなたのこれからの輝かしい監督人生において必ずや財産になるはずです。そしてあなたが監督として富と名声を得る頃には・・・かつてあなたが率いたクラブのファンであった我々もあなたに素直に「ありがとう」を言える時が来るでしょう。あなたがアヤックスに残してくれたものは・・・今では見つけづらいかもしれません。それは時が経つにつれて徐々に浮き出てくるものでしょう。だからあなたにいまは「ありがとう」とは言えないのです。ただただ「ご苦労さま」の言葉を送らせて頂きます。
Best Regards
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