|
オールイングランド・ローン・テニス&クロッケー・クラブというテニスコートは、1年間かけて芝を長さ8ミリにきれいに刈り込みます。そう、わずか2週間の大会開催のために・・・。ご存知、今年で119回目を迎えるテニス四大大会の最高峰「ウィンブルドン」おなじみの一節(この事は浦沢先生作「HAPPY」の漫画を読んで初めて知ったんですけど)でございます。フットボールでも”聖地”ウェンブリーのような代表戦でしか使われないスタジアムも世界各国にありますが、ウィンブルドンのように1年間かけて芝をキープするスタジアムはおそらくないでしょう。たとえあってもそんなスタジアムを使ったらハーフタイムに10分間どころじゃなく半年くらいかかっちゃいそうな気が(笑)
ホスト国オランダが敗退しても、もちろん大会はクライマックスに向けて突き進むものなのですが・・・ワールドユース・セミファイナル「ナイジェリア-モロッコ」のアフリカ決戦は、モロッコ代表も愛称が”ライオン”のために前の段の「ナイジェリア-オランダ」に引き続いて2戦連続で「イーグル&ライオン」の対決となりました。オランダとの試合では勝ちはしたものの精彩を欠いていたナイジェリアでありましたが、この試合はナイジェリアが「アフリカ王者」の貫禄を見せ、アフリカ4位モロッコを完全に制圧しました。ホスト国オランダがクォーターファイナルで姿を消した後、4強の中では圧倒的にサポーター数が多いモロッコが今大会の「第2の主役」に躍り出るのかなと思いましたが、涼しいナイトゲームで本来のリズムを取り戻し息を吹き返したナイジェリアがタイウォ、アデフェミ、オグプケら3発のシュートで初の4強進出に沸くモロッコを沈めました。在モロッコ人のモロッコサポーターが威勢が良かったのも試合開始前のセレモニーと、前半にDFタイウォが放ったナイジェリア先制のミドルシュートが決まった後に・・・ゴール裏の観客席からナイジェリアGKヴァンゼキンの背後目掛けてペットボトルを投げつけた時くらいでした。シュート数でも圧倒、特にDFラインの選手がかえってFW顔負けのシュート力を持っているのがナイジェリアの異色な特徴でもあります。
残念ながらモロッコ国内は試合の放映権が取れずにユース代表のこの快進撃を自国内では見る事が出来なかったらしいですが、セミファイナルのこの試合、モロッコ国民は観戦する事が出来たのでしょうか?しかし見られたとしても、この試合は試合中にも試合後にもサポーターがピッチに乱入してマナーの悪いライオンの姿をさらしてしまいました。グループリーグのチリ戦や先日のクォーターファイナルのイタリア戦のような一体感に包まれたモロッコサポーターを見られずに、モロッコ国民がこの試合だけを初見で見て「同じ国民として恥ずかしい」と感じてしまわれたら残念です。今大会のモロッコの戦いぶりはこの日のナイジェリア戦だけではなく、他にも立派な戦いぶりで勝ちあがってきたことをモロッコのメディアには正しく伝えてもらいたいものです。
この日のモロッコは左サイドにベンダム、ベンズーケン、ベンズイエン、右サイドにエル・ザハル、エル・アフマディ、エル・アムラニと左に「ベン」、右に「エル」を冠する選手をきれいに並べたフォーメーションでした。確かにオランダリーグ・エールディヴィジにもAZのエル・ハタビら「エル」を冠するモロッコ人選手は多く、それで興味があってちょっと調べてみました。
・「Ben(ベン)」
モロッコの名前で「ベン」というのは「〜の子供」という意味らしく(アラビア語でいう「ブン」から派生?)、旧ユーゴ(スラブ系)の「〜ビッチ」(〜の息子)に相当するもののようです。
・「El(エル)」
また「エル」というのは、アラブ人の名前によく冠する「Al(アル)」が変化したもので・・・英語で最も多く使用される単語でもある定冠詞「the」に相当するもののようです。スペイン語の冠詞「el」も「the」と同じ部類に属し、オランダ語の「de」に辺るものであります。なのでモロッコ人選手で「エル」が付く選手は、オランダ人選手で「デ・ブール」(農家の)や「デ・ヨング」(若い方)の姓にある「デ」が付く選手と同じものだと思われます。これは調べる前からなんとなくオランダでいう「van」(ファン)の付く選手あたりだろうなぁと思っていたのでふむふむ・・・と納得しました。ちなみに「van」は英語でいう「of」(〜の)に相当する意味でありまして、これに関してはもはや周知の事と思います。
さて、ウクライナ、オランダ、そしてモロッコを撃破してワールドユースのファイナルへと進出したナイジェリア。ファイナルの相手は・・・こちらも南米王者コロンビア、欧州王者スペイン、前回王者ブラジルといずれもグループリーグ1位国をなぎ倒してきた南米アルゼンチンです。しかし今大会のナイジェリアを見ていると、俗に日本で言われる「マイアミの奇跡」・・・96年アトランタ五輪で金メダルを獲った、あのナイジェリア五輪代表を思い起こさずにはいられません。アヤックスでのラストイヤーを迎えた、心臓疾患前(インテル移籍前)の大黒柱・ヌワンコ・カヌー主将を擁した当時のナイジェリア五輪代表はこの大会のセミファイナルで・・・唯一獲れない金メダルを獲得しようと躍起になったブラジル五輪代表を4-3と大逆転で下しました。個人的には「マイアミの奇跡」よりもこのナイジェリアの豪快な「うっちゃり」、世界を驚愕させた「カヌーダンス」が強く印象に残っています。ブラジルを倒したその勢いをファイナルに持ち込んで、たしかクレスポやC.ロペスらがいたアルゼンチン五輪代表を3-2で破ってオリンピックで優勝!フットボール第3大陸・アフリカに初のビッグタイトルをもたらした当時のナイジェリア代表の勢いと、今大会のナイジェリア代表は粘り腰、芯の強さに相通じるものがあるように思えて・・・何かアトランタ五輪の再現をやってのけるような気がしてなりません。
ナイジェリアは1960年、”アフリカの年”に「ナイジェリア連邦共和国」として英連邦から独立しました。ナイジェリアの国名はラテン語で「黒」を表す「Niger」に由来しており、現在日本のテレビ界を席巻するナイジェリア人タレントのボビー・オロゴン氏も「ナイジェリアとアルジェリアは意味が全然ちげーんだよ!」と叫んでいるので周知のことだと思います。ちなみにジネディンヌ・ジダンの祖国としても有名な、モロッコ、チュニジアと並ぶ”陽の沈む国”マグレブ3国の1つ・アルジェリアはアラビア語のジャジーラ(島)の複数形「ジャザイール」(「ジャザイール」には「アルジェを都とする国」という意味合いもあり、これは日本が「東京を都とする国」と国名を称するようなもの?)に、前述のアラビア語定冠詞「アル」が付いた「アル・ジャザイール」が転訛した「Alger」に地名語尾「-ia」が付いた事に由来します。ジャジーラはカタールのCATV局で有名な「アル・ジャジーラ」でも有名ですね。
ナイジェリアのユニでも配色されている国旗の緑は森林の緑を意味しており、また白は統一と平和の象徴を示しています。国旗が緑・白・緑と三等分されているのはハウサ人、ヨルバ人、イボ人というのナイジェリアを形成する3つの主民族グループの共存を表しています。しかしその願いも空しく民族間の対立が続き軍事政権は99年まで長きに渡り続きました。今でも地域間の対立は根深いものがあります。また、ブラックアフリカで唯一OPECに加入する産油国でありながらも石油のみに依存する国家財政でこれを脱却するのはナイジェリア経済の課題・・・人口は日本(12.7億人)を越える13.7億人を抱えながらも経済面では慢性的に低迷が続き巨大な購買市場を生かせない状況が続いています。その中で民主化を推し進め、それを象徴するものがフットボール・・・フットボールはナイジェリアにとって世界に「民主化」をアピールするのに絶好の場でもあるのです。かといって代表チームの監督人事によく政治的な介入が入るのは行き過ぎな面もありますが・・・。
ファイナルの地、ユトレヒトも・・・ナイジェリアにとってアトランタの雰囲気を再現するのに十分な演出が出来る地だと思います。緑・白・緑のイーグルが再び世界の頂点に立つ日が来るか・・・そう思うとホスト国が消えてもファイナル「ナイジェリア-アルゼンチン」が楽しみ!ただCBのアパムがカード累積で出場できなくなってしまったのは痛手ですが・・・カメルーン、そしてセネガル、ガーナ、コートジボアールと周辺国に押され気味であった”ブラックアフリカの雄”復活に向けて・・・もう「アルゼンチン-ブラジル」を事実上の決勝戦と呼ばせるな〜!ナイジェリア頑張れ!!
テニスは全然知らなくてウィンブルドン優勝予想も見てないから選手すらよく分からないんですけど・・・男子はフェデラーの3連覇がどうやら「鉄板」のようですね。女子の方は混戦?誰が勝つでしょう・・・サブリナ・ニコリッチでしょうか?この月末はサブリナ・ニコリッチが芝の女王に輝くのと、ナイジェリアが再び世界を獲るのを夢見て・・・過ごす事とします(爆)
※今回の写真はちょうど3年前・・・2002年平塚にナイジェリアが来たときの写真ですが(あの緑の蛍光ユニは改めてNIKEのデザインセンスを疑いますが)、あのオコチャやイケディアの生ドリブルを・・・ベルマーレとの同じ試合を観戦していたナイジェリア代表のファン・しげもさんのHP「Nigerian Eagles.net」(http://www.nigerianeagles.net/)を改めてLinkさせて頂きました。”直接対決”で負けて本音は悔しいけど・・・これからもよろしくです。
|