
羽田由紀子さん講演資料
講演「パラグアイ国家経済開発調査(EDEP)とクラスター戦略」
2004年10月13日(水)に行われた定例会で羽田さんが講演をされました。その際に用いられた資料をここに記載いたします。
パラグアイの経済指数
o 2003年: GDP2.6%
o 1人当たりGDP: US$966ドル
o 人口: 520万人(人口増加率2.6%)
o 失業率: 10.8% (プラス、不完全失業率9%)
o 貧困率: 41% (21.8%)
o 競争力: 112ヶ国中95位
o 人間開発レポート: 117カ国中89位
o 汚職度: 131ヶ国中129位
パラグアイでは、35年続いたストロエスネル大統領の独裁政権が終了し、1989年、ロドリゲス大統領による初の民主主義政権が始まった。ストロエスネル政権のパラグアイの経済は、2大ダムの建設と、エステ市の貿易が中心で、近隣諸国では、保護貿易政策が取られる中、パラグアイは、輸入代替と進めるなどの政策も取らず、独立した経済体制を取っていた。それは、1980年代になっても続き、中南米諸国の多くが、構造改革に着手し、金融の自由化、外国投資に自由化など、政府系企業の民主化を図るネオ・リベラリズムの進む中すでに経済の自由化路線を取っていたことから、パラグアイの経済政策は、周辺国の動きに合わせる程度のものであった。1995年、パラグアイは、域内貿易の拡大と経済成長を目指し、発足した南米南共同市場MERCOSURに加盟したが、周辺国の輸出の圧力に押され、1990年代後半、経済は低迷、さらに悪化した。そのような状況下、パラグアイ政府、大統領府企画庁は、我が国に対し、MERCOSUR体制で生き抜くために必要な経済開発調査を依頼し、2000年10月、パラグアイ国経済開発調査EDEPが発表された。EDEPでは、規模の小さな市場の問題を克服するためには、輸出しか方法はなく、そのためには、パラグアイのアグロインダストリーを強化することが必要不可欠であると提言した。
パラグアイの経済指数
o 2003年: GDP2.6%
o 1人当たりGDP: US$966ドル
o 人口: 520万人(人口増加率2.6%)
o 失業率: 10.8% (プラス、不完全失業率9%)
o 貧困率: 41% (21.8%)
o 競争力: 112ヶ国中95位
o 人間開発レポート: 117カ国中89位
o 汚職度: 131ヶ国中129位
パラグアイのGDP成長率は、1970年代は9%の成長振りを見せていたが、1980年代は2.8%、1990年代の終わりには、マイナス成長となったが、2003年は2.6%を記録した。一人あたりのGDPも、メスコスール加盟以前には、US$1800ドル代となり、無償資金援助卒業国となったが、2002年には、US$1,000ドルを切り、再び、無償資金対象国となった。パラグアイの人口は520万人で、人口増加率は2.5%、2002年8月にパラグアイ統計局が実施した国勢調査によると、アスンシオンの人口は127万人で、人口の三分の一がアスンシオン周辺に住んでいる。失業率は10.8%、不完全失業率の9%をあわせると、労働人口の約20%が仕事に就いていない。国連の定める一日一ドルの貧困率は41%、ただし、国別の貧困ラインでは、21.8%になっている。2003年の WORLD ECONOMIC FORUMの報告書によると、世界112カ国中、パラグアイの競争力は、95番目であった。90位ニカラグア、91位カメルーン、93位エチオピア、94位ホンジュラス、95位パラグアイ、96位マダガスカル、97位ジンバブエ、98位バングラデッシュ、99位マリ、100位アンゴラ、111位チャド、112位ハイティである。その中で、ラテンアメリカの国は90位のニカラグアと94位のホンジュラスであるが、ニカラグアの1人当たりのGDPは、749ドル、ホンジュラスはUS$966とほとんど変わりない。一方、UNDPの示す人間開発レポートでは、パラグアイは、89位で、ニカラグアは118位、ホンデュラスも115位を占めている。Transparency Internationalの示す汚職度に関しては、パラグアイは、最後から3番目で、ラテンアメリカでは、競争力、汚職度とも最下位である。パラグアイの次に汚職度が深刻なラテンアメリカの国は、ボリビア、ホンジュラスの106位、100位のガテマラとベネズエラである。
EDEP開発戦略
o 一般競争力制約要因克服戦略
o セクター戦略
o クラスター戦略
EDEPでは、開発戦略をして、次の3分野における戦略を打ち出した。今から、それぞれの戦略について、簡単な説明を行ないたい。

一般競争制約要因
o 人材開発: (国立技術学校、国立農業学校、職業訓練学校の質の向上など)
o 制度金融: (融資の手続きの簡素化、農業保険の導入、与信リスク審査農業の強化、輸出金融制度の導入、資本市場の振興など)
o 輸出振興: (輸出業者の登録の簡素化、小額輸出の簡易輸出手続、IVAの還付手続きの簡素化など)
o 品質システムの確立: (認証機関の強化)
o 輸出手続の簡素化: (輸出窓口の簡素化など)
o 外国投資誘致: (行政・司法の投資環境の整備と透明性の確保、雇用保障、最低賃金、税制上の非合理の排除など)
(人材開発)
EDEPでは、政府の人材開発の認識の低さを課題としている。1992年の法律で、中央政府の予算の20%を教育予算にすると定めている。(17%程度)2003年の教育予算はGDPの3.6%に上昇したといえ、予算のほとんどは教師の給料である。となっている。1994年、政府は教育改革に着手したが、教師の質は一般に低く、1年間の授業時間は700時間、チリの1500時間に比べると半分である。非識字率は8.4%であるが、大人の三分の一は小学校を卒業していない。また、政府では、雇用機会の創出が課題となっているが、労働者や技術者のレベルも低い。国立の技術学校、農業学校、訓練機関は無料であるが、公立の学校で発生した利益は国庫へ変換するため、学校は、慢性的な財源に陥っている。また、学校のカリキュラムや訓練は更新されることが少なく、社会のニーズと教育・訓練が一致しない。<BR>
(輸出金融)
パラグアイでは、1990年初めに、金融の自由化措置が採択されたが、法律や規則が不十分で、監視体制も不適切であった中、資本基盤の脆弱な金融機関が参入したため、1995年には147社あった金融機関は、1999年には104社、2005年5月には、89社(銀行14社、融資外車15社、為替21社、保険39社)まで減少した。制度金融は、資金量の制約、高い金利、非効率的な貸付手続きが問題である。金融に関するもう一つの課題は、輸出金融の不在である。輸出を促進するための輸出金融の制度は、商工省内の工業開発基金が担当となっているが、現在は、改革中で機能していない。
(輸出振興)
パラグアイ政府は、輸出を促進するために、商工省に民間の輸出アドバイザーを置き、政府と民間が一体となった輸出ネットワークRED DE EXPORTACION の構想を発表したが、紙の上だけのものとなっている。1991年、PROPARAGUAYがパラグアイ輸出促進機関として発足したが、PROPARAGUAYはPROCHILEを模倣としているが、PROCHILEは政府の輸出振興計画に組み入れられており、民間部門との関係も良好である。しかし、PROPARAGUAYは予算的にも、人員的にも小規模である。
(品質の確立)
経済のグローバル化では、国際取引のルールとして使われている標準の整備が必要である。パラグアイの認証機関としては、畜産物ではSENACSA、食品では食品栄養院(INAN)、工業品では国立技術標準院にその責任があるが、これらの認証機関は、国際的な承認を受けていない。
(輸出手続の簡素化)(外国投資の誘致)
1980年代、パラグアイの外国直接投資は、ほとんど存在していなかったが、1998年には、US$342百万ドルに拡大した。(2002年には、US$22
百万に減少した。)主な投資国は米国、ブラジル、アルゼンチン、オランダなどで、主流は農業分野である。1991年、民営化に関する法律が採択されたが、ワスモシ政権下で、民営化となった企業は、国営航空会社(LAP)、鉄鋼会社(ACEPAR)、船会社、アルコールのAPALの4社だけである。2000年、マキ政権ではANTELCO(電話)の民営化が進められたが、政治的な理由で延期となった。ドゥアルテ政権では、石油会社と、セメント会社の民営化の可能性が発表されたが、動きはない。1997年、マキラ法が発布され、マキラ委員会によると、2004年前期までに、20のマキラ企業がパラグアイで運営している。
セクター戦略
o 工業: GDP14%、工業輸出部門の56%は食糧、木材14%、 繊維9%⇒資源加工型、12,000製造企業の内、7人以上の雇用⇒3,000企業、37%はアスンシオン(首都部に集中⇒61%)(課題: 投資不足、原材料の生産と供給、雇用と労働力など)
o 交通インフラ: 南米諸国で最も遅れている。質・量ともに不足
o 農業: GDP31%、輸出総額の85%(課題: 競争力の不足;生産性、流通のノウハウ、農協などの体制、持続的農業の必要性、多国間農業交渉の強化、農業加工品の多様化など)
(農業セクター)
2003年、農業セクターはGDPの31%(農業21%、牧畜8%、林業2%)を占め、農業部門の輸出総額はパラグアイの輸出総額の85%を占めている。パラグアイの農業人口は31万戸で、労働人口の36%が農業に従事している。農業セクターはパラグアイの基幹産業であるが、小農が農業の基本となっているために競争力が弱く、メルコスール加盟による本格的な市場の自由化の影響を大きく受けている。農業セクターの阻害原因は、1. 弱い競争力(メルコスールにおける競争優位があるのは大豆だけである。生産性の向上、規模の経済の確保が必要;中核農家育成の欠落、流通に関するノウハウと体制(農民組織、農協)2. 持続的農業の必要性(森林伐採によって農地を拡大してきた)、3.メルコスールとWTOの多国間農業交渉(市場の自由化におけるルール作りの強化;品質問題、検疫措置、4. 農業加工品の多様化の必要性などである。
(工業セクター)
パラグアイでは、1970年まで、積極的な工業化は進められなかったが、イタイプ・ヤシレタダムの建設を契機に、電気、金属加工、鉄鋼、セメントなどの国営企業が設立した。GDPを占める工業の割合は、1990年代は16%であったが、2003年には14%に減少した。メルコスールの他の国は25%前後。工業部門の産業グループでは、食料、飲料水、タバコ産業が50%を占めている。食料は、工業部門の38%、輸出部門の56%、輸出は、続いて、木材14%、繊維産業9%となっている。特徴は、資源加工型である。1997年の工業センサスでは、全国で12,000社の製造企業があり、そのうち、7人以上の従業員を雇用していたのは、3000社と述べている。企業の分布では、アスンシオンが37%、セントラル県が24%、首都部に61%が集中している。続いて、カアグアス、イタプア県となっている。工業部門の発展阻害原因、1.投資の不足、2.原材料としての一次産品の生産と供給、3.雇用と労働力の問題(パラグアイの制度賃金は隣国より高く、労働法も雇用条件が企業に厳しい、労働者の質も低い)
(交通インフラ)
パラグアイは南米諸国の中でインフラ整備が遅れている国の一つであり、道路は、質・量ともに足りない。60,900キロの道路のうち、国道は6,171キロである。湾岸・水路は、大豆の輸出量の増加によって、重要性が拡大しているが、パラグアイ川においては、水深の不足など、効率的な運行が阻害されている。1861年に開通した鉄道は、設備の老朽化で、貨物運行は停止した。課題は、公共投資の不足、道路管轄主体が公共事業省に集中していること、管理基準の不徹底、情報管理の遅れなどである。
クラスター戦略
o 配合飼料
o 綿花
o 木材
o 果実
o 野菜
o メタル金属
クラスターの定義(マイケル・ポーター):「クラスターとは互いに関係を持つ企業と組織が、ある特定の分野において、ある地域に集積すること。」
セクター戦略を踏まえ、EDEPでは、次の6品目に関して、生産の連鎖に沿って、原料の生産から最終製品までの生産システムの強化を行ない、競争力のある輸出加工品と、市場のニーズと結びついた差別化された輸出産品を生産するためのクラスター戦略を提案した。クラスターの定義は、幾つかあるが、基本となっている考え方は、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が述べている「クラスターとは互いに関係を持つ企業と組織が、ある特定の分野において、ある地域に集積すること」という言葉に代表される。CEPALでは、「同じ活動、もしくは、関係している活動をしている企業の地域的、セクター的集積、外部への経済的な蓄積と重要性を伴っており、生産者、納入者、技術者、あるセクターで特定に必要とされるサービスの積み重ねがあり、集団的効果を模索するための一体となった活動の可能性を持つもの」と述べている。また、クラスターは直接もしくは間接的に、生産の連鎖において、関係企業もしくは支援組織が参加する経済組織の集まりで、最終的な営利を目的とする。
配合飼料
クラスターは競争力の成果であり、3つの特徴を持つ。1.最終消費者の周囲に組織化した企業が存在し客の必要性に合わせる。2.クラスター関係企業の生産を拡大する効率的な市場と低価格の生産コスト。3.イノベーション。マイケル・ポーターは、競争力を次のようなダイアモンドの形で表しているEDEPでは、政府と民間から成り立つクラスター戦略を推進する組織の結成が不可欠であるとして、EDEP発表後、企画庁内に事務所を構えた競争力推進組織が発足した。理事会のメンバーは政府(企画庁、農牧省、商工省、PROPARAGUAY)と民間の輸出企業、業界団体、NGOの8社で成り立っており、輸出の促進を目的とする。2001年8月に発足し、最初の一年は、事務局の設置、組織としての必要なインフラの確保、ステータスの確立、輸出の促進に必要な連携を、政府や国際機関と進めてきた。2003年には、国連開発計画より、事務所のスペース、資金管理の技術支援を受けたほか、現在、欧州連合より、4百万ユーロの資金協力の一部、技術協力を得る計画が進んでいる。
ONPECの理事長は、配合飼料会社トロシューク社のアンドレス・トロシュークが務めており、彼のリーダーシップと人柄により、ONPECが続いてきたとも言える。ONPECの知名度は低いが、EDEPの提案で発足した輸出促進グループとして、今日まで続いてきたこと、政府や大学との連携ができつつあることは、賞賛すべきことだと思う。パラグアイでは、大豆、小麦、トウモロコシなどの穀物が豊富に生産されていることから、その副産物である配合飼料を畜産物に転換し、輸出に回すという考えが配合飼料クラスターです。イタプア県には、2000年に商工省の工業開発資金を使い78人の穀物生産者や養豚家によって設立されたUPISA、UNION DE PRODUCTORES DE ITAPUAがあり、配合飼料クラスターでは、UPISAを中心とする豚肉産業に関して、マイケルポーターの競争力のダイアモンドに従って、パラグアイの養豚産業を分析しました。
(生産要素)イタプア県とアルトパラナ県では、パラグアイの豚の三分の一が生産されている。豚肉の値段は、トウモロコシの値段の10倍とされている。クリスマスやセマナサンタには消費が増えることから、豚肉価格は上昇するが、すぐに、ブラジルより安価な価格の豚肉が流入する。パラグアイでは、養豚を専門とする技術者が限られている。パラグアイの養豚技術は、スペイン人の移住者やブラジル人が持ち込んだもので、ヨーロッパ式の近代的な技術も入ってはいるものの、模倣によるものであるため、生産に損傷がでている。豚肉の質も、(特に、日本の基準では)脂肪の割合も多く質の向上も必要である。
(国内需要)2002年の農牧統計によると、パラグアイの飼育豚の数は130万で、1991年の統計に比べ、35.2%増えていた。ただし、登録されていない豚や密輸による豚の流入もあるので、実際は、この数字を超える。また、農牧省によると、牛肉の価格の上昇により、近年、豚肉の消費も増加している。市場では、質より値段が重視されている。
(関係組織)豚肉生産の拡大に必要な畜産機材、家畜用医療品などの水平的な関連企業の発達は特に見られなかった。(戦略・ライバル)パラグアイには約20社の豚肉・豚肉加工企業があるが、調査をしたところ、10社は応答がなかった。応答のあった中から6社を選び、特徴を調べた。UPISA以外は、冷凍装置を持っておらず、市場は国内を対象としていた。その中で、最大は、OSCHIで、戦略では、販売の90%をアスンシオンを対象としており、豚肉を生産地で加工するのではなく、消費者がいるアスンシオンで加工し、すぐ、販売と結びつけること、と述べてた。一方、豚は、あれば、どこからでも購入すると述べていたが、GRANDEでは、パラグアイの養豚業者の生産する豚は質が悪いので、自分達は、ブラジル人技術者のいるサンタリタより購入していると述べていた。国際競争においては、ブラジルは、豚肉の輸出国であり、生産コストが世界一安いと言われている。
(政府)パラグアイ政府は、養豚は農村の食料増産と収入向上を目指すものであるとし、輸出品目としては、考えていない。(チャンス)豚肉の輸出の障害は、パラグアイが豚コレラ清浄国ではないことと、輸出に必要な衛生証明の発行が難しいことである。しかし、本年、8月、UPISAは、初めての輸出をウクライナとモルドバに50トンづつ達成した。(JICA)JICAでは、商工省エンカルナシオン地方事務所に豚肉輸出のSV、養豚農家の指導に日系ブラジル人を派遣したほか、企画調査員の活動として、養豚マニュアル、国家豚コレラ撲滅計画の検証を行なった。
綿花
綿花の生産量は、1990年には、最高の69万トンのピークに達し、輸出総額の34%を占める貴重な外貨獲得原であったが、近年、その生産量は低下し、2003年は17万トン、輸出総額を占める割合は、3.8%となった。綿花の生産は小農が中心で、生産コストが収入の20%で済むことなどからも、小農30万戸のうち、18万の農家が綿花を生産しているが、仲買、運搬、集荷を含めると、綿花関係者は、15万人を超える。(要素)生産が減少した理由は、国際価格の低下、連鎖による生産性の低下、病害中の発生、栽培技術の不足など。
(国内需要)綿花の90%は輸出。綿花の栽培の98%は、繰綿業者との契約によって生産され、ALGODON GUARANEEでは、栽培の前に農民に種を配り、その種代を綿花購入の際に差し引くという方法を取っている。パラグアイの綿花の価格は、綿花の色、長さ、強さともに良質とされる。集積された綿花は、繰綿業者によって、実綿、種、枝、ゴミなどに分けら分けられるが、輸出品の質を維持するためには、ポストハーベストも重要である。10%の綿は、家庭用・工業用の綿糸、種は油に加工され、粕は脱脂、飼料として使われる。(関係企業)民間の発行している企業リスト、PROPARAGUAYの輸出業者リストから、繰綿外車、紡績会社、テキスタイル会社を抽出し、合計18社に調査をかけたところ、8社より回答を得た。18社の中には、閉鎖した会社や一定の季節しか対応していない会社もあった。紡績からテキスタイル加工までを一貫して生産している会社は、ニエンブク県にあるピラール社一社であることが分かった。
(戦略・ライバル)1990年のJICAの調査では、パラグアイには約10社の紡績・テキスタイル会社が存在していたが、今はピラール社のみである。ピラール社は、1930年にイタリア人移住者によって設立され、1000人が雇用されている。外見は古いが、運営では投資法60/90を使い、ISO1400も取得している。その成功の理由は、投資(イノベーション)。(政府)政府では、生産拡大を目的に、BIDより融資を受けている。(チャンス)2000年以降、ピラール社周囲には、ピラール社の生地を使い、シーツ、テーブルセンターなどを生産する工場が生まれており、ミニクラスターが形成されている。また、近年、有機コットンの生産を始めた。US$5ドルのアジア製の綿ズボンとは、競争できない。生産性が問題。
(繊維産業)商工省では、雇用面で重要なアパレル産業の強化を模索している。パラグアイ縫製工業組合でインターネットを持っている企業37社に調査をかけたところ、11社より回答があった。原料は国内産と外国産の両方を使っており、綿は国内産ではピラール社、ジーンズ、スパンデックスは輸。パラグアイの縫製企業の60%はアスンシオンにある。商工省ではアオポイの輸出も促進したいと希望しているが、手工芸品は民芸品に分類される。
木材
木材はパラグアイの5大輸出産品の一つあるが、その経済貢献度は低下しており、総輸出量を占める割合は1995年の10%から2003年には5.9%に減少した。EDEPでは、木材生産地であるエンカルナシオン、エステ、コロネル・オヴィエドの中間地域の貧困農民を対象とした植林と製材業を促進する構想と、木材加工の質の強化を提案したが、CEDIALを使った調査では、パラグアイでは、森林や木の持ち主と製材業者は別であることなどから、EDEPの構想の実現化は難しいことが分かった。
パラグアイの木材分野の現状は、次のように分析できる。(生産要素)パラグアイの森林地域は東部で、1945年、東部は52%が森林に覆われていたが、1991年には21%にまで減少した。1960年代の農地開墾、道路の発達による入植者の増加、1980年代の人口増加などが理由として挙げられる。1995年の造林促進法(ley536)では、植林に必要な経費の75%を助成金として交付するとしているが、資金不足で有名無実化した。一方、木材資源に関しては、2014年には、木材の需要が供給量を上回り、木材の入手が困難になるとされる。一方、現在、登録されている製材所の数は384箇所であるが、実際には、600以上とされ、最高は、カアグアス県で、16箇所となっている。木材生産地の近くにある製材所では、第一次加工品として、小屋組をする際に使う(頬杖材)、りょう材(安定を取るために渡す水平の板)、床材、ベニアなどが生産されており、アスンシオン、コロネル・オヴィエドでは、合板、枠板、細板、扉の枠、家具などの第二次加工や最終仕上げが行なわれている。特徴は、天然木材が90%で、木材の乾燥も天然乾燥が主流で、人口乾燥装置を持っている製材所は、最終製品を輸出している一部の企業に限られる。
(需要)BCPの報告によると、2000年の木材の総生産は、6,937トンで、丸太が39%、マキ炭が55%、電柱・枕木が6%となっている。薪炭は、エネルギー源として、製造業を含めて需要は続くとされる。丸太生産の際に発生する枝や残りは大部分が償却されており、天然資源は限られているにも係わらず、残材の有効活用は行なわれていない。パラグアイで生産されている加工製品の84%は、輸出に向けられており、厚板、頬杖材、りょう材などが45%、モザイクパーケット(床材)22%、木炭10%、合板6%、ベニア板6%、木材製品5%、枕木3%である。輸出金額では、モザイクパーケットが一番きい。EDEPでは、木材製品の輸出では輸出量では製材品は70%を占めているが、輸出額では加工品が70%を占めていることから、付加価値をつけた家具の競争力の強化を提案しているが、現実では、家具は輸出量・金額において、ごく僅かである。木材製品の輸出先のトップは、輸出量ではブラジル、アルゼンチン、台湾、米国の順で、輸出金額では、アルゼンチン、米国、台湾、ブラジルとなっている。人口林材の輸出の割合は、輸出量の2%程度である。EDEPでは、10年で木材になり、付加価値を付けやすいパライソ・ヒガンテの植林を推進しているが、植林業者の間では、病気が懸念されている。
(関係企業)木材企業に関しては、CEDIALに調査を委託した。パラグアイには、700程度の家具工場があり、89%の向上は平均1−10人を雇用している。35社にインタビューを行なった結果、パラグアイの木材産業全体で、家具生産に携わっている人材の割合は44%であるが、家具職人の人件費は、木材産業のその他と比べて一番低かった。75%の工場で使用されている機材は10−15年で、実際の生産量は、生産可能量の50%程度であった。稼働率に関しては、40%の生産者が5−20%と答えている。その他の特徴では、主な機材は60%がノコギリを使っていると答えており、基本的に生産は手仕事によるものであり、工業というより、手工業のレベルに留まっている。もう一つの特徴としては、90%が受注生産タイプである。生産の問題としては、支援(資金及び技術)不足42%、人材不足16%、資材不足24%、機材の生産性が低い8%、その他、10%であった。しかし、生産設備の更新を考えているかという質問に対しては、54%は将来も変更の予定はないと答えている。以上をまとめると、パラグアイの家具工場は一般に小規模で、技術レベルは低く、未発達で、且つ、市場はある特定の地域に限られることが確認された。83%の生産者は国内市場を対象としており、90%の生産者は直接に消費者に販売しているが、販売は、インフォーマルで、一般に「運」次第と考えられている。64%の生産者は競争相手としてブラジル製の家具を挙げているが、人口板などを使っていることから、質が低いと述べている。競争に関しては、54%の生産者は、同じ製品内で競争があると答えており、80%の生産者が競争相手の方が、値段が良いと考えている。資材供給業者との取引年数は39%の生産者が5−10年と答えている。しかし、89%の生産者は購入に際して見積もりを取ることはなく、支払いは一括現金払いである。調査では、パラグアイの生産向上は保守的で、将来に対する視野がなく、外国へ輸出するという意思もほとんどないことが伺えた。調査の結果、パラグアイの家具産業の競争力は弱く、木材産業の関連企業が地理的に集積されている木材クラスターはパラグアイには存在しないことが確認されたが、調査を通じ、幾つかのミニクラスターが確認された。例えば、リーダー的人材が存在しているサンタ・イザベル社を中心として家具などである。(政府)政府では、木材クラスターの強化を課題の一つとしてあげている。
果実
(チャンス)市場あるが、資源の減少が大きな問題である。 EDEPの果実クラスターの提案では、パラグアイの温暖な気候を利用した果実生産の拡大と、イタプア県にあるFRUTICA社を中心としたオレンジジュース生産拡大の構想である。FRUTICA社はパラグアイで唯一、濃縮冷凍ジュースを生産している輸出企業である。(要因)クラスターを達成するには、果実の収量の拡大が必要であるが、パラグアイにおけるオレンジの生産量は減少気味である。ただし、植樹量は増えており、生産高も上昇している。現在、市場のオレンジは、77%が国内産、23%が輸入となっている。(需要)と(企業関係)調査の結果、パラグアイには14社のオレンジジュース会社があるが、その中で、パラグアイ産のオレンジを使用しているのは6社だけである。その中で、輸出をしているのは、FRUTICAだけであり、PRIFURUやPYNはプラスティックボトル入りで国内向けである。WATTSは、パパイアと箱はパラグアイ産を使用しているが、パイナップルはタイから冷凍濃縮を輸入している。(戦略)FRUTICA社は、KIMEXという独自の果実会社を持っており、近年、有機オレンジジュースの販売を開始。(政府)果実生産はAGRICULTURA FAMILIAR家族農業政策のコンポーネントの一つであるが、農牧省は慢性的な資金不足で、普及で必要なガソリン代や日当も出ない。(チャンス)JICAでは2001−2004年にかけて、イタプア県のオレンジとサンペドロ県のバナナとパイナップルの品質の向上と流通に関する支援を行なった。その結果、バナナとパイナップルは、外国の輸入品が並んでいるスーパーマーケットに販売できる品質となり、パイナップルはキロで1000−2000GS、バナナは500-1200GS高く販売でるようになった。た、オレンジは、今までは、FRUTICA社に販売し、1キロ140GSであったが、PULP社とは1キロ350GSで販売できるようになった。PULPはセントラル県にあるため、交通費はかかるが、収入は、FRUTICAでは70GS、PULPは250GSとなる。(ハンドリングチャージは同じ。)また、プロジェクトでは、端境期の収穫を目指し、違う種類の栽培も始めた。
野菜
EDEPが提案する野菜クラスターは、パラグアイの野菜生産農家5000戸の80%が生産しているトマトの加工である。(要因)(需要)野菜クラスターは生産者が小規模農民であることから、取りあげられたクラスターであるが、野菜生産はメルコスールの市場自由化により隣国の高品質、低価格の野菜の流入の影響を大きく受けている。EDEPの調査段階では、セントラル県にトマト加工工場が存在していたものの、現在は、閉鎖されている。EDEPでは、トマトは品質で糖度、酸度、色調が異なるのでリコピン含有量の多い品質を導入するなど、商品の差別化が提案されたが、パラグアイの市場では、商品の差別化は見られていない。(需要)国産のトマトの割合43%、輸入が50%を占めるということは、国内市場にまだ余裕があることを示している。小規模農家の課題は、技術的な問題より、融資のアクセス、生産者の組織化などである。(関連企業)(戦略)パラグアイの野菜加工輸出業者は4社(ALIMENTOS NATURALES YECOLOGICOS、CHOLOLO、IBEL PARAGUAY、MENDOSA NOELIS)で、すべてPALMITO。(政府)野菜生産も家族農業政策に入っているが、近年の農業発展は、国際機関の援助、さらに外国人農業移住者による貢献による。果実クラスターと野菜クラスターは原材料の生産者が小農であることから、貧困層の収入工場を目的として取り上げられた。両分野において、作物の付加価値化が提案されている。貧困層の収入向上と、競争力の強化・輸出の強化は、一つのコインの両面であり、矛盾するため、戦略としてまとめると、どうしても、そのような商品の差別化にたどり着く。競争力のある果実・野菜の加工・輸出を促進する上で、改善が同時に必要な分野としては、品質、梱包、輸出手続などが挙げられる。
メタル金属
メタル金属クラスターは、農牧加工品の輸出を促進する際の関連企業、サポート産業として提案された。(要因)パラグアイには350以上のメタル企業があるが、ほとんどが中小企業レベルで、家庭用品、機械一般、部品、タンク、倉庫などを製造している。メタル金属に関しては、新藤専門家がCHACOMAILの車椅子、佐藤専門家が車輪産業の調査を行なっているため、特別な調査は行なわなかったが、パラグアイの中で、PROPARAGUAYに登録してある金属企業は6社のみであった。その中で、代表的なのは、1998年に正式に民営化を果たしたACPARで、鉄の針がね、パイプ、金属板を作っており、ISO、INTN、ABNTの認証を取っている。CIEは、タンク、タービン、サイロなどの製造で、イタイプダムのタービン、ペトロパルのタンクなどを手がけており、同様にISO,UASME(American
Society of Metal Engineering)の資格を取っている。BOMPARはポンプの輸入、一部生産を行なっているがやはり、ISOを取得している。
以上、EDEPが提案したクラスター戦略の6クラスターの発展の可能性を検証した結果、地域的な産業の集積、水平・垂直の生産の連鎖の組み合わせによる産業の拡大は、パラグアイには、見られなかった。一方、繊維部門のピラール社、配当飼料のトロシューク社とUPISA社、木材のサンタイザベル社など、輸出企業を核としたミニクラスターの発展は幾つか存在していることが分かった。しかし、一般に、開発途上国では、企業は消費者の集まっている首都に集中しており、地方でクラスターが発展するには、時間がかかるように見受けられる。
競争力のダイアモンド(マイケル・ポーター)

パラグアイのクラスター
o 地域的な産業の集積、水平・垂直の生産の連鎖の組み合わせによる産業の拡大は、パラグアイには、見られない。
o 輸出企業を核としたミニクラスターの発展は幾つか存在している。
競争力強化に向けて
o 公共セクター:競争力を妨げる要因の排除
⇒一般競争力阻害要因
o 国際機関: 米州開発銀行、欧州連合、
国連開発計画、JICA
o JICA:クラスター部門(木材、果実・野菜)、競争力制約要因部門(輸出促進、品質の確立、投資促進、市場の透明性)
JICAでは、政府との持続的な協力が、財政的、人材的に難しいことから、競争力分野では、業界団体やNGOをパートナーとして、具体的な支援を行おうとしているが、輸出の出口を広げるには、政府の役割は重要で、今回の調査では、政府の役割の重要性を再確認した。一方、パラグアイの企業の中には、パラグアイの国境を超えたレベルで、MERCOSURとしての域内の利点や、国際基準を利用し、発展を進めている企業があることも分かった。EDEPでは、競争力と輸出の促進に関する課題が摘出されているが、課題は見方を変えると、民営化、農業セクターなど、まだ、投資や進出の余地があると解釈することもできる。EDEPの活用においては、競争力を優先分野としている米州開発銀行、欧州連合、国連開発計画などのプロジェクト策定ではEDEPが参考にされているほか、大学や学者、コンサルタントの間でもEDEPの知名度は高い。1990年後半、MERCOSUR加盟、ブラジルの貨幣の切り上げ、アルゼンチンの経済危機など周辺国の影響を大きく受け、パラグアイの経済の低迷が続いた。ECONOMISTでは、2004年の世界の経済成長率は5%と予想しており、ブラジルは3.5%、アルゼンチンは6.1%で、パラグアイもその影響を受けると述べられている。世界で3位にランクされている汚職に対しても、政府では、取締りを強化し、政府の予算確保も進んでいる。タイミング的にも、政府が民間の動きを支援する体制を構築することが緊急の課題である。EDEPの提言にある課題に対する協力で、現在実施中の案件と企画中の案件としては、クラスター部門では(木材、果実・野菜)、競争力阻害要因部門では、輸出の促進ではPROPARAGUAYの機構改革、パラグアイ品質生産性センター、品質の確立ではアルゼンチンパートナーシップ「家畜衛生」、「食品安全衛生・栄養ラボ強化計画」の国別研修、投資分野ではマキラ促進支援、市場の透明性では、消費者保護などがある。