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さて今日の航海はC重油600トン積んで岸壁に着桟中の鉱石船にバンカー(燃料として揚げ荷。)をする単純なもので
遅くとも午後の4時には母校の係船場に戻ってこれるという楽勝なはずでした。
ところが積み荷役中に電話が入り、本船の荷役予定が変わり出航時間が大分早くなったので港外バンカーに変更というではありませんか!!!
本船名は「アクア・ビュティ」というとっても優雅な船名ですが、我々にとっては最悪の船です。何故ってなんと総トン数が8万5千トンもあるのです。
それもほとんど揚げ荷役が終わって空船状態ときてその上バラストを全然張っていないという我々にとっては最悪のコンディションです。
皆さんこのクラスの船が空船でバラストを張っていないとどれ位の高さがあるか想像出来ますか?
低く見積もっても最低15m位はあります。そしてバンカーのコネクションは大体船体後部のブリッジのほぼ真横ぐらいにありますから
その付近では大分船体が湾曲しているので私の船を満船状態で近づけて行けばまず間違いなくその船体の湾曲部の下に入り込み、
船体の前部マストの辺りが本船の外板にあたり壊れてしまいます。
まずは「論より証拠。」どうぞ上の写真をご覧下さい。この大型船に着けてバンカー作業をするのですが
私の船を壊すことなく無事に着けるのは至難の業です。そこは経験の長い我々、そのノウハウを熟知しておりますから
時間は掛かりましたがどうにか無事に着けました。でもそれからが始まりです。ホースを繋いで揚げ荷作業をするには本船のデッキまで
上がって行かなければなりません。上って行く縄梯子の写真も入れておきますからご覧下さい。これを上って行くわけです。
上り切って上から撮った写真も入れておきます。正確には高さが17mありました。
この高さですと私の船のユニック(クレーン)のアームを一杯に伸ばしても、その高さすれすれですから簡単に
一気にホースを本船のデッキまで上げることは出来ません。少し揚げてはホースを固定して吊っている部分を下に移動して又揚げる、
その尺取虫みたいなユックリした作業を5回ほど繰り返してようやくコネクションに必要なだけのホースを本船のデッキ上まで揚げることが出来ました。
想像して見て下さい。17m下を見ながら上と下、お互いに手の合図を確認しながら作業をするわけですからそうスムーズには行きません。
いつも一緒に仕事をしている仲間ですから阿吽の呼吸で作業は進みますが・・・・・、
上から下をみても又下から上を見上げてもそう気持ちのいいものではありません。高所恐怖症の方々にはまず無理でしょうね。
とにかく無事にホースを上げ終えて本船のバンカーコネクションにホースを接続し終えたときは
バンカー歴25年の私でもホッとしました。まあホースの全長26m、蛇のようにくねるその壮観な事???
多少経験のある方なら写真を見て本船にクレーンがあるではないか?
と思われるでしょうが、残念ながら真下のものなら吊れるのですが真下より角度がずれると安全装置が働いて
動かないようになっているのでホースの巻き上げには使えなかったわけです。
さてこれで揚げ荷役の準備は完了です。その後ちょっと待って荷役開始。揚げ荷役作業には約2時間ほど掛かりました。
私の趣味の一つは大自然の美、朝日、夕日の写真を撮る事ですが運悪く荷役が終わってちょうどホースを下ろしている作業の最中が
太陽が沈む時でした。その危険な作業の最中にはいくら私の大好きな趣味でも写真を撮ることは出来ません。
ユックリと安全に無事にホースを下ろし終えてから西の方角を見ると嬉しいことにどうにかまだ太陽は沈みきっていませんでした。
その時急いで撮った写真を入れておきます。という事で今日の一航海は無事に終わりに近づきました。
でも今日はまだラッキーな方でした。何故ならそう風も吹いていなかったし波も穏やかで凪でしたから。
たまには風速20m以上の大時化の中でも今日のような港外バンカーを行うことがあります。
その後、船体を壊すこともなく離船して母港に戻り係船作業を終えて今日の航海は無事に終わりました。朝の8時半に出航してから係船所に船を着け終わり、
陸に第一歩を踏み出したのは19時半でしたから延べ11時間の労働というわけです。でも今日はまだ時間的には短かった方です。
ひどいときは朝の3時半に出航して戻ったのが23時半ということもあります。それぐらい長時間働くとタフ&ニートをモットーとする私も
流石にちょっと疲れます。が、それぐらい頑張れるのも体が丈夫だからです。
こんな丈夫な体に生んでくれた親に感謝しつつ「ある日の仕事。」はこれで終わりでぇーす!
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