頂きもの〜 ! My Precious...
The Bank DVDより
みす音さんの オリジナル・コンセプト翻訳&監督とプロダクション・デザイナーのコメンタリー訳
デイヴィッドの主演作品、それも盟友のロバート・コノリー監督によるThe Bank・・・既に本編の翻訳でこの映画の魅力に触れられるようにしてくださったみす音さんですが、今回はさらにコノリー監督やプロダクション・デザイナーのコメンタリーまで!
単なる主演俳優という役割だけに留まらない、デイヴィッドのこの映画への深いかかわり方を知ることが出来るなど、彼のファンには非常に興味深い情報が満載です。また、ロバート・コノリーは今年公開のThree Dollarsも監督していますから、The Bank当時の二人のコラボレーション振りや今につながる人脈を知ることが出来て、ますますThree Dollarsが楽しみになりますね。
みす音さん、今回もありがとうございました!
スピカ
以下、みす音さんよりいただいた本文です。
コメンタリーの訳にあたってはイタリア語字幕を参考にしましたが(とはいえ、 コメンタリーの伊語字幕はかなりいいかげんです)、英語が聞き取れる部分はで きるだけ英語のニュアンスに近づけるようにしました。
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il soggetto シナリオ(伊版DVD)
Original concept(豪版DVD)
■コノリー監督
「The Bank」ではストーリーボード・アーチストのタン・モリス(注1) と仕事を した。モリスは過去に「Two hands」やオーストラリア映画の「Bootmen」(注2) のストーリーボードを作っている。ストーリーボード・アーチストとあらかじめ 映画の最初から最後まであらゆる場面を絵にしておくんだ。ここに最初の何分かの部分のオリジナルのストーリーボードがある。興味深いよ、最初のフィルムコ ンセプトが分かるから。
オリジナルのアイディアでは広大な塩の平原の空撮に始まって、ヘリコプターからのショットになり、最後に車を運転している子供のジムに焦点を結ぶというものだった。ジムは父親に初めて車の運転を教えてもらっている。二人の手が父と息子の深い結びつきを表している。車はうしろに埃を巻き上げている。これは 映画には入らなかったシーンだが、無限大の記号が最初に出てきていた。既にジムが子供のころからだ。そして「The Bank」のタイトルとともにフラクタル概念が展開し始めるんだ。
これが実際のオープニングシーンだ。銀行の支店長が貯金箱を持ってやってくる。貯金箱のアイディアは始めからあった。車のトランクの中に貯金箱が見える。最初のストーリーボードの絵の貯金箱は、後でルイジ・ピットリーノ(注 3)がこの映画のために作ったウォンバットの貯金箱にそっくりのものだった。
ストーリーがどうなっていくか理解するのにこれらのショットは重要だ。これらは銀行の支店長が黒板に書く絵だ。老人をどう描くかについてはさんざん議論した。これはストーリーボードのアーチストが提案したものだ。見て解るように映画で使ったのとは全く違う。ジム少年が理解する数式についても同様だ。
ストーリーボードの矢印はこのシーンでカメラがズームアップするという指示だ。
ウォンバットの貯金箱とセンターバンクのロゴは最終的に出来上がったものと同じだ。50セント硬貨は映画では写らなかったけれど、背景の台詞のなかで言及されている。
これはストーリーボードにはあったけれど撮影されなかったもう一つのシーンだ。夜でジム少年は家に居る。父親がドア口に近づいてきて、背景で母親が泣いている。経済的な問題を抱えているんだ。ジムは数式に心を奪われている。彼は ベッドの中でも考え続けてその数式を理解しようとしている。その次の場面は20年後のメルボルンの光景になる。
(注1) Tam Morris:コノリー監督とは「Three Dollars」でも一緒に仕事をして いる。www.imdb.com によると他に「Dirty Deeds」、「Ned Kelly」等も手がけ ている。
(注2) Two hands:邦題「トゥー・ハンズ/銃弾のY字路」。Bootmenについては http://homepage2.nifty.com/wombat/cinema/2000.html に解説あり。
(注3) Luigi Pittorino:プロダクションデザイン=美術担当。次項のコメンタ リーで登場。彼も「Three dollars」でまたコノリー監督と組んでいる。
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La preproduzione 製作準備(伊版DVD)
Production Design(豪版DVD)
コノリー監督
ルイジ・ピットリ−ノ(プロダクション・デザイナー)
■コノリー監督
もともとは「The Bank」はシドニーで撮影しようと考えていた。最初の設定のほとんどは夏のシドニーを想定していた。デヴィッド・ウェナムが撮影に参加できるのは、「ロード・オブ・ザ・リング」の第2部と第3部の撮影に出かける前に空いた非常に短い期間だけだった。このわずかな期間にはシドニーオリンピック が開催されていて、シドニーで撮影するのは不可能だった。それでメルボルンに移ったんだ。
メルボルンに移るのは面白い挑戦だった。プロダクション・デザイナーのルイ ジ・ピットリ−ノと、メルボルンでロケすることをいかにアドバンテージにできるか話し合った。
■ピットリーノ
脚本で一番印象的だったのは、ストーリーのエピック(注1)な性格だ。
この話には様々なロケーションが出てくる。時間を遡ったりもする。歴史的な要素もあれば現代的要素もある。全部で50近くのロケーションがあるんだ。この映画にエピックフィルムだという感じを保っておくために、ストーリーの中にで きるだけたくさんのロケーションを入れておくのが重要だとみんな考えた。
それでヴィジュアルスタイルをはっきりさせるようにし、自分たちに質問してみたんだ:自然主義的な(注2)映画にしたいのか? 誰もが同じ意見で、リアルにしたいと思っていた。しかし脚本を読んでみたら、そのスタイルから私にはア メリカのスリラー大作みたいに思えた。そして特徴として展開がエピックなんだ。この映画はそれを反映すべきだと思った。だから非常に完成度の高い映画でなくてはならなかった。
(注1)エピック:一般には叙事詩的と訳されるが、www.imdb.comの定義では Epic:A film with large dramatic scope or that required an immense production. 大河ドラマといったところか。
(注2)自然主義的な naturalistic:理想化を行わず、醜悪なものを避けず、 現実をありのままに描写しようとする立場
■コノリー監督
映画の幻影のひとつは外(屋外撮影)と内部(セット撮影)を一つ(の場所)に 見せることだ。キャラクターがある建物にやってきて中に入っていく場面で、建物の外と中は別の場所で撮影したということがよくある。それでこの種の映画 ではロケーションがものすごくたくさん必要になるんだ。
例えばこのシーンだが、車が角を曲がり到着したところは実際は前の道路とは全く別の場所だ。ここはセンターバンクのビルの裏側だ。屋外とこの内部をうまくマッチできてラッキーだった。この階段は実際に裏口に面している。彼らはセン ターバンクのビルを地下に降りコンピューターラボに向かう、そしてここからはスタジオに作ったセットだ。ドアがあり、廊下があってその先がコンピューターラボ。そういうわけで、ここでは一つのシークェンスに三つのロケーションが使われているんだ。
■ピットリーノ
これらの50ものロケーションをスタイルによって管理できるように、様々な世界に分けることにした。それで、ビジネスの世界や現代都市の世界、ビューラー やハウスボートのような現在の田舎の世界があったし、過去の田舎の世界もあった、オープニングの小学校やデヴィッド・ウェナム演じる主人公の少年時代へのフラッシュバックがそれだ。いったんいろいろな世界を確立してから、どういう フィルムを使うか(注3)を決めた。あるいはどういうフレームにするか、どういうカメラの動きにするかを映画のどこでそれらの世界を使うかに応じて決め た。
ひとつの例は色の使い方だ。コスチュームデザイナー(Annie Marshall )と私で、都市の場面の撮影には色をブルー、黒、グレー、ダークグリーンに制限する ことに決めた。このこととトリスタン(撮影監督の Tristan Milani)が使っているフィルムの効果で、都市やビジネスの世界はコントロールされたモノクロな感じに仕上がっている。
常に例外はあるがね。例えばアンソニー・ラパーリアのキャラクター、それから 彼の邸宅をデザインするにあたっての我々のアプローチの仕方だ。アンソニーのやり方はとても面白かったよ、自分のキャラクターをアメリカ人として演じたんだ。私も賛成だった。それで私が今までに会ったアメリカ人のキャラクターを取り入れたらど うかと彼に提案したんだ、英国のものなら何でも大好きって人たちだ。それでア ンソニーはアンチークに囲まれているんだ、自分の邸宅をメルボルンで一番古い 建造物のひとつに見せようとしてそうしてるのさ。彼のパーティのやりかたも同 じだ。そういうわけでこれは都市にはダークな色というルールの例外だ。アンソ ニーの家の中にはリッチな色を使った、茶色、マロン色、赤、他にもアンチーク な感じを出すような色。都市やビジネスの世界のイメージとはコントラストをなしている。これほどたくさんのロケーションがある場合に重要なのは、ロケーシ ョンの間のコントラストを考えておくことだ、そうすれば観ている人が自分はい まどの世界に居るのかはっきり解る。
(注3)どういうフィルムを使うか:カラーバランス、色彩度、露光、シャープ ネス等に関してどういう特性を持った撮影用フィルムを選択するかということ。
(参考)http://www.fujifilm.co.jp/motion_p/ds.html
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コノリー監督の本編コメンタリー抄訳( 1)
オリジナルコンセプトや音楽についてのコメントがメイキングコメンタリーに関連していたので訳してみました。
イタリア版DVDには監督の本編コメンタリーはありませんので、豪版DVDの英語から抄訳。凄くいい加減な上めちゃめちゃ省いています。(2)以降が続く かどうかは・・・。
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プロローグは20年以上前のシーンだ。他のシーンと区別するため、色や構成や パフォーマンス・スタイルを変えている。
このシーンのアイディアはデヴィッド・ウェナムが出してくれた。脚本を考える 段階から彼もおおいに関与してくれたんだ。彼が子供のころに銀行の支店長が教室にやって来て、このシーンと同じように将来貯金が必用になる3つのことを提案したそうだ。
このシーンは子供達には何も教えずに撮影した。子供達は本物の銀行の支店長に対するように自由に反応しているんだ。おもしろいのは、デヴィッド・ウェナム の少年時代を演じた少年がデヴィッド・ウェナムに似ていることだ。この少年、トマス・ブラックバーンはデヴィッド・ウェナムが演じる大人のジム・ドイルに 完璧に繋がってくれ、ジム・ドイルを最初に紹介するにあたってとても重要だ。
音楽はアラン・ジョン、一緒に仕事ができてうれしかった。すぐにオーケストラスコアが始まる。ヒッチコックの映画音楽を担当したバーナード・ハーマンのス タイルに似ている。アランとオーバーチュアを映画に導入することを話し合った (オーバーチュア :序曲。オペラ等で開幕前演奏されるオーケストラ曲。オペ ラ内に使われる旋律を使ったりして主要場面を連想させたりする)。ハーマンが 音楽を担当したヒッチコック映画のタイトルバックも非常にスペクタクルだったと思う。
このタイトルバックにはこの映画のメインの要素である数学を取り入れているだけではなく、ヒッチコック映画みたいなスリラーの要素も入れている。ヒッチコ ックの「めまい」とか「北北西に進路を取れ」等のタイトルバックはハーマンの 音楽ともどもとても素晴らしいと思う。子供のころからこういうタイトルバックの映画を創りたかったんだ。
プロローグでは観客に特別のスタイルの映画を観ているのだと感じ取って欲しか った。
さてここでシフトして、デヴィッド・ウェナム が大人のジムになって登場する。
脚本では「20年後」というテロップを入れる案もあったが、私としてはそれは 避けたかった。ヴィジュアルにデヴィッド・ウェナムが主人公のジム・ドイルだと解るようにしたかった。
カズヒロ・ムロヤマは素晴らしい日本人の俳優で、このDVDにも納められている私の短編にも出演している。
これも脚本を創りあげる段階でのデヴィッド・ウェナムのアイディアなんだが、 彼のキャラクターは日本語を喋る。わざと日本語に字幕はつけなかった、その方 がミステリアスだからね。映画の最後で二人の関係は最初思っていたよりもずっ と重要だと解る。彼らが日本語を喋ることでプロットの一部を隠しているんだ。
観客にすべてを説明しないということでは、サイモン・オレイリーのキャラクタ ーもそうだ。どういう人物か一部しか示されない。それは彼がこの王国の王様だという感じを与えるのに役立っている。
最初から現代の錬金術のアイディアをみんなで考えていたと思う。デヴィッド・ ウェナム演じるジム・ドイルは現代の錬金術師なんだ。あらゆる金属から金を創りだすことを約束するのに代わって、彼は株式でわずかの金から大金を生み出すことを約束してこの王国にやって来る。
グレッグ・ストーンが演じているヴィンセントはこの映画でとても大事な役割を占めている。彼は銀行で働いているが、銀行がやっていることに何の疑問を持たない人物だ。55歳まで働いて引退して年金で暮らしていけると思っている。現 場で生きぬく能力はないな。彼はそれ以上は何も考えてない。グレッグ・ストー ンは演劇畑ですばらしい活躍をしている。これが主要な役としては最初の映画出演だ。