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私の読んだマンガ単行本 新刊

2005/12/24 『〜少女少年〜 GO!GO! ICHIGO』やぶうち優(小学館、ちゃおコミックス 2005.8.5)

『少女少年』は、ここでも感想を書いたが、小学館学習雑誌に、可愛い男の子が女装して芸能界デビューするという設定で、1年ごと、7作に渡って描かれたシリーズである。「今がよければそれでいーじゃん」というロックンロールなノリの……というわけではないが、コメディらしい結末の今回の「少女少年」は、その番外編的位置づけで、芸能界とは関係なく可愛い男の子が女装する、“ちゃおDX”に掲載された。

主人公、杏の隣りへ戻って来た幼なじみの男の子、いちごは女装する少年になっていた。女装した、いちごに杏の胸はときめくのだが、いちごは杏のお兄さんに夢中なのだ。今までの「少女少年」シリーズは、今一つ親しめなかったが、今回のこの一冊は、とても好ましかった。短編シリーズのコメディで、あっけらかんとして、イケイケの、いちごの性格もあいまって、テンポ良く楽しく読めるものになっている。コメディ・タッチ、もしくは淡々としたストーリーの中に、主人公の切ない感情を浮かび上がらせるのがうまい、やぶうち優だと思うが、しかし、その高度な作業はいつも成功しているというわけではない。今回の 4話、秘密を知ってしまった弓月さんという女の子が二人の間に入ってしまったことで孤立してしまう杏のさびしさ、なぐさめるいちごの優しさはよく表現されていた。また最終話で、当然こうなるはずだが、杏がいちごに思いのたけを告げる場面も、しっくりと来た。そして「今がよければそれでいーじゃん」となるのだが、実は……という周囲が二人を祝福しているような、「少女少年」的な状況への肯定的なラストが良い読後感を残した。

 

2005/12/13 『朋Link!』陽香(双葉社、アクションコミックス 2004.11.30)

現在、平綴じ(無線綴じ)の月刊誌で出ている“コミックハイ!”が一度休刊する前、2004年の春、中綴じで出ていたときに連載されていた作品である。“コミックハイ!”は創刊号から買っていたのだが、当時、「少女漫画系青年誌」という触れ込みの(現在は「Girlish Comics for Boys and Girls」)、この雑誌、きれいな絵で可愛い女の子たちが満載なのだが、私にとって好ましく、読む気になる絵は、以前から知っている堀口純男と友美イチロウだけだった。だから、連載の、この陽香(きよか)の作品も、最初はまったく気に止まらなかったのだが、雑誌を読み返しているうちに読み出していた。

ストーリーはというと、とにかく元気で明るいヒロインがいる。彼女は家庭の事情で、とても貧乏で、高校の昼食も、パンを賭けてスポーツなどの勝負をして、食費を浮かす日々、アルバイトもかけもちである。彼女は変人ぞろいと言われる校舎の別館の生徒である。本館の下宿生、武流はヒマで退屈な高校生活を送り始めていたが、彼女、朋と出会うことで、いろいろと事件に出会い、充実した毎日を送るようになる。武流と同じく、朋と出会ったことで変わってゆくのが、大金持ちのお嬢様、凜である。彼女が、どのくらい大金持ちかというと、学校の中でも常に、執事の根本さん(なぜかセバスチャンと呼ばれる)や、出番はないが、メイドたちがぞろぞろと後についてくるのである。私が読み出したのは、一つには、このマンガ的なキャラクターのデフォルメの面白さがあると思う。特に、最後までセリフは一言も喋らない執事の根本さんがユニークなコメディ・リリーフとなっている。本で読み返してみると、凜、1話で、朋たちとコンパをやっているとき、食事代を凜が持つからと、初めてコンパにやってきた朋の食べ方を「こんなに卑しい食べ方初めて見ますわ!」などと言っている。他にも、こういう調子のことを言うのだが、普通なら、ヒロインの仇役か、いじめ役だが、このマンガでは友だちになるのだ。さっきのセリフも、あくまであまりに大金持ちのお嬢さんの天然な感想なのであった。

このマンガの感じ、読んでいて、古い少女マンガみたいなイメージがしたが、1960年代から1970年代にかけて、私の子供の頃、少女マンガなど、ほとんど読んだことはない。なのに、なぜそう感じるかというと、これは小学館の学年別雑誌に載っていた漫画のイメージではないか。現在もだろうけど、学年別雑誌には、その頃も、少年漫画系の作家も少女漫画系の作家も登場していた。そこに、このような漫画があったというのではなく、雰囲気がそうではないかと思うのだ。少女漫画にしても、軽くて淡泊な印象だ。恋愛も描かれない。武流が朋に、ちょっと色気を感じているような描写もあるが、それも淡いもので、1巻で完結したからということもあるかも知れないが、深く描かれることなく、話の中心は、それよりも、やはり、凜が、大金持ちの閉ざされた場所から、みんなの仲間に入ってゆくということなのだ。私はこれで良かったと思う。なにかというと、すぐ恋愛ばかり、すぐに「告白する」だ何だというのも、ちょっと食傷気味になるところもある。それよりも、明るく元気のいい女の子を中心に、ちょっとした出来事で周囲のみんなが楽しく仲良くなれる、そんな世界が良かった。もったいないのは、魅力的なキャラクターたちのドラマをもう少し読みたかったということだ。朋の弟なんて、3話では主役なのに、この 1回きりしか出てこないんだね。そういえば、この 3話はスーパーの特売という、ギャグマンガでは『浦安鉄筋家族』で描かれるようなネタなんだが、コメディとして、それだけで 1話作っているというのが面白い。5話は試験勉強するだけという話だし。根本さんは、あくまでセリフなしで、ラストで彼に語らせるために、ホームページの日記をノートパソコンで見せるという無理矢理な展開が可笑しいが、ラストはなんでもありのようで、その場にはあっている。根本さんが 2話でお嬢さまを軽く見た団先生にツバをはきかけるというのは、ちょっとやりすぎな描写のような、でも団先生というのは、そういう扱いされちゃうような、ちょっと痛いところのあるキャラなんだよね。そして団先生は、この話しか登場シーンはないんだね。これも少女マンガ的ギャグ・センスなのか? 2話で食材として、牛 1頭、連れてこられたり、最終話では、朋がイノシシをいつの間にか仕留めてるのが可笑しい。完成度が高いとは言えないだろうけど、好ましい、こういう世界はいいと思えるシリーズだった。

 

2005/12/01 『VIDEO J』3 赤石路代(小学館、プチコミフラワーコミックス 2005.7.20)

赤石路代のシリーズ、完結編である。大金持ちの娘、霧島樹梨は家族を何者かに殺害され、一人だけ難を逃れたが、その後、殺し屋に追われ、フリーのビデオ・ジャーナリスト、Jこと柳晶煥(ユ・ジョンファン)のもとに身を寄せ、その仕事を助けるようになる。ビデオ・ジャーナリストが、いろいろな事件を解決してゆくという設定が面白いと思った。さらにヒロインが何者かに命を狙われ、その命を狙う者たちの正体を明らかにしてゆくというシリーズ全体の目的が興味をそそるはずなのだが、一方でヒロインの抱えているものが大きくて、ミステリ・シリーズとしては単純に楽しめないのが不満といえば不満である。しかし、一方で追われるヒロインが真相を知り、敵と対峙する、この完結編、最後の 3話目は、サスペンスものとして十分に盛り上がり、楽しめた。私が読み出してから、1990年頃からの赤石作品のヒロインというと、特殊な超能力的なものを持った(持つはめになった)少女か、特殊な才能を持つ女の子だったが、この樹梨は、普通のお金持ちのお嬢さんが、運命に怯え、逃げていたのが、ヒーロー的な男性によって助けられ、彼を助けながら自分も成長して、運命と敵と戦って行くラヴ・ストーリーというのが珍しい。赤石作品が主な読者層である女性漫画雑誌読者に、どのように読まれているのか知らないが、今回のような男女のシチュエーションが好ましい女性もいるのだろう。市長・遠山京香シリーズでも、うかがえるが、このシリーズの登場人物たちが国際色豊かなのも面白いと思った。

 

2005/11/23 『学園法廷』友美イチロウ(双葉社、アクションコミックス 2004.12.12)

現在、平綴じ(無線綴じ)の月刊誌で出ている“コミックハイ!”が一度休刊する前、2004年の春、中綴じで出ていたときに連載されていた作品である。友美イチロウの作品には、その前、“漫画アクション”で「i−kiss」という作品を連載していたのに、お目にかかっている。これは毎回 4ページほどのショート・ストーリーで、可愛い女の子が出て来て、ギャグ的なオチで締めるといったシリーズだった。可愛い女の子というのは、多くの漫画家が描くわけだけども、その中でもお色気があって特に一般受けがする絵ということが要求される位置のシリーズである。単行本 3巻にまとまっている。一般受けしたのかどうかは知らないが、私は好きな絵で、好ましく読んでいた。だから、今回の作品も、それほど買う気もなく買ってみた“コミックハイ!”創刊号に載っているのを見て、絵的にはもうOKであった。しかし、物語の方はどうか。これが、ちょっと不可思議な世界である。その題名通り、高校生たちが法廷を開いているのである。それは何かの勉強のためとか、そういったものでなく本格的に可愛い美少女たちが、ちゃんと法服を着て、学園の中で裁判を行うのである。その裁きの様、検察側の追求、弁護側の弁論、いずれも本格的である。これは異世界か? パラレル・ワールドとかか?と思ったら、2話の最後で、先生が、ちょっとだけ出て来て、それがまた、ごく普通の日常ありふれた光景。決して異世界みたいなものではない。年代も、5話で 2003年という年がはっきりと書かれている。現代のごくありふれた世界のはず、なのに、なぜか本格的に高校生たちが学園の中で裁判を行っているという世界だ。ちょっと珍しい。今度、読み返しながら思ったのは、私はゲームには疎いのだが、もしかしたらゲームなどには、こういう世界があるのだろうか。でも、何かたいそうな事件が起きて裁判を行うのではなく、誰かのお弁当を食べたとか、銅像にペンキが塗られたとか、桜の枝を折ったとか、そういった出来事を取り上げて本格的に裁判が行われる。裁判にかかわる主役は、裁判長の三年生、小笠原律子(落ち着いた眼鏡っ娘に萌え)、判事の二年生、相川千夏(ちゃきちゃきの大阪弁っ娘)、新人判事の一年生、葵双葉(可愛い一年生)である。連載で読んでいるときは、この三人が等しく主役のように思っていたけど、本で読み返して見ると、表紙の絵からして、双葉が主役なんだなと気づいた。

1話は女の子のお弁当が誰かに食べられたという事件。この事件の真相発見はギャグ?と思うようなもので、裁判の本格さとの落差が奇妙な作品の印象を与えた。2話の銅像にペンキ事件の真相は、確かに謎解きといえるものだと思った。3話は双葉を一方的に目の仇にする、小学校時代から同級の女の子が、誹謗中傷の張り紙をするという話で、この結末も、1話同様、そんなアホな、というような結末だが、でもそこで描かれる人間関係は、1話にしろ 3話にしろ、納得の行くような話になっている。4話は二人の弁護士女生徒の活躍がカンニングを疑われた生徒の無罪を証明する。「i−kiss」は、一目見てムフフと思うようなサーヴィス満載だったが、男性向け少女漫画誌という“コミックハイ!”では、この話のスクール水着がちょっと描かれたのが、せいいっぱいの露出であった。5話は卒業製作を壊したとして訴えられていた男子生徒が先輩裁判長に残したメッセージを見つける話だ。4話、5話とも、やはり、ちゃんといい話になっている。そしてラスト、裁判長が桜の枝を折ったと訴えられる、最後の 6話、これは最後を締めるに相応しい、可愛らしくも特にいい話になっているのだ。

 

2005/09/10 『君が舞い降りてきた』やぶうち優(小学館、ちゃおフラワーコミックス 2005.2.5)

やぶうち優の新しい短編集で、5編の作品を収録している。最初の 1編が表題作の「君が舞い降りてきた」である。飛ぶ鶴たちを背景に少女が立っている表紙、タイトルの絵、そして大学生の男の子が酒に酔って帰って、朝起きたら部屋の中に女の子がいて、という発端は「鶴の恩返し」がモチーフの作品かと思わせるが、女の子の部屋がアパートの下の階だと分かって、笑ってしまう。でも、この女の子、ひょっこり現れただけあって、なにやら秘密を持っている。しかし、大学生の男の子がその秘密に深くかかわってどうにかするという話ではない。彼は彼で進路についての悩みを持っているのだが、女の子の行為がきっかけで、写真家になる夢をあきらめずに追うことになる。そして再会、日本中探して歩いたというのは、そんな無茶なというか、それだけで一つの長編になりそうだとか思う。それと、女の子が結果的に自由になった理由が、ちょっと安易な解決のような気がする。それはともかくとして、再会、女の子が「恩を返すから」とか言ってるので、やっぱり「鶴の恩返し」を意識してるのかなと思う。読了後、作者のコメントを読んだら、果してそうでしたが。お互いの事情に深くかかわらないで、でも出会ったことでお互いが励まされてという、そういうのもいいなと思える、そういう短編です。

次の「サクラせんせーしょん」は、中学生の女の子が家庭教師の大学生の男の子に惚れるという話だ。それは恋に恋する年頃の、ひとときの憧れ、ということに普通、こういう漫画ではなると思うのだが、この話では、中学生の理屈に説得されて?二人、恋人どうしでいくことになる。この先、どうなるかは分からないが、世の中、先生と生徒が一緒になるなんて、よくあることなので、こういうのもありだなと思う。

「サクラせんせーしょん」を読み始めて、そう言えば、今までの、やぶうち優の作品って、主人公は、みんな小学校高学年から中学生だったように思うのだが−そして、とかく幼なじみがどうしたこうしたというような、「君が舞い降りてきた」「サクラせんせーしょん」と大人、または大人に近い男性が登場している。この本は、そういう短編集なのかなと思ったが(「君が舞い降りてきた」や、この「サクラせんせーしょん」は、大人向けの漫画誌に載っても、違和感ないものだろう)、3編目の「瞬間が色あせないように」は、中学生同士の話、といっても、やってることはいきなり恋人同士のキスを学校の階段で……ところが女の子がキス拒否宣言。どうしてってことなのだが、秘密が分かるくだりもいいし、その後の電車で行けるところまで行こうというのが良かった。一晩だけの逃避行。この本の中で、一番気に入っている。

次の「ひとりぼっちのコスモス」は転校生の女の子がクラスに紹介されるとき、いきなり、ある男の子に、つきあってくれと言われて困惑する。『水色時代』の一編、みたいな話なのだが、ラスト直前、ドラマチックに盛り上がるところがいい。主人公のセーラー服の女の子の顔が可愛い。カヴァーの折り返しの著者紹介の上のカットが、この娘です。しかし、私が、やぶうち優を読み始めたのは、単行本『水色時代』の 4巻の表紙を見て(新刊で積み重ねられてたときね)、可愛いなと思ったのがきっかけですが、この絵を見ると、これが今様のやぶうち優なのだ。

ラストの「私立ふしぎの幼稚園」は、よくある入れ替わりものなのだが、幼稚園児の女の子と女子中学生が入れ替わるのが強引だ(笑)。コミカルな一編で、それほどの深みがあるというのではないが、ちょっと楽しい話だ。このヒロインのポニーテールの女の子も可愛い。そういえば、最近、やぶうち優の作品って、可愛い女の子だと思うと男の子というケースが大半だったので、余計に女の子が可愛く思えるのか(笑)。幼稚園児になった中学生が、その娘の兄である同級生−それは片想いの彼なのだ−と一緒にお風呂に入るというシーンが、全体のキモである。ここで好きな人がいるのか、彼に聞こうとして、やっぱりやめようとするのがいい。そして、ラストは、なつかなかった女の子と、ちょっと親しくなっているという、可愛らしい作品である。

やぶうち優の単行本は全部読んできてるはずなので、ちゃんとした短編を描く人だと分かっている。淡々とした印象の中に、登場人物たちの感情の動きをよく伝えている。それを前提として、この本を評すると、突出したものはないが、登場人物の設定に、題材に新しいものがある。すでに長いキャリアを積んで活躍している作家の場合、どうしても人気シリーズの続編を求める声が多くなるが、私は、作品としての完成度が低くても、作者の進境に応じた新しいものを求め描いてゆくという姿勢を好ましく思う。したがって、この本の作品は完成度が低いというわけでなく、いつも通りうまくまとまっているが、さらなる展開への期待を感じる本となっている。

 

2005/08/30 『かっちぇる』5 かわくぼ香織(講談社、講談社コミックス(月マ) 2005.1.17)

長崎の高校のバレー部の話の 5巻。現代なんだけど、ローカル色豊かなためにか、どこかノスタルジックな地方の街で、何一つ取柄のない自分にも何か輝くものが欲しいと思って、つぶれかけたバレー部を再建しようとする、ノッポで、いわゆる、どんくさい女の子の杉山さんと、仲間たちの話である。「かっちぇる」とは、長崎弁で、仲間に加えるというような意味らしい。スポーツものというよりグラフィティもの、になるのかなあ、こういう青春ものは、ほとんど読むことはないので、そんな中で、この漫画に、よくぞめぐりあったなあと思って読んでいるのです。不思議なライヴ感のようなものがある。随所にユーモアはあるものの、漫画的な演出過多なところが少なく、淡々と描かれる世界で、いつの間にか、自分も彼女たちの仲間の一人になっているような気になる。約 1年 2ヶ月ぶりに新刊を読んだのだけど、懐かしい仲間と再会したような気分だ。

5巻は、地区大会の 1回戦の試合の続き。彼女たちの実力通り、当然のごとく、負けるんだけど(21年間公式戦無勝記録更新)、とても納得出来る試合となる。この試合が終って、なんとなく、彼女たちのやってきたことが、ある、課題となる通過点を通過したのか、その後の 3話は読んでて、わりとリラックスした印象がある。2話目は、食堂の娘の、ちょっとちっこい感じが可愛らしい八田さんの卒業してゆく男の子への恋愛話、実は勘当状態で上京する医者の息子を駅のホームへ見送りにいって、いつも手伝いしてる食堂の皿うどんを電車の中で食べてといって渡す八田さんだった。3話目が、ちょっと異色な感じで、この巻で一番面白かった。2年生になる春休み、地元の伝説的ヤンキーの伝説を伝える携帯のページがあって、かぶれた連中が、いきなりヤンキーをめざす。クラス替えで浮かない杉山さんが、にわかヤンキー仲間にひっぱりこまれそうになる様を分刻みに描く。この話を読むと、ノスタルジックなこの漫画も、現代の話なんだなあと分かる(笑)。漫画の中でも今どきヤンキー?というのが、大方の見解らしい。4話目は、弱小バレー部にも 1年生が入ってくる。見学に来た 3人で残ったのは、一番バレー向きに見えない、手芸部だったという女の子だが、実はこの子が、小学校のとき、厳しいジュニアのチームにいたことが分かる。いつものように、この後輩に気を使ってしまう杉山さんなのだが、二人で裏山を歩きながら、後輩に自分がなんでキャプテンになったか説明するくだり、みんなが自信をつけさせるために選んだんだと率直に言うところがいいし、それを聞いて、後輩の近藤さんが、すっきり納得して、自分もバレーで先輩を支えると言うのが面白い。そしてその後、冒頭に RPGゲームの場面のような、チーム中ではバレーのプロ、羽柴さん扮する姫を王子がゴキブリの怪物みたいなのから守るようなシーンが、なんだろうなと思ったら、ここで納得した。なんで杉山さんが捕虫網持って山登ってるんだろうと思ったのだが。山の上で虫がいっぱい出てくるのである。しかし、裏山に、こういう30分かけて登る山があるなんて、やっぱり、のんびりした、いい環境だなあ。

 

2005/08/09 『市長 遠山京香』3 赤石路代(小学館、Judy Comics 2004.4.20)

推理小説作家で大都市、華浜市市長の遠山京香が活躍シリーズの三冊目。この巻収録の5編はタイトルが「……町」で統一されている。1巻目は「……の……課問題」、2巻目は「… in the city」だったのだ。「カラスのいない町」は医療廃棄物不法投棄の問題で、2巻で面白いと思った、ちょっと陰のある市長の車の運転手、小平さんが今回も偶然から市長を助けることになる。「道のない町」は、開かずの踏切があり、安売りのスーパーマーケットがあって、車が渋滞している道で子供がはねられて病院へ間に合わなかった道を調べる話だ。特に犯罪とかが絡んでるんじゃないが、いつものように身軽な京香市長が現場を調べると、車椅子の老婆に出会う。事故死した少年は、その老婆の車椅子が踏切で線路にはさまっているのを助けていた。「こどもの消えた町」は、京香の小学6年生の娘、ありすが誘拐される話で、犯人の手先をつとめていた男の脅されていた理由というのに、認可外保育施設の問題が絡んでいる。「太陽の消える町」は高層マンション建築による地域住民の日照権問題にひき逃げ殺人。ひかれた子どもは三人いたという老人の目撃者の証言を孫だけが信じて、市長への手紙で訴える。その謎解きが、ちょっと面白い。企業の利益を何よりも優先する会社人間の起こす犯罪を描いている。この巻で一番面白かったのが最後の「ブラックアウトの町」で、作者のコメントによると、パニックものとして楽しんで描いたようだ。あやしい宗教絡みの大規模な停電が起こり、心臓移植の手術に運ぶ心臓を乗せたヘリコプターがヘリポートに着けなくなる。どうなるか。刻々と時間が表示されながらストーリーは進行する。折しも華浜市は、新しいお祭り「ランプ祭り」の最中で、最初、大きな祭りのない華浜市のための新しい祭り、なんだ、そりゃと思ったが、途中で、なるほどなあと分かってくる。でも、アイデアを提供した祭りのオッサンに、もうちょっと出番を与えてあげても良かった(笑)。なかなか盛り上がるクライマックスだった。みんな、そんなに出ずっぱりで登場するのではないが、秘書課の可愛い美青年、咲岡君、運転手の小平さん、電話だけで登場、いや、今回は後ろ姿だけの登場もありの太田ママ、夫に娘ありすに反対派の助役、黒塚も含めて、脇役も面白く、ケレン味のあるエンターテインメントに社会派の視点を、ちょっと加えて楽しめるシリーズとなっている。

 

2005/07/23 『TANABOTA』1 中島史雄(集英社、ヤングジャンプ・コミックスBJ 2004.5.24)

中島史雄の新シリーズは、巻頭のオールカラー、4ページの op. 1 は、これは描き下ろしじゃないかと思うのだが…… op. 2 は “ビジネスジャンプ”に載ったのを読んだ。その後は、“ビジネスジャンプ魂”という増刊の方に載ってて、これは、ちょっと書店やコンビニで見つけにくくて、ダイビングと獣医さんの話は、ちょっとだけ立ち読みで見たかな(ペットショップじゃなくて獣医さんの話だったのね)。主人公、26歳の、ブライダル・プロデュースの会社と契約しているカメラマン、日陰君が、仕事上で、いろんな女性と出会って、いいセックスをするという、軽くユーモラスなシリーズものです。セックスして、相手の悩みを解決するというパターンが多いけど、そうでないのもあります。読み切り形式で、毎回違う女性が登場して、というのは、考えてみると、あまりなかった?メジャー誌で活躍するようになってからの作品を思い浮かべてみましたが、ないですねえ。意外に。毎回、魅惑的な女が出て来て、短編として当然ちゃんとまとまってるし、俺のお好みは、op. 4 の眼鏡の獣医さん、op. 8 のアロマテラピストの吉野さん、op. 9 の旅館の姉妹も、それぞれにいいし、そういえば op. 4 の女性パティシェの荻野さん、しかし、乳首にイチゴつけてクリーム塗って、どうぞって図は可笑しい……ああ、おいしい、タナボタ、おいしいです。

 

2005/07/12 『あさりちゃん』74 室山まゆみ(小学館、てんとう虫コミックス 2004.5.25)

ときどき、このマンガは読者の方からのアイディアにもとづきましたというのが、「あさりちゃん」の中には、あるのだが、この巻の「作者のぺえじ」(6)によると、たまに読者のアイディアを使ってはずかしくないのか、他のマンガ家さんはそんなことしませんとか言ってくる手紙が来たりするのだという。まったく、ほっとけやってえの。で、作者ふたりは当然「恥ずかしくありません」と笑顔できっぱり。そのアイディアをどう料理するかがプロに問われるのだってことが、ちゃんと分かっているからであった。読者といえば、読者がマンガになって登場するのが、最後の方、4編ある。雑誌の企画だそうだが、いつもの、あさりちゃんの絵と違って、当然読者の少年少女に似せてる登場人物が、2、3コマだけ唐突に無理矢理登場してるのが、面白い。今どきの、あさりちゃんとしては、日曜、パパのおごりで何を食べに行くか、ママ、あさり、タタミがそれぞれ自分の食べたいものがベストだと「プレゼンする」話がある。あさりちゃんはニンジンきらい、タタミはピーマンきらいという設定で、この巻にもその話がある。結局、ポテトサラダから、きらいなニンジンとピーマンをほじくり出してる二人というラストだが、この気持ち良く分かる。私も食べ物の好嫌いがいろいろあって、ニンジンも嫌いだったもんなあ。今は平気なのだから、不思議なもんだ。で、その話にも出てくるが、タタミの親友のお金持ちの錦織あや子が、野菜大好きで、なんでもなまかじりなのだ。片や、あさりちゃんのクラスメートの岬みりあちゃんは普段は普通なのだがいざとなると大食い。二人とも可愛いのだが。可愛いというと、あさりちゃんの周辺って、けっこう美少女および美少年ぞろいなんだよなあ。勉強嫌いのあさりちゃんをタタミ姉がしごくというパターンの話がよくあるが、この巻では、読書感想文の宿題の出たあさりちゃんにタタミが「赤いろうそくと人魚」の話を読み聞かせる。しかし、金の亡者の鬼となったじじいとばばあを殺せというような感想文になるんじゃないかと危惧するタタミ、だが、あさりちゃんは寝ていた、感想を聞かれて、金持ちになって良かったなあ、手に職があるって大切だなあと適当に答えて、タタミ激怒、それを見て、あさり「あつ、鬼」、いつもの二人なんだが、可笑しい。その後、感想文に「赤いロウソクがともると鬼が出るおそろしやおそろしや」と書いてあるのを読むカバ担任、傷だらけのあさりに「浜野、なんの本読んだんだ」、ギャグマンガって面白くて好きだなあという子供の頃の思いを思い出す。

 

2005/06/11 『LUNA LUNA』3 宇野比呂士(講談社、講談社コミックス 2004.7.15)

『LUNA LUNA』完結編である。映画一本観る感覚で言うと、漫画も単行本三巻くらいが、ちょうどいいかも。可愛くて、ちょっぴりドジなところが笑える魔法少女キャス・ミンミンは、一見萌え萌えマンガなのだが、その実態は月がふたつ現れるとき、復活しようとする闇の王との戦いを描く、オカルティックな伝奇SF、現代の東京に繰り広げられるハード・アクションなのだ。その重厚なアクション・シーンと、魔法なんだけど、なんか科学っぽい変身の仕方とか、携帯電話という小道具の使い方とか武器とか、3巻ではキャス・ミンミンの乗る魔法のホウキならぬ掃除機みたいなメカまで、SF的な描写が楽しめる。そして、そういう面白おかしいストーリーの中に、一番強い魔法は若者の願う気持ち、なんて真正面から少年マンガなメッセージが込められ、主人公の周囲には、可愛いヒロイン、頼りになる友、彼を導く優れた年長者たちと、申し分ない少年マンガ的魅力に満ちている。出来すぎてるので、ちょっとどっか壊したぐらいがいいのでは、なんて(笑)。いつもはドジっぽいのキャス・ミンミンが魔力復活、その魔法のホウキならぬ掃除機みたいなメカに乗って、ユウジのもとへかけつけようとするシーン「フライング・メタモルフォーゼ」、そして「ボクら2人が「ユージン」を継ぐ」なんて、決ってるです。

 

2005/05/15 『VIDEO J』2 赤石路代(小学館、プチコミフラワーコミックス 2004.11.20)

家族を皆殺しにされた社長令嬢、樹梨がヴィデオ・ジャーナリストのJとともに、いろんあ事件を解決してゆくという、血なまぐさいシリーズの二冊目。この本のラストでは、Jもどうやら同じ相手に義母を殺されたらしいということが分り、また、樹梨がJに恋心を抱いていることを悟るという、シリーズとして妥当な展開となっている。最初の 5話「その花の咲く理由(わけ)」は、美人モデルが衝動殺人の死刑囚と結婚、取材するJたちは、彼女が過去に犯人に家族が殺されたらしいことを知る。微妙な題材を手堅くまとめて、シリーズの展開にもつなげている。6話は 7月号に掲載という季節柄か、児童虐待と怪談話をむすびつけている。5年前に殺された男の子からの依頼を受けた病床の樹梨が現在虐待されている妹を救う話で、ラストに余韻を持たせている。8話はJの留守に樹梨が一人で取材を始めて、Jの過去を知る話。脇役で同じビルに住んでるダエリという男の子が、ときどき出てくるが、加えて 1階の喫茶店かレストランのマスターがちょこっと登場。樹梨が取材を開始して、ヴィデオ・カメラ片手に町を訪れて、その第一印象を語るあたりの雰囲気が、探偵物に慣れた作者の語り口といった感じで良かった。

 

2005/04/27 『エキサイトな事件』とり・みき、おおひなたごう(秋田書店 2005.1.20)

昨年の暮れ、いきなりという感じで“少年チャンピオン”に広告が載っていた単行本、その前に、その頃、「フェイスガード虜」を連載していた、おおひなたごうが目次ページの作者コメントで、とり・みきと一緒に本を出すと書いてあったんだと思う。二人の共著とは、はて、どんなもんであろうかと見てみると、なるほど、ポータル・サイトのエキサイトに連載していたマンガを集めたもので、それで書名が『エキサイトな事件』なのか。特に二人で共同して何かを作るというものではなかった。ただし、単行本化に際しては、二人の対談と、お互いの作品のパロディなどが追加収録されている。直接、連載に共同の作業はなかったとはいえ、この二人が本としてカップリングされるというのは、自然でうなづける。それは、とり・みきの、少し前の単行本『御題頂戴』の前書きみたいなマンガに、ネタを買いに行ったら、先に、唐沢なをきとおおひなたごうが全部買ってしまっていたというのがあった。つまり、そういう風に、若手のギャグマンガ家として、認めているんだなあというのが分ったということもあったし、キャリアの差はあれ、純ギャグを追求している漫画家、というと、ギャグを追求している漫画家は多数いるけど、その中でも共通点があるような二人である。共通点というのは、例えば、“少年チャンピオン”にどちらも関わっているとか、そういうこともあるし、作品からのイメージとか、これは作風が見るからに似てるということではなくて、もっと作者のスタンスというかパーソナリティというか、そういうところに共通点がある……というのか。とにかく、こうして並ぶと、なるほどと思えるような、そんな感じだ。ニュースをネタにした、しかも、直接の風刺などではないギャグマンガということでは、とり・みきは先に二冊本を出しているので、発表媒体が雑誌から webに変わったけれど、同じ路線である。この本では、静のとり・みきに対して、動のおおひなたごうといった具合で、バランスが取れている。おおひなたごうのマンガは、eちゃんというキャラクターが登場するシリーズ、後半、集中豪雨のネタ、傘の使い道のオチが、なんだか大昔のマンガみたいで、懐かしいように思えるのが、面白い。このeちゃんたちのキャラクター設定というのが、また、おおひなたごう調で笑える。静のとり・みきと書いたが、読んで、しばらくして、または読み返して、ジワッと面白いという作品が多いということなのだが、でも、顔にマスクしてる人と下半身にマスクしてる人とどっちを……なんて、ベタに笑えるネタなんかもあったりする。マスクというと、ちょうど、その、とり・みきのネタの次に、おおひなたごうもマスク・ネタだが、ニュースはまったく別のものである。こんな、たまたまなことも面白い。

 

2005/04/18 『がんばれ酢めし疑獄』4、5 施川ユウキ(秋田書店、少年チャンピオンコミックス 4巻 2003.7.10 5巻 2004.6.25)

3巻を買ったあと、ずっと買うのが途切れていたのをやっと買った。一方で、その 3巻までを部屋の中で、いろいろ移動させてたら、行方が分らなくなった。1巻と 3巻は見つかったが、2巻がなかなか見つからない。やっと見つかった。本棚を買うお金があったら、本を買っているからで、もう本はなるたけ買わないようにしようと思っている。4巻の最初の方で、泣ける羊のラムニー君が、立ち読みはするけど、売上カードが数ページに渡ってはさまっているのを、抜き取ってまで読むのは後ろめたいと言っている。本当に、その通りだなあと思う。もちろん、そんなこと、思わない人も多いだろう。なんとも思わない人の方が多いかも知れない。しかし、いくらかはいるだろう、その通りだなあと思うような人のためのギャグマンガが、このシリーズだ。“少年チャンピオン”のギャグマンガでいうと、やっぱり表看板は『浦安鉄筋家族』みいなマンガであって、その片隅でひっそりと棲息している、そういう存在である。といって、まったくマイナーなのかといえばそうでもなく、ちゃんと連載は続いて、こうして単行本になって、ちゃんと日本全国の書店で売られてる、はずである。でも、そんなシリーズも、これで終わり。5巻の表紙は、シヲリちゃんである。シヲリちゃんとか、のん子ちゃんとか、好きだったなあ。そんな愛すべきキャラクターたちが、メジャーでもなければマイナーでもない、真っ白な空間で、あれこれと存在を主張してきた、または主張することが存在であった、そんなシリーズもこれで終わり。最終回って、こんな、いかにも最終回だっけ?もっと何気ないような気もしたけど、よく覚えてないから、こんなだったのかも知れない。微妙な肌触りというか、ギャグ触りを味わうような、そんなマンガだった。そして、クスリと笑った、その瞬間だけが、自分にとっての真実なのかも知れない。そこに美があるのかも知れない。

 

2005/04/15 『えに☆さむ』1 しまだわかば(秋田書店、ACW CHAMPION 2004.6.20)

月刊誌“チャンピオンRED”で、2002年夏の創刊号から連載で、ずっと読んでいるのだが、単行本が出て、はじめて題名が真ん中に「☆」が入ることを知った。作者の、しまだわかばについては“チャンピオンRED”以前に、ずっと読んで来た平和出版の成年向け漫画月刊誌、“まんがSHOW GAKKO”が休刊前に、諸事情からマイルドな誌面になったときに、4コママンガ「わんだば」で登場したのに、はじめてお目にかかった。なぜか頭に犬のかぶりものをかぶった女の子と、その友人たちの、たわいないマンガだったが、とにかく、キッチリした線で描かれた可愛い少女たちの絵に作者のゆるぎない絵心を感じた。“まんがSHOW GAKKO”は、ほどなく休刊になったが、その後も出続けていた増刊“まんがSHOW GAKKOエクストラ”が“ラブマニ”と名を変えた、その表紙に、手ぬぐいで猿ぐつわされて、縛られた少女などのSM的な絵が描かれていた。すぐには分らなかったが、この絵を描いたペンネーム「しまったわなだ」は、確か、しまだわかばの本人の webページ(現在所在不明)で知ったのだと思うが、しまだわかばをもじった変名だったのだ。その頃は、もう“チャンピオンRED”での連載は始まっていた。とにかく、達者な描き手だということが分った。この『えに☆さむ』は、美少女の絵から、エロティックなものを消し去った平穏な可愛らしさに満ちている。私はゲームの類はほとんどやらないので、テレビゲームのRPGゲームというものを体験したことはないのだが、おそらくは、そのRPGゲームの西洋中世的なファンタジー世界の片隅のような、そんな世界が主人公グラシアたちが生活している場所である。眼鏡の若い女性グラシアは、なんでも屋「えにさむ」を営む女主人で、ちょっと天然ボケというか、独特のテンポとノリを持った女性である(連載当初、まだキャラクターがはっきり決まってなかったのか、最初の回では、グラシアが、逆にマイペースのおばあさんに振り回される)。店を手伝うことになったボーイッシュなアリエッタ、海賊を夢見る小さな女の子アルト、盗賊ギルドの気弱な押し売り少女ピアノたち etc. 、それぞれの持つ特徴的なキャラクターのハーモニーをかもしだしながら、おだやかで楽しいストーリーのメロディが奏でられるコメディである。連載で一通り読んでいたが、改めて単行本で、毎晩ちょっとずつ、ゆっくり読み直してゆくと、実に心なぐさめられる。特にグラシアの魅力にメロメロだ。こういうのを「萌え」というのだろうか。もうちょっと、おだやかな何か、みたいにも思うのだが。しまだわかばの、このマンガの絵のタッチでいうと、4コママンガ的な絵の可愛さに近いということになるのだろう。4コママンガ雑誌では、双葉社の“まんがタウン”を最近毎月買っている。その誌面には、パッと見ると、可愛い絵であふれている。主人公たちの、ちょっとしたキャラクターの特徴に由来する愉快な話がいろいろとあるのだが、それでもそんな中で、読んでみる気になるマンガというと、ほとんどないのである。日常的な話だから入っていきやすいかというと、そんなことはないのである。この作者の世界は、ゲームやアニメの世界に近いようでいて、それらのものに縁遠い私が、すんなり入っていける世界なのだ。いつも海賊帽をかぶっているアルトは、初登場のベッドの上でだけ、帽子を取っている。口数少なく、感情を表に現さないアルトだが、将来は美人になりそうだ。

 

2005/03/23 『ラヴ ラビイズ』1 松本英(秋田書店、ACW CHAMPION 2004.6.20)

2002年夏に創刊された月刊誌“チャンピオンRED”を、それほど期待することもなく、でも創刊号から読んでいるが、創刊当時の連載陣では、この松本英と、同じく単行本の 1巻が同時に発売された、しまだわかばの美少女ショート・ギャグを楽しみだった(他にも、本になっていない好きな連載がいくつかある)。二本とも現在、連載は続いている。松本英は、この連載に先だって、“少年チャンピオン”や“少年マガジン”に読み切りや短期連載をいくつか載せていて、注目していた。最近の若手で“少年チャンピオン”、“少年マガジン”というメジャー誌を同時期に又にかけていたというのも珍しいのではないか。SFやホラーネタを得意とするブラックなギャグで、絵柄はまったく違うが、ギャグの感じが、どこか、私の好きな、とり・みき(のある部分)を思わせた。この連載でも、その基本は変わってないが、より洗練されてきているようだ。どう見ても、人間の少女が着ぐるみをまとっているとしか見えない犬を飼うことになった女子中学生、藍田愛と、その犬ラヴ、そして同級生たちの起こす珍騒動である。主人公二人?はもちろん、その周辺の少女たちも、それぞれにギャグのネタが振れる個性派ぞろいだ。それでもって、美少女ギャグマンガと言うに必要十分に可愛い。主人公、眼鏡の藍田愛ちゃんは、学校では三つ編みなのだが、家でくつろいでいるときは、ちゃんと三つ編みを解いているのだ。ブラックなギャグのマンガであるが、ブラックなギャグというのは、むづかしいと思う。読んでて、どうも、いやな気になるだけのマンガもある。そこにセンスがいるのである。その点、この作者はわきまえているので、安心してブラックなギャグにひたれる。わきまえてるというのは、程度のことを言っているのではない。ブラックなのは、とことんブラックで、それはいいのだが、作者によって肌合が違ってくるのである。

 

2005/03/15 『AMAKUSA1637』9 赤石路代(小学館、PFフラワーコミックス 2005.2.20)

現代の高校生たちが島原の乱の前の天草にタイムスリップ、剣のある流派の家に生まれて剣の達人である夏希を始め、それぞれに天才的な能力を持つ彼らは虐げられている農民たちのために立ち上がる。そして、前巻で、ついに戦いが始まってしまったのだ。この巻の最初は、そんなとき、現代に帰れるかもという希望が出てきた。さて。江戸城の男色の徳川家光は、柳生十兵衛から、一揆軍が島原城を占領したとの知らせを聞き、天草四郎を生きたまま連れて来い、「その男 思いきり凌辱して わたしの足元で許しをこわせて−−殺してやる」いや−ん(赤面)。“フラワ−ズ”連載中(笑)。1990年頃の『ふしぎのRIN』から赤石路代を読んできて、ミステリ、アクション、ホラ−、そういったものを描くのは何度も見てきたが、真正面から戦争を描くのを読むのは初めてなので、やはり、前巻の感想で書いたように、どう描くか、面白く見ている。もちろん、このスト−リ−の流れとして、あくまで前向きな主人公が公憤に燃え、周囲の仲間たちと助け合いながら、道を切り開き、こうなったらいいなあというように痛快にスト−リ−は進んでいるので、今後もそういう風に進んで行くことを期待している。一方、現代に帰ることを決意して、船の沈没場所に向かった聖香は……という展開、読ませる。なんとか反乱にならないように事を収めよう、反乱になっても一揆軍が勝利するようにと九州の各大名のもとを今までまわってきた夏希たちだが、この巻の後半、その中でもユニ−クなキャラクタ−だった黒田忠之が動き始める。家光の従兄で、九州に流されている松平忠直と会うくだり、面白い。

 

2005/01/16 『AMAKUSA1637』8 赤石路代(小学館、PFフラワーコミックス 2004.10.20)

1637年の天草にタイム・スリップした、剣の達人の高校生、夏月たち。 8巻だが、まだ完結していなかった、ということは、作者の小学館の一連の単行本の中で、最大の長編だ。巻末に「AMAKUSA 1637 大名リスト」というページがあるが、確かにそろそろ、こういうものでもないと、えっと、この人、どういう人だっけ?ということになるかも。さて、島原の乱は回避されるかも知れないと思っていたが、この巻、とうとう戦争始まってしまいました。奔放な、この作品、作者の描く「僕たちの好きな戦争」あるいは「歌と饒舌の戦記」がどんなものか、楽しみに拝見したい。

 


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