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<日 記> 「浅場で小物を釣りたい…」
そんな気持ちが私の胸の内でずっとくすぶっていました。
最近の私はずっとオモリ100号前後を使っており、その重さと深さゆえ小物釣りのような手元に伝わる直接的なアタリとか微妙な誘い、繊細なアワセのタイミングなどとちょっと疎遠になっていたのです。
だから無性に小物釣りをしたかったのです…。
小物といえばもちろんホームグラウンドの東京湾。
私の師匠によれば「東京湾内の小物ほどスレていて釣るのが難しい魚はない!!」とのことです。
たまには私もそんなスレッカラシな性悪魚を相手にマジメに戦ってみたいと思ったわけです。
しかし、ここ最近の私の釣果はあまりにも無残…。
本命を良くて1尾、悪くてボウズなショボショボの釣り人生を邁進しております。
それに歯止めを掛けるのは得意としている釣り物しかございません。
そうなると自分と相性のいいターゲットを選ぶのは自明の理、自然の摂理、守りの人生…。
もう、これしかありません!!
今までの釣果でも悪くて3尾、良くて61尾との素晴らしい数字を残しているのです。
困った時のフグ頼み、ホントこれしかないのです!!(キッパリ)
いつもの師匠と現地船上で待ち合わせをすることにした本日の釣り。
フグはやっぱりオオドモと、地元民の地の利を活かして自ら買って出た席キープ係。
これまたいつもご愛顧してますの新明丸さんに着いたのが午前5時10分。
周りはもちろん漆黒の闇。明かりといえば遠くに見える橋の街路灯くらいなもの…。
そんな中を釣り道具を背負って船に乗る私。あわよくば両舷オオドモをキープしたいところであります。
さすがにこの時期でこの時間、数隻ある船にはまったく人の気配を感じません。真冬の明け方にわざわざ釣り座を獲得するために早朝から寒い思いをしてこんなことをするのは私くらいなものでしょう…。
きっと釣りに興味のない人が見たらアホだと思うことでしょう…。
しかし、それだけ今回の私は釣果にこだわっている、いや、家族のために食糧を確保しなければいけないのです!!(最近、冷凍庫スッカスカだし…)
エッサエッサと左舷オオドモに荷物を置く私。
さて、竿を右舷オオドモにも挿そうかと思い、身体を反転させると…。
な、なんと!!すでにそこには竿が挿さっているではございませんか!!
「マ、マジっすか…」思わず口から言葉が漏れましたね…。
そのときふと、数日前に焼き鳥屋で師匠と飲んでいたときの会話を思い出す。
「たまにいるんですよね、地元の人で前の晩に竿とかクーラーを置いておく人が。で、当日はゆっくり寝て7時くらいにのんびりと船に乗り込んでくるんです。あれはフェアじゃないよね…」
むむむ、もしや右舷の人もそんな輩か!?
釈然としないが、まあ仕方ない…。
左舷のオオドモと2番目をキープして真っ暗な船上で朝ご飯を食べる私…。
しかし、やっぱり夜明け前の屋外は寒い!!
ホカロンを身体の前後に貼っていてもとにかく寒い!!
しかも、会話をして気を紛らわす相手もいない。
仕方ないので一人寂しくキャビンに入り、時間が来るまで軽い睡眠を取ることに…。
それから約1時間後、デッキの上を人がバタバタ歩く音で目が覚める私。
時計を見ると午前6時すぎ。
開店間もない船宿に行き、船代を払うついでに仕掛けとエサを購入。
いつも店番をしているゴールデン・レトリーバーが相変わらず人懐っこい。私の太ももにスリスリしてくる(動物とお年寄りには人気があります、この私…)。
そばにいた船長に挨拶をし、最近のフグの調子を訊いてみる。
「この間は頭で20匹以上いったよ。そんなに悪くないんじゃないかな!?」
ふふふっ、今日こそは必釣だっ!!
船に戻り、タックルの準備をしているところに師匠登場。
この師匠、先日同じ新明丸でフグの単独釣行をした際、なんと憧れのアカメフグをゲットしたそうだ。
「その日の晩に食べたんですけど身がコリコリしていて結構旨かったですよ」とやや自慢気に語る。
私もそんな自慢話をしてみたいものだ…。
午前8時、予定通りの時間に河岸払い。
向かうポイントはフグと言ったらもちろん大貫沖(下関じゃありません…)。
空はスカッと晴れわたり、北寄りの風はやや強いものの今週もまずまずな天気。
航程50分でポイント到着。
その後、船長が丁寧にポイントのリサーチを行い、ノリ棚が目の前に迫る場所でスローダウン。
キッチリ午前9時、釣り開始の合図が出される。
今日の仕掛けも前回同様、胴付きの食わせ仕掛けの下にカットウバリを付ける「欲張り仕掛け」(新明丸受付のオネエサン命名)。
胴付きには小さく切ったエビを付け、カットウの上バリには丸々一匹のエビを付けて船下へ沈める。
水深は浅く、20m弱。
オモリ着底後、糸フケを取り、ナツメオモリが底に着くか着かないかのギリギリで待つ。そのあとは5秒に1回くらいの空アワセをしながら小さなアタリでも見逃さないように竿先に集中する…。
1時間経過。
右舷オオドモのオジサンは木っ端フグを5尾釣っている。この人の場合は投げて広範囲を探り、糸フケでアタリを取るらしい。よくもそんな芸当が出来るものだと感心している私。
しかし、左舷のオオドモの人(要するに私ね…)にはアタリなんか全く訪れない。っていうかエサがかじられた形跡が皆無なのです…。師匠も1回だけ食われたらしいけど、それ以降は見向きもされてないご様子。
午前10時ジャスト、「ちょっと走るからね」と船長のアナウンスがあり、15分ほどポイント移動。
仕切り直しでいざ、再スタート!!
それから30分後、師匠の竿がキュ〜ンと大きく弧を描いた!!
ゆっくり巻き上げていると次第に魚の姿が見えてくる。おおっ、本命のショウサイフグだ!!
しかもこのフグ、ヤケに元気が良くて海中を横走りして私の竿先の方まで泳いでくる。思わず自分の竿で突いてやろうかと思ってみたが大人気(「ダイニンキ」と読まないでね)ないのでやめました…。
上がってきたのは25cm近くの良型のショウサイ。
「やっとボウズを脱出できたぁ〜ッ!!」と師。マジメに嬉しそうなのだ。
それからしばらくして彼はもう一尾小型の本命を追釣した。
今から思えば師匠に時合があったとすればこのときだった…。結局、彼のこの日の釣果は2尾だけに終わった…。
では、私は!?
釣りを開始してから午後2時までの時点でエサが食われた回数、たった2回。そのうち、アタリを感じたのは1回こっきり…。
悲惨であります…。
悲しい結末であります…。
今日こそは本命2尾以上確定だと信じきっていたのに…。
残り時間も1時間を切りました…。
「今日はエサも食われないね!!」と右舷オオドモの常連氏。
「だろっ!!ホント、最近エサを食わないんだよ!!」と嘆く船長。
「『だろっ』じゃね〜ッ!!」と内心、八つ当たりしたい衝動に駆られる私。
「なろーッ!!俺はな、ここにいる連中の誰よりも早くからこの船に乗ってんだよ!!それがなんだい、ちっともエサも取られなきゃ、魚も釣れねぇじゃないか!?おう、どうなってんだよ!?」とドロドロとした暗黒の激情が込み上げる…。
「この海には神も仏も魚もいないのかよッ、ったくよぉ!!一番苦労した人が一番釣れないなんて理不尽なことがあるならこの世も終わりじゃねぇかよ!!ちっ!!」怒りの沸騰点は最高潮に達しつつあった。東京は深川生まれのこの私、だんだんとタチの悪い下町のオヤジ的な口調になってくる(もちろん口には出さないけどね)。
怒りとアセリに身悶えながらも釣りに集中しようと自分に言い聞かせる。
しかし、時間は容赦なく刻々と経過していく…。
「コツッ…」
聞こえるわけもないが音にするとそんな感じのアタリがあった。
反射的に私が竿先を数センチ聞き上げた。
そしてなにか違和感を感じた…。
とりあえずリールを2、3回巻いてみた…。
「ズッシ〜ン!!」
おおっ、間違いなくフグらしい重みと動きが手に伝わったぞ!!やったぞ、ラスト40分でとうとう悲願の本命を乗せたのだ!!しかもかなり良型っぽいぞ!!
慎重にかつ、糸が弛まないようにリールを巻いている私。
ヨッシャヨッシャ、フグの姿が見えてきたぞ!!ようやくボウズを脱出したのだ!!
その時、隣りにいた師匠が叫んだ。
「アカメだっ!!」と。
一気に抜き上げ、そのフグをシゲシゲと眺める…。
確かにショウサイとは身体の模様が違う。それに目も酔っ払ったときの自分のように血走っている…。
「こ、これがアカメなんですか…」と私。
「そうです、アカメです!!」と師匠。
私の「今年の釣りたい魚ベスト5」にランクされていたアカメフグ(※1)が唐突に釣れた…。
もう、感無量であります。早朝から孤独と寒さに耐えていた甲斐があります。やっぱり、こうでなくっちゃいけません。
午後3時、納竿のお知らせ。
クーラーの中にはただ一匹のアカメフグ。しかしその貴重な釣果に満足しながら帰りの船中での私の目は、フグと同様、嬉しさと安堵で赤く充血していたことでしょう…。
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