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<日 記> 私の師匠曰く、「ビシアジはコマセ釣りの基本」だそうである。
キャリア10年以上の師匠の言葉だけにヤケに重みを感じる。
見た目のハデさとその豪華さに惑わされて、コマセマダイをやりたいと懇願した私に、地味だけどビシアジを何年もやってコマセ釣りをマスターしなければマダイで良い釣果は得られないとの戒めの言葉だった。
また、ある人は「コマセ釣りは人生の基本だ」と豪語した。
その真意は私のような無思慮・軽薄な人間には窺い知ることは出来ないが、これまた何故か胸にズシンとくる言葉である。
今回その「コマセ釣りは人生の…」という名言をおっしゃった張本人、TAKEさんと共にお互い三十路を過ぎ、カミさんや子供も持ち、ある程度これからの方向性も見えてきた今の時点で再度、我が人生を振り返る意味を含め、ビシアジ釣行をし、人生とはなにか、家庭とは、仕事とは、釣りとはなにかを顧みようと思ったのであります(今回はマジメだぞ!!)。
まずはその人生内省の場所を決めなくてはならない。
アジ釣りだからといってサビキ仕掛けで小アジなどを釣ると「ああ、俺の人生ってこんな小さなものなのね…」とか思っちゃう心配があるので当然、大アジ狙いでなければならない。
大アジといえば泣く子も黙る走水。
そこでTAKEさん御用達の船宿である関義丸さんにお邪魔することになった。
当初、午後船に乗ろうと言っていたTAKEさん。
しかし私はここ最近半日釣りばかりが続いており、たまにはじっくりと丸一日かけて釣りを楽しみたかった。
そこで「私は午前船から乗ります。午後に合流しましょう」と彼にメールを送った。
するとTAKEさんから、奥さんに交渉し、自分も朝から乗れる許可を得たとの連絡が入る。
「オマエだけ一人でたくさん釣られてたまるか!!」とでも思ったのだろう…。ふふふっ、彼は知らないのだ。私は魚を釣るのが目的ではなく我が人生を見つめ直すために乗ることに…。
朝の5時40分、迎えに来てくれたTAKEさんの車に乗り、いざ走水へと向かう。
宿に着くまでの約1時間、これから見つめ直そうとしている人生論なんかじゃなく、TAKE家の釣りをめぐる夫婦喧嘩話から始まり、十二指腸潰瘍で悶絶し、入退院するに至った彼の不幸話で腹を抱えて笑う私たち。
しかし、どうやらTAKE家の喧嘩の原因である釣りには影で私が関与している気がしなくもない…。ご主人が私のような釣りバカと知り合い付き合うようになってから受けた奥さんの気苦労と懐具合のダメージは計り知れないものがある。「すまん…」と心の中で思わず詫びる…。
午前6時半、無事に船宿指定の駐車場に到着した私たち。
まずは船に乗り、場所をキープする。
すると出船1時間前だというのにすでに船上にはたくさんの竿が挿さっていた。そこで2人分ほど空いていた左舷ミヨシ付近に場所をキープする。
それから船宿に行き、乗船名簿に記入をし、料金を支払う。
関義丸の名物美人女将はこの時間はまだ店におらず、オジイサンが受け付けをしてくれる。
荷物を持って船に再度乗り込む私たち。
しかし、立錐の余地もなさそうな盛況具合にオマツリの不安を感じずにはいられない…。
そこでTAKEさんからある提案が出された。
「その場所じゃなくて、ここのスーパーミヨシで釣りませんか!?」と。
そう、ルアーマンのお立ち台、青物系アングラー垂涎の釣り座、スーパーミヨシである…。
腰掛ける場所はなく、循環水パイプもなく、あるのはただ竿を挿す穴と落下防止の柵だけの孤高の釣り座だ。
しかし、ここならある程度隣りの人とも距離があるし、オマツリの危険性は少ない気がした。それに今日は風もなく、凪っぽいので大揺れする心配もなさそうだ。
その提案に素直に従う私。
TAKEさんが右舷、私が左舷側を陣取る。
そんな私たちの様子を見た船長が、「本当にここでいいの?あれだったら席を作るけど…」と訊いてくれた。
さらに「危ないから気をつけてね…」とも。
私自身、この場所で釣るのは初めてだ。ただ、落下よりも心配なのは海面からの高さがあり、バレやすいアジを取り込むのにやや不安なだけ…。
しばらくしてから船長の奥さんである美人女将が車で港まで乗りつける。
そしてTAKEさんに「すいません。これ、渡してもらえますか?」と船長のために詰めたであろう保温タイプの弁当箱を手渡す。私などいつもコンビニで買った冷え切ったおにぎりセットだというのに…。なんとも羨ましい内助の功である…。
その後、今度はコマセを入れたバケツが次々と舳先から運ばれた。
それを受け取り、後ろの人に次々と手渡しするTAKEさん。
それが終わったら今度は氷のバケツリレーが始まる。
次第にTAKEさんが仲乗りさんに見えてきた。人のために労を惜しまない彼、面倒見の良さを垣間見た瞬間だ。
午前7時半、定刻どおり船は港を離れた。
航程20分で観音崎沖に到着。
仕掛けはハリス2号の3本針。130号のビシにまだシャーベット状のコマセを詰め、船長のゴーサインと共に海へ沈める。先日のオニカサゴ釣行で穂先をヘシ折り、修理から返ってきたばかりの私の愛竿、リーディングXサソイがいいしなりを見せる。
水約70mで着底。セオリーどおりに2m巻き上げ、コマセを撒き、1m巻く。
それを2回ほど繰り返した直後、「グングン、グングン」とアタリが訪れた。
最初のアタリだったので追い食いを狙わず中速で巻き上げる。
海面には銀色に光る中型のアジが。
テンビンが水面に来た時点でリールを止め、道糸を手繰り寄せながら持ち、慎重に抜き上げる。どうにか本命を回収することは出来たが、如何せん喫水線からの距離がありすぎドキドキものである。
その後も次々とアタリが連発する。
一荷は一度だけだったが9時まではほとんど入れ食い状態。嬉しい外道、サバまで釣れて楽しい一日になる予感がした。
だが、私の後ろにいるTAKEさんはアジが食ってくるものの取り込む際にその高さが障害となり、バラシの連発らしい…。
一番悲しいのは目の前まで上がっていたのに安全柵にぶつかってバレるケース。私もやったがこれはやたらと悔しい!!
コマセ釣りが人生の基本だとすれば、このときの私たちはあまりにも厳しい境遇にいたことになる。
エサをバラまき、ようやく掛けた本命にあと一歩のところで逃げられる人生…。
テクニック云々では解決できない、自ら選んだ不遇の状況…。
出船前に船長が言った、「本当にここでいいの?」の意味を今まさに理解した瞬間だ…。
「♪運がいいとか〜悪いとか〜、人は時々口にするけど〜、そうゆうことって〜確かにあると〜、あなたを見ててそう思う〜」
と思わずグレープの無縁坂を口ずさみそうになる私…。
| ◆人生の教訓その3。「無縁坂だけは登りたくない…」 |
10時近くになってから次第に潮の流れが速くなり、道糸は急な角度で流されていく。
それからはお決まりのオマツリ大会のスタート。
「入れ食い」から「入れマツリ」になった。投入すればほとんど間違いなく誰かとマツるのだ。これでは釣りが出来る状態じゃない。
後半、多少は潮が緩んできてポツポツながら型を見れ、11時45分の納竿までに私は13尾のアジをゲット。TAKEさんは痛恨のバラシがたたり、無念の5尾。
| TAKE |
「タカギーさん、まさか家族で食べる分は釣ったから午前で帰るなんてこと言いませんよね!?」 |
| 私 |
「ははは…。ま、まさか…」 |
| TAKE |
「帰るって言っても馬堀海岸の駅まで送らないですからね!!」 |
| 私 |
「だ、大丈夫ですよ…。もともと一日通しで釣る予定だったし…」 |
こんな雰囲気で「じゃあ、お先です♪」なんて誰が言えようか…。
午後12時に一度港に戻り、ほとんどの人たちは船を降りた。
それから私たちは第2ラウンドに向け、釣りやすい場所を選んだ。
どうも左舷の方が調子良さそうだったので私がひとつトモ寄りにずれスーパーミヨシから普通のミヨシへ。TAKEさんは私の隣りのミヨシ2番目。
コンビニで昼食を買って宿で食べ、1時近くになったのでさて、船に乗ろうかとしたら例の美人女将がTAKEさんに、「すみませんけど、これ主人に渡してもらえます?」と使いかけのネピアのティッシュ箱を手渡す。どうやら船長は花粉症らしい。
お弁当といい、ティッシュといい、関口夫妻の愛の伝達係と化したTAKEさん。
しかし、隠れ女将さんファンである彼は船長夫人と会話が出来ただけで楽しそうだ…。
「もう、午後は釣れなくてイイ!!これで十分満足です!!」とかなり有頂天になっている…。
TAKEさんがこの船宿を贔屓にしているのには女将さんの影響が大らしい…。
午後1時、船は港を後にし、再度観音崎沖へと向かう。
船中は午前船に比べるとお客さんは少なく、お昼前にあったオマツリ合戦の心配はなさそうだ。
しばらくしてポイントに到着。
このとき私はある心配をしていた。それは…、
「午後も釣れ過ぎてアジがクーラーに入り切れなかったらどうしよう…」である。
本日持ってきた私のクーラーは12リットルの比較的小型のモノ。すでにその中は7割方アジで満たされている。
だが実際にはその懸念はただの杞憂に終わった。
朝の食いの良さは午後になるとパッタリ止まり、船中を見渡してもアジを取り込んでいる様子はあまり見られない。ただ一人を除いては…。
そう、TAKEさんだけはポツポツとアジをしっかりとゲットしてるのだ!!しかもそのほとんどが35cm前後の良型!!
午前中やった釣りづらい場所ではないからバラシもなく、良型を難なく抜き上げる!!
その本命の体表は脂でテカテカ光り、いかにも旨そうだ。
地道にコマセを撒き続けたTAKEさん。
何度バラしても決してあきらめず頑張ってきた成果が現れ始めた。
海の神様はそんなTAKEさんに微笑んだのだ。
今、TAKEさんにはギリシャ神話に出てくる海の神ネレウスや海洋の支配者ポセイドンが降臨している気がした。
神がかっているのだからもう誰も彼を止めることは出来ない。
そんなミヨシ側と違い、他の人たちはまるでお通夜のように静まり返っている…。
船長は午後5時まで頑張ってくれた。
本日の最終釣果。
TAKEさん、午前午後とも各5尾ずつ釣って合計10尾(ほとんどが良型だったためかなりのボリューム)。私は午後不調に終わり3尾。
長い一日は終わった。
朝の7時半から始まり、午後5時までやった疾風怒涛のアジ対決。
闘いが終わって車に荷物を積んでいるときにたまたま女将さんが来た。TAKEさんの良型のアジを見て心から喜んでくれた。きっとTAKEさんは海の神様に微笑まれたよりも女将さんの笑顔に接した方が嬉しかったに違いない。
よぉし、来週はまたこの2人で今期最後のオニカサゴ決戦だ。
今回得た「人生の教訓」を活かし、今度こそはキロオーバーのオニを捕まえるぞと誓った走水午後5時半の私だったのであります(それにしてもダブルヘッダーは疲れる…)。
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| <TAKEさん、小指が立ってます…> |
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