釣行日:平成14年8月10日(土) 大潮 天候/晴れ 

<釣り物> タチウオ
<釣 果> タチウオ14本
<船 宿> 金沢八景 太田屋

<釣り場> 東京湾 下浦沖
<タックル> 竿/TIFA アオリスクイッド4’1”125、リール/Daiwa ミリオネアCV-Z103(道糸:PE1.5号)、メタルジグ/90〜100g(詳細下記参照)、先糸/フロロカーボン8号1.5m、その他/アシストフック(がまかつ トレブルフックsize1)
<エ サ> 
<釣り座> 右舷トモ2番目
<同行者> 師匠
<どう食ったか> 刺身、フライ、ホイル焼き

<日 記> 今週末、久し振りに休めることになった私の師匠。
 先日の火曜日、その師匠から一通のメールが届いた。

 
「今日はタイを釣った。3キロ1枚・1キロ2枚の都合3枚。ふん、マイッタカ!土曜日、午前タチ行くぞ♪」と。

 師匠は相変わらず仕事が忙しくなかなか釣行が出来ないでいた。
 しかし、火曜日にムリムリ休みを捻出してマダイ釣りに行き、自慢がてらの釣果報告と今日のお誘いだったのだ。

 「午前のタチウオか…。ってことはやっぱり太田屋でのルアータチウオだな。ふふっ…」と私は予想した。
 「さてはこの間、俺が11本も釣ったのが悔しかったんだな」と私は理解した。

 先週の火曜日に同僚の中村と釣ったタチウオがまだ数本冷凍庫で眠っている私は気持ちに余裕があった。
 在庫があるがゆえの「釣れても釣れなくてもいいもんネ!」的余裕である。

 「まあ、師匠との久し振りの釣りだから付き合ってやっか!」と不肖な弟子は師匠の顔を立てることにしたのだ(やっぱり俺って優しいなぁ)。


 午前5時45分に師匠の車に乗り込み、目指すは金沢八景の太田屋さん。
 私たちがタチウオのジギングをやるのはいつもこの宿なのだ。

 その理由は

1) 宿が近い
2) ジギング一日やる体力ないので半日釣り出来る宿がいいから
3) そんなに混まない
4) 船長が感じいい

 である。

 そして師匠はタチウオといったらルアー。
 もちろんその理由は「簡単に数釣れるから」に他ならない。だからいまだに師匠からエサでのタチウオの釣り方を指南してもらってない。

 その正調沖釣りオヤジにも関わらずエサ釣りへのこだわりがないフレキシブルな部分も私が師匠を敬愛する理由のヒトツだったりするのです。要するに
「釣ったもん勝ち」という揺るぎようのないコンセプトが根底にあるんですね。

 まあ一応、口では
「一日のんびりと釣りが出来れば私は満足なんです!」と言ってはいるが私が釣果で勝ったときの「ざけんなよ!!」系視線を見る限り、それも怪しいものですけど…。

 6時過ぎに船宿に到着した私たちは早速、竿を挿しに船へと乗り込む。
 師匠お気に入りの左舷はミヨシからトモまですでに先客がいるようだ。
 そこで右舷に目をやるとオオドモがまだ空いていることに気付く。

 「師匠、右のオオドモが空いてます。どうぞお座り下さい」
 と気持ちに余裕がある私は席を譲った。オトナである。

 受け付けで料金を支払い、近くのコンビニで買い物を済ませ、船に戻る。
 タックルの準備をして、いつもどおりのプチ宴会の始まりだ。

 カワハギや小アジの干物を肴にビールを飲む師匠。
 朝から暑く喉を流れるビールがやたらと美味い。

 その周りでは俺はこのメーカーのリールとは縁がないぞ!と刺繍された帽子をかぶったルアーマンやウエストポーチとペンチを装着した腰道具系ルアーマンが次々と乗り込んでくる。
 観察すると一様に皆さん似た格好をしている。
 「帽子」「サングラス」「短パン」「スニーカー」。教科書どおりのイデタチなのだ。

 「相変わらず爽やかですね、ルアーマンは…」
 「船上で酒なんか飲んでないですよ。私たちみたいに乾き物食べながらの飲酒なんて論外ッスね…」と私。
 「やっぱり彼らにとって釣りはスポーツだからでしょう」と師匠。

 その師匠の足元をフト見れば履き慣れたいつもの
水色便所サンダル(しかもパチンコ玉みたいなの埋め込まれていて足のツボを刺激しちゃうヤツ)。ある意味、健康志向派と言えなくもない…。
 そしてもちろん竿はリョービの「関東シャクリ30号」。そう、前回中村も使ったシャクリ竿。

 ルアーマンだらけの船中、右舷オオドモにいる
「缶ビール飲みながら口の端からカワハギの干物突き出して水色便所サンダル履いたシャクリ竿のオジサン」はイヤでも目を引く。

 私のタックルは軟らかい竿でやることにしたのでアオリイカ用のを持参。
 二人ともリールはダイワのミリオネアであるのが唯一の救いだ…。

 土曜日と好釣果のためか大勢のお客さんが訪れた結果、船を二隻出すことになり、周囲にいたルアーマン数人は私たちを避けるように別船へと移っていった。

 午前7時ジャスト、ロープが外され、船は沖を目指した。


 数日前から吹いていた風は今日になっても収まることはなく、キャビンから見る船窓には怒涛の如き波が襲ってくる。
 航程40分とのことだったが押し寄せる大波を乗り越えるために船長は船を低速で進め、ポイント到着まで一時間近くかかった。

 下浦沖に着くとタチウオ船団が出来ていた。
 しかし、どの船も魚影を探しているのか移動している最中のようだ。
 太田屋の船長も船を停める気配がない…。
 波に翻弄されたタチウオは幽霊のように消えてしまったのかと心配になる。

 そしていきなり投入OKの合図。

やっぱり基本色はピンクです。
<本日のメタルジグ>

 今回私が用意したのは渋谷の上州屋二階で調達した自分の中では必殺メタルジグと思っているYO-ZURIのBLANKA100g(初めて見るピンクのキラキラに夜光塗料付きバージョン)とシマノのイワシに似せた90gの2本。どちらも食いそうである。

 そこで始めにピンクのメタルジグを試すことに。
 船長からの指示ダナは35〜50m。前回よりも若干深くなっていた。
 私はいつものようにダラダラとタダ巻きを繰り返す。タチウオの活性が分からないので巻き上げるスピードはゆっくりめ。

 するといきなりタチウオが乗った重みを感じた。
 巻いてみるとグングンと引いている。こりゃ、本命間違いなし!
 と、思っていた矢先、ミヨシのルアーマンの道糸とマツリ、いきなりのバラシ…。上がってきたルアーにはしっかりと歯型が付いていた。う〜ん、残念…。

 師匠もアタリはあるものの食いつかずに苦戦している様子だ。

 しかし、今日の私は気持ちに余裕がある。そう、釣れなくても我家には在庫があるんだもん。
 その余裕が効を奏したのか数投目でまたの乗り。
 軟らかいアオリイカ竿が胴から曲がる。この引きがクセになるのだ!

 ところが海面まで顔を出したタチウオは口切れして海に帰って行った…。
 でも、考えてみるとこれだけ乗ってくるってことはやっぱりこのルアーは当たりなのだろう。いい買い物をしたのだ。

 それから私は5本以上釣り上げた。
 型はやや小振りながらも夏の陽射しを浴びて銀色に輝く本命はいかにも旨そうである。

 そして本日のクライマックスが訪れる。
 今まで以上に力強い引きに竿が持っていかれそうになった。
 この強烈な引きはスレで掛かっているに違いなし。
 リールを巻く手を何度も止められながら船内に取り込まれたのは指4本近くありそうな幅広の全長80cm近い良型タチウオ。

 脇腹にフックが突き刺さり痛そうに暴れている。
 そこで私は横たわっているソイツからフックを外してやろうと屈み、右手でルアーを持った。
 そして身悶えする魚体を左手で押さえ付けようと添えた瞬間、タチウオがアタマをこちらに向けた。

 一瞬、目が合った。
 その眼光は明らかに殺意を秘めていた。
 それからのことはまるでスローモーションを見ているかのようだった…。

 怒気と苦悶に復讐の鬼と化したタチウオは電光石火のスピードで私の左腕に噛み付いた。

 ギリギリと前腕部に感じる良型ならではのアゴの力。
 ガッチリと食い付いたのは私のメタルジグにではなかった。その持ち主に捕食の矛先を向けたのだ。

 
「うわっ、噛んだ!!」と私。
 師匠はそれを見て、すぐさま竿を置き、ペンチをムンズと掴んだ。

 下アゴは師匠のおかげですぐに外れた。
 しかし、ガッチリ食い付いた上アゴの歯は根元まで私の腕に刺さっている。
 その、毒蛇の牙のような歯は口をこじ開けたくらいでは簡単に外れない。
 歯の形状に沿った方向へ思いっきり「エイッ」と自力で引っこ抜く。
 すると…、










「ドピュ〜ッ!」










 と血が噴き出た。

 よりによってこのタチウオは断末魔の逆襲の一撃を私の静動脈のどちらかにくれたのだ。
 魚に噛まれたくらいでこれほど出血するものかと我ながら驚く。

 私の足元は修羅場となった。
 おびただしい鮮血、なおも荒れ狂うタチウオ、女性たちの悲鳴が船中に響き渡り、子供たちは逃げ惑う(ウソです…)。
 平和だった現場は突如として阿鼻叫喚の地獄絵図と激変した…。

通り魔殺人の現場のようだス…。


 「早くタオルで押さえて止血しないと!」と師匠。

 傷口にあてがったタオルは見る見るうちに真っ赤に染まっていく。試しに絞ってみるとボタボタと血液が滴り落ちた。
 噛まれた周辺の皮膚は内出血を起こしているのかモッコリと腫れてきた。

 「くそッ、調子よかったのにこんなことで邪魔されるとは…。む、無念…」と私は悔やんだ。

 しばらくの間、やることがないので持ってきた缶チューハイを飲みつつ、タバコを吸いながら周りの様子を伺う。
 ただ幸運なことに船中はこの時、食いから遠ざかっていた。

 5分ほど押さえていたらようやく出血も収まり、バンドエイドを貼る。ふん、私は血が止まりやすい体質なのだ!ザマミロ、タチウオめ!!これで戦線復帰だ。

 それからの私はまさに鬼神の如く釣り上げた。
 私を手負いにさせたタチウオへの復讐劇が始まったのだ。

 メタルジグをイワシバージョンに変更し、先糸との接続部分にはアシストフックを付け、触れた獲物はすべて引っ掛けようと試みる。
 落とし込みで乗せ、巻き上げでは乗ったタナだけを集中的に攻めた。
 竿を持つ左腕は力を入れるたびに鈍痛を感じたが些細なことだ。

 「そんなに釣っても食べきれないでしょ…」と師匠。
 「いや、それはどうでもいいのです!これは自分とタチウオとの闘いなんです!!」と私。
 気持ちはまさに小説「白鯨」のエイハブ船長だった。

 気付けば納竿の午前11時になっていた…。
 師匠は今イチ乗りが悪く残念にも3本に終わった。

 その師曰く、「今日は竿が軟らかめの方がよかったのかも。私の竿では硬すぎてみんな弾いちゃった…」と私との釣果の差を評論した。

 結局トップの人で23本であった。自分としては善戦したと思う。

 さあ、チャラチャラしたルアーマンたちよ、流血しながらも釣り上げた沖釣りオヤジの根性と執念を見習え!!釣りはスポーツなんかじゃないんだ!闘いだ!!どうだまいったか、わはは。

今週は自分でネタ作り♪
<不名誉な負傷です…>

まさに出血大サービス状態 アタマにきたので速攻で食ってやりました!
<闘いのあとにはタチウオ料理地獄が待ってます> <東京湾のモビーディックです>