釣行日:平成15年8月25日(月) 中潮 天候/晴れ 

<釣り物> アジ
<釣 果>
 アジ88尾、シロギス2尾、イシモチ1尾、サッパたくさん
<船 宿> 鶴見弁天町 近藤釣船店富士丸
<釣り場> 東京湾 中ノ瀬
<タックル> 竿/Daiwa リーディングXサソイ100-150、リール/Daiwa ミリオネアCV-Z250F(道糸:PE4号)、仕掛け/【A】船宿オリジナル アジ仕掛け(アジ針10号2本針・幹糸2号・ハリス2号・全長2m)【B】ヤマシタ 一荷専用仕掛アジビシ(金ムツ10号3本針・ハリス1.5号・幹糸1.5号・枝25cm・全長2.1m)、テンビン/夢の天秤(アジ・イサキ用)、オモリ/アンドンビシ120号、クッションゴム/15cm・1.5mm
<エ サ> 【付けエサ】アオイソメ【コマセ】イワシのミンチ
<釣り座> 左舷オオドモ
<同行者> ―
<どう食ったか> 特盛り刺身、アジテンコ盛り梅シソ丼、ポン酢仕立てのゴマリネ…。はい、書ききれません…。

<日 記> 今日で私の夏休みもおしまい。
 出来ればその最後を華々しく飾るような釣行をしたいと思っておりました。
 要するに「釣れる釣り」。

 この大命題の候補としては、

 1)シロギス
 2)アジ
 3)タチウオ

 をリストアップしたわけです。

 1)のシロギスなら地元鶴見の畑中丸に行くつもりでした。久しく畑中のオヤジさんとも会ってないし、近場のポイントでのんびり釣り糸を垂らし、リラックスするのも楽しそう。

 3)のタチウオだったら金沢八景の太田屋で午前タチ。たまにはルアーマンと対決するのも悪くありません。爽やか系ルアーマンVS純正沖釣りオヤジ。見どころ満載のような気がします。

 しかし、富士丸のHPを見ると今週末、アジが爆釣なのでありました。

 
「23日(土) 46尾〜125尾」
 「24日(日) 82尾〜113尾」


 数字だけ見るとタダゴトではありません。
 これこそ私が求めていた釣れる釣り!

 「畑中のオヤジさん、奥さんと二人三脚で仲良く達者で暮らしなさい!太田屋のルアーマン、本当はお持ち帰りしたいのを我慢して果てしなくリールをカリカリ巻いてなさい!ソルトウォーターとかジャークとかフッキングとか横文字使って死ぬまで外人かぶれしてなさい!」と画面に向かって興奮し、速攻で富士丸へ電話。

 電話に出た女将さんとの会話の要点は、

 a)明日も出ます
 b)浅場だから電動いりません
 c)7時半出船です
 d)中ノ瀬行きます
 e)今、釣れてます
 f)お待ちしてます

 だった。


 富士丸の女将さんは決まって午後になると口数が多くなる。
 きっと夜型の人なのだろう…。

 電話を切った私は、早速翌日の用意をしながら…、

 「ふふふっ、見てろよ爆釣隊メンバーめ。明日は激ウマサイズの金ピカアジをたくさん釣ってやるかんな。テンコ盛りで釣って『こんなに食べ切れないですぅ』とか『クーラー重すぎて泣けてきますぅ』とか『もうアジの顔も見たくないですぅ』ってすぅすぅメール送ってやるかんな!」と一人、ほくそ笑む…。

 その後、カミサンに、
 「明日はアジを釣るぞ!」
 と宣言し、顔色をうかがう(恐いのか?)。

 「あらっ、アジならいいわよ。ウロコもないし。それにちょうどアジのお刺身が食べたかったの」
 と好感触。

 「バァ〜カ!明日の俺は今までの俺とは違うんだかんな!オマエが思っているような数じゃないんだかんな!何十匹ものアジの頭を叩き切って、その倍のゼイゴ取って、小骨を何百本も抜くことになんだぞ!知らねーぞ、俺!」と内心、高笑い。

 まあ、釣りっていうのは始まるまでが夢があって楽しいのでしょうけどね。わはは。



 装備完璧、見送り無し

 朝の5時半に目を覚ました私。
 今日は珍しく電車釣行なのでインターネット(おじさんは「ネット」なんて軽々しく口にしないの!ふん!)を使って電車の時刻を調べる。

 最寄のJR国道駅から6時22分に出発し、浅野駅へ6時27分に着く電車があった。
 浅野駅からは徒歩2、3分で、今日お世話になる近藤釣船店富士丸に到着するから、出船のちょうど1時間前。迷わずこの電車に決定。

 天気予報では今日も30℃を越える真夏日になるらしい。

 そこで、対アジ爆釣用に選んだ20リットルのクーラーに板氷とビール×1本、缶チューハイ×3本、ワンカップ大関×1本、お茶×1本を放り込む。
 さらに、ファミリーマート謹製お弁当×1個、おにぎり(ツナマヨネーズ味)×1個も追加。
 とりあえず、飲食部門は完璧である。

 さらに衣服部門。
 先日ユニクロで買ったドライイージーパンツ(1,000円)を穿き、同じくドライ素材の長袖シャツを着る。白い帽子も速乾性のあるメッシュ地の物。
 日焼け対策・汗発散対策万全の装備。アメリカのイラク地上部隊もビックリである。

 これで衣食住の衣と食の環境は整った。残るは住。
 しかし、住居部門だけは納得がいかない…。
 クーラーの程よく効いた我家を出るのは断腸の思いがした…。

 これから私は、何も遮る物がない海上の真夏の炎天下で悶絶しながら必死にアジを釣ろうとしているのに家内×1名、子供(♂)×2名は見送りする素振りすらない…。
 いや、見送ってくれなくても結構。だが、タオルケット抱いて半笑いで寝ている家内と口からヨダレたらして寝ている長男を見るにつけ、憤りを感じた…。

 仕方ないので飼育ケースの中で回し車で遊ぶハムスター(ぷりん・♀)×1匹に
「行ってくるよ…」と別れを告げ、人さし指でその頭をナデナデする。
 私の指先を前脚2本で抱え、臭いを嗅ぐハム。きっと別れが切ないのだろう…。

 「ガリッ…」

 前歯が私の指に食い込んだ…。
 指を振って払い落とす…。
 どうやら我家に私の味方は皆無のようだった…。

 すでに明るくなっている戸外に出て、駅を目指す。
 途中、数人のスーツ姿のサラリーマンとすれ違う。
 そうだった。今日は平日なのだ…。

 「ふっ、キミたちが満員電車で足踏まれたり、前後左右によろめいたりしているときに俺は中ノ瀬にいるんだぞ。始業開始のチャイムが鳴っているときに缶チューハイ飲みながらビシにコマセ詰めて海底から2mあたりでそれを振ってんだぞ。疲れが見え始めた午後3時頃には宿で冷たい麦茶飲んで女将さんと談笑してんだぞ」と胸の内でつぶやく。だが、どの人も私を羨んでいるようには見えなかった…。


 爆釣に向かって

 JR浅野駅の改札を抜け、富士丸に着くと、近藤耕一船長が店先のイスに座って客待ち顔をしていた。
 挨拶を済ませ、早速座席表に○印を付ける。

 予報によると今日一日南風が吹き、午前9時半頃からは上げ潮のため、釣り座はオオドモが有利と判断。
 しかし、さすがに平日だけあって先客は1名様のみ。
 両舷とも空いていたので左舷オオドモに
を。 

 船代を払って仕掛けを3組買い、アジ爆釣への期待感で居ても立ってもいられなく船へと乗り込む。

 思い返せばこの富士丸にお世話になるのは久し振りだった。
 前回は確か、私と中村チーム対KOBUさんSTさんチームの会社対抗夜アナゴ大会。
 あのときはKOBUさんチームにコテンパンに負けたっけ…。

 そんなことを回想しながらキリンの
秋味を飲む…。
 ビール業界はすでに秋模様。今年は冷夏でビールもあまり売れなかっただろう…。

 私もこの夏はあまり釣れなかった…。
 いや、正確にはそこそこ釣ったのかもしれないが、自分が納得する釣りは少なかった…。

 「でも、今日は違うぞ…」
 誰もいない船上でつぶやいてみた。

 私よりも先に到着していたお客さんを乗せた渡し船が、本船に近付いてきた。
 今日の釣り人合計2名。まさに大名釣行である反面、宿側にとっては損益分岐点のボーダーライナーな2名でもある。

 そのもう一人の方が私と同じ左舷側のミヨシに陣取り、準備を始める。
 耕一船長が来て、アオイソメの入ったエサ箱を手渡してくれた。そうか、最近の好釣にはこのアオイソも一役買っているのか…。

 午前7時17分、定刻よりも若干早めに潮見運河を下る船。
 船が動き出してムシッとしていた空気が途端に気持ちのよい風に変わった。
 鶴見つばさ橋を超えると凪の穏やかな海が私たちを出迎えてくれる。

 私は波しぶきを避けるためにキャビンへと避難。
 しばらくウトウトしようとするがやっぱり興奮して眠れない。

 航程20分で中ノ瀬に到着。
 ウイークデーだからだろう、好釣果が続いているポイントのはずなのに僚船の数が少ない。
 船長はアンカーを打ってロープを伸ばし、スタートの合図を出した。

 「タナは1〜2mでやってみて」と耕一船長。

 とりあえず私の仕掛けは船宿で買った2本バリ。
 それにスタート前に切っておいたイソメを刺し通し、海に沈める。

 ビシは21mで着底。女将さんの言うように電動リールはいらない深さだ。
 まずは試しに50cm巻いてコマセを打ち、50cm上げて待ってみた。
 するとすぐに「クンクン…」とアタリが来る。
 さすが、連日竿頭100尾以上の好調さだ。第一投目からアジが食ってきた。

 手持ちでゆっくりとアジの引きを楽しみながら仕掛けをヒョイっと抜き上げる。
 20cmクラスのアジが元気よく船床を叩く。
 食べ頃で旨そうなアジに思わず頬が緩む。

 次投、同じタナで待っていると先程のとは数段小さいアタリ。
 取り込んでみれば今度は20cmクラスのシロギス。さすがアオイソメだけある。

 三投目は今までのアタリとは明らかに違う、強力な引き。
 ドラグを効かせ慎重にやり取りすると40cmオーバーのサメ…。
 3回投入して三目達成の快挙、この先は何が食ってくるんだろう…。



 男は黙って3メートル

 開始から1時間が経過。
 足元のタルには11尾のアジが泳ぐ。
 バリ食いとまではいかないが、この調子で釣れ続ければ5時間後には55尾、7時間後には77尾のペース(計算合ってるよな…)。

 ところが、その頃から次第に食いが落ちてくる。
 ミヨシにいるオジサンも同様であった。

 「う〜ん、どうした?2人分のコマセじゃ寄ってこないのかな…。それに潮も止まり始めたとか…。いや、この俺がそう簡単に釣れるするわけないんだ…。俺の夏休みは結局アジ11尾で終わっちゃうんだ…」

 と今後の展開に不安を抱き始めた私…。

 その状況を見て、船長は8時55分に移動を告げる。
 今度のポイントは先ほどよりも神奈川県寄り。

 再度、アンカーを打ち、二流し目が開始された。タナは最初のポイントと同じで1〜2m。
 しかし、第一投で本命を上げたものの、それ以降はまたパッタリと食い渋り…。
 偏光グラス越しに見る海は薄まったアイスコーヒーのような色…。かなり水が濁っていた…。

 「ウィィィィィ〜ン」

 ミヨシの方が使っている電動リールの巻上げ音が耳に届く。
 そちらの方向に目を向けると本日のアベレージサイズのアジが釣れていた。

 「ウィィィィィ〜ン」

 こちらには一向にアタリがないというのにまたしても本命。

 「ウィィィィィ〜ン」

 おおっ、なんと今度は一荷ではないか。もしやこのお方、相当な手ダレか!?

 その後も順調に数を伸ばすミヨシ氏。
 私はふと、自分が重大な間違いを犯しているのではないかと推察した。

 そこでタナを1mから1.5mへ上げてみる。底から75cmでコマセを振り、さらに75cm巻いて待つ。しかし、反応無し…。
 それならばと、1mでコマセてタナ2mで待つ。ところが食い付きゼロ…。

 どうも様子がおかしい…。
 二流し目が始まって30分ほど経過したが釣果の差は歴然としていた…。

 私は破れかぶれの作戦に出た。

 「アジっていうのはね、2mでコマセ振って3mで待つのが基本なの!俺は今までそのタナで勝負してきたの!船長は1〜2mって言うけどアジは底から3mにいるの!」

 と逆上気味に自分勝手なタナで勝負に出た。
 すると今まで全く無かったアタリがいきなり到来。
 小気味よい引きに身悶えながら、尻尾周辺を黄金色に染めた中ノ瀬アジを抜き上げる。

 「ホレ、見れ!」
 「コンニャロ!」
 「ナメんなよ!」


 と勝ち誇った視線を操舵室に向けるが、船長までは届いていないようだった…。


 ああ、ついに…

 ところが次第に南東からの風が強まってくる。
 それに比例してウネリも大きくなり、巻上げの途中や取り込みの際のバラシが増える。
 そこで仕方ないので普段は使わないクッションゴムを装着。

 「ゴムを用意するってのは男のエチケットなの。いくら俺はゴムが嫌いだっていっても、状況によっては必要なときもあるの。使わないとあとで泣くことになるの」

 10年前、その真理を理解していれば私はいまだに花の独身生活を満喫していただろう…。

 その後、ついに待ち焦がれていた怒涛の入れ食いタイムに突入した。
 ビシが着底して糸フケを取り、巻き上げている途中からアジがヒットした。
 タナ1mで「クンクン…」、さらに1m巻いて「クンクン…」。

 仕掛けを下ろせば必ずアジが食ってきた。
 そして、気付くと私は前後不覚モードに突入していた…。
 このスイッチが入ると、私の持つ常識的な部分が崩壊し、ある意味自暴自棄になるのだ。

 「今日から待っているであろう地獄のアジづくしメニュー」
 「朝食も夕食も夜食も何もかもアジ」
 「他の冷凍食品の入るスペースが無くなる冷凍庫」
 「アジの処理で不機嫌になる家内」
 「
『またアジかよ!』と言おうものなら殺傷事件になり兼ねない殺伐とした空気」
 そのどれもがどうでもよくなるのだ…。

 面白かった。
 とても楽しかった。
 どうしてもやめられなかった。
 そして数時間が経過した…。

 午後2時35分、
「あと10分したら揚がっていきますから」の耕一船長の言葉で我に返った。
 竿を置き、タルの中のアジをクーラーに仕舞う。
 突然襲う、罪悪感…。

 「エライことをしてしまった…」と後悔した。
 「家に帰るのが恐い…」と思った。
 「このままクーラー抱えてどこかに逃亡してしまいたい…」と途方に暮れた。

 竿頭はミヨシ氏で101尾だった。この人も後悔しているのであろうか…。


 カウントアップ

 「い〜ち、に〜、さ〜ん…」
 クーラーからキッチンの流しに移すアジをカウントする子供たち。

 「さんじゅうご〜、さんじゅうろく〜、さんじゅうなな〜」
 久し振りに大量に釣ってきた魚を見て、目を輝かせる子供たち。

 「ろくじゅうはちぃ〜、ろくじゅうきゅう〜、ななじゅ〜」
 家内はリビングで雑誌を読み、現実から逃避していた。

 「はちじゅうろく〜、はちじゅうなな〜、はちじゅうはちぃ〜!」
 「かあちゃん、スゴイよ!アジが88もあるよぉ!!」


 こちらに目を向けた家内の目は意外にも笑っていた…。
 ただし、その目は背筋が凍りつくような怒気を含んだ笑みだった…。
 アジの刺身を食べたいって言ってたじゃん。勝手なんだから。もう…。


しょうがないじゃん、釣れるんだもん…。 中の瀬サイコー!
<しかし…> <さすがアオイソメ>