釣行日:平成15年9月28日(日) 中潮 天候/曇りのち晴れ 

<釣り物> タチウオ
<釣 果>
 ―
<船 宿> 新安浦 こうゆう丸
<釣り場> 東京湾 下浦沖
<タックル> 竿/Daiwa リーディングXネライ195、リール/Daiwa SEABORG300(道糸:PE4号)、仕掛け/【A】ハヤブサ こうゆう丸オリジナル仕掛け【B】ヤマシタ 太刀魚仕掛完全手研針(タチ魚針手研M号2本針・幹糸8号・ハリス8号)、テンビン/遊動テンビン(アーム長40cm・2mm)、オモリ/100号(シェルブライトスカリー超発光)
<エ サ> サバの短冊、サンマの切り身(TAKE氏献上品)、カタクチイワシ(まっちゃんプレゼント品)
<釣り座> 右舷トモ3番目
<同行者> TAKE氏、まっちゃん
<どう食ったか> ―

<日 記>
 平成15年8月30日、横浜。
 管理人の携帯へ一通のメールが届いた。

諸般の事情により明日は釣りに行かないアルヨ。。申し訳ないですが明日は一人で船上の涙酒を飲んでちょ。

 わはは爆釣隊の「四バカ」に数えられる“まっちゃん”からだった。
 それは、翌日に控えた南房太海「聡丸」においてのフラッシャーサビキ五目・オニカサゴ釣行への不参加を表明する知らせだった。
 メールを読んだ管理人は落胆すると同時に分配が増えることに思わず頬が緩んだ。


 明けて平成15年8月31日、管理人宛てに再度メールが着信。

釣れましたか?
ワタシの方は不覚にも胆石の疑いで本日未明に入院してしまいました。トホホ。
貴殿もおきを付けあれ。痛いよこれは。
しかし病院はつまらんです。。

 意表をつくようなまっちゃんからの悲しい知らせだった。
 しかしその日、管理人は自己最高のオニカサゴ1.9kgを釣り上げ、幸福の絶頂だった。
 当然、まっちゃんからの不幸な知らせなど、有頂天になっている管理人の意識の深層にまで届くはずもなかった。

 だが、まっちゃんにとって、その日から長くツライ闘病生活が始まるのだった…。
 もちろん、そのことを他のメンバーたちは知る由もなかった…。


NHKさん、受信料払ってんだからこれくらい許してね…。

崖っ淵の釣果
ドン底のジリ貧
みんな何処へ行った 魚探映ることもなく
釣れてるものを追って 釣れるだろうと思って
人は氷ばかり貰う
つばめよ高い空から教えてよ 俺の明日を
つばめよ元を取れるの いつ頃になるのだろう


「うぉぉぉぉっ!ぐるじーっ!し、しぬ〜ッ!!」
「だ、大丈夫ですか、クニイさん!?}
「はっ、腹が尋常じゃないくらい痛むんですよ、ゼンバさん…」
「あら大変!でもどうせクニイさんのことだからバカみたいに局の食堂でドカ食いしたんでしょ!?」
「違いますよ!と、とにかく救急車を呼んで下さい…」
「♪水道トラブルゴセンエン、トイレの詰まりはハッセンエン、パイプの詰まりもハッセンエン、安くて早くて安心ね。毎度!クラシ○ンです。トラブっているのは水道ですかパイプですか、それとも大便器の詰まり?」
「ゼ、ゼンバさん、なんでモリスエさんを呼んだんですか…。私は腹部が痛いんですよ…。」
「すみません!動揺しちゃって」
「せっかくだから診ましょう!口開けて下さい、ファイバースコープ突っ込みますから」
「私の身体は排水管ですか!」
「あらら、やっぱりパイプの詰まりですねぇ。大きな石が2、3個ありますよぉ。すぐ取りましょう!」
「さすが東大卒のゼンバさん、素晴らしい判断でしたね…」
「さて、本日の“プロジェクトバッテン〜貧果者たち〜”は胆石で生死の境をさまよいながらも奇跡の生還を遂げたある釣りバカの入院から復活までをご紹介致します。題して、『壮絶、30日間の胆石戦争』です」
「いっけね、プライヤーとモンキー忘れた…」


 繰り返された「どうしました?」

 平成15年8月下旬、三ツ沢。
 その夜、まっちゃん(以下「松本」とする)の腹部を思いがけない激痛が襲った。
 それは今まで体験したことのないほどの痛みだった。

 「タダゴトではない!」松本は直感した。
 「救急車を呼ばなくては…」松本は焦った。

 だが意外にも、思いとどまった。
 松本は救急車を出動させてもいい痛みとはどの程度なのか判断がつかなかったのだ。

 「やっぱり、もう少し痛くなったら呼ぼ…」松本はタメらった。
 「病院に着く頃、もしも痛みが引いていたら格好悪いしな…」松本は尻込みをした。
 ところが、この躊躇が更なる苦痛を増長させる結果につながった。

 ついに我慢の限界に達し、
「119」に電話をした。
 松本は脂汗を流し、歯を食いしばりながら救急車の到着を待った。その時間が永遠にも感じられた。
 だが、救急車はいつまで経っても来なかった…。

 突然、電話が鳴った。
 
「あっ、松本さん?あのね、お住まいが見当たらないんですよ!」
 救急隊員からだった。

 松本は愕然とした。それは思ってもいない知らせだった。
 「救急車が道に迷うなんて…」松本は目の前が真っ暗になった。
 そして必死に自宅までの道順を説明した。藁にもすがる思いだった。

 それから10分以上が経過した。かすかに聞こえる救急車のサイレンは相変わらず近付く気配がなかった。
 松本の家は大通りから奥に入り、墓地に隣接する分かり難く、辺鄙な場所にあった。

 「このままでは病院よりも先に隣りの墓地に入ることになる!」松本は震撼した。
 そこで、リュックを取り出し、その中に身の回りの物を詰め込んだ。
 激痛に苛まれながらも松本は大通りまで自力で出た。
 「見つけられないなら俺から行ってやる…」必死だった。

 そしてどうにか救急車に拾われた。

 「どうしました!?」救急隊員が訊いた。
 「急に物凄い腹痛が…。助けて下さい!」
 「分かりました!早速、病院を当たってみます!」
 「ええっ、これから探すんですか…」

 松本は救急車を手配する際、自分の症状を伝えてあったのだ。
 当然、手当てすることが可能な病院は押さえてあると思っていた。
 ところが、救急隊員は松本に対して道端に倒れていた人を偶然発見したかのような接し方だった。

 腹部を襲う激痛に悶絶しながらも松本は、病院側担当者とヤリトリをする救急隊員の声に耳を傾けた。

 「そうですか…。はい…」
 「空いてない…。どうも…」
 「一杯ですか…。失礼します」

 耳に届いてくる内容から近隣の救急病院は松本の受け入れを拒否しているのが分かった。

 「たらい回し」

 そんな言葉が松本の中に芽生えた。
 泣きたい気持ちだった…。

 その後、ようやく収容先が見付かった松本は、安堵の思いと共に一刻も早くこの苦しみから解放されたいと願った。腹部の痛みは背中にまで広がっていた…。

 「どうしました?」ストレッチャーの上に仰臥する松本に向かい、病院の看護士が迷惑そうに先ほどの救急隊員と同様の質問をした。
 「急に物凄い腹痛が…。い、痛い…」松本も同様の答えを繰り返した。

 早速、夜勤の医師の診断が始まった。

 「どうしました?」医師は挨拶代わりにそう切りだした。
 「どーもこーもねぇよっ!黙って聞いてりゃどいつもこいつも同じ質問ばっかりしやがって!さっきから腹が痛いって言ってんじゃねぇかよっ!なにが『どうしました?』だ、お前らの横の連絡はどうなってんだ!」
 
松本はそう絶叫したい気持ちだった。だが、
 「急に物凄い腹痛が……」結局、松本は本日3回目となる答えを発した。

 医師はとりあえず痛み止めの注射を打った。
 それは約15分ほどで効いてくるらしかった。
 どうにか治療が受けられたことに松本は安心した。何よりもまず、この腸の中を掻きむしるような痛みをどうにかして欲しかったのだ。

 やがて15分が経過した。
 「どうですか、楽になりましたか?」医師が訊いた。
 「いやっ、全然変わらないです…。い、痛いです…」事実だった。
 「ああ、そう。じゃあアノ薬を打とうかな…」
 「もっと効く薬があるなら最初からそれを使えよっ!俺はずっと痛くて痛くてたまらないのをコラえているんだぞ!ホントに痛いんだぞ!ナメてんのか俺を!!」

 松本は内心でそう憤りながらも主導権を握られている医師に懇願した。

 「お願いします…」


 胆石疑惑

 翌朝、目を覚まして最初に見た物は、自分の家の天井ではなく病院の古ぼけた天井だった。
 やはり、昨夜の悶絶ドタバタ劇は夢ではなかったのだ。
 痛みはどうにか引き、落ち着きも取り戻していた。

 「助かった…」松本はひとり言をつぶやいた。
 「まいったな…」ホンネだった。
 「今頃あいつら釣りしてんだろうな…」外房の海上にいる仲間たちをうらやんだ。

 「先生、どうなんでしょうか?」診察室で松本は質問をした。
 「胆石症の可能性が高いような気もするし、違うような気もするし…」担当医が答えた。
 「すぐに退院出来るのでしょうか?」
 「もうちょっと様子を見てみないとなんとも言えませんね…」
 「胆石はすぐに治るのですか?」
 「う〜ん。でも膵炎の疑いもあるし、胆石かもしれないし…」医師の返答は曖昧だった。


 平成15年9月3日。
 絶食・点滴・胃カメラ等の厳しい洗礼を受けた松本はとりあえず退院をした。

 胆石を身体に抱えながら、松本は仕事に復帰した。
 しかし、好きなアルコールや脂っこい食べ物は極力避けた。ラーメンを食べただけで腹が痛むほど事態は深刻だった。
 釣りさえも船上で突然の腹痛に襲われた場合を考え、控えることにした。

 松本は自分なりに信頼の置ける病院を探した。
 そして検査入院し、徹底的な診察が行われた。

 病名は「胆嚢結石」であった。
 しかも、手術をして開腹しなければならないほどの大きな石があると診断された。

 手術の日程は9月19日に決まった。



 自尊心の崩壊

 松本は再入院する際、「胆石」を扱ったサイトを見回り、ある程度の予備知識を得ていた。
 そこに書かれた手術までの様々な体験談を読んだ。そして戦慄した…。

 「こんな拷問みたいなことするの町医者だけだ…。俺が入院する病院ではこのような野蛮行為はあるはずない…」

 そう、自分に言い聞かせた。

 病室には自分と同じ胆石で治療を受けている人がいた。
 その同室者は松本よりも先に手術をすることになっていた。

 「は〜い、○○さん。じゃあ浣腸しますからねぇ」女性の看護士が促した。

 松本は我が耳を疑った。
 信用していた最新医療の現場でも「浣腸プレイ」は行われていることを知った瞬間だった。

 「俺もあの人と同じ運命をたどるのか…」慄然とした。
 「しかも、若い女性看護士ではないか…」身震いがした。
 「見ず知らずの女に自分の尻の穴を見られて、なおかつ異物を挿入されるのか…」とんでもないことになったと思った。


 平成15年9月19日。
 ついに手術が行われる日がきた。

 「はい、松本さん。浣腸しますからトイレに行きましょうねぇ」ナース(あえて「ナース」とした)が告げた。

 若いナースと共に男子トイレに向かう松本。
 導かれたのは車椅子の使用者が利用出来るようになっている広い個室だった。

 「じゃあ、ズボンとパンツを下ろして下さい」
 「両手を前について腰を突き出して下さいね」
 「あぁ、もう少しお尻を出して…」


 自分がナースに向かって言う分にはヤブサカではないセリフだった。

 ナースはまず手袋をはめた自分の指先にローションを塗った。
 そしてその指を松本の肛門に挿し込み、潤滑油を松本のアナル方面にまんべんなく塗布した。
 次に、プラスチックで出来た浣腸器の先にもローションが塗られた。その先端は約10cmもあった。
 ついに、松本の肛門は処女を喪失し、浣腸液が腸内に流し込まれた。ゆっくりと、そしてたっぷり…。

 数分後、松本は便座に座り込み、グリセリンまみれの軟便と共に自分の自尊心までも流れ出た気がした。

 さらに売店で「T字帯」と呼ばれるフンドシ状の下着とストッキングを購入するよう指示が出た。
 手術室に入る前、松本はフンドシとストッキングの両方を穿いた。心底情けない思いが込み上げた。

 何の因果か見ず知らずの女からローションプレイと浣腸プレイの「2大肛門プレイ」を受け、挙句の果てにフンドシ&ピチピチストッキングの「兄貴系コスプレ姿」にさせられた松本。人間としての尊厳がボロボロになった…。

 手術は順調に進んだ。
 術後、松本が眠りから目を覚ましたとき、そばには愛する彼女、K子ちゃんの姿があった。
 松本はK子ちゃんにこう言った。

 「すりおろしたリンゴが食べたい…」


 生還

 平成15年9月22日、退院。
 松本は辛かった闘病生活にピリオドが打てたことが嬉しくてならなかった。
 1ヶ月前の悪夢の夜から今日までの間に6kgも体重が落ちた。

 そんな松本を秋の陽射しが暖かく迎えた。
 まだ傷口は医療用ホッチキスで止められたままだし、菊関係に恥辱を受けた精神的ダメージからは完全に立ち直ったとは言い難かったが、それでも病気を乗り越え、幾多の試練を克服した充足感が全身を支配した。

 松本は携帯電話を取り出し、ある男にメールを送った。

今週末は一丁行きましょう。
でもまだ切った所が塞がってないのでマダイみたいに豪快にコマセを振ったりするのは無理っす。ライトタックルでイイダコ以外なら何でも良いです〜。わはは。

 ようやく松本に笑顔が戻ってきた。



「♪語り継ぐ人もなく〜」

 平成15年9月28日、横須賀。
 松本は新安浦港に繋留されているこうゆう丸の右舷トモに座っていた。
 その日は仲間との久し振りの釣行だった。
 釣り物は松本の意見を尊重し、また体調も考慮して午前タチウオになった。

「♪吹きすさぶ風の中へ〜」

 しばらくすると仲間たちが到着した。
 その二人は快気祝いにそれぞれ一本ずつワンカップ大関を松本に差し出した。
 松本は顔をほころばせ、その一本を開けた。
 数週間振りに海上で飲む酒は全身に沁みて美味かった。

「♪紛れ〜散らばる星の名は」

 松本は今まであった出来事を仲間たちに語り聞かせた。
 手術後に医師から手渡された胆石がどれくらい大きかったかを伝えた。

 「へぇ〜。その石でカブラ作ってマダイ狙えば釣れるかもよ」仲間の一人が茶化した。
 「ふん。あんな石、捨てましたよ!」松本は答え、沖合いを見つめた。実際に見ていた物は海や空ではなく、過ぎ去った病院での生活だったのかも知れない。

「♪忘れられても〜」

 片舷10名以上の釣り人を乗せたタチウオ船は下浦沖を目指した。
 松本は特エサとしてシコイワシやワカサギを持参していた。
 さらにクーラーは35リットルを用意していた。ヤル気満々だった。

「♪ヘッドラ〜イト、テ〜ルラ〜イト」

 松本たちのグループで最初にタチウオを上げたのは坊主頭の痩せた方だった。
 そして次に海面から銀色に輝く獲物を抜き上げたのは松本だった。ホッとした。
 しかし、朝方あったアタリも次第に無くなってきた。
 周囲を見渡しても釣れている様子はなかった。

「♪旅は〜まだ終わらない〜」

 そのとき、二人の仲間がコソコソ会話をしている声が耳に届いた。
 「そういや今日の釣り、まっちゃんプロデュースじゃん…」
 「どうりで釣れないわけだ…」
 「この人の誘いに乗るのはもうヤメようよ…」
 「釣れたためしがないもんね…」

「♪ヘッドラ〜イト、テ〜ルラ〜イト」

 仲間たちはあまりにも釣れない現状に飽きて、酒ばかり飲んでいた。
 松本も最後のワンカップを手にした。
 3人で松本の生還を祝し、乾杯をした。

見詰め合う二人…。

 松本は今日の釣行のために前夜、小瓶の冷酒を一本空け、身体を慣らしていた。
 それでもアルコールへの耐性が落ちている肝臓には効き、次第に睡魔が襲ってきた。

「K子ちゃん、バナナむいて〜♪」

 その寝顔は幸せそうに見えた。
 暖かな陽射しと穏やかな海に身をゆだね、健康であることを享受し感謝しているようだった。

 最終的には同行者のメガネを掛けた小デブ以外は各1本ずつの渋い釣果となった。

 タチウオは釣れなかった…。

「♪旅は〜まだ終わらない〜」



お土産の並べ方がかなりわざとらしいです。
<最近、こんな写真が多いですぅ>