釣行日:平成16年2月22日(日) 中潮 天候/晴れ 

<釣り物> フラッシャーサビキ五目・ヤリイカ・スルメイカ
<釣 果> アジ1尾、イワシ2尾、スルメイカ3杯
<船 宿> 南房太海 聡丸
<釣り場> 南房 太海沖
<タックル> 竿/RYOBI 海征ヤリイカ240、リール/Daiwa SEABORG500e(道糸:PE6号)、仕掛け/【Fサビキ五目】船宿オリジナル(フラッシャーサビキ7本針)【ヤリ・スルメイカ】ヤマシタ イカ釣PROサビキ(カラフル針14cm5本・ハリス5号・幹糸6号・枝10cm・間100cm)、オモリ/150号
<エ サ> ―
<釣り座> 左舷トモ2番目
<同行者> KOBU氏、おかちゃん
<どう食ったか> 刺身、つみれ汁、その他

<日 記> 先日、KOBUさんから一通のメールが届きました。

D 04/02/20 17:43
F KOBUさん


タカギさんの釣果を読み直してみると最後にクロムツを釣ったのは去年の7月のようです。今日は全員型を見れたみたいなので日曜日は頑張りましょう!!

-END-

 きょ、驚愕の新事実であります…。
 あれほど南房の常宿、聡丸に通っているというのに、私は昨年の夏以来、クロムツを釣ってないらしいのです(自分のことなのに覚えてないのかよ、俺…)。

 聡丸といえば、前半のフラッシャーサビキでの五目釣りが看板メニュー。
 にも関わらず、クロムツの姿を8ヶ月近くも拝んでないという、恐ろしくも悲しい現実。

 「だけどおかしいな…。確かこの間、クロムツ食ったけどな…」

 ふと、過去の思い出をさかのぼってみるわけです。
 ええ、間違いなく暮れあたりに食いましたよ、良型のクロムツを…

 早速、昨年のこの日記をヒモ解いてみます…。
 ほぉ〜ら、しっかりと画像が残っているではありませんかぁ!今から3ヶ月前、11月23日の釣行です。
 そのときの証拠写真がこれです。





マルゴ根はボウズ知らずです。わはは。





 横長20リットルのクーラーに威風堂々と横たわるその立派な容姿。これぞまさにクロムツ。ザ・クロムツです。ああ、煮付けにしたら最高に美味かったよなぁ…。

 ありり、写真の下にコメントが書いてありますね。



<良型クロムツ、マルゴ鮮魚店でゲッツ!!>



 ああ、そうでした。ようやく思い出しました…。
 この日は潮が速すぎて一回も仕掛けを下ろすことなく五目釣りが終了した日でした…。
 しかも、後半のアマダイも激渋で、結局アジ1尾を釣ってオシマイになった日でした…。
 ヤなこと思い出しちゃったな、ホント…。

 ところで、それほどまでにクロムツとは得難い魚なのでしょうか?
 もしかしたら、気安く「クロムツ」と呼び捨てにしてはいけない魚なのかも知れません。
 今後は「クロムツ様」とか「クロムツ殿」とか「クロムツ各位」等の敬称を付ける必要性を感じております。
 いや、ヘタをすると「サー・クロムツ」あたりが妥当のような気もします。待遇は英国男爵級です。

クロムツ 「ほらほら、お前ら、もっとしっかりシャクらんかい!!」
釣り人 「イエッサーッ、ボス!」
クロムツ 「おい、そこのメガネ!なに酒飲みながらやってんだ!ナメんなよ俺を!」
釣り人 「イ、イエッサーッ、ボス!!」
クロムツ 「デブ、ミヨシにいるデブ!!バカみたいに笑ってんじゃねぇよ、デブ!!今食ったのはサバだよ、サバ!!速攻で巻け!!」
釣り人 「アイアイサーッ、ボス…」
クロムツ 「おら、そこ!なにバラしてんだよっ!ったく…。腹筋100回!!」

 ついつい、こんな「愛と青春の旅立ち」みたいな世界を連想しちゃいます…。

 ところが、最近の聡丸での釣果を見る限り、結構上がっているんですね、クロムツ殿が…。
 KOBUさんからのメールにもあったようにボウズ無しの日もあります。

 こうなれば、行かないわけにいきません。
 ふん!待ってなさいよ、クロムツ各位!!わはは。


 風速計からの警告

 午前2時半、迎えにきてくれたKOBUさんの車に乗り、大黒からベイブリッジを渡る。

 そのとき、頭上を通過した電光掲示板が
「風速10m」と表示していたようだが気のせいだと決め付ける私。
 アクアラインの入り口を通過し、海上に架かる橋へ出る手前で
「横風注意」と警告が出ていたことにも目をつぶってやり過ごした。
 さらに、海上橋に出ると目の前にある風速計の数値が
「風速11m」と微妙に上がっていたが、何かの間違いだろうと思うことにする。

 「今日は出船しますよ、多分…。聡丸からも連絡ないし…」
 「前半のFサビキでクロムツ・アジ・サバを釣って、ヤリイカの2、3杯も上げれば十分ですよ、私」
 「それで10時頃に早揚がりだったら理想的ですね…」


 KOBUさんのその意見に私も賛成である。
 私たちは南房釣行に過大な期待を寄せるほど、世間知らずではない。
 何故なら、過去に幾たびもの試練と苦難を体験し、慟哭と嗚咽を繰り返しているからだ。

 「ああ、それいいですねぇ。そこそこ釣って早揚がり!」同調する私。

 ここでの「そこそこ」とは私の場合、「クロムツ2尾・アジ5尾・サバ2本・ヤリ3杯・スルメ2杯」あたりを指す。
 決して贅沢な望みではないと思っている。
 そして、無謀で無茶な目標値でもないと信じる。

 午前4時前には聡丸の駐車場に到着。
 そこには
「太海の鉄人」こと、おかちゃんの車を筆頭に既に数台の車が停まっていた。

 私たちは集合時間までまだ大分時間があるので車内で仮眠を取る…。

 「コンコンコン!」

 運転席側の窓ガラスをノックされ、目覚める私たち。いつの間にか深い眠りに落ちていたようだ。

 車外に出て、先週たくさんのお土産を頂いたおかちゃんにお礼と朝の挨拶をする。
 ウェアを着込み、受け付けを済ませて乗船。
 今日の釣り座は左舷オオドモにKOBUさん、トモ2番目に私。そして、おかちゃんは右舷オオドモである。

 出船前、近くで作業をしている聡船長に、
「今日は何時まで出来るんですかねぇ?」とストレートな質問をぶつけてみた。
 返ってきたのは船長の困ったような笑顔…。
 その困惑顔の真意は「俺に訊かれても分からないよ!」だったのか、それとも「お前ら二人が来たから風が吹いたんだよ!」だったのかは判然としない(きっと後者でしょう。とほほ…)。

 午前5時、満員状態の船は夜明け前の真っ暗な海へと針路を取った。



 鉄人の反逆

 海の状態は、ウネリがあり、ときおり船が大きく左右に振られる。
 しかし、荒れているほどでもないので取りあえずは一安心。
 KOBUさんは出船前にニスキャップを服用しており、船酔い対策は万全である。

 航程45分でポイントに到着。
 まずは前半のFサビキでお土産及び本命(私の場合、クロムツ様です)を確保したいものである。

 忠夫船長の合図とともにリールのクラッチを切って仕掛けを沈める。昨年11月下旬の釣行ではそれすらも許されなかったのだから喜ぶべきことなのだ。

 アタリはすぐに訪れた。
 クロムツのガクガクと伝わる魚信ではないが、かなり力強い。
 サバの可能性もあるので、オマツリを回避するため高速で仕掛けを回収。

 上がったのは40cmほどのデカアジ。よくぞバレずに取り込めた…。
 KOBUさんもサバとキンメの一荷を達成。非常に幸先が良いとお互いに目の前の幸せを噛みしめる。

 「はい今、ムツがダブルで上がったよ!」と忠夫船長のアナウンスで船内を見回す私たち。

 「誰だよ、そんなラッキーなヤツは!?」まるで自分の獲物を横取りされたかのような嫉妬感100パーセントの目でそのクロムツ捕獲者を探す。船上の魔女狩りである…。

ワタシマケマシタワ…。
<メチャメチャ嬉しそうなおかちゃん…>

 その犯人はなんと、おかちゃん…。
 しかも2尾とも良型である…。
 さすが、KOBUさんに
「太海の鉄人」と命名されるだけのことはある…。

 「んだよ、いきなり2匹もクロムツ釣っちゃって!!なにやってんだよ、おかちゃん!!」と私。
 「俺たちが今釣ったアジとかサバの価値が急落したじゃんよっ!!」とKOBUさん。
 「やめてよ、円滑な人間関係を乱すのは!!」

 私たち海の男は、釣った者の健闘を称え、その釣果に賞賛を惜しまない。非難轟々和気あいあいである…。

 だがさらに、これだけの生活指導を受けたのに次投ではキンメのトリプルも達成するという、反抗期の中学生みたいな行動に出るおかちゃん。
 明らかなる反逆行為、許し難い単独行動、停学に値する校則違反…。

 「ったくさ、もうちょっと空気を読んで欲しいよな…」私は口の中でブツクサ文句を言う。
 「私たちが風紀委員となって取締るべきですよ!」KOBUさん。

 しかし事態は急転直下、出だしの食い気は下降線を描き、我々はそれ以降クロムツはおろか、アジ・サバのお土産からも見放されることになる…。



 イカへの誘惑

 太陽が水平線上にしっかりと顔を出し、あたりは日中の明るさを取り戻しつつあった。

 「わーいわーい、朝だ朝だ!素晴らしい朝が来た、希望の朝だ!」
 と、喜んでラジオ体操をしている人は誰一人いない(あたり前です…)。
 どちらかといえば…、

 「むむむっ、明るくなればなるほどクロムツは食わなくなるぞ…」
 と、焦燥感を募らせている人がほとんどだろう…。

 そんな矢先、

 「イカをやりたい人は仕掛けを替えて下さい」

 と、船長からの業務放送…。

 ここで大きな分岐点に差し掛かる…。
 選択肢はふたつである。

【プランその1】今までどおりFサビキでアジ・サバ狙いに徹する、お土産作りコース
【プランその2】イカ狙いに路線変更、ヤリ・スルメ沖漬け沖干しコース

 私とKOBUさんはお互いに相手の出方を窺った。
 現状のままで様子を見るか、心機一転イカに未来を託すか。
 決めかねていると、KOBUさんがあるアイデアを思いつく。

 「そうだ、こういうときは太海の鉄人の意見に従いましょう!」と。

 「おかちゃんはどっちやるの?」
 「イカです♪」
と笑顔の鉄人。

 おかちゃんは総括的に判断してイカに自分の今後を賭けるようだ。
 それを聞いてKOBUさんも仕掛けをチェンジ。

 本来、付和雷同な性格の私。
 当然イカ仕掛けに替えるのがいつものパターンであるが、今、私のクーラーの中にはアジが1尾だけ…
 許されることならもう少しお土産を確保してからイカに臨みたい…。
 何故なら私とイカの相性はすこぶる悪いからだ…。

 十分なお土産が出来ないままイカに乗り換えるのはあまりにもリスキー。
 さらに、クロムツ各位を簡単に諦めるのも悔しい。
 私が今日、一番求めていたのは何を隠そうクロムツ殿であるのだ。

 以上の理由から私はFサビキで細々と生計を立てていく方針を選んだ。
 だが、周りでイカが乗り出したら即座に仕掛けをチェンジすることもヤブサカではない。

 「あれっ、イカを狙わないんですか!?」とKOBUさんは異議を唱える。
 「ええ、釣れだしたら仕掛けを替えますよ…」と私。
 「一緒にイカ釣ろうよぉ!」
 「Fサビキでもイカが乗ることあるし…」


 どことなく、「意気地無し」「根性無し」「甲斐性無し」の三無しダメ人間風ではあるが、ここは我慢のしどころだと自分に言って聞かせる。

 皆さんが仕掛けチェンジの真っ最中、私の道糸が突如フケた。

 「あ〜あ、どうせサバだろうな…。しかも、この弱々しい引きは小サバなんだ…。ふん、巻いてる途中に外れてしまえ…」

 と、かなりネガティブな気持ちのまま、高速で巻き上げる。
 ところが、海面に現れたのは久し振りに見たマイワシ。しかもダブル。

 「あっ、マイワシだ!やったーっ、DHCとかEPCが豊富だぁ!!これで明日も健康だぁ!!」

 と、アルファベットが微妙に間違っていることに気付かないまま喜ぶ私。

 ここで私は、自分が選んだ道は間違ってなかったと安堵した。
 自ら組んだ人生設計が正解だったことを確信した。
 だが、イワシ2匹を釣っただけで有頂天になる自分に軽い失望も感じた…。
 
 取りあえず「ほれ、見たことか」とKOBUさんに自慢をしたが、あまり興味は無さそうだった…。

ニスキャップの効果はどうやら6時間ぐらいです…。
<気分が優れないのか、顔色の悪いKOBUさん…>

 後半、またしてもおかちゃんが口火を切る結果となる。
 スルメのダブルを達成し、その後もポツリポツリと数を増やす。
 KOBUさんもヤリイカ交じりでスルメを乗せ、船上干し・沖漬けの態勢に入った。

 「イカ釣ろうよ!!」

 なおもシツコクFサビキにこだわっている私を見かねてKOBUさんが何度目かの助言をした。

 「う〜む、イワシ以降アタリが途絶えて久しい…。しかし今、周りではポツポツとイカが乗っている…。機を見るに敏であることが、若きトップアングラーへの第一歩…」

 私は支離滅裂なことを考えながら、今まで自分が信じて邁進してきた方向性をついに180度転換した…。

 イカ仕掛けに交換してすぐ、私の竿先は大きな弧を描いた。
 巻いている途中にグングンと抵抗する様子から察して、乗っているのはスルメイカに違いない。

 早々に私は良型のスルメを手にすることが出来た。
 さらに、スルメのダブルも達成した。

 
「うほほ、この調子なら5杯は手堅いかもぉ〜♪」

 私は思わず、顔がほころんだ。
 だが本日、私にそれ以上イカが乗ることはなかった…。

 「大島で12mの風が吹いています。これで揚がります!」

 午前10時40分、呆気なく今日の釣行が終了した…。


 友情の分け前

 またしてもクロムツボウズ記録を更新した私…。
 でも、おかちゃんですら一荷で上げてからは顔を見れなかったのだから仕方ないと自らを慰めた…。

 陸に揚がり、駐車場に戻ってから3人で今日の反省会を開く。

 「タカギーさん、このキンメ持っていって下さい」
 あれほど私が糾弾したキンメをおかちゃんは気前よく私に差し出した…。

 「あと、このムツもどうぞ」
 さらに太海アングラー垂涎のクロムツもクーラーから取り出す…。

 「いやいや、これだけは貰えませんよ!!」
 せっかくの厚意だがモノがモノだけに私はご遠慮した。

 「どうぞどうぞ!」
 そう言いながら、おかちゃんは私のクーラーを開け、クロムツを放り込む。

 「タカギさん、沖漬けも持って行って下さい」
 KOBUさんからもスルメの沖漬けが手渡された…。

 私は素晴らしい仲間に巡り会えたことを心から感謝した。
 その優しい思いやりに、思わず鼻腔の奥がツンとなった。

 「いつかは俺がみんなにクロムツをプレゼントしてやるけん…」

 そう、心に誓って南房を後にした…。


 「わぁ〜っ、頂いた魚の方が断然美味しそ〜!!」
 家内はクーラーの中身を見て、目を輝かせた。

 「底の方にお前の好きなイワシもあるんだぞ…」
 家内の大好物のイワシが、私にとって唯一の自慢の一品であった。

 「でも今晩のおかずは、クロムツのお刺身とキンメの煮付けと沖漬けにしましょうよ!」
 「あれ、イワシの刺身は?」
 「う〜ん、そんなに食べきれないからツミレにするわ…
 「今日、食わないのか?」
 「大きいわねぇ、このクロムツ♪

 どうやら、我家で一番クロムツを欲していたのは家内のようだった…。


笑いたきゃ、笑え〜っ!! どれもが美味かったぁ!!
<ええ、身分相応な釣果です…> <どう見ても頂き物の方が映えますぅ>