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<日 記> 私がホームグランドとしている三浦半島。
ここはご承知のとおり、神奈川県の南東部に位置し、東は東京湾、西は相模湾に面する、釣り人にとっては大層に魅力的なエリアであります。
潤沢な海の資源に恵まれ、北部から中部までは丘陵地域が連なり、南部においては農用地が広がる気候温暖なこの地は、私の心を掴んで放しません。
房総での釣行の帰りにときどき利用する東京湾フェリー。その船窓から望む観音崎や東電久里浜発電所の煙突などの景色が近付くほどに不思議と気持ちが和みます。
私の住む鶴見からは比較的近く、電車に乗れば1時間前後でほとんどの場所をカバー出来るのも気に入っている理由のひとつ。
横須賀・鎌倉・逗子・三浦・葉山の5市町で形成され、港があちこちに点在する三浦半島。
当然にその数も多く、東京湾側には金沢・新安浦・走水・鴨居・久里浜などお馴染みの各港、相模湾側も小網代・長井・佐島等たくさんの港を有し、関東地方の釣り人を魅了してやみません。
しかし、今まで私はその突端にある港にだけは足を踏み入れたことがなかったのです。
そこは「松輪港」。
その理由は…、
1) 縁が無かった
2) 行くまでが遠そう
3) 常連さんが怖そう
4) 船長も怖そう
5) 緊張しそう |
といったネガティブなもの…。
「別に行かなくても今の生活に不自由してないもんね、俺…」
そんなスタンスでおりました。
「誘われればヤブサカじゃないけど、自分から率先してはヤブサカだもんね…」
私にとってはそんな感じの港だったのです。
今回、そんな未体験エリアの松輪に突如、お世話になることになったのです。
そのキッカケは先日、TAKEさんから送られてきたメールに端を発します。
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04/03/07 10:11 |
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TAKEさん |
昨日カミさんの親戚がラジオの懸賞にあたったとかで、松輪の成銀丸の無料乗船券を2枚くれました。ただ利用期限が三月イッパイなんですが、真鯛、メダイかヤリイカが釣り物なんすけど、いっしょに行きませんか? タダだよ〜ん♪
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上記の文面で最も私の琴線に触れた箇所が文末の「タダだよ〜ん♪」であったのは言うまでもありません。
「そうかそうか、タダなのか…」
「無料ってことなら松輪に行くのも悪くないよな…」
「たとえボウズを食らってもタダなんだかクヤしくないだろうし…」
私の中の「ヤブサカ指数」は途端に下落したのであります。
そんな経緯で松輪バージンを脱することになった私。
狙う釣り物は魚の王様マダイ。
「松輪でマダイ」、これは釣り人にとって一種のステイタスです。
業界では(ナニ業界?)松輪でマダイ釣りをしたことの「ある」「ない」でその人に対する評価に大きく影響するといわれています(ウソです)。
「松輪マダイ経験者」には賞賛と尊敬の拍手が惜しみなく送られ、羨望と畏怖の念を持って接されるのです(これもウソです)。
合コンの席上で「松輪ってさ、いちいち魚屋でオキアミ買わなきゃいけないからメンドーなんだよね…」と言ってみましょう。間違いなくアナタは今夜のヒーローです(有り得ないです…)。
さあ、ついに果たす松輪デビュー。
「外房の海で揉まれたこの俺をナメてかかんなよ松輪の常連め!」
「こっちはな、ビシマにシャクリに鴨居式といろんなタイ釣りしてんだかんな!」
「釣れた経験は少ないけれど、回数だけは一人前なんだぞ!」
と、虚勢を張って臨んだ本日の釣行、さてさて結果はいかに…。
■ 8倍のヨロコビ
早朝の4時30分、いつもの待ち合わせ場所に迎えに来てくれたTAKEさん。
思い起こせばTAKEさんとの二人だけの釣行は昨年9月20日以来の半年振り。
もともと真面目な性格の彼、脱サラをして赤帽に転職をしてからは愛するご家族のため、身を粉にして激務を消化しているのであった。
当然、土日に仕事が入ることもたびたびで思うように釣りに行けないのが実状。それは私と違い、趣味よりも家族を大事にする良き家庭人であることの証左。
そんなTAKEさん、意外にもコマセマダイは今回が初めて。
過去、私と一緒に行ったタイ系釣行は葉山でのタイ五目と横浜でのエビタイのみ。
そのコマセダイのデビューがいきなり松輪というのもやや無謀な気がしなくもない。
しかし、わはは爆釣隊古参隊員であるTAKEさんは数々の修羅場をくぐってきた歴戦のつわもの。
「初松輪」「初コマセダイ」「初長ハリス」の初づくしなどまったく意に介してない様は彼の豪胆さを物語るに十分である。
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約1時間半で目的地、松輪港に到着。
間もなく、今回お世話になる成銀丸さんの宿を発見。
「ところで、その無料券というのは本当に使えるんですよね?受付けに出して『ナニ、これ!?』なんて言われないですよね?」と不安感をアラワにする私。
「大丈夫ですよ。ちゃんと昨日、宿に電話して確認してますから」とTAKEさん。
「それならいいんですが…」
「タックルベリーが成銀丸から乗船券を買ってそれを番組でプレゼントにしたそうなんです」
「ふ〜ん…」
「つまり、すでに料金は払われているわけです。この乗船券はビール券や図書券と同じ金券なんです」
「でも最終的に『カネを払わないヤツにマダイは釣れない!』なんてオチになったりして…」
私はどうも負の発想しか出来ないヤツである…。
店先に車を停めると、年配の女将さんがニコニコしながら迎えてくれる。
出船まで時間があるから店に入ってお茶でも飲みなさいと私たちを招き入れる。
しかし私たちは金券系の人。歓待されればされるほど後ろめたい。
「なんか乗船券、出しづらくなっちゃいましたね…」とTAKEさん。
エサのオキアミは漁協や魚屋で買うシステムであるから、宿には一銭もお金を落とさない私たち。
宿側からしてみれば客数は増えても売上にならない招かざる客なのだ。
受付けに立つ船長に釣り物を申告すると、マダイ船は2隻出すので、どちらの船がいいかと選ばせてくれる。
目の前には船の形に並ぶ番号札の掛かった座席表。
私としては、
「いやもう、タダで乗せてもらうんですからどの船でも結構です。釣り場まで連れて行ってくれて沈まない程度の船で十分です…」
というキモチであった。
決めかねている私たちを見て船長は、空いている方の船のトモ寄りの札を選んでくれた。
そして恐縮しながらTAKEさんが先般の無料乗船券を提出。
「ちっ、なんだ…。金券かよ…」
とはならず、フツーに対応してくれる船長に私たちは一安心。
しきりにお茶を飲めと勧める女将さんに従い、私たちは席につく。
女将さんを交えて歓談していると、こっそりとお土産を手渡してくれた。
「これね、内緒なんだけどあげるから持ってって。ここで採れたヒジキなの。私のポケットマネーで買ったんだけどね。内緒だから…。水に漬けると8倍になるからね…」
「内緒だから早く仕舞っちゃって。8倍になるからね…」
「他の場所のより美味しいから食べてみて。8倍になるからね…」
どうやら女将さんはヒジキが8倍になることに並々ならぬ懸念を表明しているようだ。
私たちはその心遣いと優しさに通常の8倍は感動した。
そして、松輪に対する好感度も8倍アップしていった。
■ ついにスタート、剣崎沖のマダイ
宿を辞して港の駐車場へと車を移動。
次にエサのオキアミの購入作業にあたる。
数軒並ぶ魚屋の店先には、オキアミのブロックがスーパーの豆腐のように流水に身を浸し、解凍されている。
購入したオキアミがすぐ使えるよう、店の人に頼めば解かしてくれるのだ。
私たちはブロックを3個購入し、2個を解凍するようにお願いした。
「30分で解けるからその間に船で準備しといてね。お名前は?」とお店の人。
なるほど、店側も釣り人の扱いを心得ているのである。ヤルな松輪…。
TAKEさんと私は早速、第八成銀丸に乗船。
船長が選んでくれたのは右舷のトモ2〜3番目。
釣り座はTAKEさんがトモ2番、私が3番に落ち着く。
隣りに並ぶのはもう一隻のマダイ船、第十八成銀丸。
19トンのその大型船は私たちの乗る船よりも新しく釣り座も広い。
「隣りの船の方が良かったですね…」と贅沢を言い出す私。
「でも俺たち、無料(タダ)だから…」そんな私をTAKEさんはたしなめた。
魚屋に戻って、オキアミを受取り再度船に乗った私。
右舷に5人、左舷に4人の程よい乗り具合。
これならば長いハリスを使っても余裕の間隔である。
午前6時50分、港を離れた船は一旦、その沖で出船時間の7時になるまで待機をする。
そして午前7時ジャスト、同様に周辺で待機していた各船が一斉におのおののポイントに向けて出帆した。
その様子はゲートが開かれた競走馬のよう。
同時に私たちのキモチにも「他船に負けてなるものか!」という闘争心が芽生える。
これが乗っ込み時期のマダイやワラサであったらさらにヒートアップしたであろう。
やはり松輪はタダモノではない…。
航程20分弱で剣崎沖の釣り場に到着。
スタートの合図に従い、ビシ・仕掛けの順で投入。
釣行前に仕入れた情報ではキロオーバーが上がっているらしい。そこで良型に備えハリス4号を選び、磐石の態勢で臨む私。
TAKEさんも今日のために道糸を巻き直したとのこと。
お互い、「無料だから来た釣り」にしては用意周到である。
110mほどで着底。マダイにしてはかなり深い。
船長からの指示ダナはハリス分プラス1〜1.5m。
私は2.5mごとにコマセを撒き、底から8mで様子を見る。
エサ取りに付けエサを食われる可能性もあるため、仕掛けの回収は5分を目安とした。
KOBUさんやまっちゃんからのアドバイスで今回のビシはステン缶を使用。
私はこれを使うのが初めてなので、オキアミの出方が今イチ分からない。そこであらかじめ各穴ごとにビニールテープを貼り、残留の状態から判断し、少しずつテープをはがす作業も行う。
その後私は、今年の目標である「キロオーバーのマダイゲット」に燃え、いつ訪れるとも知れない魚信を虎視眈々と待ち構えていたのである。
■ 何故かいきなり納竿…
午後1時55分、船長から納竿の合図が出された。
久し振りのTAKEさんとの二人だけの釣りは十分に愉快で楽しいものだった。
お互いに持ち寄った酒を酌み交わし、自身の近況や仕事のこと、家庭のこと、年金の使われ方に関する社会保険庁への不満、教育論、幸福論などキタンのない意見をぶつけ合い、非常に有意義な一日となった。
沖揚がり後、出船前にエサを買った魚屋「かねまさ水産」に顔を出す。
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| <松輪のバックアップストア> |
私はその店先に立ち並ぶ長靴姿の年配者たちに同じ臭いを感じた。
店内のイケスには元気に泳ぐ新鮮なヤリイカが釣り人たちを待っていた。
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| <どこか敗北感を滲ませる店先の景観> |
「お土産、買って帰ろうかな…」
「あれ、タカギさんは買わないの?」とTAKEさん。
「ええ、今カミサンたち里帰りしてるから、さばくヤツいないし…」と私。自分へのお土産を買っても意味がないと思った…。
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| <松輪でヤリイカゲ〜ツ!!> |
「それにしても松輪の魚屋ってスゴイですよね!朝はエサを買って、帰りはお土産も買えるんですから!」TAKEさんはまんざらでもなさそうだった…。
宿に寄って女将さんに挨拶をする。
釣果を訊かれたので笑顔で首を横に振る私たち。
「あら残念ねぇ。でも、うちで一番タイ釣りの上手い常連さんでも今日はダメだって言ってたから仕方ないわ。潮が悪かったのね…」と慰めてくれる。どうやらヒジキのことは念頭から消えているようだ。
女将さんに別れを告げ、照りつける強い春の陽射しの下、帰路へつく私たち。
初めて挑戦した松輪は今日の海や女将さんのように私たちに優しかった。
イメージとは違い、その港は素朴で温かい。
私は機会があったらまた訪れてもいいかなと思った。
■ 追記
やっぱり…、
「カネを払わないヤツに
マダイは釣れないんだな…」 |
というのがホンネでしょうか…。
出直してきます。とほほ…。
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| <マダイ、船中2枚しか釣れませんでした…> |
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