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<日 記> 前回のショウサイフグ釣行のとき、私は竿を出しながらずっと胸の内で反芻していた思いがあります。
「ああ、アタリのたくさんある釣りがしたい…」と。
さらに、
「今度、平日に休みを取って釣れる釣りに行こ…」とも。
そうなんです、私は魚信に飢えていたのです。
ハリ掛かりした魚を巻き上げる悦びに身悶えしたかったのです。
クーラーが魚で一杯になった状態を渇望していたのです。
そして昨日、仕事をしている振りをして、インターネットであちこちの宿の釣果をチェックしていたら…。
こんな輝かしい釣果報告が目に飛び込んできました。
「一日入れ食い」
「釣れすぎたので大アジ狙い」
「ここでも入れ食い早揚がり」
これぞ私が求めている釣りだと確信しましたね。
「入れ食い」憧れの言葉です!
「釣れすぎ」いいじゃないですか、釣れ過ぎたって!
「早揚がり」望むところであります!
この、釣り人垂涎の釣果を叩き出したのは、新山下にある打木屋さん。
しかもサイズが良型主体となれば益々期待は高まります。
これなら貴重な平日釣行の釣り物として相応しいと直感したのです。
早速、私は上司のケータイにメールを送り、明日休みを頂くとの連絡をしました。
ついでに、同僚たちに向かって「アジがたくさん釣れているから明日、俺は会社を休む!それに対して四の五の言うヤツがいたら前に出ろ!コンニャロッ!!」と何故か逆上気味に宣言し、周りの出方をうかがいました。
「あっ、どうぞ…」
私の同僚たちは非常に聞き分けの良い者ばかりです…。
私は素晴らしい仲間たちに恵まれたと思う反面、自分の会社に対する必要性に若干の不安を感じました…。
さあ、これで釣り物と宿と休みは決定。
あとは明日の豊漁を信じ、早寝をするだけ。
ふふふっ、平日釣行サイコー!!わはは〜。
■ 明日は我が身
今まで、新山下方面への電車釣行は皆無だった私。
何故ならJRの石川町駅から宿まではかなりの距離があったため。
しかし、今年の2月に「みなとみらい線」が開業して以来、俄然通いやすくなった新山下。最寄駅は終点の元町・中華街駅。
本日、地元の駅を5時48分に発つ京急線の鈍行(「鈍行」って死語だよな…)に乗り込み、横浜駅でみなとみらい線に乗り換え、元町・中華街駅に着いたのが6時22分。
そこから徒歩4、5分で宿に到着。
私は今日、初めて元町・中華街駅で降りたが、これほど駅から宿までが近いとは思ってもいなかった。
これで今後、私のお気に入りの広島屋さんにも一人で行けるのだ。
ビバ、元町・中華街!
ビバ、みなとみらい線!
ビバ、横浜高速鉄道!
と、ビバビバ連呼していても始まらないので、まずは受付けを済ませ、ソソクサとアジ船に乗り込む。
ところが、平日にも関わらず左舷はオオドモからミヨシまで数人の釣り客が座っている。
しかし、反対側はまだ空いており、速攻で右オオドモをゲット。
タックルの準備をしていると左のオオドモに座る、おじさん(A)が話し掛けてきた。
聞くと東村山からわざわざ来たとのこと。
今は仕事をしていないのでこうして平日に釣りに来ているそうだ。
「よろしくお願いします!」という挨拶に振り向くと、おじさん(B)が道具を担いで私の隣りに座った。
その方ともいろいろな会話をしているうちに、
「仕事をしていたときは毎週2、3回は釣りに来てたんだけどねぇ。今みたいにいつでも来れるようになると意外とね…」とおじさん(B)が語る。
どうやら平日釣行のおじさんたちは無職系の人が多いらしい…。
さて、平日の出勤時間帯とはいえ、本日の釣行に際してそれなりの準備が必要だと感じた私。
いつものコンビニへ、アルコール類一式とおつまみを購入しに行く。
出勤前、スポーツ新聞や朝ゴハンのおにぎりを買うサラリーマン風の人たちに交じって、缶チューハイやなとりの珍味をカゴに入れ、レジの順番を待つ私。どこか背徳的な気分である…。
船に戻り、早速缶チューハイを飲む。
先日も書いたが、最近凝っている芋焼酎の水割り缶がやたらと美味い。
「平日の午前7時に、釣船に乗っている38歳サラリーマン」
「平日の午前7時に、コンビニで酒を買い求める中間管理職」
「平日の午前7時に、芋焼酎で頬を染める二児の父親」
どう考えても社会の敗残者風なのだ…。
■ 船は停まらず、魚信無し
午前7時20分、10名前後の釣り人を乗せた船は、観音崎沖を目指して出発。
私は本日、間違いのない大漁を信じ、20リットルのクーラーを持参していた。
当然、釣れ過ぎた場合は、重いクーラーを持って電車で帰るのは億劫なので事と次第によってはタクシーに乗ることもヤブサカではない。
これほどポイントに着くのがもどかしいと感じたのは久し振りである。
私は一刻も早くアジの入れ食いを満喫したかった。
一刻も早く中アジから大アジに移行して、午前2時には早揚がりしてもらいたかった。
「時は金なり」ということわざがあるが、当わはは爆釣隊には「時は魚なり」という金言がある。
スタートの合図とともに誰よりも素早く仕掛けを沈めることで、誰よりも先に魚を得られると信じられていた。
航程約50分でポイントに到着。
私は満を持してビシにコマセを詰め、ハリにイソメを刺し、投入の合図に備えていた。
と、ところが、船は一向に停まる気配がない…。
船の速度が落ちて、「さてさて…」と思っていると、急に潮回りを始める…。
しばらくしてまた停船しそうな気配を感じても、すぐに別の場所へと移動する…。
私は隣りにいる、おじさん(B)と顔を見合わせ、目で「まさか今日に限って…」と問い掛けたが、おじさん(B)は虚ろな目で私に微笑むだけだった…。
しばらく走ってようやく本格的に船が停まる。
そして待ちに待った開始の合図。
ビシは水深約65mで着底。結構、深い…。
最初の数投はコマセをドバドバ撒いて魚を寄せる作業を繰り返す私。
「さあ、そろそろ『ククン…』と来るかなぁ♪」
私は頬を緩めながらアジからの魚信を待ちわびる。
「ありり、まだコマセが効かないのかなぁ。早く来ないかなぁ、アジ君♪」
私は手返しを重視してハリ外しまで用意して待ち焦がれる。
「うん、今日は50釣れたら竿を畳むか♪」
本当は100でも200でもバカみたいに釣るつもりでいた私。
しかし、いくら待てどもアジからの魚信は訪れなかった…。
■ 我が人生にゴムは無し
右舷で最初に型を見たのはスタート後15分ほど経過してから。
ミヨシ方面にいる方が中型サイズの本命を抜き上げた。
さらに10分後、私の隣りにいる、おじさん(B)もようやく本命を手にした。
「いやぁ、やっと釣れましたよ…」
安心した面持ちだが、決して嬉しそうな表情ではない…。
釣れている人たちのタナはキッチリ3mであるらしい。
おかしい、私のタナも3mなのだが…。
開始して45分が経過した頃、どうにか私の仕掛けにもアジが食ってくれた。
こんな展開など想定していなかった私は、いつものようにクッションゴムを装着していない。
ヘタをすると1尾が10尾の価値に相当するような渋い状況、痛恨のバラシだけは避けたいところである。
中速のゆっくりめで巻き上げたアジは上アゴにがっちりとハリ掛かりしており、無事にゲット。下バリに食っていた。
さて、ここで私は今後の方針として、ゴムを「付ける」「付けない」の選択をする。
いつもアジ釣りのときにクッションゴムを装着しない私。
その理由は「タナがずれる」とか「取り込みのときにタイミングが狂う」などの深い理由は一切ない。
ただそれだけである…。
しかし、人からその訳を訊かれたら、
「ゴムがあると微妙にタナがずれるんですよね…。それにバレるときは何やってもバレるし…」
そう答えることにしている…。
暗に「アジごときでそんなにシャカリキにならなくても…」と言外にほのめかし、エセ上級者を気取っているのだ。
そんな理由から今回も「ゴムなし」で臨むことに決定。
当然、おじさん(A)(B)諸氏から「おっ、あの彼氏なかなかヤルな…」という尊敬の眼差しを向けられることは一切なかった…。
■ 負け犬たちの夕べ
それ以降もアジの食いが活発になることはなかった。
船長は観音崎沖を右に左にと移動をし、アジの魚影を求めたが、ときおり思い出したようにポツポツと釣れるのみ…。
今となっては、出船前におじさん(B)が冗談で語った、
「昨日まで良くても今日に限ってダメで、船長が『昨日は釣れたんだけどねぇ…』ってこともあるからネ」
が、重く心に圧し掛かる。
爆釣を信じ、夢見て臨んだ平日釣行。
しかし、現実は常に厳しく冷酷であった。
仕事を放擲してのビシアジ釣行は「アジ1ダース」という痛果の代償をもって幕を閉じた。
午後2時45分、終了のアナウンス。
結局、おじさん(A)(B)も13、4尾と似たような釣果に終わった。
今、私は先の見えない「貧果スパイラル」に陥っているのかもしれない…。
アジに裏切られ、平日にダマされ、情報に踊らされた私…。
こうなったら唯一の心の拠り所、シロギスに癒してもらう他ないのだろうか…。
そんなことを考えながら家に向かう、地元駅からの帰り道。
そこには大量のおじさんたちが駅を目指して歩いていた。
今日は近所の花月園競輪の開催日だったのだ。
そのギャンブルでスった人たちの流れに同化しながら歩いていると、この人たちも自分と同様に肩を落としているのに気付き、ますます敗残者としての実感が湧いてくるのでありました…。
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