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 釣行日:平成16年9月11日(土) 中潮 天候/曇り 

<釣り物> マゴチ
<釣 果> ― (参考釣果ハゼ10尾)
<船 宿> 横浜本牧 望月釣船店濱生丸
<釣り場> 掘割川〜新山下運河〜東京湾 富岡沖
<タックル> ロッド/東作 まごち竿、リール/Daiwa ミリオネアCV-Z103(道糸:PE1.5号)、仕掛け/濱生丸オリジナルマゴチ仕掛:ハゼ用大貫バージョン(チヌ針7号・ハリス5号・全長1.7m)、オモリ/三日月型15号
<エ サ> 活きハゼ
<釣り座> 左舷ミヨシ2番目
<同行者> やまや氏、とくさん、とくさんのお嬢さん
<どう食ったか> ―

<日 記> 唐突ですが、私はマゴチという魚が好きではありません。
 はっきり、「嫌い!」と言い切るまではいきませんが、興味がない部類に入ることは間違いないのです。

 だから、人様がマゴチをたくさん釣っても心から祝福できます。
 そこには「嫉妬」も「羨望」も「焦燥感」も存在しません。
 一応、対外的には
「うらやましいですぅ♪」とか「私も釣りたいですぅ♥」とのコメントを発表しますが、本心は、「へぇ…」と至って冷めております。

 以前に一回だけ内房まで行って、イワシをエサにしたマゴチ釣行をしました。
 しかしそのときの私は、ヒラメとかホウボウが釣れることを願っていたのです

 正直、これほど興味の湧かない魚も珍しいです。
 自分でもそのわけを散々考えたのですが、これといった理由は思い浮かびません。

 マゴチは夏場が旬みたいですね。
 釣り業界で、その時期のコチを「照りゴチ」と表現するそうですが、私はそれを聞いて
「なんか、照り焼きみたい…と思うような人間です。
 要するに私の中では、ヘラブナとかブラックバスと同等のどうでもいい魚なのです。

 とはいうものの、地元東京湾で一度くらいは本格的なマゴチ釣りをしなければならないと考えていたのも事実。

 以前より、やまやさんからマゴチ釣行のお誘いを受けておりました。
 やまやさんといえば当わはは爆釣隊の中で一番のマゴチハンター。そのスキルは他の追随を許しません。
 私は、
「江戸前のマゴチをやるのならやまやさんと…」そう決めていました。

 そして本日、ついにマゴチとの対戦が実行に移されることになったのです。
 さらには、
「祐天寺の色男」とくさんも娘さんを伴って参加してくれるとのこと。
 しかし現実は、自分の想像をはるかに超えたハードなものであったのです…。



 貝殻浜の徘徊

 午前1時、私の自宅まで迎えに来てくれたやまやさん。

 「外房に行くわけでもないのに、なんでそんなに早いんだ?」

 そう思われても仕方のない時間である。
 しかし、やまやさんにとってマゴチ釣りは当日の深夜からスタートしているのであった。
 つまり、川でエサのハゼを釣ってから船に乗り込むというスタイルなのだ。

 ホンネとしては、

 「ついでに俺の分のハゼも釣っておいてよ。4、5匹でいいから…

 と、言いたいところであるが、人間関係の円滑化を考慮すると、どうしてもその一言を口に出せなかった。

 私が車のトランクに荷物を積み込んでいると、

 「あまり釣れませんでした…」やまやさんが呟く。

 な、なんと、私を迎えに来る前からハゼ釣りをしていたらしい。
 つまり、前日から不眠不休でハゼを捕獲し、そのまま船に乗り込む計画なのだ。
 私は思わず、
「どうしてそこまで…」と胸のうちで囁いた。

 「でも、ハゼを釣るために九十九里まで行く人もいるんですよ」

 やまやさんの口から恐るべき事実が告げられた。
 世の中にはさらに上をイク人がいるようだ。
 それを聞いた私、そんな人とは絶対にお付き合いしたくないと心から震撼した。

 さて、最初のハゼ釣りのポイントは私の地元を流れる鶴見川。
 車に乗って数分で川岸に到着。
 周囲は暗く静まり返り、虫の鳴き声がわずかに聞こえるだけの静寂に包まれていた。

 「とりあえず様子を見ましょう…」

 そう言いながらやまやさんは小型の懐中電灯を持って、川の淵に近付いた。
 人々が寝静まる深夜、小さな明かりを頼りに徘徊する男が二人。明らかに怪しい
 ここが鶴見川ではなく、お台場などであれば「覗き魔」「痴漢」「変質者」と勘違いされても仕方ない。

 「う〜ん、いませんね…」

 川面に光をあて、ハゼの生息状況を観察するやまやさん。
 私たちが移動するたび足元がバリバリと乾いた音をたてる。周りが静かなだけにその音はイヤに大きく聞こえた。
 地面には大小さまざまの白い貝殻が、一面に敷き詰められていたのだ。

 「ここは貝殻浜っていうんです…」

 鶴見在住の私よりも都民のやまやさんの方がこの川に詳しかった。
 懐中電灯の光に照らされた川底にも、ビッシリと貝殻が折り重なっている。
 目視点検の結果、確認されたハゼはたったの一尾。壊滅的な状況であった。

 「やっぱり、掘割川に行きますか…」

 結局、この貝殻浜では一度も仕掛けを下ろすことなく、磯子方面に向かって出発するのであった。

 「なにやってんだろ、俺…」

 ふと、自らの行動を振り返ってみた。
 そして、我家で寝ている子供たちのことが頭をよぎった。
 自分の父親が、真夜中に近所の川を徘徊しているとは夢にも思っていないだろう。私は、急激に布団の中が恋しくなった…。



 ホンダクリオの喜び

 生麦から高速に乗り、やまやさんの愛車は磯子に急ぐ(つまらんシャレです…)。

 車窓から、京浜地区の見慣れた風景が早足で流れ去る。
 過去、あちこちの港を目指し何十回も往復したこの道は、私にとって釣りの原体験である。期待と夢に満ちた往路、後悔と眠気が支配する復路。良くも悪くも思い出深い道だった。
 しかし、川で魚を釣ることを目的に利用したことはかつてなかった。

 さらに、今までエサは買うものであり、わざわざ釣りに行くという発想もなかった。
 「エライことになってしまった…」との思いと共に、「このハゼ釣りが今日のハイライトかも知んないな…」という不安感もあった。
 そう、本日のメインターゲットは一度もアタリの訪れない可能性が高い、危険度AAAのマゴチなのだから…。

ハゼを釣るのも容易でありません…。
▲近くにある「BMW Tokyo 横浜磯子支店」前も
好ポイントらしいです

 程なくして掘割川流域の東岸に到着。
 まず最初のポイントは、信頼と実績の
「ホンダクリオ横浜根岸店」前である。

 やまやさんからキス竿とスピニングのタックルが貸与され、道糸の先にハゼ用の仕掛けを装着してもらう。
 そのハリに用意してくれていたアオイソメを1cmほどの長さで通す。

 川面は油を流したかのようなドロンとした凪。
 底荒れの心配はなさそうだが、潮が流れていないことも予想された。

 水温22.6度、気温24.8度、湿度59パーセント、東北東の風、風速は2m。小虫の飛来と自分の真後ろを時おり通過する自動車が気になるものの、コンディションは上々である。

 当然だが、船上、いや、路上に開始の合図や水深のお知らせはない。
 沖釣りの経験しかない私にとって船長不在の釣りはややメリハリに欠けた。

 今イチ、釣りに対するモチベーションが足りないと感じ、クーラーから缶チューハイを取り出した。どうやら知らないうちに酒を飲まなければ釣りの出来ない身体になっているらしい…。

 まずは岸のキワに仕掛けを落としてみる。
 竿を通して伝わってくる底の感触はゴツゴツとしていた。岩礁帯かカジメがあるようだ(ホントはただのゴミでしょうけど…)。
 ゆっくりと誘いを入れてみるが魚信はない。

 しばらくしてから、エサの状態をチェックするため仕掛けの回収を始める。
 すると突然何物かがヒット。しかも、かなりの重量感である。たまらずドラグが「ジィィィッ」と鳴った。

 慎重なヤリトリの末、ようやく上がってきたのはボートを繋留していたロープ
 思わずヤケクソ気味にチューハイをグビリと呷る私…。

 その後もハゼからの魚信はゼロ。
 少しキャストをして広範囲を探ってみるが生体反応は遠い。
 が、そのとき…、

 「プルプル…」

 待ちに待った生命の息吹が竿先を振るわせる。
 軽くアワセを入れてゆっくりと巻き上げる。
 どうにか体長5cmほどのハゼをゲット。

 「やったーっ!やまやさんやまやさん、釣れたよ!!」

 江戸川放水路でファミリーフィッシングを楽しむ小学生のように喜ぶ私。
 ところが、この朗報を伝えようにもその相手は遥か彼方にいて、喜びを分かち合うことが出来ない。
 やむなく、やまやさんが持参してきたブクの入ったバケツに今期初のハゼを入れる。

 私は、このハゼになんとなく愛おしさを感じた。
 マゴチのエサとして一生を終えるよりも私の口に入った方が幸せではないかと思った。
 そして今後の、ハゼがマゴチに化ける、わらしべ長者釣行に不安感が募った…。



 やまやさんの気遣い

 しばらくすると、やまやさんがポイントの移動を提案してきた。
 そこで車に乗って上流に流し替え。
 時計を見ると午前3時。やはり竿を握っていると時間の経過は早い。

 次の釣り場は
「株式会社増田産業」前。

 ここでは道路わきの雑草に踏み固められた痕跡があった。
 さらに、足元に何枚か捨てられていたハゼ仕掛けのビニール袋を発見。
 以上の状況はつまり、この下にハゼがいることを示しているのだ。

 私は新鮮なイソメに付け替え、キャストしてさびいてみた。
 すると驚くほど大きな魚信が到来。
 軽く聞き上げ、ハリ掛かりを確認してから仕掛けを回収する。

 本日の2尾目は15cm以上ありそうな良型ハゼ。
 思わず顔がニンマリとする。

 相変わらず根は荒いものの、その根と根の間を攻めるとハゼの食い付く率が高い。
 なんとなく根魚釣りに通じるものがある。
 私は次第に夢中になっていた。

 下げ潮が効いてきたのかハゼの活性が徐々に高まる。
 出だしの食い渋りから一転してポツポツとアタリが訪れ、飽きることがない。
 もともと小物釣りが好きな私は、深夜のハゼ釣りを心から満喫した

 このポイントでは結局、合計7尾のハゼをゲッツ。

 そして、再度の流し替えが行われ、今度は河口寄りの
「有限会社山梨製綿寝具」前でスタート。
 だが、残念なことにここでは1尾を釣るにとどまる。

 時間は午前4時30分、
「そろそろ宿に行きましょう」やまやさんからの納竿のお知らせ。
 あと1尾でハゼのツ抜けを達成できるのだが、船長役のやまやさんの決断は絶対である。従う他はない。

 車は本牧を目指した。

 釣り具屋にして濱生丸の受付けも兼ねるシーウルフに到着。
 ここで私は仕掛けとオモリを購入。
 船代を支払ったあと、やまやさんが出船までの時間を利用してハゼの再戦を申し出てくれた。

 今度は、新山下運河に架かる
「見晴橋」からのアタック。
 このポイントは魚信があってもハリ掛かりに至らないスレたハゼが群生していた。
 マジメに誘って、どうにか10尾目となる本命(だっけか…)を得る。

 「じゃあ、船に行きましょうか」

 私のハゼのツ抜けを見届けたやまやさんがそう切り出した(優しい男である…)。
 だが、それに反して、

 「もう十分に釣りを楽しんだんだけど…」

 と、私の中の釣りはすでに完結を迎えていたのであった。


 思わぬ伏兵現る

 私たちが受付けを済ませた直後、とくさん親娘も本牧に到着していた。
 たくさんのハゼを抱え(って、大部分はやまやさんが釣りましたけど…)、船着場に行くと駐車場に停まっているとくさんのランクルを発見。

 相変わらず
「中目黒の若大将」は爽やかさな笑顔だ。釣り師にしておくには勿体無い。
 そして、その横に佇む一人の少女。この方がとくさんの愛娘であった。

 後日、開かれた宴席で、

 「この子だけが釣りに付き合ってくれるんです」

 と、目元を緩ませていた。まさに寵愛しているのであろう。彼女が将来、結婚を決意したとき、とくさんは号泣するに違いない

 だが、愛情とタックルは比例しないらしい
 お父さんはリーディングXA73に購入したばかりのダイワのラシード(オプションの金ピカハンドルまで装備!)という豪華なタックル。
 道具の値段で魚が釣れるのなら、今日のとくさんは間違いなく上位に食い込むハズであった。

 定刻の6時50分、初めてお世話になる望月船長が舵を握る船は、富岡沖を目指した。

 開始早々、やまやさんの竿が絞り込まれる。
 ところが、残念ながらハリ掛かりは未遂に終わる。船長も残念そうである。

 しかし、さらにアタリはやまやさんに集中砲火。
 またしても掘割川産のハゼが効力を発揮した。
 サクラの竿が見事な満月を描く。

 「おっ、今度こそ!!」

 と、期待に満ちた眼差しを向けていると、突然テンションが無くなる竿先…。

 望月船長は熱かった。

 「なにやってんだよ、もっと竿を立てなきゃダメだよ!!背中をのけ反らせるくらいにさ!!」

 一見、飄々とした雰囲気だが、さすがはマゴチを釣らせたらピカイチの男である。
 陸にいるときとは一変して眼光が鋭くなり、言葉も荒くなる。
 私はこのとき、この船長を慕って通う常連氏が多いことに思わず納得した。

 そして、やまやさんに3回目のアタリが訪れる。
 彼としても濱生丸の常連としての意地とプライドに賭けて是が非でも物にしたいであろう。

 「よぉ〜し!!」

奥様、今日から米国に出張!成田に送り届けることより釣りを選んだナイスガイ♪
▲本日の竿頭!やはりタダ者ではない!

 船長がタモを持って、やまやさんの横に駆けつける。
 網にすくわれたのは、私にとって雲の上の存在のマゴチ。
 隣りで私も胸を撫で下ろした。

 その後もやまやさんは小さなアタリを的確に捕らえ、合計3本の本命をゲット。

 また、とくさんのお嬢さんも良型のサバフグを釣り上げ、さらには納竿30分前に50cmのマゴチを掛けた。

 私はついつい、とくさんの父親としての権威とか威信とか尊厳などを懸念したが、とくさん自身はお嬢さんにマゴチを持たせ記念撮影に余念がない。微笑ましい光景である。

 午前11時15分、納竿のお知らせ。
 結局、とくさんと私は完璧なボウズ。
 だが、不思議と私たちボウズ組にクヤシさはない。

 「やれやれ…」との思いと、「さて、早く帰って寝よう…」との欲求が大きかった。
 午前1時から今まで、約12時間も釣りと向き合っていた。
 充足感こそあるものの、敗北感はない。

 「タカギーさん、申し訳ないけど一本持って帰ってもらえますか?」

 やまやさんがそう言って貴重なマゴチを差し出してくれた。
 私は、午後船のライトタックルアジにも挑戦するやまやさんに別れを告げ、とくさんのランクルに乗車して本牧を後にした。

 出発する間際、入れ替わりで、やまやさんの会社の同僚であるお嬢さん方が訪れる。
 前日から一睡もしていないのに、やまやさんは笑顔で彼女たちを迎えた。
 彼は間違いなくタフガイである。

 私はそのとき、

 「やまやさんが九十九里までハゼ釣りに行っても俺は驚かないもんね…」

 と思った。

 どうやらマゴチ釣りには、そこまで人を魅了する何かがあるようだ…。

も、もしかして私たちよりも釣りのセンスが上!?
▲お父さん、頑張って。わはは。

美味しくいただきました。やまやさん、ありがとう!
<またしてもマゴチン撃沈!>