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<日 記> 季節は本格的な秋。
木々の葉は紅く色付き、空にはいわし雲が漂い、風の冷ややかさと匂いに夏のなごりと冬の足音を感じる頃です。
この時期になると決まって思い出すのは、神宮外苑のイチョウ並木を、彼女と落ち葉を踏みしめながら歩いた初めてのデート。
夏に二人で訪れた湘南の海も、秋になるとどこか物悲しく目に映ったものです。
隅田川や横浜の夜空に散った大輪の花。その花火のように一瞬のうちに終わった短い夏は、短いからこそ心のアルバムの中で一層輝いて見えるのでしょう。
ああ、秋は何故かちょっぴりセンチメンタルでメランコリーな気持ちになります…。
ってことを書いてると「ヘンな物でも食ったんですか?」とか「お前の釣りレポートは余計なこと書き過ぎ!」とか「気取ってんじゃねぇよ、バカ・デブ・ハゲ!!」などの叱責メールが山盛りで来るのですが、それって私に対する激励ですかそれともイジメですか?(泣)
さて、夏の間追い求めていたタチウオも秋の深まりとともに深場へと落ち、ロングディスタンス的リーリングとなりました(少し長嶋茂雄風)。
キホン的に「安楽」「簡便」「無疲労」の楽な道を選ぶ私は、深場にいるタチウオは相手にしません。
そのタチウオに換わって秋冬のルアー業界は例年、シーバスがベイゲームのメインターゲットに移行致します。
私のベイジギングの常宿、渡辺釣船店さんも昨日(10月22日)から、ルアー船はシーバスに変更となりました。
そこで私は今回、ボウズ率「0%」を誇るシーバスを半年振りに狙って、船上の秋を満喫したいと思った次第なのですね。わはは。
船長からの宿題
午前5時過ぎ、早々に船上の人となった私とミスター高橋氏。
釣り座はいつもの定位置左舷のミヨシ。1番目がミスターでその隣りに私。
お互いが船べりに挿したロッドはジギング用とキャスティング用の2本。
さて、我々は自分たちのことを「おやじルアーマン」と称しているが、正確にいうと「おやじジガー」であり、間違っても「ルアーマン」ではない。
つまり、ジギングが好きであってキャスティングとなると途端に弱腰になる立場なのだ。
要するに二人とも、キャストが得意ではないのである。
その証拠に今まで私は、キャスティングロッドを持っていなかった。
ところがこの時期のシーバスは表層を狙うらしい。
一応はルアーマンを志す身(いつから志した!?)、「投げ用の竿」もないと格好がつかないし、馬鹿にされそうである。
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| ▲昔からカタチから入る性格でした、私… |
そこで私は一念発起、ダイワのキャスティングロッドを新調した。
ついでにスピンテール系のルアーも購入し、カタチだけはイッパシの「アダルトルアーマン」となったのである。
釣りの世界に疎い女性が見たら…、
「たくさんのルアーや竿を持った自然派指向の爽やかなオジサマたち♪」
「陽に焼けた精悍な顔付きのナイスミドル♥」
「やっぱり海のオトコって最高!!ああ、抱かれてみたい…」
などと、トテツモナイ勘違いをしてくれる可能性もある(ないですか!?)。
私たちは高まる期待感を胸に、タックルのセッティングを始めた。
するとそこへ、「ベイゲームの師匠」「ストラクチャー際の魔術師」「我々の生活指導者」シゲオ船長が登場。
早速、昨日の釣況を訊くと朝から昼近くにかけてずっと渋かったものの、帰り際で大ボイルを見付け、怒涛の入れ食いになったらしい。そのあまりの食いっぷりに納竿時間を延長したとか。
次に私たちは、経験の浅いバイブレーションやスピンテールでの釣り方のレクチャーを乞う。
「ラインを同じテンションで巻くことだね。上手くなると船が揺れても竿を立てたり寝かしたりして即対応出来るようになるよ」
「あと大事なのは遠慮しないで思いっきりブン投げること」
ルアーの動く速度は常に一定を心掛け、広範囲を攻めることが必釣法らしい。
そして一旦船を降りる間際、船長が私たちにこう言い残した。
「まだ時間があるから、キャストの練習でもしていたら!?」と…。
左右の格差
ガイドにラインを通している高橋氏を横目に、私は与えられた課題をこなす。
「キャストっていっても今までもジグを投げていたから慣れてるもんね、俺…」
私には余裕があった。
それに、好きなシロギス釣りでも20m以上は投げていたし、大体は狙った場所に落とせるのだ。
船べりから身体を乗り出し、練習すること合計10回。なんの問題もない。
「キスと違って仕掛けが絡むこともないからこっちのがカンタン!」
私は心から満足し、ようやく本日1本目となる缶チューハイを開けたのであった。
ミスターも何度か練習を行い、私と同様に納得した様子。
考えてみれば、船長が私たちにキャストの練習を勧めること自体に問題があるのだ。そう、我々はビギナーではないのだから…。
午前6時30分、総勢14名のアングラーを乗せた船は、昨日の爆釣ポイントである木更津沖を目指して出発。
航程30分で釣り場に到着。
シゲオ船長の指示によるとまずはキャストで狙うとのこと。
そこで私は船宿で購入した「湾ベイト」の赤金を選んだ。まさに船宿推奨の信頼と実績のルアー。
間もなく出された開始の合図とともにアンダーハンドでルアーをキャスト。水深は約20mの浅場。
出船前に受けた船長からのアドバイスどおり、スピンテールの抵抗感が常に一定になるようにゆっくりとリールを巻く。イメージはもちろん海面スレスレを泳ぐベイトフィッシュ。
だが、魚探に映る反応はすぐに消えたらしく、移動の告知。
しばらくはこの状態を繰り返し、メタルジグでボトム中心に狙ったりもしたが、今イチ釣果に繋がらない。
ところが、次第に小型ながらも本命が釣れ始めた。そう、私たちと反対側の右舷で。
右のミヨシから胴の間に立つ釣り人の楽しそうな声がイヤでも耳に届く。
「あっ、クソ〜ッ、バレたぁ!!」
「おっ、デケぇ!!」
「あれっ、またバラした〜ッ!!」
「なんだか反対側だけ釣れてるみたいですね…」と私。
「ええ。左舷は誰も釣れてないのに…」とミスター。
徐々に明らかになってきた右と左の格差。
右側を選んだ人には続々と魚がヒットする喜びと優越感が与えられ、左側を選択した我々にはクヤシさと失望感が待っていた。
技術とかルアーの色うんぬんでは解決できない海の非情さを目の当たりにし、私はチューハイを飲むしかなかった…。
お立ち台での懊悩
相変わらず「右高左低」の現状に、成す術もなく我慢のキャスティングを繰り返す私たち。
すると突然、スピーカー越しにシゲオ船長からの指示が飛んできた。
「タカギさん、前行って投げなよ!」
な、なんと、「ルアーマンのお立ち台」「船上の上座」「約束のプラチナシート」であるスーパーミヨシへ立つように命令が下ったのだ。
船の上での船長の指示は絶対である。沖に出たら船長が「法律」であり「監督」であり「支配者」なのだ。
私はその命令に従い、舳先に立った。
「ついに俺もここに立てるようになったんだ…」
「目の前に広がる180℃のパノラマはみんな俺のものなんだ…」
「苦節丸4年、思えば先端に来たもんだ…」
私は、「んだんだ」と深い感慨にひたりながら、茫漠とした眼前の光景を呆然と眺めた。
そしてベイルを倒し、広大な海に向かってキャストをした。
青空に舞うスピンテールが陽光を反射しキラキラと輝いた。
すると…、
「タカギさん…」
船長の声がまた耳に届いた。
その呼びかけに振り返り操舵室に目を向けると、シゲオ船長は剣道でいう上段の構えをした。
私はそのポーズの意味するところを瞬時に理解した。しかしそれは、にわかには受け入れ難いものであった。
私たち正調沖釣り師たちが最初に叩き込まれる船上でのルール。
「投げるときは下から」
今までそれは疑う余地のない「掟」であり、「マナー」であった。
太陽は東から昇り西に沈むことと同等の「常識」でもあった。
5年目に入った我が沖釣り人生において、頑なに守り通してきた「最上級のコンプライアンス」なのだ。
ところが今、船長から「上から投げろ」とご下命を賜った。
思わず全身に緊張が走った。なんとなく犯罪に手を染めるようなキモチになった。
しかし、船長の指示は絶対である。
「マ、マジですか…」
私は一瞬、途方に暮れた。
投げ方は大体分かっているつもりだが、いかんせんやったことがない。
人生初のオーバーヘッドキャストをスーパーミヨシで行うことは、生板ショーで童貞を捨てるのに匹敵する試練である。
「落ち着くんだ俺。下から投げるのと手順は同じだ…」
「ベイルを倒して、道糸を人さし指に引っ掛け、竿をスイカ割りの要領で振り下ろせばいいんだ…」
「肝心なのは道糸を放すタイミングだけだ…」
そう自分に言い聞かせて、竿を振りかぶった。
そして神にも祈る思いで前へと振り下ろした。
「ポチャン…」
目の前5mほどの海面に着水したルアー。
エンジンの音が鳴り響く船上にいても、今の「ポチャン…」はハッキリと聞こえた。
心の中を秋風が吹き抜けた。
「な、なにやってんだよ、俺…」
「お立ち台でズッコケてどうすんだ…」
「も、もう一回…」
ルアーを回収して再度、ロッドを振り下ろした。
「ヒュ〜〜〜ッ!!」
今度は見事な放物線を描いて飛んでいった。
右舷にいるアングラーのオーバーヘッドキャストは「シュッ!!」とロッドが空を切り、「シュルシュルシュル〜ッ!!」とライナーで飛んでいく。見ていても実に気持ちがいい。
それに比べると、私の飛び方はどう見てもキャッチャーフライ。明らかにファールチップくさい…。
それでも何回か繰り返しているうちに多少はサマになってきた(と思う)。
ドキドキしながらも、目の前に広がる海に向かってキャストするのは爽快だった。
あとは練習あるのみなのだ。
「タカギさん…」
またしてもシゲオ船長からお呼びが掛かる。
振り向くと船長は右側を指差した。
ここで私はまたその意味を理解した。「右舷が釣れてるんだから右に行け」と言っているのである。
私たち正調沖釣り師たちには暗黙のルールがある。
「席の移動はまかりならぬ」
ミヨシ2番目から舳先に移ったことにも多少の抵抗はあったが、さらに左舷から右舷に移れと指令が下ったのだ。
通常の乗合船でこんなことをしたらヒンシュクを買うこと請け合いである。
イワシのミンチとかをブッカケられても文句は言えないのだ。
「ホントにいいのかな…」
若干の躊躇はあったものの、先ほどまでずっと冷や飯を食わされてきた現実を思い出し、私は身体を右側に向けてキャストした。
すると間髪を入れずに今日始めてシーバスがヒット。
海面を戻ってくるルアーに魚が食い付いてるのが良く見えた。
「ヤッターッ!!船長、食ったよ!!」
私は心の中で船長に感謝した。
シゲオ船長の指導監督は間違っていなかった。
本当に頼れる男である。
「ところで、このシーバスはどうやって取り込むのかな…」
突然、こんな疑問が湧きあがった。
自分のいる場所は海面から随分と離れている舳先。
胴の間にいても取り込み中に多数の魚がバレていた。この位置からのランディングは不可能に近い…。
リールをゆっくりと巻きながら、元いた席まで徐々に移動をした。
こうなったらミスターにタモ取りしてもらう他ない。
そう思った瞬間…、
「あっ、バレた…」
私のファーストヒットは何事もなかったかのように、姿を消していた…。
ミスターの困惑
スーパーミヨシにいると大好きな缶チューハイが飲めないことに気付いた私。
そこで船の移動中は本来の席に戻り、飲酒・喫煙・歓談を楽しんだ。
やはりこの舳先というポジションは、ストイックなルアーマンにこそ相応しい席なのかも知れない。
移動後、また私はお立ち台に登った。
手前への「ポチャンキャスト」こそ減ったものの、相変わらずのホームラン性の軌道を描く我がルアー。
さすがにシゲオ船長も業を煮やしたらしく、私の横に来てマンツーマンのアドバイスをしてくれる。
その後、船長はミスターの隣りにも行き、あの悩ましい「オーバーヘッドキャスト」を行うように指導をした。
高橋氏は、私以上に「モラル」を重んじる人である。
先程の私同様、いやそれ以上に戸惑っているに違いない。
氏にとってこのキャストは「モラルの崩壊」を意味し、「タブーへの挑戦」となる行為である。
「ポチャン…」
「あれっ…」
「ポチャン…」
「くそっ!」
「ポチャン…」
「なんでだよぉ!」
私の左斜め前方から悲しくも切ない「ポチャン音」が発せられていた。
そして、ミスターの自分を叱責する独り言があとに続く。
ミスター高橋氏は自分に厳しい性格だった。頭越しのキャストは初体験であり、不首尾に終わって当然である。しかし、氏の気性からして許せないのであろう。
「ポチャン…」
「んもぉ!」
「ポチャン…」
「ったく!」
「ポチャン…」
「う〜ん!」
果敢に攻めるミスターのひたむきな姿は、見る者を熱くした。
いくら失敗しても挫けないその姿勢は、多くの釣り人の模範である。
だが、「ポチャン」という語感はあまりにも軽快すぎた。私は感動しながらも笑いをこらえるのに必死だった…。
「今、反応ビッシリだよ!」
「モタモタしてないでドンドン投げて!今だったらどこでも釣れるから!」
「投げる人は中途半端に投げないで思いっきり投げちゃって!」
シゲオ船長は次第に熱くなり、マイクで全員を激励した。
私に訪れた2度目のバイトは良型を思わせた。
やや緩めに設定しておいたドラグが「ジーッ」と唸り、道糸が引き出される。
すぐさま駆けつけたシゲオ船長の素早いタモ取りで、ようやく本日1本目の本命をゲット。
「高橋さんの右斜め前あたりにも反応出てるよ!」
ミスターにも釣って欲しいと願うシゲオ船長は、魚探を見ながらピンポイントの指示を出す。
高橋氏もそれに応えるべくアグレッシブな釣りを展開。
しかし、魚の活性は想像以上に低く、定刻の11時に納竿を迎えた。
結局午前船は、竿頭で15本と厳しい釣果に終わった。
今日に限っては右舷の人たちに分があり、左舷は厳しい闘いを強いられた。
「でも、ありがたいですよね。スーパーミヨシを勧めてくれたりいろんなアドバイスしてくれて」とミスターは船長に感謝した。
結果的にはシーバスをヒットさせたものの、取り込むまでには至らなかった高橋氏。
予定外のキャストに苦しみながらも、終わってみれば楽しい半日だった。
「船長が出船前にキャストの練習をしとけって言ってたのはこのことだったのね…」バカな私は今頃になって理解した。
そう、船長からの出発前の宿題はアンダーキャストではなく、オーバーヘッドキャストのことを指していたのだ…。
船着場に戻り、船長に釣果を報告して船を降りる。
そのとき…、
「高橋さん、タカギさん、魚持って行きなよ!!」
「いいからホラ、あげるから持って行きなって!!」
「タカギさん!!!」
シゲオ船長が、船のイケスの横に立ち、我々を呼んだ。
その中には他の方たちの釣ったシーバスが、大量に泳いでいた。
「遠慮しないでさ」
「じゃぁ、少しだけ…」
私は、恐る恐るクーラーのフタを開けた。
シゲオ船長はタモをイケスに突っ込み、どばっと魚をすくった。
「はいよっ!」
私の20リットルのクーラーに、様々なサイズのシーバスがごっそりと投入された。
何本かは跳ね回り、床に落ちた。情景としてはシーバスのタイムサービス状態である。
「木更津沖で獲れた魚だから美味いよ!!」
「高橋さんにもあげてね!!」
「明日のカツオも頑張ってよ!!」
本当に優しい船長なのだ。
私はミスターと魚を山分けして、部下の中村に電話を入れた。ヤツにもシーバスを食わせて恩を売っておこうという魂胆である。
今回の釣行でまた自分の未熟さを知った。
私たちが正真正銘のルアーマンになれる日はいつのことなのか。
「今度、鶴見川でキャストの練習しよっと…」
そんなことを考えながら家路につく私でありました。わはは。
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| ▲初登場、中村Jr.!! |
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