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<日 記> 「カツオ」非常に魅力的な魚であります。
それと同時に、私の大好物な魚でもあるのです。
正直、一日おきにカツオのタタキが食卓に出てもまったく文句を言わない自信があるほど好きなのですね。
ちなみに、私が勤める会社の代表取締役の名前も「勝男」ですが、オフィスのパソコンに「かつお」と入力して変換すると…、
の候補順となり、「お前のパソコンって絶対仕事で使ってないだろ!」と突っ込みを入れられても反論できない苦境に立たされています…。
蛇足ながら、うちの社長は私の仲人。
仲人といったら親も同然です。
この場を借りて深くお詫び申し上げます。
社長、私にとって社長の存在はカツオよりも下です…。
さて、それほど愛してやまないカツオですが、今まで一度も釣ったことがありません。
毎年カツオの釣れだす時期になると「行かねば」「釣らねば」「道具買わねば」の三ねば化するのですが、どうも行くキッカケがないまま終わっていたのです。
そこで今年は意を決して、カツオ釣行の実現を固く心に誓いました。
今まで私のカツオ船に対するイメージは、「ナブラ発見」→「速攻直行」→「放水開始」→「イワシばら撒き」→「カツオ半狂乱」→「ミヨシで仁王立ちする常連氏」→「頭上を飛び交うカツオたち」→「船上血だらけ」→「釣り人激昂」→「飛び交う怒号」→「錯綜する雄叫び」→「船長の怒声」という何故か明朝体系の興奮と激情と血しぶきに彩られた修羅場的なものでした。
もともとチキン体質な私が、そんな恐ろしい船に一人で乗れるハズもありません。
やはりそれなりに慣れた方を伴わないとオシッコちびりそうです。
そこで助けを求めたのが「釣りバカ亭主天国」の管理人である相模庵氏。
今年の夏に開かれた夜アナゴ対決の船上で、「ワタシ、カツオ釣りたい。アナタの助けワタシ必要ね」とカタコトの日本語でお願いしてあったのです。
そしてついに本日、夢にまで見た(本当は見てないけど)カツオへの初釣戦が実現することになりました。
その夢を現実に変えてくれた相模庵様・イカヅノ大佐殿に心から感謝申し上げます。
お礼に、この愛と冒険と奇跡で綴られたレポートを捧げます。これに懲りずに是非来年も誘って下さいませ(釣れてたらね…)。わはは。
謎のオトコ現る
ということで、本日のメンバーは、
「釣りバカチーム」→相模庵氏とイカヅノ大佐殿の2名。
「釣りキチチーム」→私1人(チームかよ…)の合計3名。
向かうは茅ヶ崎港にある、まごうの丸さん。
この港を利用するのも、この宿にお世話になるのも初めての私。
さらに釣り物まで初体験と初めてづくしの緊張感を紛らわすため、クーラーの中にはいつも以上に多めのチューハイをしのばせた。
当初、港の最寄駅までは、鶴見から始発電車に乗って行く予定であったが、出船時間に間に合いそうもない事実が発覚。
そこで相模庵氏が私のピックアップを申し出てくれる。
しかも、今回使用するタックルや仕掛けは全部用意すると連絡をもらう。私が持参するのは予備のサニービシにテンビン、ラークにクーラーのみ。まさに道具のアウトソーシング、身にあまる厚遇(いやぁ、本当にお世話になりました)。
午前4時、藤沢〜鶴見間を逆走し、待ち合わせ場所まで迎えに来てくれた相模庵氏。
早速乗り込み、いざ決戦の場所、茅ヶ崎へ。
車は順調に早朝の高速を疾走し、約40分で港に到着。
もう一人のメンバー、イカヅノ大佐殿はすでに到着しているご様子。
イカヅノ氏とは上記で述べた夜アナゴ対決でお会いしており、今回で2回目。
とりあえずクーラーだけを持って、私たちバカキチ両管理人は宿へと向かった。
開店前の店先には、ずらっと並んだクーラーと多くの釣り人。
相模庵氏はその中の一人の方に挨拶をした。
そして私を振り返り、
「この人がわははのタカギーさん」と紹介を始める。
「あっ、わははの!はじめまして、○○(本名)です」と爽やかな笑顔を向けられた。
「どうもはじめまして、タカギですぅ」
だが、このときの私の心中は…、
「だ、誰だい、この人は!?」
「夏に会ったイカヅノさんとはどう見ても別人…」
「でも、一緒に釣りするみたいだぞ…」
であった。
しかし、根っから物事を深く考えない性格の私は、別段の疑義を投げかけずに会話に参加。
しばらくするとシャッターが開き、受付けが始まった。
料金を支払い、ついでにオキアミのブロックを購入し、駐車場へ荷物を取りに戻った私たち。
先ほどの謎の人物が車のトランクからタックルを2セット取り出した。
「タカギーさん、どちらがいいですか?」
どうやらこの方が道具を貸してくれるらしい。
話によると、釣りバカチームのお仲間のちょろ松さんから貸与されている竿とリールだと判明。
素性の分からない人から平気で道具を借りようとする私もテキトーな人間である。
「私、背が低いから短い方の竿で…」
テキトーな人間はすべての理由もいい加減であった…。
荷物を担いで船着場へと進んだ我々三人。
停泊する船はどれもが大きく、大層乗り心地が良さそうなのだ。
私たちの乗るカツオ船にはすでにたくさんの釣り人が乗り込み、船上は活況を呈していた。
左舷の胴の間付近に空きがあったため、その場所を本日の席と決める。
釣り座はミヨシ3番目から、謎の男氏・私・相模庵氏の順番に決定。
私は、釣りの準備が整ったところで本日1本目の缶チューハイを開けた。
「ぐびっぐびっぐびっ…」
明け方の氷結果汁(グレープフルーツ味)は身体の隅々にまで染み渡った。
そんな私を見て、相模庵氏や謎の男氏がニヤリと笑う。
どうやら先手を打たれて相当クヤシがっているようだ。私は釣りキチ代表として恥かしくない先制パンチが決まったと自負した。
そして、再び同じ疑問が浮上してきた。
「ところで、俺の隣りにいる人は一体、誰なんだろ…」と。
大佐殿の正体
このカツオ船のイケスには前日に捕獲されたシコイワシが大量に泳いでいた。
コマセを使ったカツオ釣り場合、付けエサはオキアミがスタンダードらしいが、幸運にも活きイワシを装餌する選択肢も与えられたのだ。
さて、私が密かに懸念していたカツオ船の船長だが、予想は大きく裏切られ、若くて物腰の柔らかい人だった。想像していた海の男然とした粗野でガサツなイメージとは雲泥の差。
この船長ならバラシても「バラすんじゃねぇよ、そこのメガネ!!群れが散るだおぅ!!」と怒声を浴びせ掛けることもないだろう(どんなイメージしてるんだ、俺…)。
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| ▲対カツオ用貸与兵器! |
今回、貸与されたリールはレバードラグ式の本格的なタイプ。
この道具なら全幅の信頼を置けると確信したが、今イチ使い方が分からない。
そんな私の心配を感じ取ったのか、謎の男氏が使用方法を教えてくれた。
「レバーに付いているボタンを押すと、フルロックになりますよ」
なるほど、確かに上端にあるボタンを押すとさらにドラグが締め込まれた。
なおもチューハイを楽しんでいる私の傍らで、謎の男氏は全員の分の仕掛けを結んでいた。
カツオ仕掛けを作るその姿を見た私は、相当のテダレだと直感した。
そこで私は懸案となっていることを相模庵氏に訊いてみる。
「ところで、隣りの方はどなたなんですか?」と。
「大佐ですよ」と相模庵氏。
「アナゴのときに一緒だったイカヅノさんは公爵?」
「そう、イカヅノには大佐と公爵がいるのです。大佐が公爵のイカ釣りの師匠なんです」
そこでようやく私の疑問は氷解した。
さらに説明を窺うと、ここにいるイカヅノ大佐氏は腰越にある○○丸の上乗りもやっているとか。つまり、ギョーカイの人である。
経験豊富なベテランアングラー相模庵氏、そして湘南を知り抜いた男イカヅノ大佐氏。このお二人がサポートしてくれるのである、釣れないハズはない。
「はい、これ」と「ひねり揚げ」の袋を差し出す大佐殿。
「ありがとう」相模庵氏は嬉しそうだった。
「ったく、こんなのばっかり食べてるから太るんだよ!」
「唇に付いたこの塩加減が海では美味しいんだよねぇ」
私から見た限り、頼みの綱のお二人には著しく緊張感が欠けている気がした。
周囲の人たちと比べてもヤル気の部分に問題があるように思えた。
だが私は信じていた。この両者がいるのだから釣れないハズはないハズだと…。
サバで逡巡
午前6時、待望の出船。
相模庵氏から、カツオ船は群れを求めてかなり遠出をする可能性もあると聞かされていた。
当然、私もその覚悟は出来ていた。
朝日の輝く大海へカツオを求めて走る船。
久し振りの相模湾釣行、湘南の島影を見るだけで心が浮き立った。
開けた海を目の前にしてキモチは高ぶる。
「♪江ノ島、三崎、大島越えて〜、新島、式根、三宅島まで〜、Sail
on!光進丸よぉ、俺を銀色の海へ誘え〜」
気分はほとんど加山雄三である。
ところが、江ノ島どころか航程10分少々の茅ヶ崎沖で船はスローダウン。
私はロングクルージングを予想して、ポイント到着までに3本のチューハイを空けるつもりでいた。
それがいきなりのゴーサイン。寝耳に水である。
周囲にはトリヤマができ、小魚がいることを知らせた。
そして、その下にはカツオがいるに違いない(と思いたい)。
唐突だがついに念願のカツオとの対決が始まったのだ。
私は早速、コマセを詰めてイカヅノ大佐謹製の仕掛けにオキアミを刺す。
船長からの指示棚は15〜20m。カツオが食った場合、短期決戦が予想されるタナであった。
仕掛けを入れ、23mまでビシを沈める。その後、2ヒロ分道糸を巻き、いつ訪れるか知れないアタリに備えた。
すぐさま、本日最初の魚信が到来。
しかし、カツオにしてはあまりにも引きが弱い。
上がってきたのはグッドサイズのサバ。周囲の人たちもサバの猛攻に遭っていた。
「なんだ、サバかよ…」
と思う反面、
「待てよ、これくらいのサイズならサバ好きのカミさんが喜ぶよな…」
「それにヘタしたら丸ボウズってことも十分にあり得るもんな…」
「でも、カツオを釣りにきてサバをキープするってのも結構オトコらしくないよな…」
大のオトナがサバごときで逡巡していた。
「そうだ、1本だけキープしよう…」
雰囲気的には、
「俺ってサバが案外好きなんだよね。カツオもいいけどサバもいいんだよね。まあ、今日の記念に1本だけ持って帰ってみっかな…」
を、身体全体で表現したつもりであった。
そして首をヘシ折り、バケツに沈める。
周りの人は釣れたサバをポンポンと海へ帰していた。
「今日の記念に持って帰るだけだかんな!!」
そう胸の内で呟いた私は、真っ赤に染まるバケツを見詰めた。
初ガツオ
左舷のミヨシでついに本命が上がった。
タモ取りされたのは丸々と太った立派なサイズ。
カツオは間違いなくこの下にいるのだ。私は嬉しくなってチューハイを開けた。
すると今度は、イカヅノ大佐の竿がひん曲がる。
「おおっ、我々にもついにキタか!?」と、見守る中、姿を現したのは良型のヒラソウダ。う〜ん、残念!!
「すみませんけどこれ、タカギーさんのクーラーに入れてもらっていいですか?」と大佐。
私は今回、35リットルクーラーを持参していた。
個人的に「呪われたクーラー」「貧果を誘う35リットル」「デカくて重いだけのカラ箱」と忌み嫌っている縁起の悪い物である。どうせ満杯になることはない。遠慮なく使って頂く。
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| ▲ヒラソウダのつもりで巻き上げる相模庵氏 |
ふと左を見ると、相模庵氏がゆっくりとリーリングに入っていた。
竿は、ハリに付いてる魚の重みで見事な弧を描いている。今度こそ本命だろうか。私たちは固唾を飲んで見守った。
難なく網に収まったのはまさしく本ガツオ。
週3ペースで食卓に登場しても苦にならなほど大好きなカツオ。
一度でいいから釣りたてを食べてみたいと願っていたカツオ。
マグロなカミさんよりも愛してやまないカツオ。
そのカツオが今、私の目の前に在る…。
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| ▲いきなり私たちを出し抜く相模庵氏… |
「俺も釣りてぇ〜〜〜ッ!!」
私の悶絶に近い叫びが船上に響いた。
だが、隣りの相模庵氏が釣れたということは取りも直さずカツオが近付いている証拠(この解釈、間違ってますか…)、十分に期待できる状況なのだ。
イカヅノ大佐はシコイワシをエサにしていた。
先ほど釣ったヒラソウダもイワシエサに食ったのだ。
付和雷同な私は、上官を見習ってオキアミからイワシへと変更してみる。
タナが次第に上ずってきているらしい。私はジャスト10mで勝負に出た。
コマセをドバ撒きしてチビラークに(って、カツオ釣りをナメてますか?)竿を置いた。
そして、今後のイワシのご活躍を祈念しながら氷結果汁を口にした。
「ガクン!!」
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| ▲わりとヘッピリ腰な私… |
突然、竿が曲った。
すぐさま竿を手に取り、リールを巻く。
ズルズルと滑り出す道糸。このド級の引きはカツオに違いないと確信した。
「ついにきたか!!」
「よし、いいぞ!!」
「ゆっくりやんな!」とりあえず自分自身を応援してみる。
みんなの声援が心強かった。
私はバレないことだけを願った。
コイツに逃げられたら次回のチャンスはないと思った。
テンビンを掴み、ハリスを手繰る。
海面を通して、強引な横走りをする魚体が目に入った。カ、カツオだ…。
仕掛けが弛まないようギュッと握る。相手も必死だろうがコッチも必死なのだ。
無事にタモにすくわれたカツオ。
青と白と銀のストライプが輝いていた。
初めてのカツオ釣行で人生初の本命を手にしたのだ。
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| ▲イイ感じで出来上がっています… |
「やったーーーッ!!」
「やったぞーーーッ!!」
「やったぁぁぁぁぁっ!!」
相模庵氏とイカヅノ大佐氏が一緒に喜んでくれた。
私はお二人とガッチリ握手をした。
これほど魚が釣れて嬉しかったのはいつ以来だろう。
「うれし〜〜〜ッ!!」
やや酩酊気味の私は周囲をはばからずに歓喜の雄叫びを上げた。
湘南式歓待
イカヅノ大佐は前半、3回カツオを掛けた。
その数字は船中でもダントツに思えた。
ところが、その3回ともバラしていた。
「あっ、食った〜ッ!!」
「タカギーさん、こういうときはクリック音を鳴らした方がいいですかね!?」
「カチッ!」
「ジィィジィィジィィ…」
「おお、『松方弘樹世界を釣る』だぁ〜!!」
「くそっ、バレたぁ〜ッ!!」
大佐は私たちを盛り上げるため、わざとクリックレバーを入れて笑いを誘った。
だが、相模庵氏や私は、大佐が本来の実力を出していないことに気付いていた。
某船の上乗りを務めるオトコである。初心者の私ですら取り込めたカツオを何度もバラす方が不自然だった。
大佐にとって今日の釣りは、カツオを得ることよりも釣りを楽しむことが目的なのだろう。
私のような数に執着する素人には絶対にマネの出来ないパフォーマンスなのだ。
「やるな、大佐め…」
いつかこの上官と東京湾で闘いたいと私は思った。
その後も好調にカツオは食い続き、相模庵氏3本、大佐と私は2本ずつ取り込むことに成功(まあ、私の2本目はコマセ詰めているとき、垂らしていたエサに偶然にもカツオが食っただけですけど…)。
大いに盛り上がっていた我々も、酒が切れると次第に覇気がなくなっていく。さらにはタバコもなくなり、アタリもなくなる三無し化していった。
午後1時45分。納竿のお知らせ。
結局、船中は1〜5本の釣果。ボウズはゼロと好成績を収めた。
十分な満足感と心地よい疲労感に包まれながら宿に戻ってお茶を頂く。
私たちは追加の氷を購入した。
それをクーラーに入れようとフタを開けると、大佐が朝方に釣った良型ヒラソウダがあることを思い出した。
「このヒラソウダ!」と大佐に伝えると。
「嫌いじゃなかったら持って帰って下さい。人によってはカツオよりも美味いって言いますから。両方を食べ比べて下さいよ」と、爽やかな海の男の顔が微笑んだ。
相模庵氏の車に乗り込む間際、手を振りながら大佐がこう言った。
「今度、(うちの船に)ヤリイカ釣りに来て下さいね!」
港を出てから相模庵氏は、近くにある開高健記念館へ誘ってくれる。
そこに着くまで何度か迷い、人に道順を訊いてまで連れて行ってくれた。
「酒と釣りの好きな作家だったから、見ておくのもいいかなって思って…」
私は、釣りバカチームを紹介してくれたやまやさんに思わず感謝をした。
湘南の釣り師もなかなかヤルのである。
まあ、東京湾のシロギスでは負けないけどネ。わはは。
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