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<日 記> 家庭のことをほとんど顧みない私は、今までさんざん家内に苦労をかけてきたと思います。そして今後も同じように苦労をかけることでしょう。
晩ご飯にナニを食べたいか訊かれても「なんでもいいよ…」といつも生返事。食事のあと片付けや食器洗いはまったく手伝わず、布団の上げ下げすらも行わなければ、夫婦の会話もうわの空で意識のほとんどはテレビの方へ…。
まあ、以前は子供の運動会とか誕生日にも平気で釣りに行っておりましたが、さすがにそれは愚息たちが不憫に思え(本人たちは別段なんとも思ってないかも知れませんけど)、一応は父親らしくそれらのイベントには参加することにしました。ええ、多少は更生しています私…。
さて先日、家内が珍しく改まった態度で私に以下のことを告げました。
1、最近、お腹が急に膨れてきた
2、そこで近所の医者に診てもらった
3、するともっと大きな病院を紹介された
4、ハッキリはしないけど入院・手術の可能性がある
5、ところで、晩ごはんにナニか食べたいモノがあるか?
平素、あまり家内の話に耳を貸さない私も、そのときばかりは真剣な態度になりました。
一番肝心な部分は「5」の晩メシにナニを「4」の入院・手術です。
家内がしばらくのあいだ入院するということは、私が家事全般をやらなくてはなりません。これでもサラリーマンのハシクレ、仕事をしながら家事もこなすことになるのです。困りました…。
地元の先生から紹介された、済生会神奈川県病院で検査を受けた家内を伴って、後日、その結果を聞くため会社を休んで病院を訪れた私。
担当の先生の話をまとめると…、
1、片方の卵巣に水が溜まり、何十倍にも膨れている
2、さらに腫瘍らしいモノも写っており、それの良性か悪性かの確率は半々である
3、良性なら卵巣を摘出して縫合し、無事に終了
4、もしも悪性の場合、今後はその治療のため長い付き合いになるから覚悟しろよ
5、いずれにしても手術と入院は避けられないかんね
と、いうことでした。
CTで撮った画像を見ながらそんな恐ろしいことを聞かされた私が、一番最初に思ったことは今この場で…、
「センセーッ、家内はいつまで生きられるんですか!?」
と、叫んだら目の前の主治医はどんな態度を取るのだろうということでした(他に考えることないのかよ、俺…)。
それにしても開腹した結果、悪性腫瘍だった場合を想像すると慄然とするのは確かです。
大事に至らないことを心から祈る他ありません。
摘出は、出来るだけ早めがよいとのことで、入院が4月11日、手術は翌々日の13日に決定致しました。
その帰り、病院の近くにあるサティで昼と夜のおかずを買いたいという家内に付き合った私。
「ねぇ、今晩のおかずはナニにする?」と、いつものように家内は訊いてきました。
「うん、なんでもいいよ…」これまた相変わらず気のない返事の私。
「入院したら、しばらくはお肉を食べられないかも知れないなぁ…」何故か家内は、自分の身体よりも肉のことを心配しております。
「でも俺は、魚が食べたいな…。ん!?」
そのとき、私は不意に閃きました。
「そうだ、今週末はKOBUさんとまっちゃんがマダイに行くって言ってたからそれに便乗させてもらおう」と。
縁起物のマダイを釣り上げて、家内に鯛の刺身を腹一杯食べさせ、手術が無事に済んで順調な回復を願おうと思ったのです。
ああ、我ながらなんと素晴らしいアイデア!
これぞ夫婦愛、ダンナの鑑、妻は日本一の果報者!
しかし、そのことは家内には伏せておきました。
だってほら、もしもボウズだったら逆に縁起悪いし…。
そう、やっぱり私は正真正銘のチキン野郎であります…。わはは。
 思わぬ再会
KOBUさんにどうしても外せない仕事が入り、まっちゃんと二人だけで臨むことになった今日のマダイ釣行。
向かう宿はKOBUさんお勧めの宿、葉山柴崎にある、ゆうしげ丸さん。
ここは宿で葉山シラスを買うこともでき、我々はそれが第二の目的でもあった。
ある意味、船宿でありながらバックアップストアも兼ねているという点が非常に画期的なのだ。
港に到着してまずは宿にお邪魔し、座席表に名前を記入した。
左舷のオオドモはすでに売約済みだが、その隣りは空いていたので、トモ2番目がまっちゃん・私が3番目で釣り座をキープ。
その後、車を駐車場に入れて、再び店先に立った私とまっちゃん。
何気なく店内に目をやり、こちらを振り向いたまっちゃんが一言つぶやいた。
「ベルデさんがいるよ!」と。
ベルデさんといえば、「元祖わはは」「わははのプロパー」「わははの家元」の人であり(って、どんな人だよ!?)、彼の専売特許を私が勝手に拝借して「わはは爆釣隊」と命名したのだった(詳しくはこちらをお読み下さい)。
つまり「わはは」に関して、ベルデさんが「本家」で、私が「分家」という立場。
分かりやすく例えるなら、ベルデさんが「小諸そば」で私が「追分そば」みたいなものである(全然分かりやすくないってか!?)。
ゆうしげ丸さんの店内に足を踏み入れると、確かに見に覚えのある緑色の方が入り口近くでスポーツ新聞を読んでいた。
「ベルデさん!?」まっちゃんが声を掛けた。
「ん!?あれっ!?どーしたの!?」と驚いた顔をしたベルデさん。
「マダイを釣りに来たんですよ。今、乗っ込んでいるんでしょ?」私。
「まだ早いよ!タイなんか釣れないよ!」と緑色の人。
「でも、ベルデさんもマダイなんでしょ?」
「ううん、新聞読んだら帰るよ!」
久し振りにお会いしたベルデさんは、相変わらず元気そうであった。
実は私、葉山に到着してからコンビニへ寄って、本日のアルコール類を調達した際にベルデさんのレポートを思い出して赤ワインを購入していたのだ。
ところがそのご本人と、同じ日に同じ宿の同じ釣り物でご一緒する偶然。ビックリである。
宿の壁に掲げてある座席表に目をやると、ベルデさんも同じ左舷でミヨシの2番目。
それ以上釣り人が増えなければ私の隣りになる位置関係。
なんだか申し合わせたような釣り座である。
さて、船代を支払う際、まっちゃんが女将さんに生シラスの予約を入れた。
本日、無事にシラスが獲れれば生の葉山シラスが帰りがけに買えるのだ。
それを炊きたてのご飯にドバっと乗せて、おろし生姜をチョッピリ盛って、醤油を垂らしてワシワシ食ったら、口の中は濃厚な甘さに旨さ満ち溢れ、その歯ごたえと舌触りは獲れたてならではの官能の世界へと誘ってくれる。これぞ至高の贅沢、悶絶覚悟の美食の極み。ああ、想像するだけでヨダレが出そう…。
「やっぱさ、マダイよりもシラスの方が身体に良さそうだよな…」
一瞬そんなことを考えたが、シラスが縁起物とは到底思えず、やはりここは初志貫徹で魚界の王様を狙わなければと覚悟を決めた。
その後、歓談の場を船上に移し、取りあえずはタックルのセッティングに取り掛かる私たち。
結局、出船時間が近づいても釣り人の数は増えず、まっちゃんと私、そしてベルデさんが横並びに座ることになった。
私は、お互いに今日一日「わはは」と笑い合えることを願いながら、缶ビールを開け、葉山の海に乾杯をした。
 コマセダイの魅力
定刻の午前7時、片舷5名ずつの計10人の釣り客を乗せて出船。
航程約20分で最初のポイントに到着。
水深40mで、タナはハリス分。
私は宿から支給されたオキアミの中から、「背中の反り加減」「肌の張りと色艶」「目の輝き」「積極性」などの細かい判定基準に合格した者を選び、尻尾を切ってチヌ針に刺した。
そして、投入の合図とともにビシ→ハリスの順に沈め、着底後は底ダチを取り直し、4m巻いてコマセを振りさらに2m巻き上げて再度コマセをまく。
ドラグの調整も自分なりにはオッケーだと思う。これくらいなら2、3キロのマダイが食ってもハリスは切れない自信があった(キロオーバーのマダイなんて釣ったことないんだけどね…)。
何度かの流し替えのあと、左舷オオドモの方がヤリトリを開始。
時おりズボッと突っ込む様子はもしかして本命!?
上がってきたのは魚界の首領(「ドン」と読んでね)マダイ。垂涎の魚である。
しかし、私のエサは取られもしなければ、スパっとアタマだけ食われることもなく無事に生還してくる(もともと生きてはいませんが…)。
久し振りにコマセダイをやって私はハタと思い出した。
「そうだ、コマセダイって結構つまらない釣りだったよな…」と。
私の中で楽しい釣りとは、
1、頻繁に本命・外道を問わず魚からのアタリがある
2、最低でも2時間に1尾は魚を手に出来る
3、オモリが底に着いている
4、使用するオモリは50号まで
5、水深も50mまで
である。
その基準に当てはめるとコマセダイは残念ながら「つまらない釣り」と言わざるを得ない。
いや、釣れたら最高に面白い釣りに昇格させるのもヤブサカではないが、釣れないのだから仕方ない(文句あるなら俺のハリに食え、マダイ!)。
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| <じゃがりこ“ジャーマンポテト”が好きです> |
そこで、楽しみにしていた赤ワインをオープン。
多少、風はあるものの気持ちのいい日差しに包まれて相模湾に浮かびながら呑むワインは予想外に美味かった。
こんなに船上ワインが美味しいのなら、酒屋でボルドーとかブルゴーニュ産のちゃんとしたワインを買えばよかったと後悔する(まあ、国産もフランス産も味の違いなんて分かんないですけどね僕の場合…)。
それにしても相模湾からの眺望は、心癒される思いがした。
富士山は近くにそびえ、陸は緑が豊富で、海面に浮遊物は少なく水質も良好。
東京湾ほどゴミゴミしておらず、外房ほど荒々しくない相模湾。同じ海でもまったく別の顔なのだ。
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| <癒しの海、相模湾よ永遠なれ…> |
良く考えてみたらコマセダイの魅力はこの、のんびり加減にあるのだ。
コマセダイ釣行は程よく晴れた凪の海に限る。
ポチャンポチャンと船体を叩く波に揺られて上下する竿、それ見詰めながら景色や会話やお酒を楽しむ。それに飽きたらビシを回収してエサのチェックを行う。
これぞこの釣りの真骨頂。
常に手持ちで誘い続ける人には叱られるかもしれないけど、私にとってのコマセダイはそんな釣りなのだ。わはは。
 ベルデさんの独壇場
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| <やはり「わははの元祖」は違うぜ!> |
まっちゃんと私はいまだにマダイからノーシグナル。
しかし、いくらのんびりと癒しの釣りだといっても、やはり気になるのは今後の行く末。この調子だとボウズもあり得る…。
それに反して、ベルデさんがついに本命をゲットした。
体長30cmの見事なマダイ、さすがは相模湾をホームグラウンドにしているベテランだけのことはある。キッチリと仕事をこなすのだ。
ベルデさんの快進撃は止まるところを知らずさらにあと2枚も本命を追釣。
彼の周囲でもバタバタとヒットしているらしく、ミヨシ方面は活況を呈している。
ところが、まっちゃんと私は相変わらずカスりもしない。
そんな私を哀れんでベルデさんが釣り方のアドバイスをしてくれる。
「4mで軽くコマセを振って、6mで思いっきりコマセをまいたらそのまま置いてみて下さい」と。
「しかし、ベルデさんは絶好調ですね!」と言う私に、
「今まで高い授業料を払ってますから…」とおっしゃる緑色の御仁。そりゃもっともです。時々、思い出したように狙う私のような素人が簡単にマダイを手にすることなど出来るハズもありません…。
だが、私の相棒のまっちゃんも黙ってはいなかった。
彼は私と違ってコンスタントにマダイ釣行を重ねている。だから、マダイはどうすれば釣れるか熟知していた。
そのまっちゃんがついに食わせた。そして、私など怖くて出来ない荒技、「マダイの抜き上げ」をしてニヤリと笑った。キャリアの差をまざまざと見せ付けられた気がした…。
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| <もちろん、このあとリリースしました…> |
ついに船中でマダイを釣っていないのは私だけとなった。
自分だけが除け者なのかという孤立感と疎外感を感じながらも、ビシを回収してコマセの詰め込み作業を繰り返す私。
今までオキアミに食ってきた魚といったら私の“心の友”シコイワシに、ガンゾウと名の付くヒラメの2種類だけ…。
私は無性にビシアジがやりたくなった…。
 幼き命の重さ
「ウィーーーーン!」
聞きなれた我が電動リールの巻上げ音。
目の前のマダイ竿が微妙に突っ込んでいるのは、またハリに小魚でも付いているからだろうか…。
これがナン10回目のコマセ詰め作業なのか…。
私は、この海にアミコマセを撒きにきたわけでは決してない…。
サニービシを掴んで、ハリスを手繰ると、ハリに赤い色をした小さい魚が付いていた。
なんと、それは心から待ち焦がれていたマダイではないか。
しかし、悲しいくらいにミニサイズ。これを持ち帰るほど私の志は低くない。
「うげっ、ハリを飲み込んでいるぞコイツ…」
私は極力ダメージを与えないように、マダイをタオルで包み、右手に持ったペンチで喉元深くに刺さったハリの摘出手術を行った。
まだ生まれて間もないこのような幼子を、むざむざ死なせるわけにはいかなかった。
これから数多くの友だちを作り、たくさんの恋愛を重ね、泣いたり笑ったりと素晴らしい人生、イヤ、鯛生が待っているのだ。
「頑張れよ、マダイ!今、このイマイマしいハリを抜いてやるからな…」
私の手は震えた。
ペンチは小さな口中に見えるチヌ針のチモトを挟んだ。
あとは、優しく抜くだけだった。カエシがどれほど身体に損傷を与えるかは神のみぞ知るだ。
「ズボッ…」
手術は終わった。
ちゃんとした設備もない船上で、やれるだけのことをやった充足感に私は満たされた。
ところが…。
「あっ………」
私は思わず絶句した…。
チヌ針は見事に摘出されたが、そのハリ先には、この幼いマダイの内臓の一部(喉仏か声帯の一部と思われる部分)が刺さっていた…。
「す、すまん…」
私は自分の不首尾を猛省すると共に、家内の執刀医が私のような不器用な人でなければいいと心から祈った。
とりあえず、集中治療室(海水を張ったタルね)に泳がせ、術後の経過を見ることにする。だが、まだあどけない子供、悲しいくらいに体力が不足していた。
しばらく観察をしたが、ついに心肺機能が停止し、脳からの信号も途絶えた。
目の前のマダイの短い生涯が幕を閉じた。午後1時12分だった…。
 幸運の温存
午後2時、船長から納竿のお知らせが届いた。
結局、ベルデさんはリリースも入れて合計4枚のマダイを仕留めた。きっと竿頭であろう。
私とまっちゃんはそれぞれ放流サイズの本命1枚ずつに終わった。
宿に戻ってまっちゃんが女将さんから葉山産の生シラス2パックを渡され、料金を支払ってくれた。
山盛り入って1パック1,000円は破格の値段のように思えた。
さあ、これを肴に今日は冷酒でも呑もうと決めた。
駐車場でベルデさんと再会を誓い別れた。
きっと彼は今日、楽しかったに違いない。
自分のイメージした釣り方がしっかりと結果に繋がったのだから釣り人冥利に尽きるだろう。
「でもさ、ここで2、3キロのマダイとか釣って自分の運を使わずに、カミさんのために幸運を残しておいたと思えばそれはそれでオッケーだよな…」
やや負け惜しみに聞こえなくもないが、私は今日の結果をそう捉えて葉山の港をあとにした。
さて、このマダイの稚魚をどう料理したものか…。
私はまた、家内の執刀医が私のように不器用でないことを祈る他なかった…。
【追伸】家内の手術は無事に済み、おかげさまで腫瘍は良性であり、術後の経過も良好で今ではまた晩ご飯のメニューに悩む日々を過ごしております。やっぱり運は残しておくべきですね。わはは。
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