MBA登山講座


〜序論〜

登山というものは、海外旅行やあてのない旅とは根本的に異なる。どちらかといえば、企画や経営といった要素が強いのではないか。
目的を持ち、その実現の為に最も効率の良い手段をとるのが登山で、思いがけない出会いやハプニングはマイナス要素として扱われる。
登山中に熊に出会うことは、よい思いでになるかもしれないが、基本的には避けるべき「事件」であるし、 途中に出会ったおじさんに助けてもらった、などというケースは美談としては扱われない。
なぜなら偶然というものを可能な限り排除することが目的達成に最も近づくためには必要であるからだ。

明文化されたり、学問として扱われることは少ないが、登山計画のプロセスは団体の経営と非常に似ている。名登山家になるは体力や山の知識のみならず、社長並みの経営能力、もしくは将軍並みの指揮能力が必要とされる。

登山家=むさ苦しいひげの男、飯を大量に食らう体育会系、という一般のイメージは一概に間違っているとは言えないが、むさ苦しいだけでは、登山は成功しないのである。

<登山の経営概論>

登山には明確なVisionというものが暗黙のうちに設定されている。
それは「常に高きを目指す」ということで、このVisionを共有しない限りはパーティは途中で挫折する。高い場所に行くという意味自体を議論しても始まらず、理由はなんであれ、高い場所に行くことに意義がある、と考える人間の集まりで登山に望むべきである。

そのVision達成の為にDirectionとして「山」をまず選び、 ヒト、モノ、カネ等の経営資源を考慮し、具体的なGoalを設定する。
大抵のGoalは山の頂上であるべきで、仮に山の中腹をGoalに設定すると、 目的が達成されたかどうかが不明確になり、パーティのモラルが著しく低下する。

人は明確にわかる指標を常に求めており、頂上が景色が綺麗であるとか、名勝であるとか以上に、頂上であること自体が非常に重要なのである。

Goalが決定したら、そのGoalにたどり着くための具体的なStrategyへと移る。

<リーダーの条件>

登山には、リーダーとサブ・リーダーがいるが、リーダーに求められるものは、Vision達成への強い意志である。

疲労する隊員、変化する気候、限られた食糧などの現実と、頂上へ登るという理想をつなげ、隊員を引っ張って行くことがリーダーの役割である。

サブリーダーの役割はリーダーの性質により、異なるが、基本的にはStrategy考案や、個人間の対立の管理などマネージャー部分を担当することが多い。

リーダーは常に「頂点」向くべきであり、登山中の個人的な人間関係を調整するのは、サブリーダーが行なうべきである。なぜならリーダーが人間関係調整タイプであれば、人間関係の為に達成できるべき目的を破棄するおそれがあるからだ。
人間関係の改善自体は登山のインセンティブになりえないので、リーダーは常に外に向けた発信をする必要がある。

<登山サークルの組織文化>

登山の為には多大な知、経験が必要であるが、 1年ごとに幹事会が変わる学生組織では、 これらの伝承が非常に大切な要素となる。

また、組織として団結するには、一定の価値観を共有することが、必要となる。
団体の目的が「山を制覇すること」であるならば、個人的なトラブルや異なる価値観による議論などでコストをかけることは極力避け、登山に関する知識や経験といったものを得る時間を最大限になるようにするべきである。
そこで団体の意志疎通を促進させる為に組織文化の浸透が大きなカギとなる。
具体的には、定例の催し物、儀式、団体独自の言葉などである。

基本的にこれらの組織文化は、目的達成の為に作り上げるものなので、同好会には存在しない。なぜなら同好会は「山が好き」な人間が集まったもので、目的を持った団体ではないからだ。

大学においては、どちらかといえば、両者の価値観が入り交ざった形を取っており、バランスの取れた団体運営が必要とされる。

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