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〜サッカーを足元から支える「緑のじゅうたん」を学べ〜

秘密芝園

芝生なんでもQ&A

スタジアムに足を運ぶと、こう思いませんか? あー芝生ってキレイやなー…と。だがしかし、キレイな緑のじゅうたんは非情な緑の戦場でもある。おろそかにしていると足元をすくわれかねない(日本代表はよく滑るし)。だから、今、芝学! 芝と友達になろー! 今回、質問に答えていただいたのは、広島県にある総合芝草造成業者、ゾイシアンジャパンさんだ。同社は、サッカーグラウンドでは「横浜国際総合競技場」や「鳥栖サッカースタジアム」などを手がける、いわば日本を代表する芝生スペシャリスト集団。最近では「校庭芝生化」にも力を入れている。オフィシャルサイトにも芝生についてタメになる情報が掲載されているので、興味ある人はぜひチェックを。ゾイシアンジャパン

主宰●大岡まさひ 副宰●高井ジロル

Q.01
芝がツートンの縞模様に見えるのはどうして? 
オフサイドラインを見やすくするため?
別種類の芝組み合わせ説やら、特殊な方法を駆使して芝目を変えてある説やら、いろいろ難しい予想をしていたのだが、答えはわりと単純だった。「芝刈りの方向を互い違いにして、芝刈り機に付属したローラーで葉を寝かせると、芝が進行方向に傾いてクセがついて縞模様に見えるようになるんです」。要は、ローラーで押さえつけているだけ。いわゆる「芝目」というのは水のある方向に芝が伸びてできたりするものなので、それともちょっと違う。また、オフサイドラインとの関連については「ラインが見やすいということは確かにありますが、規定があるわけではなく、むしろあれは芝生の存在感や美観を重視したものですね」とのこと。やっぱね。

横ストライプ
よくある横縞タイプ。オフサイドがわかりやすい。普通なので安心。

Q.02
日本のグラウンドは欧米に比べて
カタいって本当?
一応、本当らしい。「これは土質の問題が大きいと言われています。日本のサッカーグラウンドは、透水性を高め、利用による固結を防いで雨が降った後にでも少しでも早く利用を可能にするために砂基盤構造にしてあることが多いんです。逆に欧州(とくにイギリスなど)では粘土質土壌が多い。この2つを比較すると、日本タイプのグラウンドのほうが若干カタく感じるのかもしれません」。ちなみに、現在の日本のグラウンドは昔(1980年頃)よりは柔らかくなっている。選手の安全性ということを考えると、基本的にグラウンドはやや柔らかいぐらいが望ましく、とはいえ、芝生のクオリティを上げることを考えれば日本では砂基盤構造がベストとされているから、ややカタめなのはある程度しょうがないという感じらしい。

縦ストライプ
意外と見かけない。サッカーユニは縦縞が多いのに。関係ないのか。

Q.03
たまに耳にする「高麗芝」は
「高麗」なのに日本産だって本当?
本当。「コウライシバは日本に自生する芝ですが、コウライシバが発見された当時、国産のめずらしい植物に『コウライ』や『カラ』等の接頭語がよく付されていたようで、その名残といわれています」。で、肝心の朝鮮半島には高麗芝は自生していない。日本では九州以南、海外では台湾、インドネシア、インドで自生が確認されている。

Q.04
サッカー場にはゴルフ場みたいな
農薬問題はないの?
微妙だけど、マスコミに叩かれたりはしていない。というのもゴルフ場より全然小さいし、農薬散布量も少ないからだ。「病害虫の防除は薬に頼らざるを得ない面があるので、害虫が多く発生する場合はたしかに薬剤散布をします。雑草防除については、除草剤を撒くところもありますが、Jリーグクラスの競技場では手取り除草をモットーとしているグラウンドキーパーさんが多いようですよ」

極細横ストライプ
縞の存在を忘れさせるほど細い縞。もしあったら、芝職人の自己満足。

Q.05
日本より気候が悪そうなイングランドの芝が
いつも青々としているのはなぜ?
これは芝の種類に大いに関係がある。「年間通して冷涼なイングランドでは、寒地型芝草(ペレニアルライグラス等)を使用しています。寒地型芝草は、暖地型芝草(バミューダグラス、ノシバ等)のように寒さで休眠することがありません。イングランドでは7月の平均気温が16℃ほどで、寒地型芝の生育にちょうどよい気候範囲にあります。このような土地では、芝の種を追い捲きしたり補植することで、年間通じて緑のグラウンドを維持することができるのです」。年間通してあまり気温が上がらない土地なら、「寒地型芝草」を植えとけばずっと芝は青々としたままで維持できるというわけ。日本でも寒地型芝草をオーバーシードなどに使っているが、夏の暑さや乾燥で8月頃には枯れてしまう。なんか、日本ってソンだなあ。

Q.06
芝を緑色にペイントすることがあるって本当?
前にアジアカップ予選の某国での試合で、「芝に緑のペイントがしてある」といわれたことがあった。そのへんを聞いてみると、「芝の葉に色をつける『ターフペインティング』という技術は存在していますので、大いにあり得ると思います」とのこと。これ、意外と昔からある手法らしい。日本の国立競技場でも高麗芝を使用していた頃、染料を使ってカラーペイントした事実があるとか、ないとか。

グラデーション
同じ緑だが淡いのから濃いのまで…ちょっとあり得ない、着色する以外には。

Q.07
芝はイネ科らしいけど花や実はつけないの? 
そもそもどうやって繁殖させるの?
「はい。芝は穂をつけます。日本芝(ノシバ、コウライシバ)等では、春に紫の穂をつけて全体に黒っぽく見えることがありますが、それが芝草の出穂です」。というわけで、花や実はできるんですね。米は採れないと思うけど。繁殖のさせ方に関しては、「種子から繁殖する種子繁殖型と、ほふく茎を伸ばして横方向へ増えていく栄養繁殖型の2種類があります」とのこと。栄養繁殖型というのは地上または地下の茎によって生育領域を広げていくタイプの繁殖法らしい。まあ、普通に種をまいて繁殖させるのと、育てて株分けみたいにして増やす方法があるということだろう。ちなみに、暖地型芝草は栄養繁殖型の芝で、寒冷地型芝草はすべて種子繁殖型の芝ということになるらしい。

Q.08
はがれた芝はハーフタイムに
どうやって直しているの?
たまにハーフタイムに作業員の人が、はがれた芝を直しているらしき光景を見かける。あれは具体的に何をやっているのか?「おそらくはげた芝を元に戻しているだけだと思います。ハーフタイムでの補修ははがれた芝を埋め戻して隙間に砂をすり込んでおくか、穴の空いた部分を砂で埋める程度の作業しかできないでしょうね」

チェッカーフラッグ
たま〜に見る。サッカーはチェスゲームだよ、と言いたくなる(かも)。

Q.09
ゴルフやテニスとサッカーでは、
芝に何か大きな違いがあるの?
日本の場合、基本的に関東以北ではバミューダグラスは適さないので使われない。それを踏まえた上で、「バミューダグラスの特徴を活かすためには短く刈る必要があるので、集中管理が可能なサッカー場、テニス場などに限られます。競馬場では馬の踏圧に耐えられるように、ノシバ、コウライシバがよく使われますね。ゴルフ場は、フェアウェイ、ラフ、グリーンで異なる芝を使用したりします」

Q.10
サッカー場の芝の長さや種類等について、
国際的な基準はないの?
FIFAが作る、という噂もあるようだが、今のところはまだないらしい。「『平坦で常緑の天然芝であること』といった基準以外には、とくにないのではないかと思います」とゾイシアンジャパンの人も言っていた。これだけワールドワイドかつポピュラーなスポーツなのに、芝に関して基準や規定がないというのはかなり驚きですなー。

サークル
これも実在。かなり工夫度高し。センターサークル中心思想?

Q.11
「芝生は踏まれた方がよく育つ」って本当?
ウソくさいけど、実はちょっとホント。「芝草へのある程度の踏圧は、接触刺激によって芝生の茎葉からエチレンの生成量が高まり、その働きによって茎葉の伸長が抑制され、草丈の低い密生した芝生となるので効果的です。しかし、一定以上の踏圧が加わると芝は損耗し、やがて裸地化します」。そうかエチレンか、エチレンね。

Q.12
天然芝が人工芝にまさっている点は
どんなところ?
これはもう、たくさんあるぞ。「選手が滑り込んだりしたときにすりむけないといった人体保護機能、地熱変化の緩和(夏は涼しく、冬は暖かい)、さらに太陽と緑の中でスポーツを楽しみたいという人間の本能的な欲求を満たすという点、CO2削減等の環境保全機能などですね」。FIFAが公認した人工芝ピッチもあるけど、今のところ、やっぱ芝は天然に限る、っぽい。

スパイラル
サークルがあるなら渦巻きがあってもいいじゃないか。ないけど。

Q.13
芝草造成業者って儲かるの?
ハイ、答えていただきました。「一昔前のゴルフ場造成ブーム時には儲けていた業者もいますが、最近では、芝生造成工事も減少していますので、特殊な技術や商品を持っていない限り儲かりません」

Q.14
芝生研究の先進国といったらどこ?
意外にも、アメリカ。「芝生研究での先進国といえば、研究期間や市場の大きさ等を総合的に評価するとアメリカに勝る国はないと思います。芝の種子生産会社もアメリカにほとんど集中しています」


柴犬
芝だから柴犬。…。よく見えないけど柴犬。…。アスキーアートみたいですよ? ワンワン。

Q.15
シロツメクサなどの雑草が生えた
サッカー場もあるって本当?
これも前のアジアカップ予選中にどこかの国で言われていたが…。「雑草は世界共通の問題で、アジアだけでなく雑草が混じるグラウンドは世界中どこにでもあります。これは管理費用あるいは管理技術が不十分であることが原因です。とくにシロツメクサは大型化すると手取りも除草剤でも根絶させることが難しいのでやっかいな草です」


**「現代サッカー様式学会」はフロム・エーで発表したものです(初出〜2001年)**

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