講義録
以下のコンテンツは、勤務先の大学で私が担当している科目の講義ノートに若干手を加えたものです。数式やグラフは使っていません(定義式や統計グラフなどは除く)。
もともとは、経済学の普通の教科書のように、数式やグラフを多用するスタイルで講義を行っていたのですが、学生にとっては「鬼門」ともいえる最難関科目の1つと受け止められていました。実際、試験をやってみても学生が必死に勉強しているようなのに、平均点はなかなか上がらず悩んでいました。多くの不合格者を出しました。一時は、希望者を対象に経済学で必要な数学の補講を行ったりもしたのですが、そうした補講に参加するのは少数の熱心な学生であり、補講が本当に必要な大多数の学生は参加しませんでした。
自分の教え方がマズいのだろうかとも悩んで大学院時代の恩師や先輩方にもあれこれ相談した末、あるとき、数式やグラフを駆使する自分のこれまでのスタイルが自分がこれまで受けてきた講義のスタイルそのものであり、それは「学者のタマゴ」を育てるものであることに気がつきました。確かに、学生の中には経済学を深く学ぼうと志す者もいるかも知れません。しかし、それは数百人・数千人に1人いるかいないかというオーダーの話です。圧倒的多数の学生諸君は経済学者になるためのトレーニングを受けようとして私の科目を受講しているわけではないのです。それに気がついてから、ずいぶんと楽になりました。
つまり、学者になるためには、各種ツールの正確な使い方を修得し、自在に使いこなせなければなりません。最低限、同じ現象を、言葉とグラフと数式という3通りのやり方で自由に表せる必要があります。しかし、そうしたことを学生に教え込む必要はないのです。とはいえ、これは従来の講義のスタイルをそのままにして、内容を単に水で薄めればよいというものではありません。無差別曲線について大雑把に説明したところで、何の意味もないばかりか、ますます分からなくなるだけです。具体的なテーマを題材として、経済学のおおまかな発想・考え方を教えればいいのです。大工さんの仕事に例えれば、あれこれの道具について詳しく説明するよりも、とりあえず家を作って見せて、「へぇ、あんな道具でこんな家が建てられるのか」と実感してもらう方がいいのではないかと思うのです。
現在のスタイルがベストであると思っているわけではありません。まだまだ工夫の余地があるとは思いますが、試行錯誤の過程も何かの役に立つかも知れないと思い、公開することとしました。
もちろん、私の講義を休んでしまった学生諸君の役にも立つはずです。
1.
現代経済学
半期で2単位配当の総合基礎科目(一般教養科目)の経済学です。「第0章 経済学の考え方」「第1章 医療・年金および福祉の改革」「第2章 誤解される貿易」「第3章 日本企業の謎」という4部構成です。各章3回なので、全部で12回で終える予定です。実際の講義が12回を上回ったときは、試験の予想問題を解いてもらうのに使っています。
2.
国際経済論
半期で2単位配当の専門選択科目です。「第0章 国際経済論とは何か」「第1章 国際収支の見方」「第2章 国際貿易の見方」「第3章 為替レートと産業構造」という4部構成です。各章3回なので、全部で12回で終える予定です。実際の講義が12回を上回ったときは、試験の予想問題を解いてもらうのに使っています。