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排出許可証取引とは何か?


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排出許可証取引とは何か?

*排出許可証取引制度

譲渡可能な排出許可証(Transferable Emission Permits)

ある環境における予め決められた汚染物質の許容排出総量を、排出許可証の取引市場を創設することで、各排出源に効率的に割り当てるための制度。

環境それ自体を市場で管理するのは困難
−−−>環境へ汚染物質を排出する権利(ある種の「環境利用権」といえる)を設定し、その取引市場を作ることで、間接的に環境を管理しようとする発想(提唱者は、J.H.デイルズ)

*排出許可証取引の経済効果

排出許可証取引は、理論上は、総量規制と併用された課徴金と同じ効果を持ち、汚染物質が環境に均等に拡散する場合には、本来の効率性を発揮できる。米国では、1979年代後半から大気保全のプログラムとして導入済み。

排出許可証取引の仕組みと経済的機能

*排出許可証取引の仕組み

(例)二酸化炭素の排出抑制

ある地域での二酸化炭素の排出量を5000トンに抑えたいとする。

政策当局は、年間に二酸化炭素をXトンまで排出してもよいという許可証を合計で5000トン分だけ発行する。

各排出源(工場など)は、排出許可証を持たなければ、二酸化炭素を排出できず、また、二酸化炭素は持っている許可証で認められている範囲内に維持しなければならない。政策当局は、排出許可証を各排出源に配り(初期配分)、その自由な売買を各排出源に認める。
−−−>排出許可証(排出権)を取引する市場が成立する。

*排出許可証取引の経済的機能

個々の排出源は、市場で許可証を買って自らの排出量を増やすこともできるし、逆に、排出量を減らして余った許可証を市場で他の排出源に売ることもできる。
−−−>個々の排出源が合理的に行動するならば、排出許可証の市場価格と自らの限界排出削減費用とを比較しつつ排出量を決定するはず。

合理的な排出源は、排出許可証を購入するための費用と自ら排出量を削減する費用との合計を最小化するように、排出量を決定すると考えられる。

・限界排出削減費用とは?

平均(average)と限界(marginal)

もし、数式で書けば、・・・

平均・・・y/x(原点からその曲線上の1点まで引いた直線の傾き)

限界・・・dy/dx(その曲線上の1点で引いた接線の傾き)

限界概念は、経済学の「勘所」の一つ!
−−−>限界概念が理解できるかどうかが決定的に重要
−−−>「限界=ぎりぎり」ではない!

限界費用・・・生産量を今よりも追加的に1単位だけ増やしたとき、それにともなって費用が今よりもどれだけ増えるかを示す比率

大雑把にいえば、費用をC、生産量をYとしたとき、費用の増加分(ΔC)/生産量の増加分(ΔY)が限界費用(marginal cost)となる(ただし、ΔYは限りなくゼロに近いとする)。

したがって、限界排出削減費用は、汚染物質の削減量を今よりも追加的に1単位だけ増やした(したがって、汚染物質の排出量を今よりも1単位だけ減らした)とき、それにともなって費用が今よりもどれだけ増加するかを示す比率。

合理的な排出源は、

排出許可証の市場価格=限界排出削減費用

となるところで汚染物質の排出量を決定する。

【その理由】

もし、

排出許可証の市場価格<限界排出削減費用

だったら?

ある排出源にe0だけの排出許可証が初期配分されているとする。排出量がe0のときの限界排出削減費用はMC0である。もし、MC0よりも許可証の市場価格p0の方が安ければ(p0<MC0)、その排出源は許可証を市場で他の排出源から買って排出量を増やそうとするだろう。なぜか?

では、逆に、

排出許可証の市場価格>限界排出削減費用

だったら?

このときは、合理的な排出源は、排出量を減らして許可証を市場で他の排出源に売ろうとするだろう。なぜか?

排出許可証を売買する市場が競争的であれば、以上のような各排出源の行動を通じて、許可証の均衡価格が成立する。各排出源の限界排出削減費用は均等化し、排出総量目標を達成するための社会的な費用が最小化される。

排出許可証取引の政策的含意

【考えてみよう!】

上記の議論で、限界排出削減費用が排出許可証の市場価格を上回る(p<MC)排出源とは、実際にはどういう企業なのか?また逆に、限界排出削減費用が排出許可証の市場価格を下回る(p>MC)排出源とは、実際にはどういう企業なのか?

<<解答>>

「排出許可証の市場価格<限界排出削減費用」となるのは、既にそれなりの環境保全策をとってきた、相対的に環境に「やさしい」企業であると考えられる。環境に「やさしい」生産技術を持つ企業は、今よりも汚染物質の排出量を1単位追加的に減らそうとすれば、費用が大幅に増えてしまう。

一方、「排出許可証の市場価格>限界排出削減費用」となるのは、これまで環境保全策をほとんどとってこなかった、相対的に環境に「きびしい」(?)企業であると考えられる。環境に「きびしい」生産技術を持つ企業は、今よりも汚染物質の排出量を1単位追加的に減らそうとすれば、少ない費用で可能となる。

なぜか?「かたく絞った雑巾とびしょびしょの雑巾とを比べると、絞りやすいのはどちらか?」を考えてみよう。

排出許可証が市場で自由に売買されると、汚染物質の排出量を割安に減らせる環境に「きびしい」企業は設備投資などを行って汚染物質の排出量を減らし、余った排出許可証を市場で売ろうとする。

一方、汚染物質の排出量を減らそうとすると割高になってしまう環境に「やさしい」企業は排出許可証を市場から買おうとする。

以上の取引の結果、環境に「きびしい」企業では汚染物質の排出量が減り、環境に「やさしい」企業では汚染物質の排出量が増える。排出量そのものは、排出許可証で認められた範囲に抑えつつ、生産の効率性を高めることができる(排出量を一定の範囲に抑える上での社会的な費用を最小化できる)。

注意してほしいのは、排出許可証取引きは、汚染物質の排出量そのものを減らすわけではないという点である。ただし、発行する排出許可証で認められた排出量を実績以下に抑えれば、排出量そのものも減る。また、環境保護団体が排出許可証を買えば、企業が利用できる排出許可証がその分だけ減るので、汚染物質の排出量を当初の目標値以下に抑えることが可能となる。

排出許可証取引の利点と問題点

*排出許可証取引制度の利点

排出許可証取引制度は、汚染物質の排出量を確実に抑制するという直接規制の長所と市場機構を利用した課徴金制度の長所とを兼ね備えていおり、理論上は大変興味深い。

制度の導入がもたらす分配効果を調整しつつ、効率的な排出量削減を行える。排出許可証の初期配分をゼロとすれば、汚染物質の排出に関する既得権を全く認めないこととなり、課税と同じ効果を持つ。

課徴金の場合、汚染物質の排出量を一定に抑えるには、政策当局は最適な税率を決めなければならない。排出許可証取引制度では、排出許可証の価格は市場での自由な売買を通じて決定される。政策当局は許容し得る排出量を定めて、それに見合うだけの排出許可証を発行するだけでよい。課徴金の場合よりも排出許可証取引制度の方がより少ない情報で外部性を効果的に制御できる。

動学的効率性へのインセンティヴが与えられる。

*排出許可証取引制度の問題点

・排出許可証の初期配分(割当)方法

実績基準(grandfathering)と競売(auction)

排出許可証取引の市場が完全競争であれば、各排出源にどのように排出許可証を初期配分するかは、問題とはならない。

・排出量の遵守(compliance)

モニタリング(monitoring)の必要性と罰則


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