デポジット制度とは何か?
3.1 デポジット制度とは何か?
*デポジットとは?
デポジット(deposit)とは、預り金のこと。
*デポジット制度の概要
・一定の金額を預かり金(デポジット)として販売価格に上乗せし、製品(容器)を返却すると預かり金を消費者に戻すという仕組みのこと。
・デポジット制度とは、再利用のための回収を目的として、あらかじめ飲料水などの販売価格に容器代を上乗せしておき、消費者が容器を捨てずに返却した場合にその容器代を返却するシステムである。
・該当容器入り飲料の価格に、ある一定の金額を上乗せして販売し、空の容器を販売店等の回収ポイントに返却したとき、デポジットの金額あるいは、その一部等一定額を払い戻す制度をいう。
*デポジット制度の現状
現在、全国規模のデポジット制度に類似した仕組みが確立されているものに、ビールびんや清涼飲料びんなどの、ガラスびん容器などがある。ビールびんの場合、1本返却すれば、5円が戻ってくる。ビールびんは平均で15回使用されており、リサイクル率に換算すれば99%以上に相当する。その他のガラスびんや缶、乾電池、農薬容器などにも適用を求める声も各地で上がってきているが、「小売価格が高くなり売れ行きに響く」「回収や保管の手間がかかる」などとするメーカーや小売店の根強い反対で実現されていない。これに対して欧米では、缶やガラスびん、PETボトルなどにデポジット制度が適用され、ごみ減量に効果を上げている。例えば、日本ではPETボトルの回収率は、1996年までは1〜2%程度、1998年時点で約17%であった。一方、デポジット制度を導入している諸外国では70〜90%となっている。こうした回収率の違いは、「日本人の道徳観念が諸外国と比べて特に低い」からではもちろんなく、デポジット制度の有無に起因するものである。
3.2 デポジット制度の導入事例
*諸外国での導入事例
・ドイツ
ドイツでは、デポジット制をはじめとするさまざまな施策によって、リサイクルを推進している。 飲料・洗剤・洗浄剤の容器については約40円のデポジットを上乗せすることを義務付け、回収率は95%を超えている。また、政策的にリターナブル容器(返却後に再使用され得る容器)の保護を強く打ち出しており、「飲料容器条例」では2000年までに飲料容器の94%をリターナブルにすることが定められた。日本では1回の使用で破砕してしまうPETボトルも、リターナブルとして回収され、約30回繰り返し使用される。1989年にデボジット制(1本当たり約50円)が導入されており、回収率は高い。一方、リターナブル化が困難な缶飲料は、生産が極端に制限されている。
・スウェーデン
アルミ缶の場合、以前は使い捨てにされてきたが、1982年に75%以上のリサイクルができなければ使用禁止にするという厳しい政府提案がなされた。これを受けて、業界が試行錯誤の末に1983年に自主的にデボジット制度を採用した。その結果、リサイクル率は91%と
アルミ缶としては世界最高になった。また、使い捨て(ワンウェイ)のPETボトルは1991年から禁止された。ガラスびんはメーカーが再使用しやすいように規格が統一されており、94%がリターナブルとなっている(使い捨てびんには高い税がかけられている)。街角に回収ボックス(びんの場合は透明・茶色ビンなど色別に集められる)が設置されており、その回収率は97%以上に達する。
・米国
ニューヨーク州では、それまで悪化の一途を辿っていた散乱ごみ対策として、飲料容器(びん・缶・PETボトル)に対するデポジット法が1982年に成立した。1本当たり5セント(約5円)のデポジット導入後1年で散乱ゴミは15%減少、埋め立てゴミも20万トン滅少したといわれる。都心部にはホームレス(路上生活者)が拾ってくる飲料容器を買い取るセンターが設立されており、回収率は80%となっている。同様の制度は、オレゴンやマサチューセッツなど全米の9つの州で採用されている。また、カリフォルニア州では、製品に薄く掛けられた課徴金と再生資源の売払金を財源として、返却された容器を買い上げる制度を実施し、カリフォルニア方式として注目されている。
・アジア諸国
台湾では、これまでも散乱ゴミ対策としてさまざまな施策が実行されたが、あまり効果が上がらなかった。1992年になって、PETボトルの回収基金が設立され、デボジット制度が導入された。デポジット額は1本当たり1元(約4円)で、回収率は79%(1996)に達している。
韓国でも、紙パック・ガラスびんのほか電池・タイヤ・一部の家電製品にデポジット制度が導入されており、成果を上げている。
*日本での導入事例
・京都でのデポジット制度導入断念
昭和47年(1972年)に京都で空き缶散乱防止を目的としてデポジット制度を導入しようとしたが、缶メーカ・ボトラ・小売店などが猛烈に反発し、実施には至らなかった。
・八丈島(東京都)でのローカル・デポジット制度
平成10年(1998年)9月1日より、島の約半数の商店が参加して、飲料容器を対象としたデポジット制度を試験的に導入した。デポジットシールの貼ってある空き缶、PETボトルは、島内の回収所か自動回収機(缶のみに対応)に返却すれば、預り金の10円が戻るという仕組みだった。
・その他
各地でローカル・デポジット実験と称して、飲料の販売に当たって容器1本当たり10円の預り金を課したことを記すシールを貼って販売したり、図書券や景品の当たる抽選券を回収者に与えるようにした実験が行われてきた。その結果、関係者の予想を上回る非常に高い回収率を達成できた。しかし、小売店など関係者の負担が大きいといった理由で中止されてしまったものが多い。
3.3 デポジット制度の仕組み
*デポジット制度の仕組み
デポジット制度は、課徴金と補助金の組み合わせとして説明される。
・空き缶を返却しない場合
預かり金は戻されないので、空き缶をポイ捨てしたという行為に対する「課徴金」とみることができる。
・空き缶返却した場合
返却するという行為に対して「補助金」が支払われるとみることができる。
預かり金は、外部不経済を内部化するために、使い捨て容器の限界外部費用に等しく課される一種の「ピグー税」として説明されることが多い。返却すれば課徴金と同額の補助金が支払われるので、補助金は「ピグー的補助金」として考えられる。
*自発的デポジット制度
デポジット制度には、特定の政策的な意図を持って導入された「政策的デポジット制度」と市場で自発的に導入され定着した「自発的デポジット制度」とがある。
・びんについてのデポジット制度
新しくびんを作るよりも、再利用するほうが容器としてのびんにかかる費用が安い場合に成り立つ。
自発的デポジット制度におけるデポジット額は、ポイ捨てによって生じた環境負荷を元に戻すための損害補償費用とは直接関係があるわけではない。また、技術進歩等によって、PETボトルなどが登場してびんの需要が減ってきたため、この制度は縮小してきている。
*政策的デポジット制度
・缶についてのデポジット制度
自発的デポジット制度は缶については成立していない。その理由は、使用済みの缶から再資源化された原料から缶を作るコストが、新しい原料から作るコストよりも割高だからである。
企業は、自発的にデポジット制度を導入しようとすればできたのに導入しなかった。それは、自発的デポジット制度の導入が企業にとって不利益だったからである。いい換えると、政策的デポジット制度によって飲料缶の返却が進むことは、企業にとってありがた迷惑である。
また、もし、缶が返却されなければ、消費者から預かったデポジットは、そっくりそのまま企業の収入となる。そのため、缶が返却されないようにしようとするインセンティヴが企業には働く。つまり、消費者が缶を返却するのに要する費用を企業は増加させようとすると考えられる。
3.4 デポジット制度の設計と経済的機能
*回収率の決定要因
回収率は、デポジット額に対してはあまり敏感には変化していないケースもある。回収率(返却率)を高めるためには、返却ポイントを増やしたりして、返却しやすくすることが挙げられる。しかし、返却ポイントを増やすことは、回収に要する総費用を増加させることになる。
スウェーデンにおけるアルミ缶のデポジット制度では、回収率を高めるために、デポジット額はピグー税とはなっておらず、それよりもはるかに高く設定されている。いわば回収率の目標を達成するためのデポジット制度である。この場合、デポジット額は、限界費用の内部化というよりも、一定の回収率目標を達成するために、いわば試行錯誤的に決定されている。つまり、ボーモル=オーツ税的な性格を持っているといえる。
*回収率、リサイクル率、再商品化率
Reduce(減量)
Reuse(再利用)
Recycle(再資源化)
*デポジット制度の経済的機能
デポジット制度の特徴は、自分はポイ捨てによって環境を汚染しなかったことを、返却によって消費者が自ら証明するインセンティヴが働く点にある。すなわち、規制当局が排出量をモニタ(監視)しなくても、規制対象者が排出しなかったことを自分で証明してくれるシステムである。潜在的な汚染原因者自らに回収させるため、きわめて効率的なモニタリング・システムであり、費用も政策当局が自ら監視する場合と比較して安価で済むと考えられる。
デポジット制度は容器への預け金を製品料金に含み、容器返却時に払い戻すことによって、返却に動機づけを生じさせるのとともに、返却されない場合であっても、使用した消費者に公平な費用負担を与える効果がある優れた制度である。容器だけでなくその他の製品においても、実施した各国で有効性が実証されている。リターナブルびんのように回収率を高める必要があり、容易に再使用可能な容器では、特に有効性を高いといえる。
デポジット制度は、再資源化、費用負担の適正化、散乱ゴミ対策などを単独で一挙に解決できるバランスのよい制度である。税金負担の場合と異なり、製品購入に係わる者だけが費用を負担するのに加えて、再資源化に協力する消費者に対してはデポジットを払い戻すため、より公平な費用負担が可能となる。
・汚染原因者負担の原則(PPP:Polluter-Pays Principle)
環境汚染に関するコストは市場で取引されない外部コスト(社会的コスト)として扱われており、社会全体の負担となる。しかし、そうしたコストは、汚染原因者自身が本来負担するべきであるというのが、汚染原因者負担の原則である(1つの価値観)。
市場メカニズムを利用してインセンティヴを与えることは、環境を保全するための1つのアプローチとしては優れたものであり、いわゆる「市場の失敗」を是正する上で実効性の高い仕組みであると評価されている。
3.5 デポジット制度の導入に当たっての課題
*容器包装リサイクル法との関係
1997年4月から施行された「容器包装リサイクル法」(容器包装に係わる分別収集及び再商品化の促進に関する法律)では、スチール缶・アルミ缶・紙パック・ガラスびん・PETボトルの分別収集・保管・分別適合化については自治体の責務と規定されており、事業者にそれらを義務づけるような条例の制定は違法性が強い。条例を制定せずに、「協力」という形をとった場合、事業者がそれに参加する可能性は、これまでの実績や事業者へのヒアリング調査の結果からいって非常に小さい。
容器包装リサイクル法については、制度の基本的な仕組みがリサイクル(燃やすことも含む)の促進だけであり、リユース(再利用)の促進という観点がないことや、回収費用を自治体の税金で負担させ、事業者の負担がないため、事業者にポイ捨てゴミとなる容器などの使用を抑制しようというインセンティヴが与えられないといった問題点が指摘されている。また、再商品化されない容器などは自治体が保管する義務があり、その費用も税金で賄うことになっている。諸外国の導入事例では、回収費用は事業者の負担となっており、負担軽減をはかろうとする事業者によって使い捨て(ワンウェイ)びんから再利用可能(リターナブル)びんへの切り替えなどが急激に進んだ。
*独占禁止法との関係
1997年に横浜市の小売酒販組合が、ビールびん以外の酒類容器もリサイクル・回収しようと、ローカル・デポジット制度の導入を検討したことがある。1本当たり15〜50円の回収費用を設定して、一升びんのリユース(再利用)を促進しようとしたものだったが、公正取引委員会から「独占禁止法の価格カルテルにあたる疑いが強い」としてストップがかかった。
八丈島の例は、「離島である」という地理的に特殊な事情を考慮して特例として認められたのであって、一般には独占禁止法を改正しない限り、ローカル・デポジット制度の導入は難しいといえる。
*デポジット制度に向かないもの
デポジット制度は、容器のポイ捨てなどに関して汚染原因者に負担させるのに効果があるが、回収が技術的に困難な二酸化炭素や窒素酸化物については適用できない。
<参考資料1>
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/1999/01/6091D100.HTM
平成11年1月11日 問い合わせ先
政 策 報 道 室 政策報道室都民の声部調査広聴課
昼間都民モニターアンケート
6 デポジット制度の問題点
(1)回収ルートの確立、保管場所の確保が困難 36.3%
(2)消費者にとって返却などに手間がかかる 26.4
(3)回収・保管などにコストがかかる 14.3
(4)販売者にとって払い戻しなどに手間がかかる 11.0
(5)既に行われているびん・缶の分別収集で十分 4.4
7 デポジット制度導入の賛否
デポジット制度の問題点をふまえたうえで、導入の賛否について聴いたところ、87.9%が賛成と答えた。
また、賛成と答えた人にどこがデポジット制度の主体になるべきか聴いた。
1位と2位がそれぞれ『事業者』で、あわせると78.8%、3〜5位がそれぞれ『行政』で、あわせると15.1%となっている。
(1)容器入り飲料などを販売する事業者 40.0 %−+
(2)容器入り飲料などを製造する事業者 38.8 −+−『事業者』78.8 %
(3)区市町村 8.8 −+
(4)国 3.8 −+−『行 政』15.1 %
(5)都道府県 2.5 −+
<参考資料2>
「デポジット法制定全国ネットワーク」のアンケート調査の結果(配布数448自治体のうち回答数297自治体)
「ごみの減量や散乱防止に対して、デポジット法は有効だと思うか」との問いに、回答した自治体のうち97%が「はい」と答えた。また、「デポジット制度の対象にする商品は、何が望ましいか(複数回答可)」については、
1.びん(94%)
2.PETボトル(91%)
3.缶(88%)
4.電池(54%)
5.家電製品(53%)
6.蛍光灯(35%)
7.自動車(34%)
との回答が寄せられた。その他に、タイヤ、自転車、バッテリ、バイク、マットレス、レジ袋、布団、ベッド、食品トレイ、有害廃棄物などが挙がった。