冬季限定。

 

 

 

女子高生の必須アイテムといえば。

化粧品にファッション雑誌。

そして、新作のお菓子。

 

それらは学校の机の中に置き去りにされる教科書たちのかわりに、彼女たちの鞄の中を隙間なく埋めている。

 

 

身体の芯まで凍らせるような北風が吹いて、今年もようやく教室のストーブに火が入った。

ストーブ本体は、何日も前から教室に運び込まれていたけど、火が点いていなければただの鉄の塊。よけいに寒さを強調する物体でしかない。

 

教室内をゆるやかに暖気で満たすストーブの周りは、休み時間になると、必ず生徒の溜まり場となる。

 

――そんなに寒いなら、スカート短くしなきゃいいのに。

 

・・・と心の中でつぶやきながら、自分は机に肘をついて、とろとろとまどろんでいる。

席はストーブからいちばん離れた窓の側。窓からは冷たい隙間風が入ってきて、ストーブの恩恵もここまで届かない。はっきりいって寒い。

それでもあのストーブのそばに行く気にならないし、とにかく眠くてしょうがない。

夜中に勉強しているわけでもないのに、どうしてこんなに眠気が襲ってくるのだろうか。

 

(・・・凍死って、こんな感じなのかなー)

 

教室で凍死するわけがない。しかし、瞼は重く、意識はぼんやりとして、眠りの世界に引きずり込まれようとしている。

この休み時間の間に少しでも眠っておこうとする自分と、何とか起きていようとする自分との葛藤が続く。

 

そんな時、甘いニオイが鼻をついた。

 

何だろう、とストーブの方を見やる。

ストーブを囲む女子生徒たちが、持ってきたらしいお菓子を摘まんでいる。

そのうちの一人が、そのお菓子のチョコレートの部分をストーブの熱で溶かしている。

どうやら、ニオイの正体はそれのようだ。

それにしても、わざわざ冷やし固めたチョコレートを溶かすなんて。

あれが彼女の好きな食べ方なのだろうか――?

 

そんなことをぼんやり考えつつ、結局眠気に勝てずに瞼を閉じた。

視覚が欠けたぶん、聴覚が敏感になったのだろう。女子たちの笑い声が急に大きく感じられた。

 

「ねぇねぇ、見て!!」

 

駆け寄ってくる足音と、なぜか期待のこもった声。

 

目を開けた途端、眠気は吹っ飛んだ。

 

「リップグロスーーッ!!」

 

ストーブの熱で溶かされたチョコレートは、見事なチョコレート色で彼女の唇を彩っていた。

 














リモさまからいただきました!! 100のお題「ムースポッキー」より「冬季限定」。
高校の教室の風景を思い出しましたわ・・・・・・教室後ろの、やたらでかいストーブとかね・・・・・・
ポッキーを溶かしたことはないですが、よくセロテープとか溶かされてませんでした?
僕はよく水をとばして蒸発させては遊んでいました。
そんな頭悪い光景が脳裏にまざまざと・・・(笑)

リモさまどうもありがとうございました!!



20030920


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