『新版 日中戦争 和平か戦線拡大か』(新潮新書。臼井勝美著)
おすすめ度・是非とも。初学者にお薦めできる本。
この本は、タイトル通り、日中戦争をテーマとしている。
期間は、北支工作から日本の敗戦まで。この選び方も、テーマを日中戦争に絞るなら、実に適切である。
この本の特徴は、次の通り。
1:簡潔な記述で、分かりやすい。
2:細部にこだわることなく、全体像を達観している。
3:新書一冊分で、分量として手頃である。
日中戦争は、その前の北支工作もだが、かなり入り組んでいて分かりにくい。しかしこの本は、非常に上手くまとめている。
全体的に中国よりかな?という気配はするものの、これは欠点と言うほどではあるまい。
ただ、それでも多少、難はある。
盧溝橋事件以降の日本側の記述が、いささか浅いのである。
日本側の意図は、当初は不拡大だったのに、何故、そしてどのように、戦火を広げてしまったのか? その時点での近衛内閣や日本陸軍の動きは、どういうものだったのか?
これも非常にややこしい話になっていくのだが、とにかくこの辺の記述が弱い。
だがそれでも、これは初心者にもお勧めできる本である。
私としては、是非とも多くの人に読んで欲しいと思う。
そして特に良いのは、北支工作の記述である。満州事変の後に日本が行った、北支(北京のあたり)に、親日独立政権を立てようと言う謀略について。
これもまた、この本は、簡潔に上手くまとめている。
まあ早い話、蒋介石は、盧溝橋事件の直後、早々と全面戦争を覚悟する。それは何故かというと、直接的には、その北支工作のためである。
すなわち、<このまま行くと、日本は第二の満州事変を起こし、北京を奪うだろう。そうなると次には、南京で第三の満州事変が起こされ、中華民国は滅亡する>と、蒋介石は判断したのである。
だから蒋介石は、もはや日本に対して妥協できないと考え、決死の覚悟で日本に対決した。
当時の日本帝国は列強の一員であり、世界でも指折りの強国。しかるに当時の中華民国は、ようやく国内統一を成し遂げ、近代化に乗り出していこうとしたばかりの、弱国。力の差は歴然であり、事実、中国軍は日本軍のまえに連戦連敗を重ねていく。
逆に言えば、「それでも対決しなければならない」という決意だったのである。「国家の滅亡を座視は出来ない」という。
したがって、である。
「日中戦争はどのように開始されたのか?」について学ぶには、北支工作についての知識は欠かせない。
なのだが、残念ながら今の日本では、それについて知る人は、非常に少ない。
今日、インターネット上でも、日本の歴史について議論している人は多い。「あの戦争は自衛だったのか? 侵略だったのか?」など。
なのだがしかし、それも大方は、自分の脳内にある思いこみをぶつけ合っているだけでしかない。大まじめに話しているつもりでも、そこには基礎的な知識が欠落しているのである。しかもなお悪いことに、そのことを認識し、謙虚に勉強していこうという気持ちさえない。
まあ、とにかく私としては、「議論も結構だが、もっと勉強しましょう」である。
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