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 ○セカイ系

 又の名を「ポスト・エヴァンゲリオン症候群」。
 「社会」や「国家」をすっとばして「自分のキモチ」なり「自意識」なりが及ぶ範囲を「=世界」と捉えるような世界観を持つ一連のオタク系作品がこう呼ばれているらしい。
 例えば「ほしのこえ」例えば「最終兵器彼女」。

 これはインターネットの普及による擬似的な全能感や、「社会」や「国家」の存在が見えづらくなった社会的状況が影響を及ぼしているとされている。
 傾向としては、「真剣10代しゃべり場」みたいな青臭いテーマが扱われることが多く、少なくともちょっとした「ブーム」ではあると思う。

 私はこの「セカイ系」を技法としてはそれなりに評価したい。少なくとも「青臭いから」という理由で批判する立場には組しない。
 ただ、若干の「セカイ系だから」という理由での過大評価は受けていると思う。
 例えばセカイ系、と呼ばれる作品の中には私が辞典「ブンガク」で指摘したような「いかにも人間の内面を文学的に語れそうな記号的要素」の「機械的配置」で作られた、まさにデータベースからの順列組合せで出来た作品も数多い。
 そういった安直な記号的組み合わせによりインスタントな内容に、「セカイ系的な青臭さ」に極度に弱い人たちがちょっと冷静になりきれてないような感触はある。
 私はこのセカイ系、の流行をやや過大評価だと思う。
 しかしそれは「青臭い話」が嫌いだからではない(むしろ好きだ)。
 そこで語られる人間観や「青臭さ」がまさに「順列組み合わせ」でつまらないものが多いにも関らず、どうも受け手の冷静な評価を「セカイ系」的な意匠が邪魔しているように感じるからだ。
 簡単な話で、私が「ほしのこえ」をストーリー的に評価しない(週刊レビュー参照)のは「順列組みあわせ」がまさに「ブンガク」でうすっぺらくつまらないからだ。
 辻仁成や桜井亜美を評価しないのと同様の理由だ。
 いわゆる「セカイ系」ブームはある側面ではあきらかに文学でも映画でもおこっていた「自意識過剰の90年代」のオタ文脈での進行にすぎない。

 だから、少なくとも、アニメにマンガにゲームだけそ視界に入れて語っても仕方ない。
 他にも指摘している人が何人もいるがこういった「自意識の及ぶ範囲」=「世界」みたいな図式を導入することで演出効果を生むという手法は古くから取られていて、使い古されている。完全に「自分の視界」=「世界」という図式を導入しているかどうかはともかく、サリンジャーであり、庄司薫であり、村上春樹であり、場合によっては大林宣彦が使ってきたし、「それ系」の流れもそれなりにあるだろう。

 どうやらこの「自意識過剰の90年代」の亡霊は「セカイ系」ブームというカタチでまだまだ続きそうだ。
 しかしこれは料理のしようによっては巧く甘酸っぱく青臭いドキドキ感を堪能出来る名作が生まれる可能性を秘めたジャンルだと思う。
 だからこそ、単に「社会」を脱臭して人間関係を描く困難から逃走したり、自分語りを垂れ流すだけの安易な「癒し」に逃げたり、俗流心理学的なインスタントな内容でお茶を濁すような作品(そしてそういった作品が多いのが現状だ)に出会うととても残念に思う。

 文責:片岡

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