●「アニメ編」雑記
●この「アニメ編」、思い入れが強いせいか「マンガ編」の2倍以上の時間がかかってしまった。
●「マンガ編」と違って数人の作家しか挙げていないのはアニメはマンガより歴史が浅い分、やはり「フツーの人」が観ても、他のジャンルの「ベスト」と戦っても負けないだけの作品が生み出せるスタッフの数は少ないからだ。
●ただ、このコーナーでは「監督」別に紹介しているが、アニメは基本的に「集団作業」で作るものであり、宮崎駿や押井守が一人で創っている訳ではない。だからこういう「●●さんのアニメ」っていう考え方はあまりよろしくない、のかもしれない、便利だから使うけど。
●で、「アニメは歴史が浅い分人材が少ない」と書いた訳ですが、玄人筋の間ではいわゆる「大御所」と呼んでいい監督は全部で5人居る。
●それは高畠勲(宮崎の先輩にしてジブリ一方の雄、「火垂るの墓」の人)、宮崎駿、富野由悠季、押井守、そしてここでは取り上げなかった出崎統の5人である。
●誰だ「出崎」って、と思われる人も居るだろうが、現にそうなのである。大友克弘は入らない。何故ならば「AKIRA」も「MEMORIES」もただの金がかかってるだけのアニメだからだ。もっとも、●●芸大とか通っていらっしゃる自称ハイ・センスな方々あたりがカッコつけるのには丁度いいアニメだろう。おあつらえ向きです。
●話が横にそれてしまったが出崎監督。原作もののTVアニメをたくさんやっていたベテラン監督で、そういう「原作もの」をやってきた人の中では飛びぬけている。
●どの辺が「飛びぬけて」いるのかというと、この人はどんな原作マンガも、原作のイメージを壊しすぎない程度に「出崎テイスト」にしてしまうのだ。
●具体的に作品名を挙げると「あしたのジョー」「ベルサイユのばら」「ガンバの冒険」「宝島」「エースをねらえ」「スペースコブラ」といったところになるだろうか。最近では「ブラックジャック」のOVAが素晴らしかった。
●一度出崎監督の手にかかると、これらの個性的な原作の数々がことごとくダイナミックな出崎ワールドの住人となってしまうから不思議だ。TVシリーズが多いため、ここでは割愛したがOVA(オリジナルビデオアニメ)版「ブラックジャック」当たりから入るのはかなりお勧めです。
●あと、高畠勲についても少し。この人、ご存知の通りスタジオジブリでたくさん映画を創っているが、見るべき価値があるのは「火垂るの墓」が演出的にちょっと面白いだけで基本的にこの人の映画は日本共産党系市民団体の宣伝映画みたいなものだ。ただ、技術的にはいろいろ冒険が好きな人なのでそういう方面に興味がある人は十二分に観る価値はあると思う。
●じゃあ高畠作品でお勧めはないのかと言われればそれは違う。彼もまた、「ガンダム」以前のTVアニメを支えた人間である。特に「赤毛のアン」あたりの作品は「リアルにやるのではなく、リアルに近づけることによって妙な迫力をつける」と押井守が評した高畠流「リアリズム演出」の真骨頂である。アンとダイアナがケーキを延々とtくっている、それだけで何十秒も台詞が無い。でもその映像を観ているだけで、彼女等の生活観が「リアルに」湧き上がってくる・・・これが高畠演出だ。
●それにしてもこの「アニメ編」は繰り返すが本当に「難産」だった。
●まず「何を載せるか」で相当悩んだ。宮崎アニメはどうせみんな観ているので最初は割愛するつもりだった。評価こそしているが好きか嫌いかと言えば嫌いな訳だし(笑)
●でも、世の中には「批判的観賞」という言葉を知らずに死んでゆく人間が大半なのだからこういうのがあってもいいか、と思って載せた。宮崎の痛々しい文化人活動が作品をつまらなくしていることも意外と知られてないみたいだし。
●・・・と、こうして考えているうちにあることに気付いた。宮崎を除けば、極端な話「オタクにならない」人が「アニメを観る」ときに知らなきゃいけないのは(少なくとも「入門」の段階では)はっきり言って富野御大将と押井守しかないのではないか、ということだ。そして奇しくもこの二人は個人的に最も影響を受けた作家たちでもある(笑)
●先述したように今となっては「アニメ作家」大友克弘は芸代向けのサブカル屋さんだし、「エヴァ」に到っては問題外である。
●と、なるとあとは「一般人」に勧められるものとしては「王立」があるくらいで・・・となってしまった訳だ。
●「さっきから一般人、一般人っていいやがって!」という声が聞こえてきそうだ。「一般人も楽しめるアニメの方がいいアニメなのか?」結論から言うとその通りだ、少なくとも個人的にはそうだった。
●マンガ編でも書いたがどうも自分はオタクにしては「性癖」が足りないらしく、自分が面白かったものを挙げてみると自然と「一般人」でも楽しめるものが上に来てしまう、というだけのお話だ(笑)
●「じゃあ、押井守の映画の方が難解で一般人向けじゃないじゃないか」なんて声も聞こえてきそうだ。確かに押井の映画は分かりづらい。だが、押井作品を楽しむのに必要なのは知識と思考力だ、断じて「性癖」ではない。
●知識と思考力は(少なくとも押井作品を観る程度のそれは)その人のその意思さえあれば簡単な手間と訓練で見につくが、「性癖」は天性の才能とそして幾許かの「不幸な事情」が必要である(笑)
●本当に「観る客」を選ぶ「狭い作品」は押井作品か、それとも・・・? この程度の問題提起くらいしておこうか。
●富野御大将に関してはもう、書くことがありすぎて困ってしまう。はっきり言って、宮崎・押井とくらべると1ランク下の扱いを(主にサブカル方面からは)されている御大将だが、「お話」だけなら御大将が(いろんな意味で)一番面白いと思う。ただ、本人の妙に捻くれた中途半端にイデオロギッシュな製作態度のせいか、作品の「完成度」はやはり劣ってしまう。これは御大将がどうこうというよりは、サンライズというスタジオの問題かもしれない。
●「王立宇宙軍」を入れることは前から考えていたが、監督の山賀博之自体を、それほど評価はしていないし、「山賀演出」なるものが語れるほど、彼は仕事の「量」をこなしていない。だが、何度も言うように、アニメとは集団作業で出来るものであり、宮崎、富野、押井といった一人の個性で引っ張っていくタイプの監督の方が本来イレギュラーなのだ。そういった意味で「王立」の山賀は各スタッフの持ち味を十二分に生かすという、「監督本来の」役割は果たしたとは言えるだろう。
●「宮崎ファンはイタイ市民派」「押井ファンはカン違い系哲学キャラ」「ガンオタは引きこもり」「ガイナ信者は開き直ったオタクデブ」とは誰の言葉だっただろうか・・・? 昔、岡田斗司夫氏の某大学での講演の後、なんとなく話が弾んでしまった「濃い」メンバーと夜通し喫茶店で語り通したことがあった(20代は筆者と「ふーず・ふー」氏だけだった)が、そこで「宮崎の最近の文化人活動、どうにかなりませんかね」と言ったら同席中の30代男性の機嫌を著しく損ねてしまった。
●なんせあのオタキングの講演会に来たメンバーである。作家の悪口の一つや二つ、社交辞令のようなものだと思っていたが筆者より10歳以上年上の彼に「ミヤザキ、イタイ」は禁句だったようである(笑)
●おお、神よ、どうかお救い下さい。これほどまでも魅入られてしまう我ら子羊を、そしてこれほどまでに魅了してしまうアニメというセルロイド(ではないのだが、本当は)の集合体を・・・(「王立宇宙軍」のエンディング風に)
●最後に、どうせなので「クロスレビュー」風に点数をつけておこう。「パトレイバー2」「イデオン発動編」「逆襲のシャア」が10点。「ラピュタ」「魔女宅」「ガンダム」「ビューティフルドリーマー」「パトレイバー1]「攻殻機動隊」「王立宇宙軍」が9点。他は8点。あ、「イデオン接触編」は6点くらいかも(笑)
●イロイロご不満はあるでしょうが「一般人向けの入門編」ということで勘弁して下さい。