| 1. | 高脂血症とは何ですか? |
| 2. | 高脂血症はなぜ問題となるのですか? |
| 3. | 高脂血症以外にも動脈硬化の危険因子はたくさんあります。 |
| 4. | コレステロールの本体とは? |
| 5. | 中性脂肪とは? |
| 6. | リポ蛋白とは? |
| 7. | コレステロールが高いとどうなるの? |
| 8. | 血中コレステロール、中性脂肪はどの位の値がいいのですか? |
| 9. | 高脂血症の原因にはどんなものがありますか? |
| 10. | 高脂血症の治療方法は? |
| 11. | 高脂血症治療の目標値は? |
| 12 | なぜ高脂血症を治療しなくてはなりませんか? |
国民全体の栄養状態がよくなかった昔は、高脂血症という病気はあまり多くありませんでしたが、飽食、食事の欧米化の時代を迎えて、2000万人以上の人が高脂血症と言われています。
高脂血症とは、その名の通り血液に含まれる脂肪(血清脂質)の量が異常に多い状態のことを言います。
2.高脂血症はなぜ問題となるのですか?
高脂血症は、血液中に特に多く含まれる脂肪分の種類によって、高コレステロール血症と高トリグリセライド(中性脂肪)血症の二つに大きく分けられます。そのうちの約8割は高コレステロール血症と呼ばれる病気で、コレステロールという脂肪分が多い状態のことを言います。一方、高トリグリセライド血症は、トリグリセライドという中性脂肪が多い状態のことを言います。
これら高脂血症は、「痛い」「苦しい」などの自覚症状がなく、また「動けない」「食べられない」など、日常生活を送るうえでの問題を伴うこともありません。つまり、血液検査をすれば異常がみられるだけで、何の不自由も感じることがないのが高脂血症なのです。
それでは、その高脂血症がなぜ問題となるのでしょうか? それは高脂血症が長く続くと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気を引き起こす原因となるからです。
近年、動脈硬化を原因とする心筋梗塞や狭心症、脳卒中で死亡する人が増加しています。1997年の厚生省の人口動態統計の年間推計によりますと、日本人の3大死因と死亡数から見ると1位が「がん」で27万5000人、2位の心疾患は14万2000人、3位の脳血管疾患は13万9000人で、主に動脈硬化性の合併症である血管障害の後者2つを合わせると28万人を超え、がんを抜いて一位と言うことになります。この動脈硬化の進行を食い止めるために数多くの国内外の研究がなされてきました。そして、動脈硬化の進行には、高脂血症のほかに、糖尿病、高血圧、肥満、喫煙など、自分の生活習慣を見直すことで発症が防げるものが大きく関与していることがわかっています。ほかには、加齢(男性は45歳以上、女性は閉経後)や、家族(特に一親等)に動脈硬化症を発症したことのある人なども危険因子としてあげられ、これらに該当する人は、生活習慣の改善が必要となります。
コレステロールは体内でステロイドホルモンや胆汁酸の原料であるほか、細胞膜の素材としても重要である程度は体に必須の物質です。
コレステロールは油の性質をもっているために、そのままでは血中に溶け込めません。血液中では、蛋白と一緒になってリポ蛋白という形で全身に運ばれます。
中性脂肪はエネルギー源として体内で利用されます。食事でとり入れられたり肝臓で合成されますが、運動などをすると遊離脂肪酸に分解されて燃焼し、残った部分はトリグリセライドとなって皮下脂肪など脂肪組織に蓄えられます。血中では主にリポ蛋白という形で存在します。
脂肪分は血液中ではシュークリームのようなリポ蛋白のかたちで存在し、全身の細胞にコレステロールやトリグリセライドを輸送します。このリポ蛋白はシュークリームの皮の種類(アポ蛋白)と、中のクリームの種類(コレステロールやトリグリセライド)と分量により、いろいろな種類があります。
代表的なのが、いわゆる善玉コレステロールと言われているHDLや悪玉コレステロールと言われているLDLがあります。
善玉コレステロールHDLとは高密度脂質蛋白(High-Density Lipoproteinの略)のことで、余分なコレステロールを体の各部から取り除き、回収し、肝臓でリサイクルする働きがあり、動脈硬化を防ぎます。40mg/dl未満で要注意です。
悪玉コレステロールLDLとは低密度脂質蛋白(Low-Density Lipoproteinの略)のことで、コレステロールを体の各部、特に血管に運搬、供給する働きがあり、動脈硬化を進行させます。
体にとって必要なコレステロールも、血液中のコレステロール値が高くなり、供給過剰となると、高血圧、糖尿病とともに動脈硬化の原因となることがわかっています。血管の内側にコレステロールなどが蓄積して脂肪のかたまりができ(プラーク)、血管が次第に狭くなります。このプラークが破裂したり、更に大きくなって血管を詰まらせると、致命的になりうる狭心症や心筋梗塞や脳梗塞をおこします。更に進行すると血管の壁が硬くなり、次第にカルシウムが沈着して(石灰化)胸部や腹部のレントゲンにも写るようになります。
アメリカのフラミンガム研究のような大規模な研究によって総コレステロールが高いと、心臓の血管がつまる事によって起こる狭心症や心筋梗塞を起こす率が高い事がわかっています。特に総コレステロールが220mg/dlを超えると急激に危険が高まり狭心症、心筋梗塞などの心臓病の発症率が4倍増加する事もわかっています。これらの病気は、元気な人がある日突然発症することもまれでなく、また死亡する率が高く、症状が出た時にはすでに手おくれのことが多い重症なものです。さらに下の表のように他の動脈硬化の危険因子を併せ持つと心臓病になる危険率は相乗的に高まります。
高脂血症に糖尿病が加わると16倍、なんと糖尿病、高脂血症、高血圧の三つが重なると32倍も心筋梗塞になりやすくなります!
動脈硬化の危険因子 心臓病になる危険率 高脂血症 4倍 高脂血症+糖尿病 16倍 高脂血症+高血圧症 16倍 高脂血症+糖尿病+高血圧症 32倍
空腹時に測定した血清コレステロールが220mg/dl以下、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以下が正常値です。日本動脈硬化学会は最近、高コレステロール血症の診断基準を以下の表のごとく適性域、境界域、高コレステロール血症の3段階に分けることを提案しました。ただしこの基準は心臓病や高コレステロール血症の危険因子のない人の場合です。
糖尿病など他の動脈硬化の危険因子を持った患者さんでは200mg/dl以下にすることが望まれます。
1)原発性高脂血症
脂質の代謝が先天的に傷害されているために高脂血症を生じるものをいいます。家族性高脂血症などがあります。遺伝的に血液中のコレステロールを取り込んで処理する能力が低いために高コレステロール血症になりやすい、家族性高コレステロール血症は日本人では500人に一人の割合で見られます。2) 二次性高脂血症
他の疾患や薬剤の使用による高脂血症です。アルコール多飲・糖尿病・甲状腺機能低下症・腎疾患・閉塞性胆道疾患・薬剤の副作用などによって生じるものをいいます。
食事療法、運動療法で不十分な場合に薬物療法などがおこなわれます。しかしすでに動脈硬化性の合併症を起こしている場合は、3つの療法を同時に開始する場合もあります。1)食事療法
カロリー計算も考慮に入れ、食品交換表を参考にコレステロールの少ない(1日300mg以下)食品と食物繊維の多い食品を摂取するよう心がけましょう。2)運動療法
持続的な運動は血清脂質とくに中性脂肪(トリグリセライド)を下げるのに有効です。同時にHDL‐コレステロール(善玉コレステロール)を上昇させることが知られています。可能な限り積極的に運動するように心がけましょう。一日一万歩の歩行に勤めましょう。ただし、高齢者やほかの危険因子を持つ場合は心機能をを事前に評価することが必要なので主治医とよく相談して下さい。3)薬物療法
コレステロールが高いのか、トリグリセライドが高いのか、あるいはその両方かにより有効な薬物の選択は変わってきます。最近では各病態に有効な薬剤が治療に用いられるようになっています。
高脂血症の薬としては、まず悪玉コレステロールのLDLコレステロール(LDL-C)を減らす薬があげられます。体の中のコレステロールはLDL-Cによって運ばれているので、これを減少させることが重要なのです。4)コレステロール吸着療法(LDLアフェレーシス)
分類、薬剤名 働き、副作用 主にコレステロールを減らす薬 HMG-CoA還元酵素阻害剤
当院薬剤名:メバロチン
リポバス
リピトール
ローコール肝臓でコレステロール合成に必要な酵素の働きを妨げることで、血中のコレステロールを低下させる働きがあります。コレステロールを下げる効果が最も高く(一般にLDL-Cを約25〜30%ほど低下させる)、HDL-Cを上昇させるため、最も多く使われています。
副作用として、胃腸障害や横紋筋融解症があり、だるい、筋肉が痛いなどの状態が起こることがあります陰イオン交換樹脂
当院薬剤名:コレバイン 小腸内で胆汁酸(肝臓でコレステロールを原料としてつくられる)と結合して、その排泄を促す薬剤です。体内に胆汁酸が少なくなると、肝臓はその不足分を補おうと、コレステロールを活発に消費するようになり、その結果、総コレステロールが減ることになります。LDL-Cを低下させるとともに、HDL-Cを上昇させる効果があります。
副作用として、お腹が張ったり、便秘になることがあります。プロブコール
当院薬剤名:ロレルコ
シンレスタールLDL-Cは酸化されて血管の内膜に蓄積されます。その酸化を防ぐ「抗酸化作用」を持った治療剤がプロブコールです。中程度のLDL-C低下作用をもつ一方で、HDL-Cも強力に低下させてしまうのが難点とされています。
副作用として、過敏症、胃腸障害が起こることがあります。主にトリグリセライド(中性脂肪)を減らす薬 フィブラート系
当院薬剤名:リパンチル トリグリセライド(中性脂肪)を強力に下げる薬です。総コレステロールを下げる作用もあることから、コレステロールとトリグリセライドの両方が高い方と、トリグリセライドが高い方に適しているとされています。
副作用として発疹などのアレルギー症状、また肝機能障害が起こることがあります。
家族性高脂血症などでは薬物療法では不十分なこともあり、LDLを特異的に吸着するLDLアフェレーシス(血液からLDLを取除く)が行われます。当科では透析室にお願いして実施しています。将来的には遺伝子治療も応用される可能性もあります。
日本動脈硬化学会ではコレステロールに関し3つにわけて治療の目標値をわけることを提唱しています。
1) 心臓病や高コレステロール血症の危険因子がない場合
2) 高コレステロール血症の危険因子すなわち下のうちいずれかがある場合
1 高血圧 2 境界型を含む糖尿病 3 喫煙 4 肥満 5 45歳以上の男性 6 閉経後の女性
3) 狭心症や心筋梗塞などの心臓病がある場合
高コレステロール血症の治療ガイドライン(血清総コレステロール値mg/dl) 食事療法開始基準 薬物療法開始基準 1.心臓病の既往も高コレステロール血症の危険因子もない場合 220以上 240以上 2.心臓病の既往症はないが、高コレステロール血症の上記の危険因子が1つでもある場合 200以上 220以上 3.心臓病の既往症がある場合 180以上 200以上 すなわち、糖尿病のあるかたはとりあえず200mg/dl以下にするよう目標を置きましょう。
心筋梗塞の既往のある人もそうでない人も高脂血症を治療することにより、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の新たな発症をおさえ、生存率を改善する(寿命をのばす)ことが欧米での臨床疫学研究より明らかにされています。
また最近では国内の大規模臨床研究も成果を見せつつあり、日本人独自の高脂血症治療の基準も検討されています。