1.はじめに introduction



 深海とは   深海の定義    深度別概観   深海の調査 



 海底は、案外起伏に富んだ構造をしています。陸域から続くなだらかな海底が大陸棚(continental shelf)、そこから急激に海底が落ち込む大陸斜面(continental slope)、プレート同士がぶつかり、海洋プレートの沈み込みによってできる深い溝状の海洋構造である海溝(trench)、また地殻変動により新たにプレートが形成されている場所である海嶺(ridge)、海嶺よりも斜面のなだらかな海膨(rise)や、これらが長く連なって海底山脈となり、大西洋中央海嶺、太平洋中央海嶺(東太平洋海膨)など、いくつかの長い海底山脈が地球表面を走っています。海溝は、海溝軸を中心とする細長い構造で、その海溝軸(いわゆる海溝の範囲)内のいずれかの場所に、さらに深く落ち込む構造があり、これを海淵(deep)と呼びます。また、海溝よりはその幅が広く、深度も比較的浅い海底の窪みを特にトラフ(trough)と呼び、海溝とは便宜的に区別します。日本近海では、南海トラフ、沖縄トラフなどが有名です。周囲よりも深度が浅くなり、その頂上は広く平坦な面となっている海洋構造を、海台などと呼びますが、これがさらに浅くなると、いわゆる堆(bank)と呼びます。日本近海では、日本海に存在する大和堆・北大和堆、壱岐・対馬堆、世界では、ドッガーバング、グレートフィッシャーバンクなどが有名です。堆は地形性湧昇流を発生させるため、好漁場となることが多く、水産学的にも重要になってきます。なお、熱水噴出孔や冷湧水帯については「熱水生物群集」を参照して下さい。



1) 深海とはどんな世界か? 

3つの大きな物理的特徴、暗黒・低温・高圧が支配する世界。食物に乏しく生存は大変厳しい、と言われている。


A. 光環境
 まず、海水中に到達する光について説明します。太陽から届く光には、赤外線、可視光線、紫外線など、様々な波長の光を含んでいます。我々が目で感じ取ることのできる波長領域というのは、個人差はありますが、380〜770nmの範囲です。この範囲を可視光線と呼び、波長が長い方から短い方へ、赤〜青・紫となります。このような光は、水面である程度反射され、残りの光は海水中へと入っていきます。海水中では、光をはじめとする電磁波が、急速に減衰していきます。これは水分子や、水中の微粒子などによる散乱・吸収の効果によるもので、水深10mも潜れば、波長の長い赤色系統の光はすでに弱まっています。さらに潜ると、波長の長い方から徐々に失われ、目で見える色彩は、ライトブルーからダークブルーへと変化し、一般には、水深200mを超えると暗い世界となっていきます。我々が肉眼で鮮やかな世界を目にすることができるのは、せいぜい50mぐらいでしょう。海水中の光は非常に澄んだ海でも水深200mにもなると、海面の100分の1にまで弱まってしまいます。青色系統の光は水深500mまで到達してはいますが、水深1000mを超えると、光の全く届かない暗黒が支配する世界となります。



 ここで、上の図と数式は、水中における光の減衰をもう少し具体的に説明しています。水面における光強度をIo、ある水深zにおける光強度をIとすると、水面では水深が0mであるのでIとIoは等しい。そこで、水深方向に沿ってある水の柱を考え、この柱を細かく区切ってΔz(微小成分デルタ)としてそれぞれの区画ごとの光強度ΔIを考えます。このデルタを限りなく小さく(無限小)したとき、dの記号を用いて上に示した数学的解釈ができます。ここでlnや対数積分が登場していますが、自然対数の底eの意味についてはここでは深く触れないようにしておきます。
 上の図では、まず海面である程度の反射・散乱・屈折した光は、海水中へ入ります。次に、様々な波長領域の光のうち、長波長領域である赤色から吸収されていきます。長波長領域は、吸収されやすく散乱しにくいという性質です。逆に青色などの短波長領域は、吸収されにくく散乱しやすいという性質のため、海水中では青系統の光が散乱して青く見えるというわけです。波長による到達距離の違いについての物理・数学的解釈はここでは省略しています。
 この結果から分かりますように、特に最後の2つの式を見ていただきますと、水深zが肩にかかっていますが、これは、水中に入った光は水深が増すにつれて急激にその強さを失っていくということを表しています。つまり指数関数的減少を示すということです。ここで、kというのは消散係数、または減衰係数(attenuation coefficient)といわれ、水自体による吸収、懸濁態有機物に代表される水中懸濁粒子(プランクトンであったり有機物や無機物であったりする)の存在や濃度、水色によって光が吸収される状態を反映させるものです。具体的にはkが大きくなると水が濁っており、光減衰は大きく、逆にkが小さいと水が澄んでおり、光減衰は小さくなります。この値は水域により見積もりの値を代入することになりますが、ある2箇所の水深(z1,z2)において、それぞれ光強度(Iz1,Iz2)が判明している場合には、次式によりkの値を求めることができます。2.303は、対数の底をeから10(つまり自然対数から常用対数)に変換するための数字で、有効数字4桁で示しています。
 また、海洋においては、一般に透明度(transparency)と消散係数kとの間には、k=1.7/Tの関係が成り立つとされています。これを実際に数式で見てみますと、

 透明度の水深における光強度は、水面の光強度を100%とすると、平均で約15%といわれています。例えばこれを上式において適用すると、Ioに100、Izに15を代入した場合、1.89という値が出てきます。これは透明度で1.89を割ると、消散係数を求めることができるということです。透明度は水の濁り具合が大きくなると、その値が小さくなります。実際には、湖沼では1.9、海洋では1.7の数値が用いられます。

B. 水温
 海水温は、海面表層から暖められるため、水深が増すにつれて低下していきます。一般的な水温の例をあげますと、表層で16℃前後ある場所でも、水深1000mでは約4℃、さらに水深5000mでは約1℃になります。比較的表層の、水深150〜400mまでには、水温躍層と呼ばれる、水温が急変する層が存在していて、この層を境に水温は急激に低下します。水温躍層とは、海水の温度分布を鉛直に見ると、表面は暖かいが、深くなるにつれて冷たい。つまり冷たい海水は比重が重いため、表層の軽い水とは容易に混ざり合うことがなく、表層と深層の海水の間で境界ができあがっており、ここを境にして水温が急激に変化するので、これを水温躍層(thermocline:サーモクライン)という。

C. 水圧
 最後に水圧ですが、水圧は、10mの水柱が約1気圧に相当すると考えると、水深1000mでは約100気圧(1平方センチメートルあたり100kgという高圧)にもなります。水深5000mを超えると、水圧は500気圧を超え、これは我々生物を作っている細胞構造や、タンパク質・生体膜などの有機分子の構造そのものまで歪めてしまうほどの圧力です。しかしこんな世界からも様々な深海生物が発見されてきています。
深海は、生物のほとんどいない陸上でいえば砂漠のような場所と見なされてきましたが、最近になって深海底のごく一部で熱水の噴出するプレート拡大軸や、冷水のしみ出すプレートの沈み込み帯に極めて高い生息密度を持つ生物の大群集が相次いで発見されました。このことから、深海に対する新たな見解が持たれるようになってきています。



2) 深海の定義を考える 

主な深海の境界を決定する基準は次の通り

@ 光が届かなくなる深さ
A 水温が一定になる深さ
B 生物相の変化に基づく決定
C 全海域の平均水深を基に決定



@は、補償深度が最も大きく関係しています。いわゆる海藻と呼ばれる海の植物は、光合成が可能な限界の水深より深い場所では生育できないと考えていいと思います。これらはもちろん呼吸もしますので、水深の増大とともに光が弱くなると、光合成を行うに必要な光量を得られなくなり、光合成量と呼吸量が等しくなって、成長しないという地点の水深のことを、補償深度といい、その時の光量を、補償点と呼びます。一般に、補償深度より深い所では、呼吸量が光合成量を上回り、その植物は生存できないということになります。
Aは、水温の変動についての話になります。海洋表層では、緯度や季節あるいは時間帯によってもその水温は異なりますし、変動が大きいといえます。これも季節的・永年の二種類がありますが、ある深度の範囲では、上述したように、水温躍層が存在しています。ここを過ぎると、水温変動は少なくなり、温度環境としては安定してきます。
Bは、以下に説明していますが、特徴的な海洋生物の垂直分布を元に決定する考え方です。
Cは、あまり用いられていませんが、全海洋の平均水深を基準として、それよりも深い所を本当の深海 とするという考え方です。全海洋の平均水深は、約3800mです。

 具体的にどこからが深海であるかというのは定義しにくいですが、海底地理的には、大陸棚から急激に水深が増す大陸斜面にかけて、水深200m前後あたりからを「深海(deep-sea)」と考えていいと思います。一般に、生物多様性(biodiversity)に富むのは、大陸棚上、水深200mあたりよりも浅い海域で、ここは、様々な植物相が見られると同時に、プランクトンも豊富で、陸域から供給される有機物量が多いことや、環境要因の変動が大きいこともあって、この水深200mあたりというのを目安にする考え方が定着しているようです。
 生物相とは、その場所で生息する生物全体をいいます。この生物相の違いから海を深度ごとに区分することができます。ちょうど、陸上でいえば、植物の生育分布を垂直的に見た場合、照葉樹林帯、針葉樹林帯、亜高山帯、高山帯などと分けることができるのと同じです。海洋の場合でも、このような生物相の垂直分布があります。海の垂直構造を生物相で区分する場合には、海底は、移動範囲の少ない底生生物(benthos)で、海中は、自力あるいは潮流・海流に乗って大きく移動することができる浮遊生物(plankton)や遊泳生物(nekton)によってそれぞれの生物相で分けられます。底生生物による区分は大きく浅海系と深海系の2つに分けられ、深海系はさらに漸深海帯(bathyal zone)、深海帯(abyssal zone)、超深海帯(hadal zone)に区分されます。浮遊生物や遊泳生物による区分は、表層(epipelagic zone)及び中深層(mesopelagic zone)、漸深層(bathypelagic zone)、深海層(abyssopelagic zone)、超深海層(hadopelagic zone)に区分されます。
 ここで、浅海帯の面積は、全海域面積の約7%にすぎず、残りの93%は200mよりも深く、さらにそのうちの約70%は2500mよりも深い。全海洋の平均水深が約3800mであるということからも、いかに深海世界が広いかが分かると思います。このように、海洋のほとんどが実は深海であるということが言えるのです。では、世界で最も深い場所の深度は一体どれくらいでしょうか。このことに関しては様々な報告がこれまでにありました。ロシアのビチアス号により、マリアナ海溝のヤップ島沖付近に最深部が存在し、その水深は11034m(ビチアスT海淵)であると報告されました。現在では、最深部はマリアナ海溝で、その水深は10924m(チャレンジャー海淵)と誤差10mの範囲であるらしい。以下に示すように、水深10000mを超える大深海は、いずれも環太平洋に分布しています。

深度上位4つの海溝
10924m  マリアナ海溝(チャレンジャー海淵)
10882m  トンガ海溝(ビチアスU海淵)
10057m  フィリピン海溝 (エムデン海淵)
10047m  ケルマデック海溝(ビチアスV海淵)


3) 各深度ごとの全体像 

@中深層(水深200〜700m)
 中深層は、浅海から深海へとつながる最も上部にあたります。水深200mから徐々に暗黒の帳がおろされます。しかし水深500mあたりまではまだ青色系統の光が微弱ながら到達しています。光合成を行う光量は得られず、補償点をすぎて水深100m以深ぐらいから植物は姿を消して行きます。このあたりは、目が大きく発達した魚類が多く、銀白色や黒褐色の体色をもつものが多い。節足動物は赤みがかっている種類が多い。これは赤色系統の光が届かない深度では、赤色は黒に見えることから、一種の保護色の役割を果たしていると考えられます。節足動物が黒くならないのは、色素としてメラニンを持たないからだと考えられます。ここに生息する主な生物は、魚類ではアオメエソ、ソコダラ類、ハダカイワシやチョウチンアンコウといった硬骨魚類、フジクジラ、ギンザメなどの軟骨魚類と様々で、軟体動物では、シャクシガイ類、ロウバイガイ類などの原鰓類二枚貝やオキナエビスガイ類、エゾボラ類などの巻貝、遊泳性のイカ・底生性のタコの仲間がいます。棘皮動物では、フクロウニ類、クモヒトデ類、ウミユリ類など。海綿動物では、カイロウドウケツ類などが見られます。比較的、多くの分類群・種類が見られる深度帯です。


A漸深海帯(水深700〜3000m)
 水深1000m前後までは弱光層または微光層と呼び、わずかながら光が届いていますが、ほとんど暗黒の世界です。水温は4℃前後まで低下し、懸濁態有機物量も極めて少ないですが、マリンスノーと呼ばれるプランクトンの死骸などが、まるで海中を漂う雪のように見えます。ここでは、深海性の軟骨魚もかなり多いです。また、少ない光をとらえようと目の発達したものがいる一方で、暗すぎるために必要のなくなった目を退化させたものもいます。ここに生息する主な生物は、魚類ではミツマタヤリウオやホテイエソ類、イトヒキイワシ、ナガヅエエソ、ソコボウズ、さらにイバラヒゲなどソコダラ類といった硬骨魚類、ギンザメ類などの軟骨魚類を中心に様々で、軟体動物では、シャクシガイ類、ロウバイガイ類などの原鰓類、オトヒメハマグリ類、シンカイヒバリガイ類などの二枚貝やタマガイ類、クダマキガイ類などの巻貝、遊泳性のイカの仲間、メンダコ・カンテンダコなどのブヨブヨした深海性のタコの仲間がいます。棘皮動物では、ウミユリ類やクモヒトデ類。海綿動物では、深海性カイメンなどが見られます。その他に、熱水活動域を中心に、コシオリエビ類や、ハオリムシ類なども集団を作っています。


B深海帯(水深3000〜6000m)
 水温は約1〜1.5℃あたりでほぼ一定。水圧は300気圧をこえる超高圧が支配する世界。海水中で生活する漂泳生物(ネクトン)は少なくなり、逆に有機物が比較的多く堆積している海底には、底生生物(ベントス)を中心とした多くの動物が生活しています。体色は、多くの種類が色素を失って白や灰白色のものが多くなります。ベントスの仲間では、特にナマコ類が非常に多く見られます。ここに生息する主な生物は、魚類ではヨロイダラなどのソコダラ類、軟体動物では、スミゾメソデガイ類、ロウバイガイ類などの原鰓類、棘皮動物では、ユメナマコ、センジュナマコなどの深海性ナマコが中心となります。


C超深海帯(水深6000m以深)
 水深6000mをこえる超深海帯は、大洋底のごく一部や、海溝のみになります。水圧は600気圧を超えるようになってきます。ここに生息する生物は、超深海の水圧でも生存のできる、耐圧性または好圧性に優れた生物です。魚類ではシンカイヨロイダラ、シンカイクサウオの仲間などが知られ、それほど多くありません。さらに水深8000mをこえると魚類はほとんど見られなくなり、二枚貝、ゴカイ、ヨコエビなどの無脊椎動物が生息するくらいですが、水深10000mの大深海にも生物がいることが知られています。最深部に生息する各生物の生息状況は、魚類では、シンカイビクニン Pseudoliparis amblystomopsis (Andriashev, 1955)という種類で、これは以前Careproctus属でありましたが、その後に属名が変更されています。本種で水深7000〜7200m前後に生息。棘皮動物ではナマコを中心に水深9000〜10000m前後の大深海まで、軟体動物では大型二枚貝のナギナタシロウリガイ、ナラクシロウリガイなどで水深6500m前後、ナギナタシロウリガイのコロニー中に見られるナラクハナシガイや、マメオトヒメハマグリの仲間で水深7000〜9000m前後まで。水深10000m以深からは、ナラクソデガイ類など非常に小型の原鰓類二枚貝が採取されています。笠型の小型巻貝も同様に発見されています。環形動物の仲間や節足動物のヨコエビ類は、最も深い10900mを超える海底にまで生息が確認されています。


4) 深海底を調査する 

深海潜水調査船・しんかい6500(海洋研究開発機構)
我が国の有人潜水調査船は、神奈川県横須賀市にある海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用する「しんかい2000」「しんかい6500」があります。ここでは、当館所蔵のしんかい6500の模型(ピットロード1/60モデル)を用いて、深海潜水調査船の主な機能とその構造を説明します。





A. しんかい6500の主な構造と機能
 「しんかい2000」及び「しんかい6500」の最大潜行深度は、名前の通りそれぞれ、2000mと6500mです。概要などの詳しいデータにつきましては、海洋研究開発機構のホームページ等を参照してください。どちらの潜水調査船も、その運搬・支援には、母船という大型船が調査地点上に待機します。「しんかい2000」の母船は「なつしま」、「しんかい6500」の母船は「よこすか」です。

 上の写真は、しんかい6500の模型と、各部分の名称をおおまかに示してあります。画像上段は、船体左斜め前から見た図になります。人間が乗り込む部分は、耐圧殻と呼ばれる直径2m前後のチタン合金製の球体で、この中に3名が乗り込みます。パイロット2名、研究者1名が一般的です。覗窓は3箇所あって、いずれもメタクリル樹脂を錘状に埋め込んだような構造をしています。水平スラスタは、いわば横スクリューのようなもので、調査船の位置を左右に細かく動かすためのものです。垂直スラスタは、画像左下にもありますように、船体中央の上下についており、これで潜行・浮上という細かな調整を行います。

 画像上段と画像右下では、深海調査に必要な機器が装備されています。暗い海底を照らす投光器や、撮影用のライト類のほか、静止画像を撮影するスチルカメラ、位置の微調整が可能なカラーテレビカメラなどがあります。下にある二つのマニピュレーターは、海底での作業や、生物採取などに用いられるロボットアームのようなもので、船内から人間の手のように操作することができます。マニピュレーターは二種類あって、片方はグラバと呼ばれ、岩石の採取等、大きな力が必要な作業を行うことができます。マニピュレーターの下にある黒いものは、サンプルバスケットと呼ばれ、深海生物や、底泥・岩石などの試料を採取して入れることができます。

 画像左下は、船体を横から見た図になります。後ろにある尾翼の下にあるのが、主推進器で、メインとなるスクリューです。また、尾翼の前に同期ピンガーと呼ばれる音波発信器があり、これは母船に向かって一定周期で音波を発信するものです。これを母船が解析することで、潜水調査船の位置などの情報を把握します。前部ハッチ上にあるのが音響測位受信装置で、これは母船があらかじめ調査地点におろした音響トランスポンダーと呼ばれる3本の音波発信器からの情報を受信するためのもので、トランスポンダーからの情報を調査船、母船が解析することによって、正確な調査船の位置などを確認します。また、CTDVというのは、Conductivity Temperature Depth Velosityの略で、電気伝導度から海水中の塩濃度、その他、水温、水深、流速などを測定する観測機器です。

 しんかい6500は、母船「よこすか」からクレーンとワイヤーで海面に降ろされ、計器類等の点検の後、潜行していきます。海底面に近づくと、徐々にバラストを解離し、海水と同じ比重になるとそのまま海底を調査開始します。しんかい6500に積み込まれている浮力材は、微小な中空のガラス球(シンタクティックフォーム)を樹脂で固めたブロックのようなもので、調査船の全重量・海水の比重などを考慮し、絶妙なバランスを保つように設計されています。何も搭載しなければ、船体は海水に浮くよう設計されています。浮上するときは、バラストを全て取り去り、海面までゆっくりと浮上していきます。その後、潜水調査船は、母船に揚上されて甲板に格納されます。




B. しんかい6500のミッション
 しんかい6500では、主に海洋地質学、海洋環境学、海洋生物学、海洋工学などの各分野の研究に必要なデータ、サンプルなどを得るという重要な役割があります。特に、地震大国である日本においては、海洋型の巨大地震の詳細なメカニズム解明と、その予測に向けた研究が急務となっています。この種の地震が発生する現場、つまり巨大地震の巣というのは、海溝やトラフに存在すると考えられています。特に海溝は、ご承知の通り、水深6000mラインを超えてきますので、ここを詳細に調査するには、水深6000m以上の安全な潜行が可能な深海潜水調査船が必要となってくるわけです。もちろん、深海生物の生きた姿をとらえたり、それらの生態を調査したり、未知の生物を発見するという大きな業績も出してきています。しんかい6500の完成によって、私達は直接、超深海の生物・環境を目にすることができるようになりました。


C. その他の深海調査機器
 しんかい2000やしんかい6500は、いわゆる有人潜水調査船と呼ばれるもので、実際に人が入ったまま深海へと潜航するものです。他にも様々な深海調査機器がありまして、これも簡単に紹介するにとどめますが、大きく分けるとすると、有人であるか、無人であるかという基準と、有索式であるか、無索式であるかという基準によります。この4つをキーとして、この組み合わせで、深海調査機器のステータスがある程度決定します。
 前者についてですが、無人調査機器として、海洋科学技術センターが所有する「ドルフィン3K」「ハイパードルフィン」10000m級の潜水が可能な「かいこう」などがあります。特に無人調査機器は、人が入ったまま、つまり有人で潜水調査するには危険であると判断される場所の調査に、威力を発揮します。
 後者についてですが、母船の船体と深海調査機器との間に、ケーブルが存在するかどうかです。簡単にいえば、コードのある、またはないラジコンの差ということです。つまりは、潜水機器自体が、自由に移動することができる能力を持っているかどうかということで、有索式の調査機器の場合、調査する水深以上のケーブルを必要としますし、これらを巻き取るドラムも非常に大型です。また、無索式に比べると制約が多いため、海底を探査する自由度が低いといえます。しんかい2000やしんかい6500は、有人で且つ無索式、自力航行が可能な潜水調査船です。その他、自力航行が完全に不可能なものとしては、母船などの船体から、ワイヤーなどで引っ張る必要のあるもの、曳航式の調査機器というのもあります。


D. 各国の深海潜水調査船
 我が国だけではなく、世界各国の政府・海軍・研究機関が、様々な深海潜水調査船を所有しています。特に、大深海への潜水能力を備えた自航式有人潜水調査船についてを簡単に紹介しておきます。
 まず、アメリカでは、ウッズホール海洋研究所と、スクリップス海洋研究所という二つの大きな海洋研究機関があり、ウッズホール海洋研究所(WHOI)が所有する「アルビン」、「シークリフ」があります。フランスでは、フランス国立海洋開発研究所(IFREMER:イフリメール)が所有する「ノチール」があります。アルビンが4000m級、シークリフ及びノチール、ロシアのミール2号が6000m級の深海潜水調査船です。
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