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2.熱水生物群集 hydrothermal vent community


 シンカイヒバリガイ    シロウリガイ   アルビンガイ   フネカサガイ   ハオリムシ 


 熱水生物群集(または熱水噴出孔生物群集)とは、一般には深海底に存在する一種の海底温泉のような場所、熱水噴出孔(hydrothermal vents)の周辺に生息する生物群集のことです。その特異な生態系から、深海生物学者から注目を浴びていることで有名です。このような場所では、海底から沸き出す硫化水素やメタンなどを材料に、有機物を合成することのできる化学合成細菌が生息しています。この化学合成細菌を基礎生産者とした生態系が成立しており、化学合成生態系とも言います。しかし実際には、硫化水素などが沸き出していればいいわけで、特に深海に限ったわけではなく、鹿児島県で発見されたサツマハオリムシは、水深80mという浅い海底に群集を作っていることも分かってきています。

 熱水生物群集や冷水湧出帯生物群集の主な仲間には、ハオリムシをはじめ、イガイ科の二枚貝・シンカイヒバリガイ類、オトヒメハマグリ科の二枚貝・シロウリガイ類、その他、シンカイコシオリエビ、ユノハナガニなどの体が真っ白なエビ・カニの仲間、巻貝では、アルビンガイの仲間、エゾバイの仲間、フネカサガイの仲間などがいます。これらの生物たちが集まり、驚異的な生物量で我々を圧倒します。下の図は、熱水噴出孔付近を模式的に表したものです。




 深海底にそびえ立つ煙突状の構造物(チムニー)は、海底から熱水と共に吹き出る、Fe,Cu,Zn,Co,Niといった金属元素と硫化水素が反応してできた金属硫化物、硫酸カルシウムなどによって形成され、その先端部分や周辺からは、吹き出した熱水が周囲の冷たい海水にさらされることにより、これらの金属硫化物が析出し、まるで黒い煙を吐き出しているように見えます。これをブラックスモーカーと呼び、黒色系の金属化合物を含まないものは、透明あるいは、乳白色の熱水を 吹き出し、ホワイトスモーカーと呼びます。


(図.1) 
深海底に生息するシロウリガイ群集
(図.2) 
深海底に生息するシンカイヒバリガイ群集


熱水噴出孔・冷水湧出帯の科学 

 これら熱水生物群集の理解を深めるために、以下にもう少し詳しく紹介したいと思います。


1) そもそも、熱水噴出のメカニズムとは? 【分野:海洋地質学,海洋地球化学】

A. 深海底とプレートテクトニクス
 地球表面は、十数枚のプレートと呼ばれる岩盤で覆われていて、これらはだいたい年間数センチの割合で複雑に運動をしています。このプレートは、地球内部から次々と形成されてそれが移動し、また、プレート同士がぶつかり合うと、いずれか一方がまた地球内部へと沈み込んでいきます。このプレート運動によって、大陸に溝が出来たり(地溝帯)、大陸が移動したりするわけです。これらの地質変動をプレートの運動によって説明する理論のことを、プレートテクトニクスと呼びます。
 プレート同士の境界には、「発散的プレート境界」と「収束的プレート境界」の二つがあります。前者は、地球内部から地球表面に向かって上昇してくるマントル対流によって、新しいプレートが作られ、地球表面に到達すると、それらは互いに逆の方向へとプレートが拡大していく所です。海洋構造的に言えば、これが海嶺・海底山脈に当たるわけです。後者は、移動してきた重い方のプレートが、軽い方のプレートの下へ沈み込んでいく所です。軽い方というのは大陸プレートで、重い方は海洋プレートに相当します。海洋プレートは、上に莫大な量の海水が存在するため、大陸プレートよりも重く、これが沈み込む所に、いわゆる海溝やトラフが形成されるわけです。例えば、日本列島には、ユーラシアプレート、太平洋プレート、北米プレート、フィリピン海プレートという4つのプレートがひしめき合っていまして、太平洋プレートが日本の東海上、フィリピン海プレートが南西海上にそれぞれ沈み込み、日本海溝・千島海溝などを形成しています。このため日本列島は、プレート境界型の海洋地震の多発地帯でもあるわけです。

・主な発散的プレート境界(海嶺や海膨と呼ばれる場所)
 東太平洋海膨(East Pacific Rise;EPR)
 大西洋中央海嶺(Mid-Atlantic Ridge;MAR)
 中央インド洋海嶺(Central Indian Ridge;CIR)

・主な収束的プレート境界(海溝やトラフと呼ばれる場所)
 日本海溝(Japan Trench)
 マリアナ海溝(Mariana Trench)
 千島・カムチャッカ海溝(Kurile-Kamchatka Trench)

B. 発散的プレート境界と熱水噴出孔
 海底のマントルが上昇して海嶺を形成する発散的プレート境界では、上述の通り、新しい地殻が形成される場所です。ここでは、熱せられて上昇してきた岩盤が、冷たい海水などによって冷却され、海底マグマは、枕状溶岩という非常に特徴的な溶岩を形成します。これはハワイ諸島東方沖にて新しく海底火山が形成されている部分や、地上の火山から噴出したマグマが海岸に到達し、海水による急速な冷却を受けた時などに見られます。と同時に、岩盤は冷却されることによって体積は縮小し、海嶺付近では海嶺軸に沿って多くの断層・亀裂が、所々には横ズレ断層(トランスフォーム断層)が形成されていきます。この断層から海水が岩盤内部へと浸透していき、岩盤の深い場所へ到達すると、また高温のマグマによって熱せられ、海水は加熱を受けます。この時の海水温は、300℃あるいは400℃付近にまで達しますが、深海底の高圧のために液体のままでいられるのです。そしてこの熱水は、高温のため軽くなり、再び急速に上昇を始め、海底の亀裂から噴出してくるというわけです(熱水噴出現象)。
 熱水は、高温・高圧の条件で海底の岩盤を通過する際に、その組成を大きく変えて噴出してきます。これは還元的な条件にある熱水と、酸化的条件にある周囲の低温海水との間で、様々な化学反応を起こすからです。通常、海水は多くのMgカチオンや、SO4アニオンを含んでいますが、これらは岩盤内のCaカチオンなどと置換して除去され、Mgの代わりに海水中へ出てきたCaカチオンは、周囲のSO4アニオンと反応してCaSO4などの沈殿を生じます。また、岩盤内からAg,Au,Ptなどといった貴金属元素、FeやCu,Mnなどの重金属元素硫化水素が溶出してきます。析出したCaSO4は煙突状の構造物(チムニー)を形成します。また、重金属元素や硫化水素を含む熱水は、硫化水素と重金属元素が反応することにより、FeS,CuSなどの金属硫化物(いずれも不溶性の黒色沈殿)を生成し、これらもチムニー周辺に付着あるいは沈殿したり、熱水と共にまるで黒い煙を吐き出すように海中へと噴出してきます(ブラックスモーカー)。このような場所を、熱水噴出孔(hydrothermal vents)と呼びます。

 まとめ
・熱水とは:高温で、硫化水素(H2S)やスルフヒドリルアニオン(HS-)を多く含む。
・主に海膨などの火山活動の活発な場所や、海底の断層帯・亀裂などに熱水噴出孔が見られる。

C. 収束的プレート境界と冷水湧出帯
 発散的プレート境界とは逆に、収束的プレート境界では、大陸プレートの縁辺部をひきずりながら、地球内部へとプレートが沈み込み、そこに海溝トラフといった大きな深度を持つ溝のような海洋構造が形成されます。この沈み込みによって、周囲の岩盤・地殻に大きな歪みが生じ、海溝軸と平行に、多くの断層や亀裂を生じます。と同時に、プレートの収束運動による圧縮で、海底に浸透している海水は高い圧力を受け、断層及び海底堆積物を通って海水が沸き出してきます。ここでは、熱水噴出孔に見られる熱水のように、数百℃にも達する高水温ではない上、熱水に比較すると穏やかに沸き出すことから、冷湧水と呼びます。
 海溝は、大陸プレートに海洋プレートが沈み込む部分に形成されているので、陸上から供給される有機物や、海底堆積物が剥ぎ取られることによって、泥質の堆積物が厚く積もっています。この海底堆積物には、様々な生物の死骸などの有機物がたくさん含まれており、これらが分解される時にメタンや硫化水素、二酸化炭素などが生成します。このメタンなどは、海水に混じって大量に湧出してきます。このような場所を、冷水湧出帯(cold seep)と呼びます。

 まとめ
・冷湧水とは:熱水に比較して低温。メタン(CH4)や二酸化炭素(CO2)を多く含む。
・主に海溝・トラフ(舟状海盆)や、海嶺周辺の断層帯などで冷水湧出帯が見られる。

2) 化学合成とは何か? 【分野:微生物生化学,微生物生態学】

A. 一般生態系と化学合成生態系
 一般に、生態系が成立するためには、太陽光などのエネルギーから有機物を作り出す(独立栄養)基礎生産者(primary producer)、生産者が作り出した有機物を利用(従属栄養)する消費者、これらの死骸などを分解して利用する分解者の三役がいて、この間に食物連鎖が存在し、生物間での物質・エネルギー循環が確立する事が必要です。ここで、陸上あるいは浅海での生態系では、この基礎生産者に相当するのが緑色植物に代表される光合成独立栄養生物です。しかし光の届かない深海底では、太陽光のエネルギーを用いて光合成を行う事ができません。そこで、上述したような深海底の場所では、光合成に代わる独立栄養システムとして、化学合成というメカニズムを備え持った化学合成独立栄養生物が生息しており、これが基礎生産者の役割を果たしています。
 化学合成独立栄養生物の代表として、一般に化学合成細菌(chemosynthetic bacteria)と称される硫黄酸化細菌や、メタン酸化細菌などがあげられます。ここで「硫黄細菌」といった場合には、化学合成細菌ではなく、光合成細菌なので注意して下さい。

B 化学合成細菌
 CO2から有機物を作る(炭酸同化)するためには、大きなエネルギーを必要とします。光合成では、そのエネルギーを太陽光などの光エネルギーとして獲得しますが、化学合成では、硫化水素(H2S)やメタン(CH4)などを材料として、これらの化合物を酸化させた時に生じる化学エネルギーから獲得します。よって、光がなくても有機物を生産できるというわけです。以下にその代表的な化学合成細菌と、その反応を紹介します。

硫黄酸化細菌(チオバチルス属など)
2 H2S + O2 → 2 S + 2 H2O + Chemical E
2 S + 3 O2 + 2 H2O → 2 H2SO4 + Chemical E
6 CO2 + 12 H2O + Chemical E → C6H12O6 + 6 H2O + 6 O2

 上記の反応式は、イオン反応式を便宜的に化学式にて表しています。Chemical Eは、発生する化学エネルギーを示しています。右辺と左辺で、原料は何か?どのような反応であるか?何が生成しているか?などに注目していただくといいと思います。

3) 熱水噴出孔・冷水湧出帯生物群集と化学合成 【分野:微生物生態学,代謝生化学】

A 微生物共生系
 以上の事をふまえると、深海の熱水噴出孔や、冷水湧出帯から沸き出す熱水、あるいは冷水というものは、大量の硫化水素やメタンなどを含んでおり、これらの無機化合物を材料にして、化学合成というエネルギー獲得システムを用いて、有機物を生産する事のできる化学合成細菌が、深海域での基礎生産者であることが分かりました。では、そこに生息するハオリムシ類や、シロウリガイ類といった消費者は、どのようにして生命を維持しているのか。ここで登場するのが、微生物共生系の話になります。
 ハオリムシは、管の内部の大部分を占める内臓塊(栄養体)に、またシロウリガイは、特にの部分に、多数の硫黄酸化細菌を共生させていることが、この方面の研究で分かっているようです。ハオリムシやシロウリガイは、それぞれ、鰓を使って海水中の硫化水素や二酸化炭素など、化学合成の材料となる物質を、硫黄酸化細菌に提供し、その代わりに硫黄酸化細菌が化学合成で作り出した有機物を利用することで、生命を維持しているということらしいです。また、これらの微生物共生系を持たない生物は、ハオリムシやシロウリガイ自体、あるいはバクテリアマットなどを餌としているようです。

B 硫化水素に対する適応戦略
 硫化水素(H2S)は、非常に毒性が強いことで有名です。通常、我々を含む酸素呼吸をするものは、呼吸色素として、血液中にヘモグロビンやエリスロクルオリンなどを持っています。硫化水素の毒性は、呼吸色素阻害と、酵素活性阻害に分けられますが、前者は、酸素を運搬するヘモグロビンの分子内に、硫化水素が酸素を奪って結合し、オキシヘモグロビンの代わりに、スルフヘモグロビンを形成するため、酸欠状態に陥るというわけです。後者は、細胞内の電子伝達系に存在する呼吸に関係する酵素、シトクロムcオキシダーゼの活性部位に、硫化水素(厳密にはスルフヒドリル基)が結合し、その酵素活性を著しく低下させてしまうということです。つまり、個体レベルの呼吸と、細胞レベルの呼吸を阻害するという作用を持っています。
 ハオリムシの場合、彼らが持つヘモグロビンは、酸素と硫化水素の結合箇所がそれぞれ分かれていて、硫化水素の呼吸毒性を阻止しているらしいです。また、シロウリガイの場合、ヘモグロビンではなく、硫化水素を結合させる別の特殊なタンパク質を持っていて、これも同様の作用を持っているいるようです。このような特別な機能によって、硫化水素に満ちた熱水周辺域でも、彼らは生存が可能であると考えられています。なんとも不思議な適応機構です。


シンカイヒバリガイの仲間 


【概要及び橿原水族館標本】
殻高:76mm 最大殻長:44mm シンカイヒバリガイの仲間、プテオセルペンティスという種です。1994年に記載されています。モーリタニア沖深海底、熱水噴出孔、水深1000〜1200mより。本種は大西洋中央海嶺の水深3515mからも報告されています。
この仲間は、熱水噴出孔などの周辺で、おびただしい量の群集を作っていることが多く、分類的にはイガイ科・Mytilidaeに属しますが、この類は、Bathymodiolus属、つまり接頭語「bathy〜」というのが深海などの意味を表すので、深海性ムール貝といったところでしょうか。日本近海からは、シンカイヒバリガイ B. japonicus Hashimoto&Okutani,1994 カヅキシンカイヒバリガイ B. aduloides Hashimoto&Okutani,1994 シチヨウシンカイヒバリガイ B. septemdierum Hashimoto&Okutani,1994 ヘイトウシンカイヒバリガイ B. platifrons Hashimoto&Okutani,1994 などが記載され、いずれも水深680〜1500mから知られています。しかしあれだけ深海にたくさんいるのに、ウルトラ入手困難・・・。



【概要及び橿原水族館標本】
殻高:58mm 最大殻長:29mm シンカイヒバリガイの仲間、チルドレースシという種です。メキシコ湾深海底、水深3566〜4334mより。かなり深いです。最近記載されたばかりのシンカイヒバリです。メキシコ湾の深海、特にメタンが沸き出すコールドシープという冷湧水地点で、本種が発見されています。
生息水深は、700〜800mと1700mあたりからも報告されているようです。この種小名は、生物学者、Jim Childress博士にちなんだものでしょう。 メキシコ湾は、世界でも有数の巨大な湾で、最大水深は5023mもあります。日本では駿河湾が水深2500mをこえることで有名ですが。これは小さい個体ですが、殻高100mmを超えるものもいます。



シロウリガイの仲間 


【概要及び橿原水族館標本】
殻高:32mm 最大殻長:125mm シロウリガイの仲間、イクステンタという種です。1996年に記載された比較的新しい種類です。アラスカ沖深海底・アリューシャン海溝の熱水噴出孔、水深2000mより。深海調査ロボットROV(Remotely Operated Vehicle)による採集。
この仲間も、熱水噴出孔や、冷湧水域などの周辺に見られ、おびただしい量の群集を作っていることが多い大型の二枚貝類です。体内に呼吸色素として特殊なヘモグロビンを持ち、軟体部は赤い色をしている。シロウリガイ類は分類上、オトヒメハマグリ科・Vesicomyidaeのうち、Calyptogena属(シロウリガイ属)に入ります。日本近海からは、シロウリガイ C.(Archivesica) soyoae Okutani,1957 エンセイシロウリガイ C.(Archivesica) solidissima Okutani,Hashimoto&Fujikura,1992 ナギナタシロウリガイ C.(Ectenagena) phaseoliformis Metivier,Okutani&Ohta,1986  ナラクシロウリガイ C.(Ectenagena) fossajaponica Okutani,Fujikura&Kojima,2000 などが記載され、水深600m前後から、日本海溝・千島海溝などの水深6300m前後、超深海帯にまで分布しています。





【概要及び橿原水族館標本】
殻高:19mm 最大殻長:43mm シロウリガイの仲間、エロンガータという種です。カリフォルニア沖サンタバーバラ海盆の冷水湧出帯、水深174mより。小型の種類です。殻は厚い茶褐色の殻皮に覆われています。カリフォルニア沖に存在する海盆付近では、いくつかの冷水湧出帯や、鯨骨生物群集が確認されていて、いずれも硫化水素やメタンなどが沸き出しているとのこと。水深1760m付近にまで分布。




アルビンガイ 


【概要及び橿原水族館標本】
殻高:30.2mm 最大殻長:25.5mm アルビンガイ。中部マリアナ背弧海盆の熱水噴出孔、水深3500mより。米国ウッズホール海洋研究所の深海潜水調査船「アルビン」による採集。この標本は、殻皮が剥がれていますが、生きている個体では、毛の多い殻皮に覆われています。殻は非常に薄く、殻頂は通常、写真のように侵食されていて、非常に特徴のある形態をしています。蓋は皮質で薄い。また、アルビンガイの仲間も、鰓に化学合成細菌を共生させているようです。他の熱水噴出孔からも知られていますが、おそらくは別種である可能性が高いようです。水深1400〜3600mあたりにかけて分布。
ハイカブリニナ科・Provannidaeに属する比較的大型の腹足類。



フネカサガイの仲間 


【概要及び橿原水族館標本】
殻高:3.6mm 最大殻長:6.5mm フネカサガイ科の仲間、レペトドリルス・エレヴァツス。
太平洋沖深海底・東太平洋海膨(EPR)の熱水噴出孔、水深2500mより。深海潜水調査船による採集。
米国ウッズホール海洋研究所の深海潜水調査船「アルビン」などによって採集されています。カサガイのような形をしたこの仲間は、あまり有名ではありませんが、熱水噴出孔付近に生息するものです。主に、バクテリアマットと呼ばれる微生物によって形成されたマット状の表面や、チューブワームの表面に付着していたりするらしい。またこれは、微生物共生系をもたず、バクテリアマットや、その表面の様々な有機物を餌としているとか。日本近海からは、キノミフネカサガイなど、2種ほど知られているようです。分類上、フネカサガイ科・Lepetodrillidaeに属する小型の腹足類。
東太平洋海膨には、他にも、本種の亜種であるLepetodrilus elevatus galriftensis McLean,1988 Lepetodrilus ovalis McLean,1988 Lepetodrilus pustulosus McLean,1988 などが知られています。



【概要及び橿原水族館標本】
(左)殻高:3.8mm 最大殻長:8.5mm (右)殻高:3.2mm 最大殻長:8.5mm
ネオンファルス科・Neomphalidae(日本では新設分類群)に属する仲間、シンメトロンファルス・レギュラリス。軟体部はそのまま乾燥状態。生きているものは、軟体部が赤色。
マリアナ諸島沖深海底・中部マリアナ背弧海盆の熱水噴出孔、水深3640mより。深海潜水調査船「アルビン」による採集。マリアナ背弧海盆は、中部(水深約3600m)と南部(水深約1500m)の二箇所に熱水生物群集が知られていますが、そのうちの深い方の地点(18°12.6'N./144°42.4'E.)から得られたもの。
これも笠型の腹足類で、熱水噴出孔付近に生息するものです。この他にも、Symmetromphalus macleani Symmetromphalus hageni Beek,1993などが知られています。



ハオリムシ(チューブワーム)の仲間 


【概要及び橿原水族館標本】
管の直径:8mm 管の長さ:about 280mm ハオリムシの仲間で、リフチア属の一種だろうとの事です。よくわからない。棲管は石灰質のタイプ。北海道歯舞諸島沖深海底、水深2300〜2500mより。深海ドレッジにて採集(1990年)
ハオリムシ類として世界で初めて発見されたのは1966年のことで、エリック・バーラム博士が潜水調査船「ディープスター400」で、アメリカ・サンディエゴ沖水深1125mの地点で発見。管の直径は1cm程度、長さ60cmであったらしい。これが世界初、有鬚動物(ゆうしゅどうぶつ)に属する新種として記載されました。管の形状はいろいろあるようで、細いソウメンのような管から、大きいものでは長さ数メートルの管をつくるものもあります。海底の熱水が沸き出す場所や、金属硫化物が堆積してできた煙突状の構造物(チムニー)周辺の湧水地点などに、非常に高い密度の集団を形成することが多く、その近辺にはシンカイコシオリエビなどの白っぽい甲殻類が高密度で生活しています。これはゴカイやミミズなどの環形動物に近縁とされていますが、口や消化管が全くない特殊な動物です。現在までにエスカーピア、ラメリブラキア、オアシシア、リッヂア、リフチア、テブニアなどといった属が知られているようです。最初に発見されたものはラメリブラキア属、Lamellibrachia barhami であるとの事。このグループの分類はなかなか厄介で、現在のところ和名が付いている日本近海種はまだまだ少ないです。



【ハオリムシ類の構造】
ハオリムシ類の簡単な解剖図を示しています。
ハオリムシ類は、普段は羽織と呼ばれる環状の筋肉によって、自らが分泌してつくった棲管というタンパク質及びキチン質ないし石灰質の管内に収まり、鰓を出して外部から硫化水素を取り込んでいます。この管(チューブ)の存在から、チューブワームと呼ばれています。取り込まれた硫化水素は、体の大部分を占める栄養体(内臓が詰まった袋のような部分)へと血液を介して送り込まれます。栄養体には、多数の硫黄酸化細菌(化学合成独立栄養細菌)が共生しており、これが有機物を生産することで、ハオリムシは熱水噴出孔周辺で生きていられるという。栄養体には、よく発達した血管系や、生殖腺が存在していて、呼吸色素として特殊なヘモグロビンを持っているらしい。

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