1.はじめに introduction
1) 貝の起源と進化
貝の仲間、つまり軟体動物はいつ頃、地球に登場したのか?
古生物学の研究では、今から5億〜5億7千万年前の古生代・カンブリア紀、オーストラリアのエディアカーラヒルという地名にちなんだ化石動物群「エディアカーラ動物群」に軟体動物の祖先と考えられる化石が出てきているらしいです。エディアカーラ動物群は、最初の進化の大爆発とも言われるように、様々な種類の動物が誕生した時です。いわゆる形態・機能的な試作を繰り返した時代とも言えます。この時期に登場した動物は約1万種で、現存するほとんどすべての動物群の祖先が登場しています。中には過去に絶滅したグループも多く含まれますが、我々のような脊椎動物の祖先もこの時代に登場しています。(古生物学はよくわからない・・・)
2) 貝とは何か?貝の分類
貝の分類については、軟体動物学基礎のコーナーで詳述することにしたいので、ここでは簡単に貝の仲間を紹介します。定義もここでは省略です。(便宜上、分類段階はすべて「〜類」という表記で示します。)
一般に我々になじみの深い「貝」と言えば、貝殻を持ったアサリやシジミなどの二枚貝。そしてサザエなどの巻貝などでしょう。これらは食卓にも登場し、ほとんどの人が知っていることと思います。これらは体(軟体部)の外側に、主に炭酸カルシウムでできたかたい殻をもっています。しかし学術的には「貝」というのは軟体動物に属する動物で、イカやタコ、さらにはウミウシの仲間も軟体動物です。
軟体動物の祖先は、1枚の貝殻を持つ
単板類
(ネオピリナの仲間)という種類で、現在は水深数千mの深海で発見されています。この単板類から殻を失ったもの・
無板類
(カセミミズの仲間)。そして板を8枚に増やした
多板類
(ヒザラガイの仲間)がいます。現在でも海岸の岩場でよく見かける種類です。また、なんらかの理由で軸にねじれが生じて進化した
腹足類
(巻貝類の仲間)、そしてこの中から貝殻を失ったり、中には貝殻を持つ種類もいる
後鰓類
(ウミウシの仲間)、また海から淡水、そして陸上へと進出した
有肺類
(カタツムリの仲間)がいます。その他、単板類の殻を細長く進化させた
掘足類
(ツノガイの仲間)。また、単板類の殻を両側から包むように開閉できる形に進化させた
斧足類
(二枚貝の仲間)。そして殻を持ちながら遊泳するオウムガイ類(オウムガイやアンモナイトの仲間)、のちにオウムガイ類はイカやタコなどの
頭足類
へと進化していきます。
このように、一口に「貝」と言ってもその種類は膨大であり、軟体動物の仲間は10万種を超え、地球上に生息する動物の中で節足動物に次ぐ2番目に大きいグループなのです。「生きた化石」と呼ばれる生物進化を知る上で重要な種も、いくつか含まれています。
多板類・ヒザラガイ
腹足類・イトマキボラ
腹足類・タカラガイの仲間
後鰓類・ミスガイ
有肺類・エスカルゴの仲間
掘足類・ミズイロツノガイ
斧足類・ドブガイ
頭足類・オウムガイ
3) 貝の種類数
軟体動物門に属する生物の種類は、約10万種+それ以上ともいわれています。「動物系統分類の基礎」(内田亨氏・北隆館,1997)によると、総数は112,000種と紹介されています。我が国日本周辺では、現在およそ1万種+それ以上といわれています。それぞれの分類群ごとの大まかな種類数も、同書によると以下の通りとなっています。括弧内( )種。
単板類
(3);1957年のガラテアトロールによる現生ネオピリナの発見以来、現在まで10余種程度が知られている。
無板類
(140);いわゆる"カセミミズ"あまり多くはないが、からだの構造上、興味深い分類群。
多板類
(1,000);近年では深海性の微小種も発見されている。
腹足類
(85,000);非常に大きな分類群で、全軟体動物の7割以上を占める。
前鰓亜綱
(55,000);いわゆる普通の"巻貝"非常に多くの種が含まれる。
後鰓亜綱
(10,000);いわゆる"ウミウシ"研究が遅れている分類群の一つ。
有肺亜綱
(20,000);いわゆる"カタツムリ"今後、未記載種が正式に発表されると、ここは急激に増えると思います。
斧足類
(25,000);いわゆる"二枚貝"腹足綱の次に多くの種が含まれる。
掘足類
(300);いわゆる"ツノガイ"現在ではもっと多いでしょう。
頭足類
(600≦);深海性の未記載種も多いため、まだまだ増えると思います。
4) 貝の棲んでいる場所
貝は、その生活様式によって生息している場所は様々です。ここでは簡単にご紹介します。
1.海洋
まず地球の表面積の約70%を占める海洋です。ここには数え切れないほどの貝類・軟体動物が生息しています。その生息範囲は、垂直スケールでみても広大で、満潮時でも海水につかることのない波打ち際や潮上帯から、干潮時にでも海水につかっている潮下帯、そしてこの間の潮間帯。さらには沖合へ向かって水深200m前後までの大陸棚、水深6000mを超える超深海帯からも、貝の生息が確認されています。場所による違いでは、泥質の砂浜から、干潟、やや大きな石が存在する転石海岸、岩礁地帯、珊瑚礁、河口付近の汽水域と様々です。さらに細かく見ると、海藻の上や、ヤギ類・ヒトデなどの動物に寄生するもの、岩に穴をあけて棲むもの、海面を浮遊するものなどもいます。
また、イカやタコの仲間は積極的に移動するような仲間です。イカはどちらかといえば回遊性で、産卵のために回遊することも有名です。海洋表層から深海にまで分布しています。タコは定住性で、岩場などの窪みによく入っています。産卵も巣穴で行われ、その卵は「海藤花(かいとうげ)」として有名です。タコも表層浅海性の種類から、メンダコ、カンテンダコのような深海性のものまで知られています。中には漸深海性のコウモリダコのように、1科1属1種に分類されるわけのわからない奇怪な生物もいます。
2.陸水
海水ではなく、河口付近の淡水が混じり合う汽水域から上流に向かって、河川、湖沼、さらにはその辺の用水路などにも貝は生息しています。淡水種として日本で有名なのは、タニシやカワニナ、モノアラガイなどの巻貝、カラスガイやドブガイなどのイシガイ科二枚貝類、さらには食用ともなっていますシジミの仲間だと思います。主なシジミとして、ヤマトシジミ(純淡水種)、マシジミ(汽水種)、セタシジミ(琵琶湖水系固有種)などがしられています。日本ではそれほど多くの種類はいませんが、アメリカ合衆国やバイカル湖には、わけのわからない淡水産の貝がけっこういます。これらは海産種に比べると地味ですが、淡水にも多くの貝類が生活しています。
3.陸上
陸上では、主にカタツムリの仲間、キセルガイの仲間などが該当します。日本でもカタツムリの仲間はけっこう知られていて、どれも地味な感じの色彩ですが、パプアニューギニアなど、海外に目を向けると、そこにはカラフルな色彩を身にまとったトロピカルな種類がたくさんいます。自宅の庭でおもしろい貝に出会うかもしれません。また、近年になって中国大陸でたくさんの陸産貝類が見つかってきており、険しい山によって隔離されている事から、山ごとに別種の可能性もあり、これだけで2万種類を超えるのではないか、とも言われています。
5) 貝の大きさ
現段階で、貝の大きさは、貝を軟体動物としてみれば、深海に棲むとされるダイオウイカになると思います。体長は外套長(足を除いた頭のカプセル部分)でだいたい数メートル、腕を入れると10メートルをこえるといいます。貝殻をもつもの、つまり頭足類などを除けば、二枚貝類ではオオシャコガイ、巻貝類ではアラフラオオニシということになると思います。逆に微小種は多いので私には分かりません。1ミリ以下の顕微的な種類もけっこうあります。
6) 貝の利用
先史時代より、人類と深く関わってきた生物です。貝を利用するとなると、まず美しい貝殻に目がいきますが、標本貝や食糧利用以外の用途についてです。身のほうは大体なんでも食べられますので。しかしあまりにも有名なのが、貨幣と真珠だと思いますね。タカラガイが貨幣として利用されていたという歴史もありますし、この辺は詳しくわからないので、他の専門書やらを参照してください。お金関係の漢字には「貝」がつく・・・。貯金・財務・貨幣・・・。
真珠については、日本で御木本幸吉による真珠養殖が有名です。天然の貝でも、殻の内側にピカピカした層(真珠層)を作る種類は、たいてい真珠をつくる可能性があります。私もカラスガイを開けたときに、出来かけの真珠を発見しました。極上の真珠が採れる確率というのは相当低いらしいですが、それも天然のものなので、まあ仕方ないのでしょう。それなりの高価な値段がつけられます。真珠についてもここでは割愛します。
近年では、貝類が持つ有用な生理活性物質の利用、水質改善に向けた生物フィルターとしての利用、環境モニタリングに関連したバイオセンサーとしての利用、海底地殻変動の指標としての利用など、様々な応用研究が進められています。
7) 貝と毒
貝の仲間にも毒をもつものがいます。有名なのはイモガイの仲間で、アンボイナやシロアンボイナなどは特に強い毒を持っていて、彼らは魚食性の貝であるため、その毒は我々人間を含めた脊椎動物に効くらしいです。彼らは歯舌が変化した
歯舌歯
と呼ばれる、銛のような物に毒嚢から出る
神経毒
を塗り、これを吹き矢のようにして相手に刺す。刺された獲物は丸飲みにするようです。
ジェオグラフトキシン
と名付けられたその毒による死亡率は、60%前後であるとのこと。神経がマヒするんでしょうね。詳しいことは他の専門書に譲ります。面白いのは、アンボイナとタガヤサンミナシ。アンボイナの毒は、脊椎動物に効きますから、無脊椎動物のタガヤサンミナシには効かないようで、逆にタガヤサンミナシの毒は、無脊椎動物に効くらしい。つまり、タガヤサンミナシがアンボイナよりも強いということになるようです。
アンボイナ
シロアンボイナ
タガヤサンミナシ
ニシキミナシ
タコの中にも毒をもつものがいます。有名なのはヒョウモンダコという暖海性のカラフルなタコで、口付近に毒腺をもち、噛まれると
テトロドトキシン
、つまりフグ毒と同じ物質をくらってしまいます。また毒はなくてもタコの口は強力なので、噛まれないように注意しなければなりません。 その他、身近なところでは、カキなどの二枚貝が毒化することがありますが、これは主にギムノディニウムなどの
渦鞭毛藻類
を中心としたプランクトンに由来するもので、貝自身が作り出すというようなことはありません。水試など貝毒の検査をしていますので、それほど心配ないかと思います。貝毒と呼ばれるものには、
下痢性貝毒・麻痺性貝毒
など様々なものがあります。
猛毒ではないにしても、大量に食べると中毒を起こすものもあって、エゾボラなどの内臓を食べると、まれに
テトラミン
中毒症状をきたすとの事。それ以外にも、我々が垂れ流している重金属や、変な化学物質(環境ホルモンのような)を、バイオロジカルコンセントレーションの過程で蓄積していることもあります。貝類というのは、
中腸腺
というまあキモみたいな部分にわけのわからん物質を蓄積するからで、ここは食べないほうがいいのかもしれません。中には好んで食べる方もいますし、おいしいことも事実です。
適当に思いついたことを書いていたら、全く面白くないものが出来上がってしまいました。なるべく貝の世界を簡単に幅広く書いてみましたが、極めてしょーもない内容で申し訳ありません。とりあえずこんな感じで、また思いついたら何か書きます。
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