帝国の聖戦
著:吉田親司 発行:学習研究社
2002年4月27日 初版発行 更新 4月25日
(1巻)
第1次世界大戦後のパリ講和会議。
そこで、日本のある陸軍大尉――石原莞爾の提案によって、ある組織が設立された。
国際連盟の下において武力制裁を行うための、平和維持部隊。
その名は、国際自衛隊(ISDF)。
国際連盟の常任理事国が戦力を出し合うことによって編成されたISDFは、「人類の恒久平和実現」という平和の理念に忠実が故に、法的に束縛された部隊だった。
ドイツのオーストリア併合、ソヴィエトのフィンランド侵攻などにISDFは出撃を繰り返すも、専守防衛という法的な縛りによって、受け身の戦いを強いられる。
そして第2次世界大戦が勃発し、ラプラタ沖での海戦においてもISDFは法的な束縛によって大損害を受ける。
さらにはドイツ・ソ連・アメリカの3国が手を結ぶ事態に至り、ついにISDFは連合艦隊そのものすらもISDFに組み込み、法改正を行うと同時に合衆国へと戦線布告、真珠湾へと殴り込みを開始した!
彼らの目的はただ1つ。真珠湾を破壊することによって合衆国の動きを封じ込め――そして、大西洋を日本へと航行中の、ソヴィエト・バルチック艦隊を迎撃する為に!
KKベストセラーズから出た「新世界大戦」シリーズの著者である吉田親司氏の新シリーズです。
デヴューシリーズである「新世界大戦」は、かなり切れた内容だったので、内田的には発売を非常に楽しみにしていたのですが、こちらもかなり切れており、期待を裏切らない出来でした(笑)。
1巻の内容は、日本主導によって設立されたISDFが、第2次世界大戦前の様々な国際危機に出撃し、法的規整によって苦戦を味わい、そして法改正を経て対米戦へとなだれ込んでいく過程を描いています。
とはいえ、苦戦と一言でいっても、「新世界大戦」の吉田親司氏、甘く見てはいけないようです。
そのシチュエーションが素晴らしすぎですから(笑)。
ドイツのオーストリア進駐の対してのアクションでは、グデーリアンの戦車部隊より先にウィーンへとISDFが到着しますが、その場の首脳同士の交渉ではヒトラー自らが1号戦車を操縦してオーストリア首相を殺害(爆)。
フィンランドの冬戦争では、あの役立たずで有名な多砲塔戦車T28と、いかにも日本製っぽい作りが秀逸の99式試作砲戦車が殴り合い、洋上ではオーストリアでのイザコザの代償としてドイツから得たポケ戦<ドイッチェラント>改め<リッツォー>改め<飛騨>(頭痛が……)や、エチオピア戦争の代償としてイタリアから得た戦艦<飛鳥>が、ソヴィエト・バルチック艦隊と砲戦を繰り広げます。
さらに極めつけがモンテビデオ沖での<グラフ・シュペー>VS<飛騨>という同型艦決戦が、その交戦模様をラジオ放映し、娯楽として楽しむモンテビデオ市民によって打ち上げられた盛大な花火の下で殴り合うなど、おそるべき展開です(笑)。
終盤において描かれる真珠湾殴り込み作戦(この名称、某アニメのパロディでは……)では、GFに唯一残された戦艦である<大和>が、舵に損傷を受けたことによって自分から真珠湾の湾口へ自沈を図るわ、さらにはその<大和>にハルゼーの乗る空母<エンタープライズ>が突進をかましさらに被害を大きくするわと、もうやりたい放題です(笑)。
なんというか、その遊びぶり、弾けぶりが圧倒的(笑)。
こんなに楽しく、さらに燃える(重要です!)仮想戦記は久々です。
書き手も楽しんで書いていることがよくわかる出来ですし(爆)。
それにしても、この世界はISDFの存在でそんなに目立ちはしませんが、かなりの歴史修正が加えられていますね。
日露戦争では奉奠での殲滅戦で日本軍が大勝利を得た結果、陸軍はスーピンまで進撃を果たし、バルチック艦隊はアフリカ沖で引き返しています(笑)。
また、その結果でしょうか、アラスカは日本領となっており、第2次世界大戦では、ソ連軍がアラスカに攻め込んでおり、日本軍は苦戦を強いられているようです。
日本軍が日露戦争で大敗する話は多いのですが、逆に大勝させる仮想戦記は珍しいですね。
「日露戦争」というウォーゲームを数回やってロシア軍プレイでしょっちゅう大敗している僕にとっては、そういったこともあり得るという気分になりますし(爆)。
あと、吉田氏の前作である「北海の旭日旗」から思っていたことですが、やはり文章の構成が非常に巧く、読むのに飽きません。
至極真面目な行為であるはずの海戦をプロレスの如く実況中継させたのは、本書くらいのものでしょうし(笑)。
次巻はあとがきによると、1巻ではさわりだけの説明であったISDFの設立過程と、米ソへの反撃を描く予定だそうです。
おそらく、遠路はるばる日本海へと遠征中のバルチック艦隊や、米太平洋艦隊(残余)との決戦が行われるのでしょう。
歴史改編によってソ連は海軍大国として健在らしいので、ソヴィエツキー・ソユーズ級やらソ連製空母やらの妖しげな艦艇が遠征してくるのでしょうか(爆)。
まぁ、敵が米独ソという、仮想戦記での悪役が全て揃ったような奴らなので、日本やISDFが勝てるかどうか、ちょっと不安になりますが(笑)。