★雑誌「アサヒカメラ」2003年11月号の記事



 ちょっと面白い雑誌記事を見つけました。老舗カメラ雑誌「アサヒカメラ」の2003年11月号に掲載された、「ユーザーによる「診断室」 私の満足と不満足 キヤノンEOS-1V」という記事です。

 1Vユーザー数人の使用感の紹介と、それを踏まえてのメーカー開発者へのインタビューで構成されているのですが、この開発者インタビューがまた「あれまあ…」というものです。

 この開発者インタビューには、キヤノンのカメラ開発センターから3名が登場しています。仮にOさん、Kさん、Nさんとしましょう。引用にあたって、インタビュアーはIとします。

 冒頭から、いきなりこういう出だしです。


I:EOS−1N(1Vの先代モデル)に比べて1Vの故障は減っているんですか。
O:故障の話はあまり聞かないですね。
K:聞かないです。



 いきなり、故障のことから聞き始めるとは、このインタビュアー、何らかの意図があってのことでしょうか?(笑)しかも、「減っているんですか?」とは…。
 しかも、このサイトだけでなく、あちらこちらであれだけ不具合が話題になっているにもかかわらず、この開発者達の意識の低さはなんでしょう?製品を向上させるために、ユーザーの声に真摯に向き合おうとする姿勢が、この辺から既に欠けているようですね。
 …それにしても先代の1Nは、そんなに故障で有名だったのでしょうか?(笑)

 更に、こう続きます。


I:70〜200ミリF2.8装着時に電源が突然、切れた方がいます。
O:こういう故障は聞いた事がないですね。
N:アルカリ単3を使っていたということですが、半分使った電池と新品を混ぜて使うと、電圧が非常に不安定になります。電池がまだ使える状態なのでカメラは動き始めるんですが、操作していると、電圧が急激に落ちて止まることはあり得ます。



 恐らく、「アルカリ単3を…」ということは、この症状をアンケートで訴えたユーザーは、ブースターを使用していた(1Vのカタログにも載っている「1VHS」という仕様です)のだろうと思いますが、1Vの仕様についてお詳しくない方のためにご説明すると、まず、単3電池を使うことは、このアタッチメント(PB−E2)を使う場合、正常な使い方です。そしてこれを使う方は、1Vを使う方の中でもかなり上級に属する方の場合がほとんどだと思います。お値段もノーマル仕様のものより4、5万円高くなりますので、その「予算と必要性のあった方」ということになります。そんな方が、たかだか数百円の「新品の電池と古い電池を混ぜて使う」などということをするでしょうか?仮に、たまたまある時、手持ちの電池が足りなくて緊急回避的にそうしたとしても、起こった不具合に対して、後で電池を入れ替えてテストし直してみる程度の知識がなかったなどとは、およそ考え難いと思います。アンケートにこの回答を寄せたユーザーは、この開発者の回答を見て、「なめとんのか!」と憤慨しているのではないでしょうか?それにしてもキヤノンという会社は、こういうユーザーに対する態度、傲慢さが、ただでさえ故障、不具合で閉口しているユーザーの神経を更に逆撫でするのだということが分からないのでしょうか?
 実際、このユーザーはアンケートに対し、「電池の電圧が足りないのかなとも思いました」とも(つまり電池の問題はご本人がすでに疑ったということですから、その辺はテスト済みだろうと思います)、尚且つ「良く起きるんです」とも言っているのです。そんな症状についてのコメントを求められているのにこの回答とは、キヤノンの開発者達は、文章を理解する力、相手の気持ちを理解する力がないのでしょうか?それとも、ユーザーの声など、真剣に読む気は端からないのでしょうか?
 更にこのユーザーは、「キヤノンにも連絡した」とも言っています。なのに開発者達が「聞いた事がない」などと言うということは、こうした不具合をカスタマーサービスなどにユーザーが訴えても、あるいは情報提供しても、キヤノンという会社の中では、開発者まで届かない構造になっているということですね。そんなしょうもないことを、この3人の開発者達は、当たり前のように語ってしまっているわけです。「そういう話は聞いていますが、これこれこういう現象ではないかとユーザーの方にご説明し、その後改善したということでご納得いただいたと聞いています」とでもいうのならまだ「そうかな」と思いようもありますが、ユーザーが「言った」という話を「聞いていない」と言うのでは何とも…。
 しかもこの症状については、今この文章を書いている私も、他のユーザーの症例として聞いて知っていました。特に、ある種のレンズで多く報告があるようです。そんなに知られている話なのに、どうして開発者、責任者が知らないのでしょう?何で、「開発」という立場の人たちに、製品についてのユーザーからのフィードバックが届いていないのでしょう?
 …実のところ、本当は知っているけれども、そうとは認めたくないから、何とか適当な言い訳をしている、ウソをウソで固めようとしているだけなので、他のところに矛盾が出てきてしまうだけなのかもしれません。だとすれば全く、小学生並みの誤魔化し方ですね。
 もっとも、販売や「ユーザー窓口」はキヤノン本社ではなく、キヤノン販売の担当ですから、あるいは多少風通しが悪いのかもしれません。でも一方ではキヤノンは、「ユーザーの声を今後の開発に生かすべく、データとしてストックするためのシステムを開発している」などと言い、それをまた大々的に宣伝し、そのシステム自体を売り物にしようとさえしているようなのですけれども…。大げさなだけで、あまり効果的なシステムではないということでしょうか?最近一部のマスコミ、経済誌などが、このシステムの他、同社の経営をもてはやしているようですが(実際、儲かってはいるようですが)、無責任な話です。儲かっていれば、ユーザーは軽視するような経営方針が、そんなに持ち上げるようなものでしょうか?
 このユーザーは、結局この後、キヤノンの対応の悪さもあって「1Vは手放してしまいました」と語っています。値段の高い「フル装備」で買ったのに1、2年でそれでは、実に「イタイ」ですね。

 目を疑う話はまだまだ続きます。別なユーザーの意見についてです。


I:濡れた芝の上に置いていたところ、パワードライブブースターPB−E2のバッテリーのフタから浸水したという方もいました。
O:この部分に関しては、ボディーレベルの防滴機構にはなっていません。バッテリー室の奥に壁があって、その向こうには水が行かないようにはなっていますが、フタには多少すき間があります。
I:ボディーと同レベルの防滴構造にはできなかったんですか。
O:ブースターというのはアクセサリーですから。それにフタの防滴設計はけっこう難しいんです。Oリングみたいなゴムでシーリングすると、水中カメラのフタみたいになって、開け閉めが非常にやりにくい。しかも、ゴムをつぶす力に耐えるため、その周囲が大型化してしまいます。



 「はぁ、何無責任なこと言ってるの?」「どこまでいい加減なの?」という感じですね。だって、1Vのカタログやキヤノンホームページ(http://cweb.canon.jp/camera/eos/1v/catalog/index01.html)での紹介には、冒頭から以下のように書いてあります。


高水準の剛性・耐久性・制度が支える、揺るぎない存在感。
フォトグラファーの本能を挑発する被写体のように。資質に優れたものは、つねに際立った存在感を表現します。EOS-1Vは、4層におよぶ重厚で深みのある黒色焼き付け塗装を施した、マグネシウム合金のカバーを採用。手にしっくりとフィットするラバー仕上げのホールド部とあいまって、極めてハイグレードな質感を醸し出します。また過酷な自然環境のもとにおいてもEOS-1Vを最高の状態で駆使できるように、本体上部カバーと前カバー、パワードライブブースターPB-E2の前後カバーにもマグネシウム合金を採用。さらに、ミラーボックスにはアルミダイキャストを採用するなど、パーツ一つ一つに最適な素材を厳選・使用することで、剛性・耐久性・精度を飛躍的に向上したEOS-1Vの強靭なボディ。最先端システム一眼レフとしての実力をしなやかに表現するフォルム、そして細部に至る高水準の堅牢性・耐久性が、あらゆる撮影条件下で、持てるパフォーマンスを確実にサポート。完成された道具を持つ喜び、思うままに駆使する快感を提供します。

水しぶきや砂など物ともしない、かつてない防塵・防滴性能。
雨滴、水しぶき、砂、塵、さらに温度や湿度の急激な変化など厳しい環境においても確実に安定作動することが、プロフェッショナル一眼レフカメラの必須条件です。EOS-1Vは、あらためて限界状況を想定し、ボディの剛性と防塵・防滴構造を全面的に追求しました。シャッターボタンをはじめとする各種操作ボタン、電子ダイヤルなど、すべての可動部およびボディの主要合わせ部分など72個所を、シリコーンゴムなどにより入念にシーリング。背ぶた外周には徹底したパッキング処理を施し、さらにグリップ内部の電池室にはパッキング付きとびらを、ボディ左肩の各機能ボタン内側には水や砂塵の進入を阻止するシリコーンゴムブーツを採用するなど高い完成度を誇る防塵・防滴性能が、ボディ全体に宿っています

ボディマウント部にまでいたる、際立つ耐使用環境性能。
入念な防塵・防滴構造は、ボディマウント部にも採用されています。ボディマウント外周部に、防滴ゴムリングの接合面を装備。レンズマウント部に防滴ゴムリングを備えた防塵・防滴対応EFレンズ群*との組み合わせにより、マウント部の徹底したシーリングを実現します。

(下線は私が付けました。因みにこの後、「15万回耐久のシャッター」と続きます)


 この一連の文章から、「PB−E2には、剛性はあるが防滴性はない」と読み取れる人がどのくらいいるのでしょうか?正に巧みに話を摩り替えているわけですね。
 ましてや、カタログでは、このアタッチメントがついているモデル「EOS−1VHS」は、標準モデル「EOS−1V」の上級モデルであるかのように併記されているのです。それどころか、カタログではこれらの文章が書いてあるページには、びしょ濡れになった1Vのイメージ写真まで掲載されています。「PB−E2はアタッチメントで本体ではない」というのなら、「EOS−1Vは防滴性を考えてあるが、1VHSは考えてません」「標準モデルには高い防滴性がありますが、PB−E2付きの1VHSにはありません」と注意書きをしておくべきでしょう。あるいははっきり、1Vは1Vとして販売し、アタッチメントはアタッチメントとしてカタログに掲載すればいいと思います。買ってしまってから、「あ、そこは例外です」なんて言われるのでは、騙されたも同然ではないですか。(どういう表現がされていたか、こちらでご確認ください)
 記事のインタビューの質問ももう1度見てみてください。「濡れた芝の上に置いていたら浸水したというユーザーがいる」というのは、「防滴性が売りのはずの1Vで、何でそんなおかしなことになったんでしょう?」という質問だと思います(ましてや、別に水をかけてみたわけでもなく、置いておいただけだそうですから)。カメラ雑誌のインタビュアーでさえ、そういう誤解(キヤノンからすればあるいは)をするような広告の仕方というのは、やはり問題でしょう。(もちろん、完全防水カメラではないですから、「なるべく水滴など付かないに越したことはない」ということはあるでしょうけれども、上の広告文を見て、「ビショ濡れになっても平気だが、湿った草の上に置くのはダメ」とはあまり思わないのではないでしょうか)
 そもそもこの防滴性、対応レンズでしか実現しないものでもあるのですが、「かつてない防滴性を持ってはいるが、大きな穴は開いてますよ」といったような珍妙な理屈を当たり前のように語る開発者って、ある意味興味深いですね。それをまた、当たり前のように、都合の悪いところはオブラートに包んでカタログ等で宣伝し、そ知らぬ顔をしている営業サイドの担当者もとんでもないと思います。それとも、こういうこともユーザーが理解を示してあげて、不都合があっても文句も言わず泣き寝入りしなければいけないんでしょうか?恐らく、この開発者の言から推測すると、このユーザーの修理も有料だったのではと思うのですが…?(「不当景品類及び不当表示防止法」という法律があります。「法律」といっても、そんなに難しくありません。ご興味がおありでしたら、ご覧になってみてください)

 そしてこれまた珍妙なことに、このサイト以外でもかなり話題になっているはずの「シャッター問題」については、この記事中全く触れられていません。数万台単位の「不良部品搭載機」を市場に出してしまっていることを、私との会話では認めてしまっているのに、何故でしょう?「何かおかしいんじゃないか?」という不具合には、煙に巻くような回答をしたものの(それ自体、かなりの暴論もありましたが…)、はっきりとした「不良品」については、コメントを避けたのでしょうか?実際にはインタビュアーは質問したのに、「それは記事にしないように」とでも言われたのでしょうか?(この可能性が大かな?)

 電源が突然切れる問題も然りですが、キヤノンという会社は、ユーザー間の情報交換を甘く見すぎているようですね。どう考えても一例、二例ではない不具合、故障、不良の話を、とにかく隠せばいいと思っているなら、あまりにもユーザーをバカにしています。
 そんな会社が何故、業績がいいのか分かりませんが(経費が掛かる不良回収などしないから?)、いつまでも騙されているほど、ユーザーもバカではないと思うのですが、いかがでしょうか?

 それにしてもこの記事、事情をある程度飲み込めていると、殆ど皮肉にしか見えません。このインタビュアーもEOSを使っていて、いやな思いをした事があるのでしょうか?問題に徹底的に突っ込み、全てを公にしたとまではいきませんが、大広告主であるキヤノンについて、ここまででも書くのは大変だったのではないでしょうか。敬意を表します。
 私など、この記事中の、言われていることをきちんと理解せず、取ってつけたような理屈でごまかす開発者の態度が、自分のした経験と重なって、「そう、こういう感じのトボケ方なんだよなぁ。こういう風にはぐらかせというのが、マニュアル化でもされてるんだろうか?」などと思ってしまいました。雑誌のインタビューなどという場でさえこれですから、一般の人が「おかしい」と突っ込んでも、あくまでトボケようとするのも「さもありなん」というところでしょうか。

 最近では、キヤノンのデジタルカメラ(特に一眼レフタイプ)についても、ユーザーの間でいろいろと情報が飛び交っているようです。しかし、やはりキヤノン自体は、都合の悪いことは一切情報公開していません。
 これでいいのでしょうか?



to index