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鉄子救出編第一話

Mission Start




 某月某日…
 フィリピンと尖閣諸島の中間に位置する海市島、21世紀初頭にウラン鉱が発見された後に、大規模な埋め立てが行われた半人工島であり、その地理上の要件から一大貿易拠点として栄えていた。
 そしてその地理的条件から、幾度もの戦火にさらされる事となるのだが…今回それはあまり関係ない。
「…RED FOXよりRAJへ、こちらでターゲットの補足はできなかった。そちらはどうだ?」
「こちらRAJ、ハンゲー通りで見かけたとの情報を確認、今から踏み込んでみます」
「RED FOX了解、期限が迫っている、くれぐれもしくじるな」
「RAJ了解」

 教官サイド ミッション開始2時間前 東京某所

 雀荘にしては、煙の少ないそこで、なんだか不思議なツキを味方にしつつ、トップで終わらせた瞬間、奇妙な威圧感を感じた。
 まずは右に目をやる。
 少し前までロングだった髪をなにを思ったかばっさりやった、女の子とその彼氏。
 二人ともただ者ではないのだが、それは今回関係ない。
 その左…つまり自分の正面。
 黄色い帝王。
 …みたまんまただ者ではないのだが、こちらも箱下いった余波か普段の覇気がない。
 さらに左…つまり自分の右に座っている少女。
 彼女はこの面子の中では一番まともに見えるのだが、雀荘というロケーションと先ほどの罰ゲームの話のせいか、心なしか青ざめている。罰ゲームを食らう予定の本人より。
 目の前の人物たちはどれも一癖も二癖もある面子だが、先ほどから感じている威圧感は彼らのものではない。
「…で、どうしてこんな所で女子高生と準無職と絵描きさんと麻雀打ってるんですか、教官…」
 予想通りというべきか、声は背後からだった。
「いや、作戦前に少し自分のツキを確認しておきたくてな」
「…もう一時間でフライトです。行きますよ」
「もうそんな時間か…もう半荘くらいできるか…?」
「ダメに決まってるじゃないですか! 横須賀基地のヘリで待ってるんですから、こんな所で遊んでないで、とっとと行きますよ教官!」
「…鉄子がいないから少しは気が楽になるかと思ったが…RAJ軍曹、君はなかなか真面目だな…」
「鉄子少尉がいないからこそ、我々がしっかりとですね…」
「わかったわかった、その話はここではオフレコだ。それじゃ、司君、加奈君初田さんに、つばさ君、自分はこれで失礼させてもらうぞ。あ、罰ゲームの写真の指定は、また後日(笑)」
 先ほどまで卓を囲んでいた面々に別れを告げて、年若い部下に引きずられるようにして表に出る。
 と、そこにはもう一人。
「RED FOX准尉、ターゲットを確保しました」
「ご苦労…なんだかひどく疲れているな」
「それは…まあ…」
「RED FOX准尉まだ来てたのか。面倒をかけるな」
「誰のせいだと思ってるんですか教官」
「…なんだか部下に怒られ癖がついているなぁ…」
「いいから急ぎましょう、浅田准尉、カニンガム准尉はすでに基地で準備をすませていますし、C.W曹長、リュウ曹長はすでに潜入済みです。戦闘部隊も海市島橋頭堡とヘリでそれぞれ待っています」
「了解了解…」

 鉄子サイド ミッション開始1時間前「ユジャイ」森林地帯

「ああ、いたいた、あんたが鉄子曹長?」
「…はい…あなたは?」
「オレはジャララックスのサク軍曹、今回あんたの部隊で戦う事になった。ま、よろしく頼む」
「こちらこそ…よろしく」
「ま、今回はmビッツしかもってきてないんだが、ここみたいな小規模な基地にまで攻撃があるかどうかしわからないしな、気楽にやろうや」
「さやか軍曹とは…お会いになりましたか…?」
「ああ、同じ部隊の? ハンガーで会ったけれど…RBでもいくらか稼がせてもらったけれど、二人ともなんか表情暗いなあ」
「被検体パイロットは…大体こんな感じです…」
「ああ…まあ、そうかも知れないけれどね。もう少し明るくできないもんかな」
「……………」
「まあ、いいさ、オレはオレの仕事をする、あんた達はあんた達の仕事をする。それでオーケー?」
「はい、よろしくお願いします…」
「ん、それじゃま、よろしく頼むわ」

 教官サイド 作戦開始30分前 ユジャイPRF橋頭堡

「総勢7名か…想像以上に物好きが集まったなぁ…」
 目の前に並んだ6名にシミジミとため息を吐く。
「C.W曹長、リュウ曹長の両名は現在、敵基地に侵入中ですから、総勢は9名であります」
 最前列に並んだBirthroil准尉が律儀に答える。
「野球チームがつくれるな…一応言っておくが、今回の作戦はPRFの作戦行動と関係ない。よって一切の支援は受けられず、諸君の戦績になんら利するものではない。それでも参加を希望するか?」
「Sir, Yes Sir!」
 …ノリがいいなあ…というか、ノリが良くないとこんな企画に参加せんわなあ…
「…よし、作戦の説明に入る。まずは鉄子が配属されていると思しき敵基地にBirthroil准尉、HAL-1978准尉、Hypar曹長の三名が第一波が攻撃。ここでもし鉄子が出撃しているようならそこで捕獲、そうでなくても敵にダメージを与える事を第一目標とする。その後、一部メンバーを入れ替えた第二波がVTで敵基地に侵入、先に侵入したC.W曹長、リュウ曹長と連携して鉄子の救出。以上だ」
「了解!」

 鉄子サイド ミッション開始10分前「ユジャイ」RB基地VTハンガー

「敵、T3フォートレスVT搬送車を確認、総員第一種戦闘配備、繰り返す…」
「やれやれ、いるだけって訳にはいかなかったか」
 放送を聞いたサク軍曹は自分のVT…mビッツへと駆け上がっていく。
「よっ…と…準備オッケー、いつでも出れるぞ」
「鉄子曹長…こちらもいつでも出れます」
「さやか軍曹…こちらも出れます」
 通信機に無機質な、二人の少女の声。
「さて…それじゃ、行きますか!」

 教官サイド ミッション開始10分前T3フォートレスVT搬送車内

 作戦開始地点まであとわずかと言う所で、第一波出撃隊の面々に越えをかける。
 まずはHypar曹長、彼はヒェミ君の兄でもあり…詳しく言うと色々と危険だからやめておこう。
「それにしても…Hypar曹長まで参加してくれるとはなあ」
「いつもお世話になっていますから」
「…いや、どっちかというと、こっちの方がお世話になっているような…」
「なにをいいますか。それにヒェミも鉄子ちゃんがRBに誘拐されたと聞いてパニック起こしているし…」
「誘拐…いや。それはちょっと違うような…それはともかく…機体はなにを?」
「ディサイダーですよ! これしかないですよ! この機体に惚れ込んでPRFにいるようなものですよ!」
「ああ…そういうパイロットは多いなあ…自分も基本的に制式採用機体にしか乗らんし」
「この羽根を思わせるフォルムが! 見るモノに与える心理的影響まで計算されたフォルム(嘘)が! プロミネンスなんかより正義の味方っぽくていいじゃないですか!」
「…ってあんた本当に韓国人なんかい」
 などとほほえましい会話をしつつ、次に、Birthroil准尉に声をかける。
「Birthroil准尉は…プロミネンスM1か…うん? エンブレムは…」
 肩の装甲板には、丁寧に書き込まれた蜂の意匠。
「こだわってるな…」
「はっ! こだわっております! 教官!」
「気合い入っているな…」
「はっ! 大恩ある鉄子少尉救出のためならば! この命! 惜しくありません!」
「ちょっと待てい! そこまで気合いを入れるのはどうかと思うぞ!?」
「なにを言うのですか教官! この任務達成のためならばたとえカニンガム准尉にケツを貸すことになろうとも!」
「ほほう…」
「…うそです」
「…なによりだ」
 異常なノリの会話を差し挟みつつ、次にHAL-1978准尉に…
「ボルキャニックか…」
「ええ、ボルキャニックはいい機体です」
「…そおか…? いや、まあ、人の好みはそれぞれだが…自分はちょっと苦手だな…どうしても支援機が欲しいときに、川向こうから撃ったりするのには使っているが…」
 と、そこまで話した所で、エンブレムに目をやる。
『I Y 鉄子』
「…マジか」
「マジです」
 まあ…こういう隊員が参加するための企画だしなあ…ありがたいというか、すごいというか…
「…作戦開始地点に到達。「ラプンツェル」第一シークエンスに入ります。該当パイロットはただちに発進準備に入ってください…繰り返します…」
「さて…時間だ、諸君の健闘を祈る!」
「Yeah! Rock'n Roll!!」
「…ホントにノリいいなぁ…というか、USAパイロットの影響か…?」

次回に続く



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