RBサイド ミッション開始0アワー ユジャイRB基地 「ハッチ閉めます…イグニッションスタート…各システム起動…スタート…一番機鉄子、イエロージャケット、出ます」 「二番機、mビッツ、サク軍曹出る」 「三番機、コルト…さやか軍曹、出ます」 二機の箱形を思わせるシルエットの機体に先んじて起動した、どことなく蟹を廉そうさせるシルエットの鉄子のイエロージャケットが、残る二台の起動を待っているかのようにしばらく立ちすくむ。 「とりあえずゆるく散開して、森の中に入るので、いいか?」 「了解…」 「こっちはそれほどコストの少ない機体だから何度でも再出撃できるが、鉄子曹長のイエロージャケットはそうもいかないからな、気ぃつけなよ。以上」 そのまま応答を待たずに通信が切れる、おそらくさやか軍曹へと通信を切り替えたのだろう。 すぐさま接敵する事はまずない、森の奥深くに侵入した今、来るとすれば…おそらく、右か、左か。裏をかいて後ろから来る事も不可能ではないが、その場合ロスタイムが大きい。 主兵装をマーカーランチャーに切り替えて、鉄子は若干速度を落としつつ、密林深くへと侵入していった。 PRFサイド ユジャイ密林内 「ボルキャニック、HAL-1978位置に着いた。ここで榴弾撃ちまくっとくぞ」 「Birthroil了解、こちらはHypar機と奥に進む。いちおうインファイト仕様にrf二本担いできたから、マグラッシュで大抵は撃破できます」 「こちらHypar、ディサイダー。今からそちらをパスして、中央陣地に…と…熱源反応あり、おそらく二機。多分そのもう少し奥の中立陣地に一機…かな?」 「了解、一気にカタをつける!」 ボルキャニックが見守る中、ホイールのうなりをあげながらディサイダーとプロミネンスM1は、密林の中へと駆けだしていった。 鉄子 ユジャイ密林内 戦闘区分B3 イエロージャケットコクピット内 「こちらイエロージャケット、鉄子、3時方向距離1000に敵の反応あり、交戦に入ります」 「了解、機種は…その距離じゃわからないか」 「はいマーカー…ヒットしました…距離500切りました。機体、そちらの3時方向、マーカーのヒットしたのがプロミネンス、4時方向がディサイダーです。通信、さやか機に切り替えます」 「了解、こちらはデルタからの敵の警戒に当たる」 言葉と同時にサク軍曹のmビッツが転身し、中立拠点へと向かう。 それを確認してから鉄子は通信チャンネルをひねって、送信ボタンを押す。 「こちら鉄子、現在マーカーをヒットさせた機体、プロミネンスとディサイダー、目視しました。こちらから交戦に入ります。援護、お願いします」 「こちらさやか、了解」 短いやりとりの後に二機のVTが肉迫する。 「ディサイダーとプロミネンスM1…榴弾反応、来ました。進路上にボルキャニックがいると思われます」 「全機こちらですか…サク軍曹に連絡、頼みます」 「了解」 PRFサイド ユジャイ密林内 戦闘区域、C4 「ヒット反応あり、そっちの10時方向にお客さんだ。さすがに機体数はわからんけれど、このままうち続ける」 「こっちでも確認した、一機はコルト、もう一機は…イエロージャケットそのままこっちに突っ込んでくる…迎え撃つ!」 そのままイエロージャケットめがけてプロミネンスが移動しようとした瞬間、間に割ってはいるようにコルトが前進する。 「鉄子曹長は…側面に…自分が引きつけます。ボルキャニックもいます。いったん、離脱してください」 「…了解」 「くっ…邪魔だっ!」 プロミネンスの315-rfが小気味よい発射音を響かせる。 「被弾…装甲36%減少…あまり持ちません」 「旋回機動開始、プロミネンスの側面に入ります」 イエロージャケットの上半身がいびつにねじられ、プロミネンスを捕らえる。 「コルトは高速機動してないな、ロックして榴弾撃つぞ!?」 「頼みます。イエロージャケットがこちらの射線から外れて…」 放物線を描いて飛ぶ榴弾が、つやかのコルトめがけて降り注いでいく。 「こちらHypar、こちらの主艇にもコルトを捕らえた。交戦に入る」 「了解…イエロージャケットの方が心配ですが…こっちを片づけてからの方が…」 サク軍曹 ユジャイ密林内 戦闘区分C2 mビッツコクピット内 「…おいっ!? さやか軍曹! そっち、どうなってる!」 「サク軍曹…現在三機の攻撃を受けています。そろそろ持ちそうにありません」 「…淡々と言ってる場合じゃないだろ。それはっ!」 「問題ありません。鉄子曹長のイエロージャケットが敵主力の側面に…」 「…って、おいおい…」 「…危険域に突入、脱出します」 「…! ったくっ…」 Birthroil准尉 ユジャイ密林内 戦闘区分C2 プロミネンスM1コクピット内 「こちらHAL-1978、コルト撃破」 「Birthroil了解、イエロージャケットと交戦に…くっ!」 3時方向に疾走していたイエロージャケットに方向転換するより先に、355oの滑腔砲が滑り込んでくる。 「交戦に入ります。もう一機、気を付けてください」 「了解」 交戦圏に入ったイエロージャケットとプロミネンスが違いに装備していた滑腔砲を発砲する。 イエロージャケットが少し上体をずらして回避していくのに対して、プロミネンスはその巨体が邪魔をして、被弾する。 「くっ…イヤな動きを…」 その瞬間、ふと、思い出す。 −同じ武器で同じ角度で撃ち合っても、プロミネンスだとどうしても当たりやすくなってしまいますよねー。イエロージャケットのシルエットだと、少し角度を変えるだけで被弾率がかなり下げられるんですけれど…− 「…まさか…」 その瞬間、 「後ろ、がら空きだ」 140oマシンガンがBirthroil准尉の背後から響く。 「…っ!?」 回り込む形になったサク軍曹のmビッツが間断なく銃弾をたたき込む。 「Birthroil准尉…くそっ、間に合うかっ!?」 HAL-1978准尉がそれに気付いて、サク軍曹のmビッツを追いながら、こちらも140oを叩き込む。 「…脱出する!」 その声は、Birthroil准尉の方が数秒、早かった。 HAL-1978准尉 ユジャイ密林内 戦闘区分C2 ディサイダーボルキャニックコクピット内 「さすがに、イエロージャケット相手じゃ分が悪いわな…」 HAL-1978准尉の眼前にはほぼ無傷のイエロージャケット。 「Hypar曹長、一応囮になるが、カバー頼むっ!」 「了解…だけどかなりやばくないかな?」 「…そうだけど仕方ないっ! というかどうせ逃げられない!」 「りょ、了解」 140oマシンガンと、315-trの十字砲火がイエロージャケットに向けられる。 「……………」 そのままディサイダーを無視するようにボルキャニックに肉迫していく。 「…っ、舐められてるか…?」 弾倉が一つからになった直後、、HAl-1971准尉は、脱出を余儀なくされた。 鉄子 ユジャイ密林内 戦闘区分C3 イエロージャケットコクピット内 「ディサイダーは…逃がしましたか…」 マーカーランチャーに構え直して周囲を見回した所で通信ボタンが点滅した。 「こちらサク軍曹、再出撃した。そっちはどうなってる?」 「こちら鉄子、ボルキャニックは撃破しました。あとディサイダーが残っているはずです。ただプロミネンスが再出撃していれば、そろそろ接敵すると思われます」 「了解…もうじきさやか軍曹とそちらに合流する」 「…ディサイダーと接敵しました。マーカー命中…敵プロミネンスとボルキャニック、こちらに向かってきています」 「了解、オレ達がつくまで踏ん張れよ」 Hypar曹長 ユジャイ密林内 戦闘区分C3 ディサイダーコクピット内 「じゃあ、あのイエロージャケットが鉄子ちゃん?」 「確実かどうかはわかりませんが…多分。C.W曹長、リュウ曹長からの情報では、鉄子少尉の機体がイエロージャケットなのは確かみたいですし」 「それは…なんとかしたいな」 「撃破して、コクピットを回収できればいいんですが…」 「それはルール的に無理…もとい、とにかく、ここで勝たないと、どうしようもないです」 「はい」 そこまで話した所で、ディサイダーの眼前にイエロージャケットが出現した。 「鉄子ちゃん…!?」 思わず呼びかけた瞬間、 「……………」 イエロージャケットの動きが、一瞬、止まった。 「誰か…呼んだ…気が…」 「もしかして…」 それは、どちらのパイロットの呟きだったのか。 その次の瞬間… 「こちらサク軍曹、到着したぞ! 敵の前でぼさっとしてんな!」 「…!」 後ろから140oマシンガンを連射しながらサク軍曹のmビッツが密林を駆け抜け、現れた。 鉄子も慌てて355-sbを目前のディサイダーに構え直す。 その機体が鉄くずになるのに、さして時間はかからなかった。 その後駆けつけたBirthroil准尉とHAL-1978准尉が、イエロージャケットとビッツ、コルトを撃破するも、再出撃してきた敵部隊に再び撃破される。 ミッションタイム、14分10秒。 戦闘はライトブラザーズの勝利で終決した。 PRFサイド ミッション終了後T3フォートレスVT搬送車内 敗戦を喫したPRFの面々が、沈鬱な表情でカーゴ内に帰還したかと言うと…そうでもなかった。 「あのイエロージャケットは鉄子少尉のものと思われます。教官」 「私もそう思います。あれ絶対に鉄子ちゃんですよ」 「自分はほとんど接敵しなかったから、よく分からなかったけれどなー」 口々に報告する第一波パイロットたちの喧噪に包まれていた。 「わかったわかった…とにかく所在は確認した。あとは潜入している他の隊員の報告を待って…第二波を出撃させる。各員準備急げ!」 「Sir, Yes Sir!」 RBサイド ユジャイ基地格納庫 そして彼ら、ライトブラザーズのパイロットたちも、勝利の凱歌とはほど遠かった。 「結構ひやっとした時もあったが、まあなんとかなったなあ」 「…はい。十分な戦果です」 「…任務…終了…」 「…絵的には華やかなはずなのに、なんなんだろうな、このテンションの低さは…」 と、サク軍曹がこぼすのと同時に、彼の目の前に一台の車両が停止する。 「………?」 無言で見守る面々を出迎えるような形になったその車のドアが開き、中から一人の男が降りる。 「任務ご苦労」 開口一番、そう言った。 基地司令官では無いことは全員見て取れた。 だが、そうであってもさして違和感のない風格が男にはある。 襟章には、横線に交差する長方形の印が三つ…中尉の階級章が付けられている。 「………?」 なぜだか鉄子はその人物に見覚えがある気がした。 「本日からこちらのVT部隊の隊長を務める事になった、ジャガイモ中尉だ。よろしく頼む」 「って、あの? RB最強部隊の?」 「他の隊員が強かっただけさ」 その男…ジャガイモ中尉は、本気とも冗談ともつかない口調でそう言いながら、肩をすくめた。 「PRFから一個小隊規模の戦力がこちらに向かったという報告があった。以後の作戦は自分が指揮をとらせてもらう」 次回に続く
| |||