以下は、2002年にテレビ放映された「灰羽連盟」という映像作品における最終話での
主役二人の会話です。この会話だけを読むと、なんて暗い話なんだと驚かれるかもしれませんが、
全編美しい神秘的な映像と癒しに満ちた物語で構成されており、
あなたもご覧になったならば、きっと心を洗われることでしょう。
灰羽連盟は魂の救いの物語です。決して暗いだけの物語ではありません。
救いのなかった自殺してしまった人の絶望的な生に(死に)、救いを与えようとした、祈りのような物語です。
途方もなく美しい映像で語られる、悲しくて優しい癒しの物語です。
以下を読むと物語の結末がわかってしまいますので、見るご予定のある方は読まないで下さい。
このページは著作権法に違反していますが、多くの人に灰羽連盟を知ってほしいという思いからの振る舞い、
通報はご容赦ください( ^ ^ ;
灰羽連盟最終話 「レキの世界 祈り」 から
過ぎ越しの祝いの晩、魂の救いを得て無事に巣立ちの時を迎えることができるか、
或いは救いを得られず消えることになるか、何れにせよ別れの時が迫っていることを知った灰羽たちが、
ひとり部屋に残るレキのために花火を上げる。

祭りが終わり、眠っているラッカたちにそっとレキが別れを告げる。
気配に気付いたラッカが後を追い、レキの部屋に入ってみると、
そこには天上にも、床にも、壁にも、ぞっとするような死の荒野の絵が描かれていた。

石ころだらけの荒野に血のように赤い月が灯り、死の装具が描かれている。
レキ 「これが私の繭の夢。私はこの道を歩いていた。
風が冷たくて涙で濡れた頬がチクチク痛んだのを覚えている。
遠くで何か音がする。でも疲れてなにも考えられない。
私は石ころになりたかった。痛みも悲しみも感じないただの石ころ。」
ラッカ 「灰羽連盟から預かってきたの。レキの本当の名前。」
レキ 「いらない。きっとその中にはなんの救いもない。」

ラッカ 「レキ、だとしてもレキはもうこの悪い夢を終わらせないとダメなの。」
レキは灰羽連盟の話師から与えられた、本当の名前の記された札と手紙の入っている箱を開ける。
その箱の中に入っていた札には、石ころの「礫」ではなく、轢死の「轢」と記されていた。
息を飲む二人。添えられている手紙を読むレキの声が連盟の話師の声に変容する。
話師の声 「レキという名の少女の物語を語ろう。
その者は悲運に見舞われ、哀しみを分け合うはずの相手すらをも失った。
己の価値を見失い、自らを小石にたとえてレキ(礫)と呼んだ。
だがその名は、引き裂かれたる者の意を現してレキ(轢)という。」
遠く電車の音が聞こえる。放心するレキ。

レキの蒼白な顔が絶望に歪む。
レキ 「そうだ、引き裂かれたる者。そうだ轢かれたんだ。
何かを運ぶ鉄の轍。私はここで自分を捨てたんだ。」
レキ 「私はね、
良い灰羽であればいつかきっとこの罪悪感から逃れられると思っていた。
お笑いだな。私にとってこの街は牢獄だったんだ。
壁の意味するものは死だ。ここは死によって隔てられているんだ。
そしてこの部屋は、この部屋は繭だ。
この暗い夢から私はとうとう抜け出すことができなかった。
ありもしない救いを求めて7年間ずっと。」
「誰かを信じるたびに必ず裏切られ、だからいつか信じるのをやめた。
傷つかないで済むように私はただの石ころになった。
皮肉なものだね。心を閉ざして親切に振舞えば、みんな私を良い灰羽だとい
う。
私の心の中はこんなに暗く汚れているのに。」
ラッカ 「嘘だよ、レキはいつだって優しかった。私信じている。」
レキ 「ラッカ、ラッカは気付かなかったんだ。私がどんなにラッカを妬んでいたか。
同じ罪付なのにラッカだけが許された。みんな私を置いていってしまう。
クウが巣立った時だって心のどこかでクウを妬んだ。
そんな私を私は心底軽蔑していた。」
ラッカ 「嘘だ、レキは井戸に落ちた私を探しにきてくれた。ずっと看病して薬を取って
きてくれた。
レキは苦しい時いつだって側にいてくれた。」
レキ 「そうだよ。どうしてだと思う?私は救いが欲しかったんだ。
誰かの役に立っている時だけ私は自分の罪を忘れることができた。
いつか神様がきて許しを与えてくれるんじゃないかってそればかり考えてい
た。
ラッカ、あたしにとってラッカはラッカじゃなくても良かったんだ。
ラッカの繭を見つけたとき私は賭けをしたんだ。
この灰羽が私を信じてくれたら私は許されるって自分に言い聞かせた。
だから私は優しく振舞った。繭から生まれたのが誰かなんて関係なく。
全部嘘だったんだ。ラッカが私を信じたのが間違いだったんだ。
わかったら出て行って。
出て行け!」
ラッカを追い出して荒涼とした部屋に一人だけになったレキ。
レキ 「はじめから、許されるわけなかった。」
迫る電車の音。
レキ 「あの音がここまできたら私は消えるんだね。」
電車に身を投げて自殺した少女の姿のレキが現れる。以下「少女」と記す。
少女 「ラッカは助けにきたんだよ。」
レキ 「私には救われる資格なんてない。」
少女 「私は助けてって言うこともできないの?」

少女の胸に血が滲み、やがて全身が血に染まる。少女の体の崩壊が始まる。
少女の身体ははばらばらに裂けて消えようとしていた。
レキ 「裏切られるのがもう嫌なんだ。どれだけ願っても一度も救いはこなかったじゃ
ないか。
少女 「だってレキは一度も助けてって言わなかった。待ってただけ。」

レキ 「怖かったんだ。もし心から助けを求めて誰も返事してくれなかったら。
一人ぼっちだとしたら。」
消えていく少女の残骸を抱きしめるレキ。少女はレキの腕の中で消える(ρ_;)。

汽笛。迫る電車の音。壁の絵の中から電車の幻影が形をなして現れようとしている。
慄くレキ。轢死が再現されようとしていた。
場面転換。荒廃したアトリエを出たラッカは居間でレキの日記を見つける。

繭の中にいたころのラッカの記憶が甦る。まだ灰羽の世界に生まれ出る前、
胎児のように繭の中に浮かんでいるラッカに、繭ごしにレキが語りかける。

レキ 「聞こえますか?私の名前はレキ。灰羽は名前や過去を忘れてしまうから、
最初は淋しかったり不安になると思うけれど、私がいつも一緒にいるから、
あなたを守るから、だから私の最後の希望をあなたに託すことを許して。」
ラッカ 「私は最初からレキに守られていたんだ。レキ、私はレキを救う鳥になるんだ!」
意を決し、再びレキの部屋に入るラッカ。
部屋はレキが轢死した石ころだらけの荒野に変わっている。
鉄路が一本のびており、風が吹き荒ぶ。暗澹と暗く歪んだ空に血のように赤い月がある。
レキの名を呼ぶラッカ。迫る汽笛の音。
線路に横たわるレキを見つけたラッカが駆け寄ろうとすると、
前世で自殺した少女レキの幻影が再び現われラッカの腕を掴んで引き止める。

ラッカ 「放して!」
少女 「レキには何も聞こえない。」
ラッカ 「レキ!レキ!」
少女 「レキはここで消えることを選んだの。」
ラッカ 「違う!レキは私に救いを求めていた!
レキ!レキ!私を呼んで!
私が必要だって言って!」
迫りくる電車。立ち上がり、電車を見つめるレキの口が開く。

レキ 「助けて・・」
ラッカを引き止めていた少女の身体が粉々になって金色の光の中に消える。


壁の絵から電車の幻影が実在の形を持って飛び出してくる。
今にもその異形の幻影に飲み込まれ、再び轢死しようとするレキ。
寸前でラッカが立ちすくむレキを線路の外に押し倒し、
倒れた二人の横を電車が猛烈な勢いで通り過ぎていく。
幻影が去り、元の状態に戻った部屋に座り込み、抱き合う二人。

ラッカ 「レキ、良かった。」
レキ 「ラッカ、ありがとう。」
レキ 「私は許されたんだろうか。」
ラッカが握っていたレキの名を記した札が、「轢」から「礫」に変わっていた。

話師の声 「もしも鳥がおまえに救いをもたらしたら、
轢という名は消え、石くれの礫が真の名となるだろう。
そうなることを信じ、予め礫という名の新たな物語をここに記す。
「その者は険しき道を選び、弱者をいたわることで呪いをすすいだ。
その心性は救いを得んが為のかりそめのものであったが、
今やその者の本質となった。
灰羽が巣立つ時、踏み石となる古い階段がある。
礫とはその踏み石であり、弱者の導きとなるものである。」
魂の救いを得たレキは、雪の道を踏みしめてひとり西の森へ去っていく。
時が満ちて、無事に巣立ちの時を迎えることができた灰羽は、西の森の奥、
死によって世界を隔てる巨大な壁の脇にある古代遺跡の石舞台から壁を越えて去っていくのだ。


遠くでラッカたちが見守る中、西の森には荘厳な光の柱が天に向かって昇り立ち、
祝福されたレキは何処かへ巣立っていった。

作画 安倍吉俊さん(灰羽連盟の作者)
灰羽連盟放送局のホームページ
灰羽連盟製作者安倍吉俊さんのホームページ
ファンサイト「灰羽連盟徹底考察」
ファンサイト「罪付の巣」
特別リンク、天才的大詩人(^^;ダーザインのサイト「えいえんなんてなかった」