炎 97年11月号より 情けない神の国の片隅で  第14回 あと39年 2037年までのあと39年間! これが、石油採掘が可能な年数! SFにも、現実が影響するから、 エネルギーを大量消費するガンダム・ワールドなどはありえない話になる。 9月10日に、石油鉱業連盟の資源評価報告書で発表された数字で、 くどいようだが、SFではない。 資源枯渇がいよいよ現実味をおびた、というキャプションをつけながら、 大新聞での記事も小さい。 人民女王ダイアナの事故死のあとのニュースのほうが気になってしまう 我々大衆が相手なら、報道だってそうなろう。 エリザベス女王が「彼女は、王室と関係がない」といっているほうが正しいのだが、 そういう話がとおらない世の中なのだから、 石油枯渇の話などは、当面は先送りになるのは、当然である。 生活に不安を感じても、2、3年後の不安を具体的に想像し、 それを対処することを考えて暮らしている人は、吝嗇家か計算高い人と誤解される。 それでも、石油の残り39年です、とおっしゃる方がいるように、 想像力を発揮できる人たちが、別の場所にもいらっしゃった! 日本機械学会というアカデミックなグループの100周年記念イベントの一環で、 『ロボットと未来社会』をテーマにしたパネル・ディスカッションでのこと。 そこで、未来社会のアルビン・トフラー氏の基調講演からはじまって、 ロボットの問題が検討され、機械のプロがつきあたった問題があった。 「ロボットはヤバイ道具のようだ。開発していいのだろうか?」 その会場には、 ホンダが完成させた自律型2足歩行のロボットP2が置いてあったのだから、 それをコピーし、さらに高度な自律型ロボットをつくることはできるだろう という意見の一致があったのは必然の結果である。 そんな場所で、ボクは、我々には悪しきロボットをつくる奴を阻止できるわけがない、 といってしまった。 そうしたら、そーいうものを開発してメシを食っている技術者たちは、 仕事はやめることができないから、討論は雪隠詰めになる。 で、総合司会の立花隆氏が、トフラーの論調をうけた上で、 「主権は人間にありということで、 監視していくガイドラインはつくらないといけません」ということで、 核心についての対策などはとりようがない、と終わった。 ロボットを語りながら、すでにSFではない現実的な問題に直面している という想像力をもった人たちの雪隠詰めになった討論は、スリリングだった。 くりかえすが、これも現実的の話で、SFではない。 ロボットを開発しようとしている科学者、技術者は、 悪用などは一切考えていないのだが、社会に投下した技術が、 別の人間によってまったく違う方向につかわれてしまう歴史については、 よく知っているのから、対策はもちえないとわかっているのだ。 その打ち上げ会場で、 人工知能の開発をしているロドニー・ブルックス氏から示唆にとんだ一言をいただいた。   「インターネットをやってわかったことは、羊が100万回タイプをうてば、 シェークスピアが書けるという諺が、ウソだということが証明されたということだ」 このエピソードは、目指す高さをしめす理念と、 技術を日常に還元する道程には、とんでもない乖離がありながらも、 何ごともやらなければわからない、ということである。 それでも、どの瞬間にあっても、想像力は必要で、 それがガイドになって、対策が生まれるのだから、 39年先の石油危機を回避する技術を手にいれる仕事は急務である、 という想像ぐらいはしなければならない。 しかし、9月11日に発表された第2次橋本内閣の組閣の顔ぶれを知ったときに、 日本は大丈夫かなー、と不安になるのは、ボクだけではあるまい。 今日しか見えない愚昧な人がつくる組織に埋没しないで、 技術開発をしなければならないというのは、過酷である。 フツーの人も、この過酷さを排除する想像力は身につけないといけない。 が、パネル・ディスカッションで、ある日本人技術者が 「携帯電話だって、人はこうも悪用するんだから、人間なんか信用できるか!」 といった現実問題の指摘は、痛烈だと思う。                                      (了)