小黒 庵野さんの以前の作品から『エヴァ』の至る時に、 一番飛躍したのがセリフだと思うんです。 セリフのキレの良さというか。 庵野 はあはあ。 小黒 それまでがダサかったって事はないんですが、 異様 に練り込むようになりましたよね。 庵野 いや、セリフだけで済むんなら、 それがベストなわけですよ。 小黒 え? そうなんですか(笑)。 庵野 何て言うんかなぁ……情報伝達の手段として、 一番確実なのが言葉なわけじゃないですか。 小黒 はいはい。 庵野 感情とか雰囲気っていうのは言葉以外でも伝わるけど、 自分の意志とか意図みたいなものは、言葉を伝うのがベストなわけですよ。 誤解される可能性が低い。例えば、怒ってるっていうのは言葉にしないと、 なかなか分かんないじゃないですか。 「怒ってる」っていう記号までは分かるんだけどね。 それを、効率よく伝えるのはセリフだと思うんですよ。 で、言わないで隠すっていう事も可能なわけなんですよね。 ま、セリフによる情報のコントロール。 あとはそれで伝わるかどうかについての確実性。 その辺を考えてやってたからじゃないかなぁ。あの頃から。 小黒 なるほど。 庵野 それに関しては、反面教師としての富野(由悠季)さん。 小黒 反面教師なんですか? 庵野 反面教師なんです。 富野さんは、画を全く信用しないで、セリフに頼ってますよ。 全てをセリフにしてしまう。 宮(崎駿)さんも、あれだけの画力を持ちながら、 最終的にはセリフには頼ってますよ。 小黒 ドラマのおいしいところとかで? 庵野 『ナウシカ』のモノローグとかを聞いてみれば分かるんですけど。 「なんてキレイな王蟲」とかですね。 小黒 ああ、なるほど。 庵野 画を観ただけで「ああ、スゴイ」と思うんだけど、 それをさらに強調するために「なんてキレイな王蟲」とセリフで言って、 お客を説得しようとするんですよ。 そう思わせるために、詰めの一言として、 それを言ってるわけじゃないですか。 「画だけじゃそれが伝わらないかもしれな い」と思ってるわけですよ。 画に自信があれば、そこまでセリフで言う必要は無いんです。 富野さんも「それぐらいは言わなくても……」と思うような事まで 全部セリフで言っちゃうじゃないですか。  僕の意見としてじゃなくてですね、一般論的に 「アニメはセリフが多すぎる」 「全てセリフで説明するから、 ラジオドラマに画がついてる感じにしかならない」 と言われてる。 でも、テレビアニメのクオリティで考えるとですね、 それをせざるを得ないと思うんですよ。 基本的には画がついているラジオドラマにしておかないと、 マズイと思うんです。たとえ、使われてる画がどんなにひどくても、 伝わるようにしておかなくちゃいけないっていうのがあるんですよ。 小黒 庵野さん、『Vガンダム』の時に、先週までのあらすじと 来週の予告のナレーションをすごく気にしていたじゃないですか。 あれは、何が気になってたんですか? 庵野 言い回しじゃないですか? あの文語体の感じ。 そういうところじゃないですかね。俺、富野さんの仕事で、 やっぱり好きなのはファースト『ガンダム』の予告なんですよ。 あのカッコ良さね。だから反面教師であり……。 小黒 惹かれる部分もあるわけですね。 庵野 そうそう。そういう良さを教えてくれた部分もあるわけですよ。 やっぱ、5話の予告とかスゲェ好きだったですね。 小黒 『ガンダム』の5話ですか。 庵野 「重力に任せて落ちれば、燃え尽きてしまう大気圏突入。 その瞬間にシャアはホワイトベースに奇襲をかけた。 我も危険なら彼も危険」。 カッコイイじゃないですか。 小黒 なるほど。 庵野 「共に大地を見る事ができるのか」。カッコイイ。 あれを当時観れなかった大阪の人は、ホントに残念だと思いますけど。 小黒 あの『Vガンダム』の予告や先週までのあらすじって、 視聴者に説明するよりも、観て内容を理解してるつもりの人を 攪乱するような内容を言ったりしていたじゃないですか。 庵野 うん。あれは意図的なモノだと思うんだけどね。 ナレーションが、なんか本質の部分を言っている感じが良かったですね。 でも、やっぱり、影響を受けてるとしたら、ファースト『ガンダム』ぐらいだと思うよ 小黒 そうですか。 庵野 やっぱり、富野さん、カッコイイと思ってたからねぇ。 セリフとかね。ファースト『ガンダム』でいいのは、 アイキャッチの入るタイミングとかですね。 小黒 ああ、なるほど。 庵野 あの辺はかなり影響受けたんじゃないですかね。 9話で「僕がそんなに安っぽい人間ですか」と、 アムロがセリフ言ったところでアイキャッチとかですね。 「カ、カッコイイ……」と思うんですよ。 小黒 なるほど。          〜'00 ア○メス●イル第1号より〜