フラストレーション・ユーモア [原作・監督]富野喜幸  一体なにが残るんだろうって時々思うんだよね。そして、いつも フラストレーションだったんだよね、で終るのがダイターン。  そりゃ、波嵐万丈って名前を思いついた時は、こりゃ全面的に行 けるって自信つけちゃって周囲の人にいいふらしたものさ。  けど、ラッシュ(音声の入っていない画だけのフイルム)がつな ぎ上がってきて見るたびに、自己嫌悪に陥ち入るのよね。ドーッと さ。  ぼくの立場は、若い連中に向かって”お前等のセンス悪いのよね” って喚いてりゃ済みますよ。でもサ、そんなことやっててごらん。 いつの間にか、若いスタッフが力をつけてさ、こっちが落ちこぼれ 組になるなんての真底いやだから、自分でもいろいろ実験してみる わけ。  で、自分をくだしたものが”うわ! これ違うのよね!!”となる と、モロ悲惨! 何しろ、なんで違うのか判らなくなるのですよ。 一応、一所懸命やってるわけで、フイルムになって手応えっていう のが、創ろうとしているものと違うっていうの、これ、死んじゃう 気分なのよね。  秘やかな演出家の狙い目としては、ダイターンの制作基本テーマっ ていうのはユーモアの創造!(赤面!!)なのです。  で、第1話のビューティーとデューセンバーグのからみと、「この 日輪の輝きを……」っていう科白を思いついた時、万丈は元気に活 躍させられますよって、うぬぼれたのよね。シたらサ、デッド・エンド。  1話ごとのシチュエーション・アイデアなんて文芸担当の鶴見君 がいなければ、絶対的アウトだったのよねェ。でも、それを思いつ いたからって、画は創れないの。  で、次にギャグでないユーモアの会話っていうのを必死で探した わけ。このアルバムに収録されているコロス対万丈の科白廻しだっ てシリアス発想じゃないのよね。ユーモアとして捉えて、かつドマ ジメっていうの考えたあげくの展開なのよね。ぼくとしては……。  そのぼくなりの結論が、実を言うと後半になって書いた予告コメ ントなんだけど、気がついてくれたかしら?  一見、ギャグとかパロディっていうのは、他人はよくやっている と思うけど、ダイターンの言葉いじりっていうのは違うよねって思っ てんだ。独断と偏見だけど、ユーモアの発生っていうのが目標だっ たわけ。  だけど、三条レイカなんかは、モロ失敗なの。大体、インテリだっ たはずなのが、インテリゲンチュア・ユーモアって方にいかなくっ て、ギャグっぽい方へののめりこむか、シリアスっぽく迫ってくれ ちゃったでしょ? 参るんだよね。あの女(こ)、嫌いよ。  ビューティーってのは白痴美人のマジメさってのに迫っていけば 良かったんだけど、そうはいかなかったのね。これも甘かったんだ よね。変なところにインテリっぽいって匂いが顔を出すのよね。こ れ、ぼくが元々真面目でしょ? だから、いけないの。  それよりもなによりも、ぼくは湖川君(ジャーン! あの敵方の キャラクター・マンは実は湖川友謙君)が描くところのコロスにゾッ コンって具合になっちゃってさ、信沢さんの声ともピッタシでしょ?  もうメロメロ。今でも。コロスを最後までにもち上げれて終れば いいのよなンて、演出家にあるまじき私情がモロ入ったの。ンだも んで、最終回、ああなのよね。コロス、可哀想。ビューティーやレ イカはいいのよ。トッポもね。  それで、つきる処、ダイターンの話っていうのはギャリソン時田 に集約されるっていう結果論を、万やむを得ず認めざるを得ないっ てのが口惜しいのよね。全くさ。  じゃあ、メガノイドの話とか、万丈の父親話って一体なんなのさっ ていう人いるでしょ。あれはね、シリーズを飾る小道具なのね。  嘘だァーっていう人もいるでしょ? だけどさ、考えてもごらん よ。人ってワン・パターンじゃないでしょ? 裏の人生を隠してい るからこそフザケルってのあるじゃない? そういうの恰好いいの よね。生きざま(この4文字傍点にて強調付)として。  ぼくなんて、全部ドロドロ吐き出してさ(吐き出すものなくって 吐き出そうとするから、ドロドロっていうのね)みっともないった らありゃしないけど、これ、小さい人のやることね。真似すると本 当に吐き気してくるからやめなさい。  だから「ぼくは……厭だ」て科白、よく聞かれたけど、あれ万丈 の本音なのよね。多分。で、過去話やなにかにもってかなかった最 大の理由っていうのが、メガノイド・シリアス版なンて過去にもあっ たような話じゃないのかなって思ったから、やらなかったわけ。  鈴置君はカタルシスになるからいいって言ってたし、奴だけなの よね。いい思いをしたっての。この辺が残念なことで、井上さんに も水野さんにも白石さん、北村さんにも、もっとパアーッとさ、し てもらいたかったンよ。でないと、フイルム全体もパアーッてなら んのね。その辺ね。ダイターンって。つまりさ、ぼくは総集編だーっ て戦斗シーンは使い廻しで作ったフイルムで、みんながダイターン を操縦してうまくいかないって話があるんだけど、あれ好きなのよね。  最後には、皆さまおそろいで「サン・アターック」っていうのね。 ストーリーの構造がパアーッとしているわけ。で、キャラクター達 もまあまあで、ね。最終話は、ちょっと考えすぎでさ。やっ、アハ ハッて思っちゃうけど、あの昔のフランス映画っぽいのいいのよ。 パロディじゃない処がまた、いいンよ。  で、さ、ダイターンっていうより、波嵐万丈で、もっとこうつっ こんでね、パアーッてわけにはいかないのかね、って真剣に悩んで みるわけ。  あのとんがり緑色の髪ってシャープ・ペンシル的でサ、こう、い いのだわさ。  しかし、なんだね。これにアニメーションの流麗佳麗さと、豪華 なイラストッっつーのが加わってさ、バン!! なってね。ハハハ!  真面目なんだよ。だからさ、あれはフラストレーション・ユーモア。 ユーモアにかすめていない口惜しさって、本当に、口惜しいのよね。  10年たってもやってみたいのよね。10時間35分って奴で……。 ア!! ちょっと蛇足。 無敵鋼人ダイダーン3 オリジナルサントラ SKD(H)2016(1980年発売)