「バンダイ完全必勝ブック機動戦士Zガンダムホットスクランブル」より 富野由悠季vs遠藤雅伸 Zガンダムを作って本当によかった 橋本名人:ぼくとガンダムのつきあいは、わりと長いん ですよ。出会いは昭和54年4月、機動戦士ガンダムの第1 話「ガンダム大地に立つ」を見た時なんです。だからも う7年になるんです。 富野由悠季:アニメ専門誌の編集記者をやってらっしゃ いましたよねえ。 橋本名人:ええ。その頃は、ガンダムを取材する側だっ たわけですね。 遠藤雅伸:それが今では、取材される側になった(笑)。 橋本名人:ええ(笑)、バンダイに入社して最初はパソ コンゲームの開発。そして今回、遠藤さんと組んで、Z ガンダムを手がけました。なんだか自分の話が長くなっ てしまいましたが、今回はZガンダムのオリジナルスト ーリーの生みの親である富野由悠季さん、そしてファミ コンソフトとしてのZガンダムの生みの親である遠藤雅 伸さん。つまり2人の生みの親に集まっていただいたの で、わが子であるZガンダムについて大いに親バカ自慢 をしていただこうと思うんです(笑)。  まず最初は、プレイヤーが一番気になるところ、つま りこのゲームの出来ばえから、どうでしょうか? 遠藤雅伸:親バカ自慢なんてすると照れちゃうけど、自 慢とかそんな意味じゃなくて、かなりハイレベルなゲー ムになっていると思いますよ。なんて言うかなぁ・・・。 ちょっと抽象的な言い方になっちゃうけれど、ガンダム やZZガンダムじゃなくて、やはりZガンダムを作って よかった・・・。 簡単でいて奥の深いゲームですよね 富野由悠季:そうですね。出来上がったゲームを見て、 私もそう思いました。遠藤さんがおっしゃったように、 ゲームのプログラムとしては、かなり内容が濃いですよ ねえ。それでいて、実際にプレイしてみると、わりとス ンナリとゲームに入っていけますよね。 橋本名人:つまり、それほどゲームなれしていない人で も、すぐ楽しめるみたいなところですね。 富野由悠季:もちろんそうです。それでいて、ゲームな れしたプレイヤーも手こずらせるような奥の深さも兼ね 備えていますね。このまったく反対の2つのテーマを両 方クリアしなければ、本当に“遊び”の要素を満たすフ ァミコンソフトにはならないと思います。スーパーマリ オなんかは、その条件をクリアしたいい例ですが、Zガ ンダムも、そのレベルにいってるのではないでしょうか。 橋本名人:富野さんにそんなにおほめいただくと、かえ って恐縮しちゃいますよ。でも、それだけのソフトを開 発された遠藤さんのご苦労は、並み大ていじゃなかった と思いますが。 遠藤雅伸:やはり、制作する過程で、敵の処理のしかた に苦労しましたね。それと、Zガンダム自身を画面に出 さなければならないということに。 富野由悠季:自分が何に乗って戦っているのかという不 安は、プレイする人には必ずある。それがないとゲーム には集中できない。そのあたりの心理は、アニメの主人 公に対する感情移入と同じでしょうね。 ほとんどファミコンの限界作品です 遠藤雅伸:まったく同感ですね。特にZガンダムのファ ンは、本当にマニアックにZガンダムを愛している人ば かりですから、その方々の熱い思い入れに応えなくちゃ ならない。アニメだと、わりと簡単に表現できちゃうこ とでも、ファミコンにプログラムしようとすると、かな り困難なものもあるんです。 橋本名人:ほう、たとえばどんなことですか。 遠藤雅伸:そうですねえ・・・、例えばビームの表現の しかたなどがそうですね。アニメで見ると、ビームの先 端が丸くなってるんだけどこれの表現が、どうにもでき なかった。 富野由悠季:このゲームは、3Dスタイルをとっているし、 動きもかなりスピーディですから、細部の表現というの は、本当に大変だったでしょうね。 遠藤雅伸:作っている時のコンピュータは高画質のもの ですが、実際に家庭のファミコンでプレイした時に、作 った時と同じように見えなければならないわけですよね。 すごく簡単そうなことなんですが、実はそのギャップを どううめるかということが、大問題なんですよ。 橋本名人:ほとんどファミコンソフトの限界近くまでい ったみたいですね。 遠藤雅伸:データ量としていえば、スーパーマリオの4 倍ありますからね。特にがんばったのがアトラクト・モ ードとキュベレイのグラフィック。キュベレイは昔から 一番好きなキャラクターだったもんですから(笑)。 これからは世界に通用するソフトを 橋本名人:ファミコンブームの中で、それだけハイレベ ルなゲームが完成したとなると、なんだか自社製品のP Rみたいで恐縮ですけど(笑)・・・・・・。 遠藤雅伸:こういう機会ですから、もっとPRしちゃい ましょう(笑)。 橋本名人:ええ、じゃあ、そういうソフトが登場したと いうことで増々ファミコンに感心が集まると思うんです。 そこで、これからのゲームはどうあるべきかということ について、ちょっとお話いただければと思うのですが。 なにか大きなテーマになってしまいますけど、プレイヤ ーの方々も、きっと興味のある問題だと思うんです。 富野由悠季:そうですねえ、ゲームソフトにしても、映 画や音楽のように、日本だけでなく海外をターゲットと して、長い目で見た作品作りが必要だと思いますね。生 活習慣の違う国にいっても喜ばれるゲームなんか出来た らいいですね。 遠藤雅伸:最初に話したゲームソフトに簡単に入りこめ て、それでいて奥の深い物を、というテーマを追求して いけば、やはりそんな世界中で喜ばれるソフトの開発に つながるかもしれませんね。 橋本名人:そうですね。世界中で何億人って人が同じソ フトをプレイしてるとなると、新しい裏ワザなんかを発 見したときの喜びももっと大きい。世界中の子供たちが、 ファミコンを通してコミュニケーションを持てるかもし れませんね。 富野由悠季:そうです。ですから遠藤氏みたいな若い人 に、これからもっといいゲームを作ってもらいたいと期待します。 橋本名人:ファミコンの明るい未来が見えたところで、 そろそろ終わりにしたいと思います。お2人とも、今回 はありがとうございました。('86年9月18日/富野氏仕事場にて)