Long Interview 3 富野由悠季監督に聞く! Q:これから新たにやってみたいことはありますか。 富野監督(以下富野と略す):前にも言ったように、最近 企画がゲーム発なのか、アニメ発なのか、その境界線がな くなってきているように思います。今までメディア・ミッ クスと言ってはいるけど、本当にメディア・ミックスを 上手な形で始めから発進していた作品は、実はとても少な いと思う。だからゲームと出版、それに映像を三位一体に するというフィールドを作ってもいいのではないでしょう か。その場合は相互でのチェック機能は完全に活性化させ る必要があります。そんな企画があってもいいんじゃない かと思うね。あと僕の場合にはまだアニメの世界を引きず っている人間だから、もしこの業界のリフォームができる ならば、リフォームしたい。作業をしていく中でそれがで きれば、何とか新しい方向が見つかるんじゃないかと思い ます。 Q:新しく試みてみたい手法はありますか。 富野:いや、特にはありません。むしろ、今うかつに個人 の変な趣味を出す方が危険だと思います。一番求められて いるものがあれば、それを受け入れてやっていく、という ことです。例えばバイストン・ウェルをやる場合、「バイ ストン・ウェルの世界はこうなんだ」ということは言いた くない。参加するスタッフが違えば、同じバイストン・ウ ェルものでも違うルックスになっていくのではないか、と いうこと。そういう所にこちらの描きたいことがあるんで すよ。 Q:次はゲームのことについてお聞きしたいのですが、セ ガバンダイの件を何かご存知ですか。 富野:全然知りません。危機感も含めてそういう話をサン ライズ(サンライズはバンダイグループの系列会社)から は一切聞かされてないんです。つまりどうなるか分からな いんでしょうね。合併話を聞いた時のサンライズのリアク ションを見た時、サンライズに組織体としてのダイナミズ ムが働いていないと感じはしましたけど、その中にいる自 分も、やはり動けないでいるんですから、世の中の全体像 なんて見えませんよ。ここのところが僕が元気になろうと して、去年(96年)の初め頃から、自分一人でも外に出て みようと決心した。その端緒になったのが、『ガーゼィの 翼』のノベルとOVAの仕事なんだけれど、それだけでは 駄目だと感じて、『王の心』(角川ノベルス)の仕事もさ せてもらいました。  『王の心』は、とても気に入ったノベルスなんだけれど 、ヒットしなかった。読んでもらえないというのはとても 辛い。印税も入らないし、これは地獄です。  それでも、そういう経験を通して、自分から出ていくこ とは必要だと痛感した。『ガーゼィの翼』をやりながら幾 つか企画書を書いて持ち歩いてみたら、ようやくサンライ ズが『ブレンパワード』を気に入ってくれた。本当はサン ライズと僕の関係って、企画やマネージメントを助けてく れるはずなんだけど、まるで僕は外注さん。それでもいい んです。そうしないとフリーのスタッフなんて、黙って口 を開けて仕事が来るのを待つだけだから。それを僕は十年 やってきてしまって、「駄目だよなー」と感じたんですよ ね。  それで働きだしたら、『ブレンパワード』は、うまくい けばこの秋、悪くても来春にはオンエアできるかもしれな い機会を手に入れられそうになってきた。  正式発表はまだなんだけど、サンライズ発で、僕の希望 としてはゲームメーカーのセガバンダイにも参加していた だきたいと思っています。できれば、先に述べた三位一体 の作品にしたいんです。出版と映像のゲームの企画を進め ていくには、利権の済み分けとか色々な問題はあるんだけ ど、僕はとにかく作品が作れればそれでいいんです。タイ トルの登録商標も申請しました。メカデザイナーは永野護。 キャラクターデザイナーは、いのまたむつみになるという のは面白いでしょ。  結局、会社レベルの問題に頭を悩ますよりは、実直に仕 事を積み重ねていくというのが、スタッフワークというも のなんですよ。 Q:現在のゲーム業界にに関してどう思われますか。 富野:今一番気になっているのは、これだけゲームが出て いるけれども、同じ様なことしかやってないのではないか、 ということです。結局RPGとかアドベンチャーというジャ ンルも、昔からのスタイルを踏襲しているだけでよしとし ていると感じます。特にRPGでは容量の問題もあるのだろ うが、正解のワン・ストーリーに関してはキチッと作られ ているのに、その枝分かれの部分が見え透いてしまうよう ですね。このあたりの全体のバランスがよくないのは、ハ ードの問題かもしれないけれど・・・・・・。操作性など のシステムを主体として、ストーリーやキャラクターを等 分したプランニングをしている作品は強い実感はあります。 プランナーが自分のやりたいことだけをやっているとか、 好きなキャラクターを動かしたいという感じは、アニメと 同じ問題だと感じますね。ゲームにはプレイヤーがいて、 プレイヤーには色々な人がいるんでしょ。売れているメジ ャーな作品というのは、全方位的な目配りが利いているん ですよね。そういう目配りの利いてるゲームを作るために は、まずゲームオタクだけと、物語オタクだけではダメな んです。でも実際はそんな人たちが決定権を持っているか ら幅の狭い物しかできない。例えばリアルガンダムのゲー ムにしても、何でここまで映像に手間と容量をかけて、ゲ ームをつまらなくしているのかな、と感じました。要する にあれは映像オタクが作ったからです。ガンダムを作って いるメンバーというのは映像指向が強い。それがゲームを つまらなくしているんです。その辺りをもっと分かって欲 しいですね。ゲーム機の前に座っているプレイヤーが一体 何を望んでいるのか、キチッと想像できてないですよね。 もしくは決定権を持っている人がそういう人たちで、プラ ンナーも意見も黙って取り入れざるを得ないということも あるかもしれない。けれど根本的な原因は、スタッフ教育 ができていないところにあるんでしょうね。セガバンダイ の合併話についても、そういった所が象徴的に現れた結果 だと僕は思っています。どちらの会社も、本当の意味で全 方位的にソフトを供給できる会社ではなかったのではない でしょうか。プロデューサーやディレクターの下に才能が 集まらなかった何かがあると感じています。そのことは末 端の技術者までが承知していなければならないと思います。 今一番重要なのは、色々なことを総合的に見ていって、ど ういう作品を作るか、どうすればプレイする人たちを元気 にしてあげられるかを考えることではないだろうかと思っ ています。 Q:最近、特に気になる社会現象などはありますか。芸能 界とか。 富野:最近のことはよく分からないんです。好きなタレン トでもいればいいんだけど、いませんし、いいと思う子は、 名前を覚えられなくてね。突出したキャラクターがいない 時代なんですね。これには原因があって、システムがいけ ないというのは前から言っていたけど、実は人間がシステ ムになり始めているのが最大の問題でしょうね。いまだに マリリン・モンローの人気が根強いのは、このようなキャ ラクターというのを、我々が失っているということなんで しょう? 例えばイヤな事というのに、在京テレビが発信 しているバラエティー番組のメンバーが、同じような人ば かり出ているというのがありますね。そしてその中に入っ ている顕著な新人が見当たらない。これはつまり、今の時 代に生かされている人に、そういう力がないんだろうとい うことです。テレビに出ている、いないに関係なく、昔と スターの現われ方が違う。安室なんかもスターなんだろう けど、スターって感じがしないよね。人間は本能的にカリ スマ性を持った人を欲しがっていると思うんです。それが 出てこないというか生み出していけない時代というのは、 かなり鬱屈としているという気がします。本当の意味での、 人としてのパワーでやっているというのがないんですね。  小室にしてもユーミンにしても、ミリオンを売るCDがあ っても、それが時代の象徴にならないというメカニズムが 働いている現代というのは、異常だと感じます。なんでこ うまで鬱屈して閉塞感があるのに、儲ける奴は儲けている のか、という時代の構造は、一番イヤなことですね。  かつて美空ひばりの最後の公演に、本当に偶然なんだけ どカンが働いて、「これが最後かもしれない」と思って見 に行ったんです。美空ひばりはこんな小さくしか見えなか ったのに、好き嫌い抜きでスゴいと思った。こういうのが オーラなんでしょうね。田中角栄もそういう人物の一人だ った。あるパーティーで見たことがあるんだけど、見てい るだけでスゴいと感じたからね。捕まった時は、本当に残 念でしたね。  最近話題になることは、大体悪い事ばかり。これは社会 全体が疲れているからだと思う。笑っちゃうようなことが ニュースにならないのは、社会全体がヴィヴィットじゃな いからでしょう。それを何とかするためには、とにかくイ ケイケという感じで何かを始めてみるようなことが必要な んじゃないでしょうか。 お忙しい中、ご協力ありがとうございました。