ロマンアルバム GaZOスペシャル ガンダムミレニアムより 富野監督、ゲームを斬る! 現在、各ゲームメーカーの発売ラインナップに「∀」の文 字はない。富野監督に聞く、「∀」はゲームになるのか、 ならないのか!? コンピュータゲームの限界は そんなものなのか! 富野 簡単に言うと、今、存在しているゲームのことしか 考えなかったら「∀」のゲーム化は無理です。ゲーム製作 者が考えているゲーム論というのは幅が狭いからです。こ れだけ数が多いということは、名前を変えるだけで別のゲ ームとして発売しているようなものも多いわけですから、 そういう範疇で考えると、「∀」でゲームを作るのは難し いと言えます。だけど、コンピュータゲームは今出ている ものが限界なのか? これは3年くらい前から、僕の課題 なんです。他に違うものが出来る可能性があるんじゃない か。ゲームはそんな程度じゃないぞ、と言いたいんです。 また現在、ゲーム製作している人たちに関して言えば、そ こから新しいアイデアが生まれるわけがないとも感じてい るんです。 ― ジャンルに縛られているからですか。 富野 まったくその通りですね。 ― その縛られている中では「∀」のゲーム化は難しいで すよね。 富野 ひどい言い方をされますからね。「『∀』なんて、 キャラクター性がないもの」と。ゲームってそんなものか な、と思ってしまいますね。  僕は根本的にゲームは嫌いなんです。そのひとつには、 自分は勝負ごとが下手だからという理由があるからですが、 それだけで誤解しないでほしい。その次にあるのは、ゲー ムに現実逃避を思わせるところがあって、そのモーション を加速させるようなことでしか心理的に働かないのではな いか、と思っているからです。だから、ゲームの話には興 味がないんです。  と言いながらも、ゲームで期待するのは、楽しく15分で 終わるならいいと思う。ですが、ゲームに縛られるという 脅迫観念があって、強い魅力を持ったゲームはいかがなも のか、とも思うんです。例えばRPGを何とか遊ぼうとした んだけど、とにかくできないのは、プレイの中で自分に啓 発されるものがなく、ゲーム中で勝利者になるセンスがな いんです。勝ってもお金を儲けさせてくれませんものね。  将棋や碁は他者と空間を共有して勝負しなければいけな いという暗黙のルールのもとに成り立っているわけです。 コンピュータゲームが怖いのはそういった要素がないとい うことで、カプセル感を加速させますよね? ― 勝負のないコンピュータゲームも増えてきていますが。 富野 だから、ますます現実逃避が加速するんです。完全 に社会逃避者を作るための仕掛けなわけで、それはゲーム ではないと思います。バーチャルな世界が現実の時間を支 配することで、人間を退化させていく道具だと思うのです。 現実にSF的な部分の危険度が増していると感じます。 ― ネットワークにつながることで、それはますます加速 すると思いますか。 富野 加速するでしょうね。ネットワークの持っている性 格は、生産性が低下するというような資本家のようなこと は言いません。重要なのは、そういうことを享受していく ことによって退化していき、自己というものをそこまで捨 てることができる人間だったら死ねよ、という一言です。 病気を加速させるシステムだってことを後で気が付くとき があると思いますし、人間ってそこまでバカでないと思い ますので、ゲーム脱けをする時代も来ますね。 これからの時代に 必要になってくるゲームとは? 富野 それでも、女房とずっと遊んでいるゲームがありま して「パズルボブル」なんですよ(笑)。飽きているんだ けど30分遊ぶのにぴったりなんです。「IQ」は3ヶ月遊ん だら、見向きもしなくなりました。買ったときは「これは ゲームの革新かもしれない」と思ったけれど、あれには欠 陥があるんですよね。 ― それは何ですか。 富野 再現性がない。いちいちスタートから始めなくちゃ いけない。その程度のプログラムは仕組んでおけよ、と腹 が立ちました。最高得点を表示するのが関の山で、いつも 始めからではあまりにふざけてないか、と思いました。だ から意地になって最後まで遊んだんだけど、ソフトを提供 していく作り手の錬度が見えないんですよね。こういう入 り方もある、こういう遊び方もある、という様々なプレイ ヤーがいることを考えていない。雑誌は、律儀に1ページ 目から読みませんよね。そういった想定ができないのは、 業界が若いからとも言えるけど、基本的な考えがデジタル なんですよ。 ― ほとんどのゲームはスタートから始めなくちゃいけな いと考えていますからね。 富野 そうですね。1ステージが面白いか、と言えば必ず しもそうではない。だったら時間を無駄にせず歯ごたえの あるステージから遊べるようにしろ、と言いたいですね。 ゲームには極めて幼児的な問題があるんだけど、コンピュ ータに入力する作業が高度に見えるから、上等な作業をし ていると誤解しているスタッフが多いですね。本当はイン ターフェイスとは何かを全くわかっていない人たちが作っ ていると思います。現在のRPGに代表される長大なCD3枚や ら4枚やらのゲームが、ゲームだとは思えません。2時間、 3時間も大人が拘束される遊びなんてないんですよ。そん な時間があるなら、SEXしてろよと言いたい。口説いたり、 ふたりで気持ちよくなった方が絶対健康なんですよ。僕に とってSEXはドッキングしています。ものすごく乱暴な言 い方だけど、コンピュータゲームはいつまでもあるものじ ゃないと思っています。  僕はゲームをバカにしているわけではありません。興味 はあるし、参入もしたいと思っているんだけど、20代の頃 にCMを作っていて感じた「個」を抹殺する抵抗感をゲーム からも受けるんです。CMと違って、ゲームにはある種の作 家性が出ることもわかっていますけど、プレイステーショ ン2を見たときに、これはゲームとして高度ではなく、も っと優しいものが必要だろうと思いました。幼児とまでは 言わないけど、低学年向けの情操教育まで関与し、弊害に ならないゲームとはどんなものかという点に、僕は一番興 味があります。これは最大のヒントなんだけど、言います。 きっとそういうシンプルなものは、ボケ老人にとっても良 いものなのではないでしょうか。ゲームはシンプルなもの だと、皆さん知っているハズなんです。僕が一番、驚くの は碁です。あれほどシンプルで、大人が一生遊べるゲーム とはなんだろう、と思いますね。あんなシンプルに作られ たら、アレを目指すしかないんですよ。なのに、なんでガ サガサしたガンダムのゲームが出てくるのか、僕にはよく 分からないんです。