週刊プレイボーイ 2003年1、2合併号 最新監督作「オーバーマン キングゲイナー」DVD発売間近 ガンダム世代の父インタビュー 富野由悠季 「ガンダムなんてのは、  女のおっぱい吸ってる合間に見るもんなんだ」 世の中の理不尽さ、女という生き物の不可解さ、親という存在のせつなさ… 人生に必要なことは、すべてガンダムで学んだ。それが俺らの世代ってヤツだ。 ならば、その生みの親である富野監督はオレらの親父である。 その親父が社会を、恋愛を、そして新作を語り尽くす! ガンダム作るよりも本気だし、面白いね ---------------------------------------- お、親父さん、どーなってんの!? <ガンダム世代の父>こと富野由悠季監督が最近ヘンだ。 新作「オーバーマン キングゲイナー」について、 親父は「楽しいマンガ映画を作りたい」 「今回のライバルは、『クレヨンしんちゃん』です」と語ったらしい。 実際、『キングゲイナー』のオープニングはとんでもないことになっていた。 キャラが、そして主役ロボットまでもがダンスを踊ってるじゃないの! シリアスな物語(ガンダム)を期待してしまうオレたちを 親父がいい意味で裏切るのはよーく知っている。けど、これは一体… 「ここ数年、自分はエンターテイナーでありたいと思っていたんですよ。  なぜかというと、本来、映像のお楽しみとはエンターテイメントでしょ?  決してシリアスで上品に作ったものや、  CGをたくさん使いましたというのが上等だとは思いません。  見終わった後、よくわかんないけど良かったね、泣いちゃったね、  というのが上等だと思いますね。  『クレヨンしんちゃん』の名前を出したのもそこです。  僕は実写のほうが好きな人間ですが、そういう人間から見ても、  あれはエンターテイメント作品として完成されている。  ならば、これをターゲットにするのが一番だと考えたわけです。   オープニングもノリで作ってはいません。全部、理詰めです!  主題歌を依頼した田中公平氏(『ワンピース』『サクラ大戦』などで  知られる作曲家)があまりにいいものを作ってきたので、  この曲を超えるにはどうしたらいいか?と1週間も悩んだ末の結果ですね。」 いやー、ホッとした。やはり親父は確信犯だったのだ。 それもそのハズ。『キングゲイナー』は ガンダムという色眼鏡を外してみるとかなり面白い。 舞台は極寒のシベリアの地。そこからエクソダス(集団脱出)する人々、 それを止めようとする人々の物語で、 メカの戦闘、主人公の恋愛といったロボットもののお約束がある一方、 ギャグやユーモア、各闘技大会から駅伝まで描かれるバラエティ。 こんな作品がWOWOWでしか見られないなんてもったいない! 今回のDVD発売をキッカケにもっと多くのメディアで取り上げられるといいのになあ。 「だからというわけではないんだけど、う〜ん、なんていうのかな?  はっきり言ってガンダムよりも本気だし、ガンダム作るよりも面白いね。」 と、ニヤリ笑う富野親父。最高です。 我々の世代は自己反省するべきなんです ---------------------------------------- と、絶好調ムードの親父ではあるが、いつものメッセージ性は忘れてはいない。 そのカギを握るのが、劇中も頻繁に聞かれる『エクソダス』という単語。 旧約聖書の出エジプト記に由来するその言葉に親父はどんな思いをこめているのか。 「ここ20〜30年で我々の感覚はズボラになりつつあると思います。  物事の好き嫌いの判断でさえマニュアルに従って行動しているような気がしますね。  例えば、食玩(フィギア入りのお菓子)やトレーディングカードといったものが  多く流通していますが、それを全部集めてしまうほど好きなの?といったら、  そうではないと思うんです。」 そういう社会・環境を作り出してしまったのは自分の世代の責任だと親父は語る。 「我々は高度経済成長からバブル期にかけて  先を見て行動することができませんでした。  結果、その負債をみなさん若い世代の人々に負わせてしまっている。  本来なら、今、大人みたいな顔をしている人々は  全員、総辞職しなければならないんです。  そういう無能者がいまだに道路を作りましょうと  言っているのはおかしくねぇか?と。  そういう状態から脱出しなければなりません。  エクソダスとは、そういうことです。  でも、こういうふうに反省している大人もいるから、ごめんなさい、  もう少しだけ生きさせてくださいという本気のメッセージがあります。」 相変わらずの富野節に感涙。やはり親父は信用できる大人なのである。 フィギア好きの人は、ダメですね ---------------------------------------- 親父はこの新作の為に、 その舞台となるロシアのシベリア地域を取材して回ったと言う。 ウラジオストックから入り、バイカル湖、サハリンと進んだ約6日間。 ここで親父はおもしろい光景を見たらしい。 「この地方の若い女性はブラウスの第2ボタンまで開けて  ブラジャーを見せつけながら歩いているんです。  で、なぜだろう?と思って眺めていると、  こっちに気づいたのか逆に胸を張ってアピールしてくる…。  その瞬間、わかったね。  ここの女性たちは、ちゃんと口説き落とせば絶対にヤラせてくれる!  事実、ロシア人のガイドに聞いたら、  みんな13歳くらいで男を知ってしまうらしいんです。  シベリアは世界的に見ると圧倒的に田舎なんだけれども、  ここでこういう光景が見れるということは、  つまりセクシュアリティの表現というのは本来、  オープンなものだったんじゃないかと気づいたんです。  それから比べると我々の性表現やセックス感はイビツだと思いますね。」 そこまで考えたことはなかったけど、 確かにオレたち日本人ってイビツかもしれないなあ。 話はちょっとズレるけど、わがWPBでガンダムの特集をやると グラビアの巨乳ちゃんよりも人気が高いことがある。 巨乳よりもガンダム。読者のみなさん、これってヘンくない? 「当事者のひとりとしてはありがたいんですが、  できたら巨乳を選んでほしいのね。  しょっちゅうおっぱい吸ってるわけにもいかないから  気晴らしにガンダムを見る、そうあるべきだと思いますね。  というのも、そういうものにハマっていると  女性をちゃんと口説けなくなってしまうと思うんです。  今の携帯電話を使った出会い系サイトの問題というのも、  正当に相手を口説いてないからこそでしょう。  やさしく言うと全部メールですませないで、ちゃんとラブレターを書け!  面と向かって渡せ! そこで地獄を見るのも大事なことだと思いますね。  今回の『キングゲイナー』でも思春期の少年が  全身全霊で愛の告白をしたらどうなるか?  いや、どうにもならないよ。  まあ、そんなもんだよね、というのを描いています。  要するに…フィギア好きはよくないということです。」 というわけで、含蓄を多分に含んだ 親父の言葉に耳を傾けてきたわけですが、最後に質問です。 親父さん、オレたちのことを息子として認めてくれますか? 「産ませた覚えはない!(笑)」 取材・文/オタニ∀ユキノリ ・とみの よしゆき 1941年生まれ。日本大学芸術学部卒。 『機動戦士ガンダム』の総監督であり、 昨年の劇場版『∀ガンダム』2作も、 話題になったばかり。 現在、『オーバーマン キングゲイナー』を鋭意制作中。 待望のDVD第1巻は、 バンダイビジュアルより 12月21日発売!