ロマンアルバム 勇者ライディーンより 演出(前半)富野喜幸  「勇者ライディーン」に課せられた最大の課題は 「マジンガーZ」と「ゲッターロボ」を抜くことだった。  その突破口を原作者・鈴木良武氏はムー大陸の 歴史から語ることによって見い出した。  それに素体ロボットにフェードインする主人公と ゴッドバードに変形するメカニックなアイデア。  この二つでわれわれは、まったく新しいロボット物 を作り上げる自信を得た。  しかし、主人公のひびき洸とその両親をどのように 設定して物語を構成するかという段になって、監督の 私と鈴木氏との間で何度か激論が交わされた。  というのも、このときの制作方法では監督の主張が かなりの比重でストーリーに反映されたからである。 鈴木氏はムーから物語りたいとし、私は、洸から出発 してライディーンの神秘世界を描いていくとしたからで ある。  その結果の合意が、ムーの香りと戦闘、洸の 三位一体となった第一話になった。  ところが、メカニックと神秘世界の出会いという 基本テーマにとって不幸が起こった。時の社会 風潮が神秘世界へ挑戦することを拒否したので ある。そのためにわれわれの展開すべき物語が 変節したのは、やむをえなかった。ガンテとドロー メによって代表されるはずだった世界が崩れたの は残念だった。  とはいえ、そのことがライディーンや洸にとって 不幸だったわけではない。むしろ、メカニック戦闘 にシビアに投入された洸は、よりたくましく成長す ることになった。さらに、あのシャーキンをより明 確な敵としてイメージアップさせることにも成功し たのである。  そして、洸の父母への思慕が、ムートロンの作 り出す世界を解くカギとなっていくであろうというと ころで、前期の私の役割は終わった。  もし、前期と後期の作品上の違いがあるとすれ ば、後期の長浜監督と私の世界観の違いによる ものだろう。