TV Bros.(TV雑誌) 2002年21号(10/12〜25号) *補足:これはガンダム特集記事の中の  セイラ特集コーナーに掲載されていたものです。 ガンダムシリーズの生みの親 富野由悠季interview すべての物語はセイラというキャラクターから始まった! 監督から語られる、セイラ・マスの真実… 【セイラの「軟弱者!」のセリフが、ガンダムを動かしていたんです。】 ━━セイラ・マスは、『ガンダム』において、 どんなキャラクターだったのでしょうか? 「まず、第2話のカイ・シデンに対しての『軟弱者!』というセリフで、  セイラのキャラクターがはっきりして、セイラは劇を作る上で芯になるだろうという  確信が生まれたというのがあります。  他のキャラクターは、どうしても当時のマンガ映画の定型という配置に  収まっていたんですが、『軟弱者!』のセリフでセイラに実体感が生まれたことで、  キャラクターの動かし方が明確になったんです。  セイラとシャアを兄弟関係にする設定は2話で出ていたけれども  6話くらいまで本気で使うつもりはなかったんです。  敵味方が兄弟なんて、いかにも俗受けするようでとても嫌だったんだけど、  セイラなら、そういう関係にしちゃっても、  俗っぽいキャラクターにはならないだろうなと感じたんです」 ━━声を、井上遙さんにお願いした理由は? 「『ダイターン3』で、遙さんに三条レイカを演じてもらって、  初めて『キャラクターの実体感が生まれる組み合わせとはこういうものだ』と  教えられたんです。それが経験として重くあったんで、『ガンダム』でも、  それができるのではないかという狙いがあったということです」 ━━その狙いは、見事に成功したわけですね。 では、監督、個人としては、セイラにどんな思い入れがありますか? 「セイラというキャラクターには、セル画を使いながらも、  アニメ的な嗜好を喚起するものではなく、実体としての人間を表現する、  という課題に対して初めて「触れることができた」という快感がありました。  それが、僕にとってのセイラ・マスというキャラクターなんです。 ━━話は変わりますが、監督はセイラだけでなく 『Vガンダム』のカテジナのような、 強烈な実体感をもった女性キャラも生み出していますが? 「それにはすごく大きなテーマがあります。  これはもう『海のトリトン』から作り手として一番気をつけてきたことです。  あからさまに言えば、セックスを含めて、どう女性と接すればいいかということ。  カテジナもクェスも、男の欲望にまったくリアクションを起こしてくれないんだけど、  欲望を満たすためには絶対向こうからのリアクションがない限りあり得ないわけです。  だから、最低限これぐらいの目線は持たないとリアクションしてもらえないよ、  というメッセージを、男の子に送りつづけてきたつもりです。  ところが、画と実体は別の物だと都合良く解釈して、  その部分が見事に抜け落ちちゃってる人がいっぱい出てきて困ってます。  ガンダムを見てきた独身男性は、僕が描いてきた女性像を正確に見ていれば、  絶対結婚できてるはずなのに(笑)」 ━━最新作でも、そのメッセージは描き続けるんですか? 「『キングゲイナー』の為に、ロシアに取材にいったんですが、  田舎の娘さんは、健やかに自然にセックスアピールしているし、  男も真面目に相手の目を見て口説いているんですよね。  出会い系サイトみたいのが氾濫して、  立ち居振る舞いがだらしなくなっている日本人から見ると、  お互いの関係を尊重している男女関係は気合いが違うと見えます。  今、出来の良い小説は別として、  生活の中で真面目な男女関係を語らなくなっていると思います。  『キングゲイナー』でも、ロボットものという中に、そういうテーマを込めて、  真剣に女を口説けるようになろうよと。  エクソダスとはそういうことなんです」 (取材・構成/西原大吾) ●1941年神奈川県生まれ。アニメーション作家・監督。  日本大学芸術学部映画学科卒業後、虫プロダクション入社。  「鉄腕アトム」「海のトリトン」などの演出、脚本を手がける。  退社後フリーとなり「勇者ライディーン」「無敵超人ザンボット3」  「無敵鋼人ダイターン3」を監督。  '79年の「機動戦士ガンダム」で、リアルロボット系という  新しいロボットアニメを生み出し、社会現象を起こす。  他の代表作では「聖戦士ダンバイン」「伝説巨神イデオン」など。  また、井荻麟のペンネームで、自身の作品の主題歌などの作詞を手掛ける。  最新作は「オーバーマン キングゲイナー」 【小説版ガンダム】 機動戦士ガンダムI〜III/角川書店刊 富野監督のいうキャラクターの”実体感”が、もっとも表現されているのは、 監督自身による小説版【機動戦士ガンダム】だ。 主人公アムロとセイラに、肉体関係があるなど、 アニメから1段階踏み込んだ人間関係が描かれる。 また、アニメ版では、曖昧だったニュータイプについても、 アムロの急激な革新志向や、シャリア・ブル、クスコ・アルといった ニュータイプの活躍などアニメ版とは別の展開を見せる。 アムロが死んでしまうという、ラストはあまりにも衝撃だ。 もう1つの「ガンダム」と呼べる1作。 【オーバーマン キングゲイナー】 WOWOW(土)後7・30〜8・00(アナログBS-5ch・デジタル191ch) 文明が行き詰まった未来。 人々はテクノロジーで保護された都市国家(ドームポリス)に閉じこもっていた。 そんな閉塞した状況で、本来いた土地で生きるべきだと主張する人々が現れ、 都市国家脱出・エクソダスが始まる。 ゲームのチャンピオン・ゲイナーは、 エクソダス請負人のゲインのせいで、エクソダスに巻き込まれる…。 アニメ本来の楽しさと、メッセージ性をもった、冒険ロボットアニメーション。